『非公式Twitter』

番外編から零れたふたり~アニ編~

2016/05/16 14:23

彼の携帯にメールを送った後、寮の部屋に帰宅した私は、着替えるためにカーテンを引こうとして、窓からの夕景を眺めた。

(ずいぶん日が延びたんだなあ。もう6時を過ぎたのに、まだこんなに明るい…)

そんな事を考えた時、ふと、何気無く見下ろした玄関先を、スーツを着た背の高い男性が横切った気がした。

(今の、まさか)

私はそちらに意識を集中し、じっと目を凝らした。

すると、同じ男性が今度は反対側から歩いて来て、すごい速度で寮の前を通り過ぎる。

「慶史さん?!」

私は二度見してから、彼の名を口にした。

間違いない。

窓を開けると、慶史さんはその音に反応したようにこちらを振り返り、私を見上げて右手を挙げた。

##IMGU75##
「おお、なんだ櫻井ではないか。偶然だな!」

##IMGLU83##
「偶然なわけないでしょう!」

私は思わず大声でツッコんでいた。


「いくら優秀な検察官でも、警察の女子寮の前を行ったり来たりしていたら、誰かに通報されちゃいますよ?」

寮の近くにある小さな公園。

慶史さんと私は、並んでベンチに腰掛けていた。

「お前が意味深長なメールをよこすのが悪いのだ」

慶史さんは腕組みをして、隣から私を睨み付ける。

「気持ちが悪くて、明日の昼までなどとても待てん。だから、こうして直に、何の話か聞きに来てやったのではないか」

慶史さんは缶コーヒーを一気に飲み干すと、立ち上がって律儀に空き缶をごみ箱に捨てに行った。

(確かに。彼は生真面目な人だから、単刀直入に用件を伝えた方がよかったかも…)

私は素直に反省し、正直に打ち明ける事にした。

「忙しいのに、余計な手間を取らせてごめんなさい。…実は、女友達から、GWなのに彼氏とデートしないの?って聞かれたんです。それで…」

「…」

ごみ箱の前で、慶史さんの動きが止まっている。

「その、『彼氏』というのは、もしかして俺の事か」

「はい」

「するとつまりお前の用件というのは」

「はい。GWにデートしたいと思って、慶史さんのご都合を聞きたかったんです」

「そ、そうか、俺と…」

慶史さんは一瞬頬を緩めかけたものの、すぐに、ハッとした様子で表情を引き締めた。

「いや、待て落ち着け。これはもしや当日デートのつもりで待ち合わせの場所に行ったら雑用室の連中が勢揃いして待ち受けていてみんなで宴会支払い俺持ちというパターンの悪魔の罠では」

「違いますよ。二人きりです」

「そうか、ふ、二人きりか」

「はい」

そうかそうなのかと自分に言い聞かせるように呟いてから、慶史さんは私に向き直った。

「俺の休みは暦通りだ。お前に合わせるから、好きなように予定を立てろ」

「いいんですか?ありがとうございます!」

嬉しくて、私は思わず立ち上がる。

「私、GWも毎日のように交通指導なんです。だから、夜しか会えないんですけど」

「構わん」

「じゃあ、前に出来なかった、温泉卓球をリクエストしていいですか?」

「もちろんだ。俺としてもぜひリベンジしたい」

「嬉しい!」

慶史さんの胸に飛び込むと、彼はそっと抱き締めてくれた。

「嬉しい、か」

見上げて頷くと、慶史さんが優しく見つめてくれているのと目が合った。

「…うむ。不覚にも、俺も嬉しい」

そして、GW当日。

私は16時ぴったりに交通指導を終え、慶史さんと待ち合わせした日帰り温泉施設に急いでいた。

(楽しみだな)

まだ正式にお付き合いをする前、捜査室メンバーに小野瀬さんと慶史さんを加えた一行で、温泉地に研修旅行に行った事がある。

その旅館には卓球場があり、夕食前に、ダブルスでの山手線卓球対決をすることになった。

ところが、いざ決勝戦、という時。

私とペアを組んでいた慶史さんが、準備運動を始めた直後にアキレス腱を断裂してしまい、急遽病院に運ばれる騒ぎになってしまった。

もちろん、卓球対決はそれでお流れ。

私は運動があまり得意ではないから、正直、卓球が中止になったことよりも、慶史さんの容態の方が心配だった。

でも、慶史さんは、卓球が出来なかった事を入院先でも私に謝ってくれ、ずっと気にしてくれていたのだ。

だから、私は今日、改めて慶史さんと卓球が出来る事が、とても楽しみだった。

(今はあの頃より、もっと仲良くなれているはずだし)

GWの混雑を予想して、食事処も卓球台も個室の休憩室も予約した。

明日も仕事だからお泊まりは出来ないけど、施設の営業時間は深夜2時までだから、充分一緒にいられる。

着いたらすぐに温泉に入ろう。

出たら浴衣に着替えて、卓球して、ご飯を食べて、もう一度お風呂に入って、それから少しお酒を飲んで、たくさんお話しして…。

もうすぐ慶史さんに会える。

施設が見えてくると、私は自然と笑顔に、そして小走りになっていった。



「いいお湯でしたー」

男女に分かれて大浴場へ入った後、私と慶史さんは浴衣に着替えて、卓球場で落ち合った。

「慶史さん?どうかしましたか?」

「い、いや。その…浴衣姿、いいな」

慶史さんに褒められて、嬉しさと恥ずかしさが込み上げてくる。

見つめあう顔が二人とも赤いのは、きっと湯上がりのせいだけじゃない。

「と、ところでお前、下着はちゃんと着ているのだろうな?卓球に熱中するあまり浴衣の前がはだけ、ほんのりピンクに染まった肌や谷間がうっかり見えてしまってああ何て事だ、お前はブラを着けていないのか?!みみみたいなハプニングが起きてしまったりなんかする事はないのだろうな?!」

「はい。Tシャツ着てきましたから、大丈夫です」

「そ、そうか…」

慶史さんが、ホッとしたような、残念なような顔をした、その時。

「お待たせ」

「さ、やろうか」

「えっ?!」

忽然と卓球場に現れたのは、浴衣姿の小笠原さんと小野瀬さん。

「では、審判は不肖この俺が」

「アニキ、ファイトやで!」

それに、明智さんと藤守さんも。

「ようやく因縁の決勝戦が実現しますね、解説の穂積さん!」

「はい。頭脳戦での男性三人の実力は拮抗していますから、やはり卓球での勝負でしょうか。櫻井選手の存在がポイントになりそうですねー」

如月さんと室長までいつの間に。

どうやら私と慶史さんは、ご機嫌過ぎて彼らの尾行に気付かなかったらしい。

恥ずかしい。

でも負けたら絶対、夜通し恋バナを暴露させられる羽目になる。

そうなったらさらに恥ずかしい。

「倒せばいいのだろう!行くぞ、櫻井!」

「はい!」

私はラケットを握り締める慶史さんに腕を引かれて、山手線卓球無敵の二人組が待つ卓球台に向かうのだった…


~終わり~
追記
名前:ジュン
本文:
こんばんは。

慶史さん、不審者ですね~(笑)

翼ちゃんが気づかなかったらどうするつもりだったんだろう?

しかし、ちゃっかり尾行してくる捜査室のメンバーにはやられましたね。

ふたりきりではなかったけど、楽しい卓球になった……のかな?

名前:エミ
本文:
アニ、相変わらずおもしろいなぁ。

尾行されちゃうところがアニ&翼ちゃんらしくて笑える。

アニの予感(?)通り、メンバー勢揃いだったけど、やっぱり温泉卓球するならみんなでやった方が楽しいですよね♪

如月さんが凹み、小笠原さんが勝ち誇り、小野瀬さんの冷静なツッコミが入る……って展開が目に浮かぶわ(笑)←某CD

あ、でも今回の場合はアニへ総攻撃になるのかな?
双方がんばって~!

名前:冬子
本文:
やっぱり皆現れたーっ

アニさん、愛されてますね♪


冬子、卓球で勝負なんて絶対無理なので、室長と一緒に実況席に座りたいでーす。

こーちゃんと室長に挟まれて、本日のゲスト、冬子さんとして頑張って実況します。

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