『非公式Twitter』
番外編から零れたふたり~アニ編~
2016/05/03 14:47##IMGU75##
「その日なら、俺も検察庁の花見大会だぞ」
##IMGLU83##
「え、じゃあ、もしかして会えるかも知れませんね?」
喫茶店での向かい合った席で、「慶史さんと一緒にお花見出来たら嬉しいです」と笑顔を見せる彼女に、俺は正直面喰らう。
お互い仕事の最中に、短時間だが待ち合わせをして雑談、というだけでも、まるでででデートのようではないかと面映ゆい思いをしていたのに、何だこの俺得な展開。
「うむ、そうだな」
「皆の話だと、すごく重苦しい雰囲気のお花見らしいんです。慶史さん、上手に私を連れ出して下さいませんか?」
冗談半分にだろうが、櫻井が、拝むように俺に手を合わせる。
たちまち、俺の脳内の桜が一気に開花した。
満開の花の下、手に手を取りあい、自分たちだけの世界へ向かってスローモーションでウフフアハハとスキップしてゆく俺と櫻井。
「…悪くないな」
妄想の逃避行に満更でもない俺の心を知ってか知らずか、櫻井は無邪気に右手の小指を差し出してきた。
「じゃあ、迎えに来る、って約束してください」
「…うむ」
いい歳をして人前で指切りとか、若干恥ずかしいが、いいじゃないかにんげんだもの。
「…まあ、なんだ、お前がそこまで言うのなら。よかろう、抜け出して、二人で花見をしよう」
「はい!」
ああ。
俺は、
花よりも、
お前のその顔をずっと見ていたい。
***
「あっら、アニじゃない」
「検察もお花見だなんて奇遇だね」
「すみませんその弁当は俺のです」
「足を踏むなや兄貴!」
「あ、翼ちゃんの隣は俺だからダメですよ」
「反対側の隣は俺だよメガネ」
…こいつらがいた。
櫻井は捜査室のバカどもから出る雑用を甲斐甲斐しくこなしながら、俺にも弁当を差し出し、緑茶を注いでくれた。
衆人環視ではないか。
この包囲網から俺にどうやって連れ出せというのだお前は。
目が合うと、櫻井は苦笑いして肩を竦めた。
やっぱり無理ですよね、とその目が訴えている。
俺の自尊心が震えた。
「小野瀬、鑑識の席で太った部下が酔って転がっていたがいいのか」
「え」
「明智、総務の女子が、調理で助けを求めていた」
「俺にですか?」
「如月、愚弟。あの桜の下で、これから合コンするメンバー募集していたぞ」
「え、ホンマ?」
「うっわ、もうあんなに集まってますよ」
こうして次々に、俺は櫻井の周りに陣取っていた男たちを追い払う事に成功した。
残るは、人酔いして櫻井の膝枕で寝ている小笠原とかいうメガネと、櫻井に延々と酒の酌をさせている穂積だが…。
小笠原の顔色は真っ青だ。
さすがの俺も、こんな半病人相手に「その膝枕を返せ」とは言えない。
俺の作戦は完遂しなかったが、櫻井も分かってくれるはずだ…
「櫻井」
不意に、穂積が櫻井の名を呼んだ。
「足が痺れたでしょう。ワタシが代わるから、散歩してきていいわよ」
「え…」
驚いている櫻井を横目に穂積は懐から手帳と万年筆を出し、さらさらと何か書き付けてから、そのページをピッと破いて俺に差し出した。
【いつもの居酒屋に芋焼酎1本】
俺と櫻井は一瞬顔を見合わせたが、胡座をかいた穂積が小笠原を引き受けたタイミングで、二人して席を立った。
「私、焼酎と引き換えに売られたんですか?」
俺と穂積の間で行われた取引の内容を知って、櫻井は複雑な顔をしていた。
「まあそう落ち込むな。愚弟など、100円の缶コーヒーと交換で捜査室に配属されたと聞いているぞ。お前の方が高価だ」
「…その例えは、あまり嬉しくありません」
櫻井はしばらくむくれていたが、やがてフロントガラス越しに満開の桜が見えてくると、たちまち目を輝かせた。
「わあ!」
着いたのは、東京地検の近くにある公園だ。
駐車場に車を停めるのを待ちきれないように、櫻井は、助手席から外に飛び出してゆく。
「櫻井、こっちだ」
「図書館の中ですか?」
俺は頷いて、櫻井の手を引いた。
「ここのカフェの窓から桜が見える」
広い敷地内はあちこちに花見客がいて賑わっているが、天気の良さが幸いし、図書館の中には却って人影が少ない。
さっきまでとはうってかわって静かで清潔な場所に、櫻井はほっとしたように深呼吸した。
「素敵です」
「だろう。俺の好きな場所のひとつだ」
櫻井と俺は館内の窓を巡って様々な角度からの桜を堪能した後で、カフェに入って、春限定のメニューをいくつか注文した。
「慶史さん、約束を守ってくれてありがとうございました」
礼を言われても、俺は苦笑するしかない。
「癪だが、穂積に助けられた」
正直にそう言うと、櫻井は笑顔で、首を横に振った。
「それは、連れ出してくれる約束の事でしょう?…そうじゃなくて、迎えに来るから、二人でお花見をしよう、って言ってくれた方の、約束の事です」
夢が叶いました、と、櫻井は頬笑んだ。
そんなささやかな事が嬉しいのか、こいつは。
注文した品を置いた店員が去って、辺りに人がいなくなると、ふと、櫻井が言った。
「慶史さん、目を、瞑ってください」
「?」
言われた通りに目を瞑ると、一瞬、何かが俺の唇に押し付けられて、離れた。
…い、今のは何だ。
まさか、まさか、くちび…
驚いて目を開けると、櫻井は、なんちゃらプリンアラモードに載ってきたさくらんぼのひとつを指先に摘まんで、俺に満面の笑顔を向けていた。
「な、なんだ、さくらんぼだったのか。俺は、てっきり… 」
自分の勘違いに狼狽えながら弁解めいた言葉を口にすると、櫻井は、ふふ、と悪戯っぽく笑った。
「どっちだったでしょーうか?」
「あ?」
俺の目の前には、真っ赤なさくらんぼと、桜色の櫻井の唇。
「…!…」
俺とした事が、顔が赤くなるのを抑えられない。
「…む」
「はい?」
「…もう一度、頼む」
俺が言うと、櫻井ははにかむように笑ってから、今度は自分が目を瞑った。
「じゃあ、今度は慶史さんから、お願いします」
ああ。
俺は…
俺は椅子から立ち上がると身体を屈め、櫻井の頬を両手で包んで、唇を重ねた。
櫻井が、びっくりした顔で目を見開く。
「…どうだ。俺だって、これぐらい出来るのだぞ」
つい照れ臭くて意地を張ってしまうが、本当はいつだって、触れたい、抱き締めたい。
「はい」
頬を染めて頷いた櫻井が、とろけそうな笑顔をくれた。
「…初めてのキスも、桜の頃でしたよね」
ああ。
俺は、やっぱり。
花よりも、
お前のその顔をずっと見ていたい。
~終わり~
「その日なら、俺も検察庁の花見大会だぞ」
##IMGLU83##
「え、じゃあ、もしかして会えるかも知れませんね?」
喫茶店での向かい合った席で、「慶史さんと一緒にお花見出来たら嬉しいです」と笑顔を見せる彼女に、俺は正直面喰らう。
お互い仕事の最中に、短時間だが待ち合わせをして雑談、というだけでも、まるでででデートのようではないかと面映ゆい思いをしていたのに、何だこの俺得な展開。
「うむ、そうだな」
「皆の話だと、すごく重苦しい雰囲気のお花見らしいんです。慶史さん、上手に私を連れ出して下さいませんか?」
冗談半分にだろうが、櫻井が、拝むように俺に手を合わせる。
たちまち、俺の脳内の桜が一気に開花した。
満開の花の下、手に手を取りあい、自分たちだけの世界へ向かってスローモーションでウフフアハハとスキップしてゆく俺と櫻井。
「…悪くないな」
妄想の逃避行に満更でもない俺の心を知ってか知らずか、櫻井は無邪気に右手の小指を差し出してきた。
「じゃあ、迎えに来る、って約束してください」
「…うむ」
いい歳をして人前で指切りとか、若干恥ずかしいが、いいじゃないかにんげんだもの。
「…まあ、なんだ、お前がそこまで言うのなら。よかろう、抜け出して、二人で花見をしよう」
「はい!」
ああ。
俺は、
花よりも、
お前のその顔をずっと見ていたい。
***
「あっら、アニじゃない」
「検察もお花見だなんて奇遇だね」
「すみませんその弁当は俺のです」
「足を踏むなや兄貴!」
「あ、翼ちゃんの隣は俺だからダメですよ」
「反対側の隣は俺だよメガネ」
…こいつらがいた。
櫻井は捜査室のバカどもから出る雑用を甲斐甲斐しくこなしながら、俺にも弁当を差し出し、緑茶を注いでくれた。
衆人環視ではないか。
この包囲網から俺にどうやって連れ出せというのだお前は。
目が合うと、櫻井は苦笑いして肩を竦めた。
やっぱり無理ですよね、とその目が訴えている。
俺の自尊心が震えた。
「小野瀬、鑑識の席で太った部下が酔って転がっていたがいいのか」
「え」
「明智、総務の女子が、調理で助けを求めていた」
「俺にですか?」
「如月、愚弟。あの桜の下で、これから合コンするメンバー募集していたぞ」
「え、ホンマ?」
「うっわ、もうあんなに集まってますよ」
こうして次々に、俺は櫻井の周りに陣取っていた男たちを追い払う事に成功した。
残るは、人酔いして櫻井の膝枕で寝ている小笠原とかいうメガネと、櫻井に延々と酒の酌をさせている穂積だが…。
小笠原の顔色は真っ青だ。
さすがの俺も、こんな半病人相手に「その膝枕を返せ」とは言えない。
俺の作戦は完遂しなかったが、櫻井も分かってくれるはずだ…
「櫻井」
不意に、穂積が櫻井の名を呼んだ。
「足が痺れたでしょう。ワタシが代わるから、散歩してきていいわよ」
「え…」
驚いている櫻井を横目に穂積は懐から手帳と万年筆を出し、さらさらと何か書き付けてから、そのページをピッと破いて俺に差し出した。
【いつもの居酒屋に芋焼酎1本】
俺と櫻井は一瞬顔を見合わせたが、胡座をかいた穂積が小笠原を引き受けたタイミングで、二人して席を立った。
「私、焼酎と引き換えに売られたんですか?」
俺と穂積の間で行われた取引の内容を知って、櫻井は複雑な顔をしていた。
「まあそう落ち込むな。愚弟など、100円の缶コーヒーと交換で捜査室に配属されたと聞いているぞ。お前の方が高価だ」
「…その例えは、あまり嬉しくありません」
櫻井はしばらくむくれていたが、やがてフロントガラス越しに満開の桜が見えてくると、たちまち目を輝かせた。
「わあ!」
着いたのは、東京地検の近くにある公園だ。
駐車場に車を停めるのを待ちきれないように、櫻井は、助手席から外に飛び出してゆく。
「櫻井、こっちだ」
「図書館の中ですか?」
俺は頷いて、櫻井の手を引いた。
「ここのカフェの窓から桜が見える」
広い敷地内はあちこちに花見客がいて賑わっているが、天気の良さが幸いし、図書館の中には却って人影が少ない。
さっきまでとはうってかわって静かで清潔な場所に、櫻井はほっとしたように深呼吸した。
「素敵です」
「だろう。俺の好きな場所のひとつだ」
櫻井と俺は館内の窓を巡って様々な角度からの桜を堪能した後で、カフェに入って、春限定のメニューをいくつか注文した。
「慶史さん、約束を守ってくれてありがとうございました」
礼を言われても、俺は苦笑するしかない。
「癪だが、穂積に助けられた」
正直にそう言うと、櫻井は笑顔で、首を横に振った。
「それは、連れ出してくれる約束の事でしょう?…そうじゃなくて、迎えに来るから、二人でお花見をしよう、って言ってくれた方の、約束の事です」
夢が叶いました、と、櫻井は頬笑んだ。
そんなささやかな事が嬉しいのか、こいつは。
注文した品を置いた店員が去って、辺りに人がいなくなると、ふと、櫻井が言った。
「慶史さん、目を、瞑ってください」
「?」
言われた通りに目を瞑ると、一瞬、何かが俺の唇に押し付けられて、離れた。
…い、今のは何だ。
まさか、まさか、くちび…
驚いて目を開けると、櫻井は、なんちゃらプリンアラモードに載ってきたさくらんぼのひとつを指先に摘まんで、俺に満面の笑顔を向けていた。
「な、なんだ、さくらんぼだったのか。俺は、てっきり… 」
自分の勘違いに狼狽えながら弁解めいた言葉を口にすると、櫻井は、ふふ、と悪戯っぽく笑った。
「どっちだったでしょーうか?」
「あ?」
俺の目の前には、真っ赤なさくらんぼと、桜色の櫻井の唇。
「…!…」
俺とした事が、顔が赤くなるのを抑えられない。
「…む」
「はい?」
「…もう一度、頼む」
俺が言うと、櫻井ははにかむように笑ってから、今度は自分が目を瞑った。
「じゃあ、今度は慶史さんから、お願いします」
ああ。
俺は…
俺は椅子から立ち上がると身体を屈め、櫻井の頬を両手で包んで、唇を重ねた。
櫻井が、びっくりした顔で目を見開く。
「…どうだ。俺だって、これぐらい出来るのだぞ」
つい照れ臭くて意地を張ってしまうが、本当はいつだって、触れたい、抱き締めたい。
「はい」
頬を染めて頷いた櫻井が、とろけそうな笑顔をくれた。
「…初めてのキスも、桜の頃でしたよね」
ああ。
俺は、やっぱり。
花よりも、
お前のその顔をずっと見ていたい。
~終わり~
追記
名前:ジュン
本文:
こんばんは。
う~ん、やっぱり小春さんの書く慶史さん、大好きです(*≧∀≦*)
翼ちゃんは芋焼酎1本なんですね(笑)
慶史さんは不器用だけど好きな人のためには頑張っちゃうんですね。
可愛いです(^_^)
名前:エミ
本文:
ぃよっ!待ってました!
番外編の番外編。
もー、アニったら翼ちゃんにデレッデレね!
アハハウフフ♪と二人で本当にスキップをしてても見てない振りしてあげますよ(笑)
室長のオトナな取引も室長らしくて素敵っ!←
名前:冬子
本文:
冬子も いよ!待ってました!アニ~って言おうと思ってました。
図書館ってとこが、アニさんらしい。
知性と教養はあるんでしょうね。いや、嫌味じゃないですよん。
アニさん頑張っちゃったから今晩は眠れないんじゃ?
そして、小笠原さん、真っ青な顔がかわいそうですが、室長の膝枕って…いいなあ
本文:
こんばんは。
う~ん、やっぱり小春さんの書く慶史さん、大好きです(*≧∀≦*)
翼ちゃんは芋焼酎1本なんですね(笑)
慶史さんは不器用だけど好きな人のためには頑張っちゃうんですね。
可愛いです(^_^)
名前:エミ
本文:
ぃよっ!待ってました!
番外編の番外編。
もー、アニったら翼ちゃんにデレッデレね!
アハハウフフ♪と二人で本当にスキップをしてても見てない振りしてあげますよ(笑)
室長のオトナな取引も室長らしくて素敵っ!←
名前:冬子
本文:
冬子も いよ!待ってました!アニ~って言おうと思ってました。
図書館ってとこが、アニさんらしい。
知性と教養はあるんでしょうね。いや、嫌味じゃないですよん。
アニさん頑張っちゃったから今晩は眠れないんじゃ?
そして、小笠原さん、真っ青な顔がかわいそうですが、室長の膝枕って…いいなあ