すっかり桜も散った頃。

朝のコーヒーを淹れていると、メンバーが次々と出勤してきた。

如月さんは元気だけど、藤守さんと明智さんは、ちょっと眠たそうだ。

二人は昨夜、不法デートクラブ摘発の手伝いに駆り出され、その際に逃げた少女を追って、明け方まで走り回っていたらしい。

##IMGU62##
「こっちは保護するつもりやのに、逃げるとか意味わからん」

##IMGU60##
「結局、青森からの家出少女(13)だったんだがな」

私がコーヒーを渡すと、二人の眉間の皺が少し緩んだ。

##IMGLU83##
「もうすぐゴールデンウィークですもんね。学校がお休みになって、地方から人がたくさん出てきて、そのまま家出してしまう若い子も多いって聞きました」

「ゴールデンウィーク……」

全員が遠い目をしたところで、勢いよくドアが開いた。

##IMGU61##
「おう！やっと来たか！お前らに仕事をやろう！そこに並べ！」

入って来た室長は、分厚いファイルを片手で掲げて見せる。

「室長、オネエキャラを忘れてますよ」

「最近忘れてるよな。オカマ言葉も気持ち悪いと思ってたけど、あれが辛辣な発言を実は若干マイルドにしてたんだということに気付いたわ」

「聞こえてんぞ！」

如月さんと藤守さんがひそひそ話していると、室長が片方の眉を吊り上げた。

「あのう、室長」

私は手を上げた。

「ハイ、櫻井くん」

「小笠原さんがまだ来ていません」

「あの社会人失格者め！藤守！電話！」

藤守さんが慌てて小笠原さんに電話をかける。

「…小笠原、何してんねん！室長カンカンやぞ！…は？…春眠暁を覚えず…？」

「あいつ、永久に寝かせてやろうかしら」

「室長、それより、仕事って何ですか？」

明智さんがさりげなく話題を変え、室長の顔がこちらに向いた。

「ＧＷ恒例の交通教室よ。ウチが担当する事になったの」

「やっぱり、今年も来たかあ！」

藤守さんが頭を抱えた時、捜査室のドアが開いた。

##IMGU65##
「おはよう。櫻井さんの朝のコーヒーをもらいに来たよ」

「はい、どうぞ」

ありがとう、と小野瀬さんは笑うけど、目の下にうっすらとクマが出来ている。

どうやら、鑑識もＧＷなんて関係なさそうだった。



その日の帰り道。

高校時代の女友達から、携帯に電話が入った。

『ねえ、もうすぐゴールデンウィークでしょ。久し振りにみんなで集まろうよ！』

「いいけど、私、たぶん普通に仕事…」

『えっ、マジで？警察って休みもないの？』

「そんなことはないけど、普通の人とは休みが違うっていうか」

『翼、彼氏が出来たんでしょ？その人とはどうやって会うの？』

「…えっ？」

『だって、休みが合わないって事は、ゴールデンウィークも一緒にお出かけなんて無理でしょ？』

「まあ……そうね」

『ちなみに私は彼と温泉に行くんだけど！』

結局、自慢のようなノロケのような話を聞かされて、私は電車が来たことを理由に電話を切った。

（ＧＷは仕事だけど、私も、一日くらい彼とデートしたいな。相談してみようかな…）

私は彼にメールを送った。

《明日、会って話したいことがあります。
もし、仕事の都合がついたら、お昼に抜け出していつもの場所に来てください》


『秘密のお花見大作戦』が終わったばかりですが、ＧＷが来てしまったので急いで『ＧＷ秘密のデート』をご紹介します。

実は本家での番外編はこの話からスタートしていて、「お花見大作戦」よりも季節は後ですが、「ＧＷ」の方がまだ付き合いだして日が浅い印象です。

私が紹介する順番が前後しているからで、違和感を感じたら申し訳ありません。

気持ちを切り替えてお読みください。←オイ

お花見大作戦での「番外編から零れたふたり」にコメントありがとうございました。

毎回蛇足ながら楽しくアニとＪＳを書き下ろしさせていただいてます。

需要があるのか無いのかもう分かりませんが、読んで下さる方がいて、少しでも楽しんで頂けているなら嬉しいです。

え？

小春のＧＷ？

もちろんお、し、ご、と(笑)。

では皆さま、楽しいＧＷ後半をお過ごしくださいませ。