『非公式Twitter』

番外編『GW秘密のデート』より~小野瀬編~

2016/05/12 14:26

私が小野瀬さんの携帯にメールを送ってから2時間ほど経って、私が部屋で寛いでいると、彼からの着信音に設定してある『ジュ・トゥ・ヴー』が鳴った。

##IMGU65##(電話)
『もう寝てた?』

##IMGLU83##
「大丈夫です。まだお仕事ですか?」

『もう終わるよ。今から、寮に迎えに行っていいかな?』

思いがけない提案に、私は喜んで頷いた。

ところが、電話を切って、急いでお泊りの支度を始めた途端に再び『ジュ・トゥ・ヴー』が流れ、耳に当てた受話器から、小野瀬さんの声が謝ってきた。

『ごめん。緊急出動になっちゃった』

ファンデまで塗りかけていた私はすごくがっかりしたけれど、仕事なら仕方がない。

『本当にごめんね…でも、俺のほうががっかりだ』

小野瀬さんの本当に辛そうな溜め息とともに、電話は切れた。

(それにしても小野瀬さん、体は大丈夫なのかしら。GWどころじゃないような気がする…)

***

翌日のお昼休み、私は差し入れを持って、鑑識室を訪れた。

迎えてくれた作業中の人たちの、あまりの顔色の悪さにびっくりする。

「大丈夫です…ちょっと40時間くらい寝てないだけですよ」

「いつもの事です」

本当に大丈夫かなこの人たち。

「御大なら、衝立の向こうのソファーで仮眠中ですよ」

「お邪魔します…」

衝立からそっと覗くと、ソファの上に小野瀬さん、そして、その下の床に段ボールを敷いて、太田さんと細野さんが寝ていた。

その様子を見たら起こすのはしのびなくて、差し入れのサンドイッチだけ置いて帰ろうと思った時。

アラームが鳴って、床に寝ていた二人が先に飛び起き、私に気付いた。

「御大、櫻井さんですよ!」

二人に揺り動かされて、小野瀬さんがゆっくりと目を開き、私に微笑みかけた。

「おはよう。起きてすぐに君の顔が見られるなんて、俺は幸せだな」

…寝起きなのにこの神対応、さすが小野瀬さん…。

彼が手を軽く振ると、鑑識の人たちは全員、ススーッと外に出て行った。

「23時間ぶりの食事」と言いながら、私の手作りしたサンドイッチを摘まむ小野瀬さんを見ていると、本気で心配になってくる。

「昨日会えたら話すつもりだったんだけど、君、GWの交通指導の日、仕事を早めに切り上げられない?夜だけでもデートしよう」

「実は私も、同じ事を相談したくてメールしたんです」

「それは嬉しいな。じゃあ、どこにする?君が行きたがっていた夢の国へ行ってもいいよ。夜だけのイベントがあるんだろう?」

「でも、小野瀬さん」

私は居住まいを正した。

「ん?なぁに?」

「お誘いは嬉しいですけど、小野瀬さんはもっと体を休めたほうがいいと思います」

小野瀬さんは苦笑した。

「俺、そんなに疲れているように見えるかな」

「いくら体力があっても、このままじゃ倒れちゃいます。その日は私が栄養のあるものを作りますから…」

私が自分の考えを話す間、小野瀬さんはなぜか、笑いをこらえるような顔をして聞いていた。

「…だから、よーく寝て、よーく休んで下さい」

「はいはい」

「本当に分かってくれました?」

「もちろん。姫の仰せのままに」

小野瀬さんは私の手をとって、甲に軽くキスをした。

「おや顔が赤いよ。ルイパパにバレないように、冷ましてから帰ってね?」

そして、GW。私は如月さんと、新宿の二丁目に交通指導に来ていた。

(何だか、変な雰囲気…)

繁華街なのに、なぜか参加者が全員男性。

しかも、説明しているのは私なのに、彼らの視線はなぜか如月さんに集中している。

内心首を傾げながらも交通指導を終えると、如月さんが駆け寄ってきた。

「翼ちゃん、早く逃げよう」

「え?でも…」

半分くらいの男性がまだ帰ろうとせず、チラチラと如月さんを見ている。

「如月さんに質問があるんじゃないですか?」

如月さんが青くなった。

「翼ちゃん、もしかして、新宿二丁目がゲイの町だって知らないの?!」

如月さんが小声で叫んだのをきっかけに、がっちりした体つきをした背の高い男性が数人、ゾロゾロと如月さんを取り囲んだ。

「質問いいですかー?」

「警察官って、いいですよねー」

如月さんはひきつった笑いを浮かべて、首を横に振った。

「いいえ全然よくないです!」

後退りする如月さんを、男性たちが追い詰めて行く。

私は無視されているのを幸い、さっさと後片付けをして段ボール箱を抱えた。

(早くしないと小野瀬さんの家に行くのが遅くなっちゃう…)

「翼ちゃん!待って!見捨てないで!」

一度だけ振り返ったけど、如月さんの小柄な身体は、筋骨たくましい男性たちに囲まれて、もうほとんど見えなかった。

***

「すみません、遅くなっちゃって…」

「平気。さっき起きて、洗濯して、掃除して、風呂に入ったところだったから」

玄関で小野瀬さんが優しく出迎えてくれる。

そして、私が持っていたスーパーの袋を受け取りながら、私の頭を引き寄せて、チュッと唇に軽いキスをした。

フワッと漂うシャンプーの香り。

それだけでたまらなく幸せな気持ちに包まれながら、私は料理にとりかかった。

「いい匂いだね」

リビングから小野瀬さんが私に話しかけてくる。

彼は何度も「手伝おうか」と言ってくれたけど、今日の一番の目的は、彼に休んでもらうこと。

「あと少しですから、ゆっくりしててくださいね」

「久し振りだな。こんな素敵な夕食」

「どうぞ、お口に合うといいけど」

出来た料理からテーブルに並べて置くと、小野瀬さんはきちんと両手を合わせてから、嬉しそうにお箸を伸ばした。

「いただきます。…うん、おいしい」

「良かった」

「デザートは君だよね」

小野瀬さんはにっこりと微笑んだ。

「ええっ…」

「洗い物は俺がするからね」

「いいんですよ、私が洗います」

「じゃあ、あとで君を洗うよ」

「そ、それもいいですから!」

私は無理やり、小野瀬さんをソファに座らせた。

「何だか、寂しいな」

「今日は小野瀬さんを休ませる日なんです」

やがて、洗い物を終えた私がリビングに戻ると、小野瀬さんはソファーでスウスウと寝息を立てていた。

ついたままだったテレビを切ると、小野瀬さんがハッとして頭を起こす。

「いいんですよ、たくさん寝てください」

私がソファに座ると、小野瀬さんが私の膝に頭を乗せてきた。

「じゃあ、ちょっとだけ」

「はい、どうぞ」

(やっぱり、とても疲れが溜まっていたのね…)

無防備に眠る小野瀬さんの顔はいつもより少年っぽく見えて、少し可愛かった。


~終わり~
追記
名前:ジュン
本文:
こんにちは。

うーん、小野瀬さんは相変わらずのハードスケジュールですね。

それなのに神対応、流石です。

膝の上で少し寝たら次は翼ちゃんにサービスしちゃうんでしょうね(笑)

名前:冬子
本文:
まあ、小野瀬さんが軽く手を振ると鑑識の人が出て行っちゃうんですね。

右手なら一時間、左手ならすぐ戻ってきていいとかあるのかしら???


お休みとれたら掃除洗濯って光源氏なのに自分でやるんですね。

きっと手早くすませるんだろうな。

小野瀬さんの体に良いようなご飯なんて私につくれるかしら……



それにしても如月さん、結構大変な交通指導になっちゃいましたね。

如月さんの場合、女装が似合うから人気があるのか、それとも?

うーん、難しくて冬子わかんなーい

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