『非公式Twitter』

番外編『GW秘密のデート』より~藤守編~

2016/05/10 14:31

藤守さんにメールを送ったけど、とうとうその日は返信がなかった。

連絡があったのは、翌朝。

##IMGU62##(メール)
『ごめん。朝まで張り込みで、午後からは横浜出張。話なら夜、俺の家で待ってて』

予定表を見ると、藤守さんは三日間、一課に貸し出されていた。

##IMGLU83##
(夜勤明けで、今は仮眠中かな。出張前に会えたらいいな)

すると、運良くお昼頃、一課の若い刑事たちと外食に向かう藤守さんを見掛けた。

彼は私に気付くと声を掛けてくれたものの、今夜会う事を確かめただけで忙しそうに、また、男同士で楽しそうに、行ってしまった。

(同性から好かれるのは、藤守さんの人柄がいいからだよね)

私は自分に言い聞かせて、仕事に戻った。

**

藤守さんが帰宅したのは、夜の9時過ぎだった。

「お帰りなさい。カレー、食べる?」

「食べる食べる!お前のカレー、俺、大好きや!」

後ろからぎゅっと抱きしめてくる腕が温かい。

「どうぞ、フジケンさん」

「フジケン言うなや。『賢史くん』言うて」

昼間聞いたあだ名で呼ぶと、藤守さんは嫌そうに顔をしかめてから、笑った。

「それで、俺に話って何?」

藤守さんはカレーを食べながら、私に聞いた。

「えっと、改まってするような話でもないけど」

私はサラダを置きながら口ごもった。

「GWにデートしませんか?二人とも仕事だし、夜だけで、いいの」

「別にええけど、なんでまたGW?」

「それは、その…」

(友達に自慢されて刺激されました、なんて言えない…)

「ま、ええわ。どっか行こうや」

「はい!」

私は大きく頷いた。

**

そして、GW。

私と小笠原さんは、大田区の某女子高に交通指導に来たのだけど…

「小笠原さん!開けてください!」

私は、車の中でノートパソコンを打ち続けている小笠原さんに声をかけ続ていた。

「うるさい」

「もう交通指導、終わりましたよ?結局、私が一人で全部やっちゃったじゃないですか~」

「ああ、終わったの?それなら、後片付けくらいは手伝ってやってもいい」

小笠原さんが車から出てくると、ケータイを構えた女子高生たちがワッと出てきた。

「ほら、やっぱ居たじゃん!メガネ男子!」

「つーか、けっこう可愛くない?」

「……」

小笠原さんは静かにそのまま車に戻り、ドアをしめると、今度こそ出てきてくれそうになかった。

しかも、ドアロックまでしてしまったので、私は仕方なく、車の外から小笠原さんの携帯に電話をかけるしかない。

「何か用?」

「備品を交通警察に返却しないといけないんですよ。お願いですから開けてください」

「じゃあ、トランク開ける」

どうしても車から降りないつもりみたい…

諦めて、私は一人で備品を回収し、車のトランクに入れた。

そして、再度、小笠原さんの携帯電話にかける。

「終わった?そう。じゃあ、備品は俺が返却するから、君は直帰すれば?」

小笠原さんは電話を切ると、彼を写真におさめようと周囲を固めていた女子高生たちを蹴散らすようにクラクションを鳴らし、車を発進させた。

…小笠原さんて、女性に可愛がられるタイプなんじゃないのかな。

それが本人の幸福か不幸かは別にして。

交通指導の後、私はロッカールームで制服から白いレースのワンピースに着替えた。

靴も女の子らしいサンダルに履き替え、髪も即席で巻いてみる。

(藤守さん、こういう、女の子っぽい方が好きだもんね)

ウキウキとして待ち合わせ場所へ向かうと、そこにはもう先に彼が来ていた。

「ごめんなさい!お待たせしちゃって…」

私が走って近付くと、藤守さんは一瞬、ぽかんとした顔になった。

「お前…」

藤守さんが私を上から下まで何度も見て、それからため息をついた。

「妖精か?」

「えっ?」

「めっちゃ可愛い」

藤守さんは赤くなって自分の顔を手で覆った。

「めちゃめちゃタイプや。こんな可愛い妖精さんと付き合えるなんて、俺は果報者や」

お、大袈裟な…でも、彼がすごく喜んでくれたのは嬉しい。

「東京湾が見えるホテルのレストランで食事しようや。ちょっと頑張ってんで」

「わあ。楽しみです」

「それで、なあ。先に、ちょっと時計を外してくれへん?携帯電話も」

私は何の疑いもなく、藤守さんにそれらを渡した。

「はい」

「ありがとう。せっかく、ちょっとリッチなところでお食事するから、時間とか仕事とか、忘れて欲しいねん」

「そっか」

「無条件に信頼してくれて…お前、ホンマにかわいらしいなあ」

藤守さんは私の頭を撫でた。


レストランからの夜景は綺麗で、お料理もとても美味しくて、藤守さんの演出のおかげもあって、私は時間を忘れて楽しんだ。

ふと、周囲を見ると、お客さんたちが次々と席を立って帰っていくのが見えた。

「もうお店が終わりみたいですね。今、何時だろう」

藤守さんが私に時計と携帯電話を返してくれる。

「え!?やだ!もうすぐ11時?!門限が……!」

「寮監に電話し。今夜は事件が起きたので、帰寮できませんって」

「えっ?帰れない、って…?」

藤守さんが、胸ポケットからカードキーを出した。

「ベタでごめんなさい。お嬢さん、部屋をとってあるから」

「えーっ……」

私は赤くなって俯いた。

「こうでもしないと泊まってくれないかな、と思って。電話も時計も取り上げてごめん、やで」

藤守さんが舌を出した。

「そんなこと、ないよ。ちゃんと言ってくれたら、私、帰らないよ」

「ウン」

藤守さんは私の手をそっと握った。

「今日はずっと一緒にいよ?最近、ずっと寂しい思いさせて、ごめんな」

「うん」

私、どうして不安になったり、イライラしたりする必要があったんだろう。

この人はいつも私のことを一番大切にしてくれるのに。

ただ信じていればいいだけなのに。

私はうっとりするような幸福な気分で藤守さんの手を握り返した。

友達に自慢できる、素敵な彼氏。

(いつも忙しいのに、今日はこんなに素敵なデートを頑張って企画してくれてありがとう)

私が心の中でそう呟いたとき。

「翼。ひさしぶりやから、俺、めっちゃサービスするで?」

「…それは結構です」

「なんでなんで?なんでそんなこと言うん?遠慮せんと、何でもリクエストしてな。今夜はホンマに何回戦でも頑張るで?」

……私の彼氏はとっても素敵だけど、必ずオチも忘れないヒトです。


~終わり~
追記
名前:エミ
本文:
頑なな小笠原さん…(苦笑)

話題の漫画『坂●ですが?』が4月からアニメ化されてまして、主人公の見た目が小笠原さんっぽいんですよ。もしも小笠原さんが同じ事したら…と想像すると可笑しくてたまりません。←これも一種のアブ恋病(笑)


翼ちゃん、少なくとも三回戦は覚悟した方がいいかもね。がんばって♪

名前:ジュン
本文:
こんばんは。

小笠原さんは意地でも出てきませんね。

「坂〇ですが?」は確かに少し小笠原さんに似てるかな?

でも、小笠原さんがあんなことしたら笑っちゃうわ。

賢史くんはいつも大切にしてくれるんですよね(^_^)

ベタなことも賢史くんなら許せちゃう。

けど、何回戦でもって……あいかわらずケダモノね(〃∇〃)

名前:冬子
本文:
小笠原さんに近づくときは、決して大人数ではなく、そうっと静かに近づいて、優しく声をかけましょう。

って、ふれあい動物園のうさぎか何かみたいですが。

えー、小笠原さんに似てるアニメがあるのですか。

メモしておかなくちゃ……



それにしても、藤守さんとおつきあいするのは大変ですね。

冬子、体力つけとかないとっ

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