『非公式Twitter』

番外編『GW秘密のデート』より~如月編~

2016/05/08 14:35

私が彼の携帯にメールを送ってから、10分ほど経って返事が来た。

##IMGU64##(メール)
《会って話したい相談って何だろう?いい話だといいなあ~
じゃあ、明日のお昼にいつものカフェで!
今から藤守さんと一課の張り込み応援。夜食は肉まん!です!》

##IMGLU83##
(これから張り込みなんだ…明日は午後から出勤とはいえ、大変だなあ)

***

翌日昼、如月さんは私より少し遅れてお店に入ってきた。

「あれ、待たせちゃった?」

「いえ、ジャストですよ。私が早かったんです」

如月さんが席につくと同時に、マスターがおしぼりとお水を出してくれた。

「うわ、まずい。今、思わず、おしぼりで顔をふこうとしちゃったよ!これ、オヤジ化現象だ!」

私とマスターは噴き出してしまった。

「ヤバいよねー。この前なんか、俺、立ち上がるときに『よっこいしょー』なんて言ったんだよ。最近、オッサンたちに囲まれてるから移ったのかなあ?…あ、翼ちゃん、何食べる?俺ねー、ハンバーグAセット」

「私はシチューセットで。如月さん、いつもハンバーグなんですね」

「好きだから」

マスターは頷いて、注文をレシートに書き込む。

「いつも来てくれてありがとう。お二人は大学生?この近くなら、S大かな?」

「ははは。一応、社会人なんですけどね」

「へえ。近くの会社?」

「うん。人材派遣の会社」

マスターがキッチンへ戻って行ってから、私が小声で如月さんの嘘を諌めると、彼は笑った。

「まんざら嘘でもないでしょ?事件が起きればすぐに派遣されるんだから」

…確かに。

それに、わざわざ警察官だと名乗る事もない。

「それより、メールに書いてあった話って何?重たい話?」

「全然…。明け方まで働いていた人に、申し訳ないような話なの」

「へーえ」

如月さんはちょっと意地悪視線になって、私を見つめた。

「どこかの男に、食事にでも誘われた?」

忘れてたけど、彼は少しだけ、嫉妬深いところがあるんだった。

「違いますよ、GWに、夜だけでもどこかへお出かけ出来ないかと思って!」

私が思い切って言うと、彼は笑った。

「何だ、そんなこと?…わかった!さては友達に、GWは彼氏と温泉行くの~かなんか自慢されて、刺激されちゃったんだね?!」

何なのこの人のカンの良さ…図星すぎて怖い。

「それで悩んでたなんて、可愛いな。いいよ。交通指導をチャッチャッと終わらせて、夜は楽しいデートをしましょう」

私はホッとして微笑んだ。

「翼ちゃんは、もっともっと俺に甘えていいんだよ。どこに行こうか?千葉のネズミがいる海辺に行きたいけど、絶対激しく混んでるよねー」

如月さんはため息をついた。

「どうせなら、泊まりがいいし」

「でも、次の日も交通指導だから、泊まりなんて無理ですよ」

「都内なら大丈夫。俺も翼ちゃんも警察寮暮らしだから、たまには、お泊りデートで時間を気にせず、ゆっくり遊ぼう」

「ゆっくり遊べて泊まれる場所…」

「たとえば、巨大健康ランドが併設されたホテルはどう?男女で入れる低温サウナがある、天然温泉」

「えっ、東京に天然温泉があるんですか?」

「うん。だから、ちゃんと泊まれる準備してきてね」

「はい!」

私は笑顔で答えた。

そして、GW。

私は、北区の男子校で無免許バイクの危険性を指導する藤守さんのお手伝いをする事になった。

(それにしても、ガラが悪い…)

校舎は落書きだらけだし、制服は改造してるし、髪型も明らかに違反だし…。

「ちょっと、いーっすか?」

実演が終わると、ヤンキー漫画の不良のような生徒が数名、藤守さんに近付いて来た。

「櫻井、お前は、先生方のいるテントの方に行っとけ」

「でも」

「ええから」

私は肩を押されるようにして、藤守さんと男子生徒たちから離れた。

生徒たちは藤守さんを囲む。

「何や?」

「つーか、バイク超うまくねぇーすか?」

「は?」

「俺ら、二輪のドリフトなんて初めて見たっす」

「どうやってんすか?」

「あれは危険運転の見本や。出来んでええねん」

「じゃあ、ウィリーのコツ教えてくださいよ」

「アブナイからアカン言うてるやろ!」

「おまわりさん、メルアド聞いてもいいすか」

「今度、警視庁まで会いに行ってもいいすか」

「お前らええかげんにせえ!」

私は藤守さんを横目に、後片付けを手早く終わらせた。

「じゃあ、藤守さん。私はこれを交通警察に返却して、もう上がりますね。お疲れ様でした~」

(早くしないと、如月さんとの待ち合わせに遅れちゃう……)

「おい!櫻井!無視すんなや!お前、なんで小走りやねん!」

私は背後で男子生徒に囲まれている藤守さんを振り返ることなく、段ボールを抱えて、車に向かった。

(藤守さん、あなたは男性にはとってもモテると思います……)

***

途中で地下鉄が20分近く止まってしまい、完全に遅刻して待ち合わせ場所へ向かうと、如月さんの前に、高校生くらいの女の子が二人立っていた。

彼女来ないじゃん、とか、カラオケ、なんて単語が聞こえてきて、私はびっくりした。

(もしかして、逆ナン!?)

「あの」

私が声をかけると、如月さんは彼女たちに「じゃあね、彼女来たから」と手を振り、「大丈夫。オレ、絶対、浮気なんかしないよ」と私の手を握ってくれた。

それから私たちは、目的のスパ施設で、低温サウナに5つ入り、館内にあるレストランで湯上りのビールを飲みながら御飯を食べて、ラウンジでテレビを見て、さらにもう一度お風呂に入って…、

併設されているホテルの部屋に入ったのは、夜中だった。

「ああ、楽しかったー!」

私はそのままベッドに倒れこんだ。

「ストーップ」

如月さんが私の上に乗りかかってきた。

「…何ですか?」

「まさか、もう寝よう!とか思ってないよね?」

「え、違うんですか?」

「大事な遊びが残ってるでしょ?たまにしか一緒に泊まれないんだから!」

「えっ?」

彼は私の靴を脱がせ、自分の上着とシャツも脱いだ。

「ここまで終わらせないと、友達に温泉に行ったとは言えないんだよ?知ってた?」

「ええええ!?」

「というわけで、ちょっと軽く、浴衣とか着てみよう!」

「浴衣?わざわざ?」

「わざわざ!」

如月さんはクローゼットから浴衣を出してきた。

「さっさと着替えないと、帯で手足縛っちゃうぞ?まあ、オレはそれでも楽しいんだけど」

「す、すぐ着替えます!」

睡魔もふっとんで、私はすぐに浴衣をつかんだ。


~終わり~
追記
名前:ジュン
本文:
こんにちは。

翼ちゃん、賢史くんは男の人にもモテるけど女の人にもモテるんだよ!たぶん……

一緒には入れる低温サウナいいですね。

でも、いくつも入ってるとバテちゃうかも(笑)

わざわざ浴衣に着替えさせるなんてこーちゃんはやっぱり小悪魔ですね。

名前:エミ
本文:
オトーサンやオニイサン方がおしぼりで顔拭いてるのを見ると、気持ちよさそうで羨ましいです(笑)

立ったり座ったりする時の「よっこいしょーいち」は当たり前のように発してるわ…orz

名前:冬子
本文:
こーちゃん!

お誕生日にこれなくってほんっとごめんなさい!

反省っ

でも冬子の脳内ではきゃっきゃうふふの楽しいお誕生日が繰り広げられたからそれで許してくだされー


公式番外編嬉しいです。

小春さんに楽しみにしてますって伝えてね。



こーちゃんがカンが鋭いのは女の子に変身したりするから、女心がわかってるのではないかと思うんだけど、どうでしょう。

女子高生にナンパされちゃうなんて、こーちゃんはやっぱりカッコいいんだね☆

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