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ボツネタ☆夏の落とし穴

2016/07/16 10:54

 伊豆半島、下田。

 捜査室メンバー全員と、小野瀬さんまで総動員して行われた、二泊三日の警視庁夏合宿。

 動体視力の検査やランニングに始まり、データ分析、射撃訓練、柔道や剣道の稽古まで、二日間みっちりと研修をさせられた私たちに、最終日に与えられた課題は、なんと、海での自由時間だった。

穂積
「帰るまで、好きに過ごしていていいわ」

 砂浜にスーツで現れた泪さんから告げられた次の瞬間、如月さん、藤守さん、明智さんはたちまち水着になって海に飛び込み、小野瀬さんと小笠原さんは日陰に行って寝転がった。

 解散後、とりあえず日陰組に参加した私は、ニコニコしながら皆の様子を見守っている泪さんの動きを、目で追っていた。

 炎天下の砂浜なのに、泪さんはいつもの紺の三つ揃いだ。

 ご丁寧にネクタイを締め、きちんと革靴まで履いている。

 さっき藤守さんは『室長、どっちを着ればいいか分からなかったんちゃうか?海パンか、ビキニか…』なんて言ってたけど、まさかね。

小笠原
「あの人暑くないのかな」

 小笠原さんも上着を羽織っているけど、それは涼しげな生地のパーカーで、その下のシャツやパンツも、砂浜にいて違和感の無いものだ。

小野瀬
「さあ、何か事情があるんじゃない?……ねえ、櫻井さん」

 小笠原さんと似た爽やかな服装の小野瀬さんの言葉の後半は、私にだけ聞こえるように、耳元に囁かれた。

小野瀬
「もしかして、ゆうべの痕跡が背中に残ってる、とか……?」

(うっ)

 実は、昨日私は泪さんに誘われて合宿を抜け出し、レンタルのキャンピングカーの中で、二人きりの一夜を過ごしていた。

 秘密のはずの逢瀬を小野瀬にさんに見透かされたようで、その場に居たたまれなくなるほど恥ずかしい。


(…心当たりがあるだけに…)

 私は無意識のうちに自分の爪を見つめ、赤面してしまう。

小野瀬
「なーんてね」

 小野瀬さんが、今度は小笠原さんにも聞こえるように、声に出した。

小野瀬
「穂積は室長で、管理職の一人だからね。合宿の最後には、反省会議が付き物だっていうだけさ」

 小野瀬さんの言葉を裏付けるように、やがて、泪さんは、波打ち際の三人に声をかけ、日陰の私たち三人に向かって手を振ると、砂浜を後にしてしまった。



 泪さんが去ってしばらくすると、メンバーは誰から声をかけるともなく、三々五々、小野瀬の元に集まってきた。

藤守
「…せっかくの自由時間ですけど、室長がおらんと、何や、寂しいですわ」

明智
「そうだな。なんというか、盛り上がらない」

如月
「小野瀬さん、鬼の居ぬ間に、何かする事無いですか」

小笠原
「…」

小野瀬
「やれやれ。きみたちは、俺を何だと思っているのかな」

 水着の三人と、隣に座る小笠原さんからの視線に迫られて、小野瀬さんは整った顔をしかめてみせた。

 とはいえ、青空の下では、その表情もすぐに、いつもの微笑を湛えたものに戻る。

小野瀬
「そうだねえ……。穂積にイタズラを仕掛けたいなら、単純だけど、落とし穴でも掘ったらどう?」

 小野瀬さんは砂浜を見て今思い付いた事をそのまま言ったのだと思ったけれど、聞いた方のメンバーは、意外にも真顔で受け止めていた。


***

明智
「落とし穴って、小学生ですか」

如月
「でも面白いかもしれませんよ」

藤守
「せっかく砂浜なんやしな」

小笠原
「室長は身長185cmだよ。掘るなら相当深く掘らないと」


「小笠原さんがまさかの乗り気ですね」

 広い砂浜には私たちの他に誰もいないというのに、だんだんと声を潜めて額を寄せあう六人の姿は、端から見たらかなりアブナイ気がする。

小野瀬
「よし、やろう」

 話がまとまると、男性陣は一斉に四方に散った。

 そして再び集結した時、彼らの手にはそれぞれ、スコップやら一輪車やら竹箒といった、落とし穴七つ道具が握られていたのであった…。



小笠原
「場所はこの辺りがいいと思う」

 小笠原さんが、竹箒の柄で、砂浜に綺麗に大きな円を書く。

明智
「反撃を考えると、深さ5メートルは欲しいが」

 泪さんを落とす事に最後まで渋っていた明智さんが、腹を括ったのか、狙撃手の顔になって言う。

 一同、一度はその案に頷いたものの、反撃について改めて考えた結果、むしろ浅い方がいいのでは?という事になった。

 泪さんを本気で怒らせたらただではすまない事を、私たちは全員が身に沁みて知っている。

 深さは当初の計画の半分、落ちた泪さんが自力で出られない事もない深さだという2.5メートル程度に落ち着いた。


「でも大丈夫ですか?本当に、怪我したりしないですか?」

 私は見張りの合間に、何度も作業を確かめる。

如月
「翼ちゃん、心配しないで。穴の底にはエアーマットを敷いておくから」

小笠原
「念の為に2枚ね」

小野瀬
「救急箱も準備したし」

明智
「出来上がったら、試しに藤守を落としてみるしな」

藤守
「俺?!」

 男性五人が砂を掘るのだから作業はサクサクと進み、あっという間に、全員の頭が隠れるほどの穴が完成した。

 藤守さんで安全を確認(ごめんなさい)した後、穴の上をレジャーシートで塞ぎ、砂で覆って穴の存在を隠す。

如月
「ところで、どうやって、落とすんですか?」

明智
「実はそれが一番の難問だ」

小笠原
「あの人鋭いからね」

藤守
「向こうの建物の方から来るんやから、穴のこっち側から呼ぶしかないな」

小野瀬
「櫻井さんに、水着で手招きしてもらう?」

明智
「いいかもしれない」


「嫌ですよ!」

 これは悪戯の片棒を担ぐのが嫌なのではなく、…もしも、水着になった時、私の身体にも、その…、小野瀬さんがいうところの「昨夜の痕跡」が残っていたらと思うと。


「恥ずかしくて、死んじゃう…」

明智
「大袈裟だな」

小野瀬
「まあまあ、女の子に無理強いはいけない」

 小野瀬さんが助け船を出してくれて、ホッと安堵するやら恥ずかしいやら。

小野瀬
「色気が駄目なら、食い気だね」

 小野瀬さんの一言で、再び、全員は一斉に四方に散った。


***


穂積
「あら、いい匂いがすると思ったら、バーベキュー始めたの?」

 薄い雲を透かして、太陽が天頂に昇った頃、泪さんが戻って来た。

藤守
「あ、室長!」

如月
「お疲れ様でーす!」

小笠原
「もうじき焼けるよ」

 会議は終わったはずなのにまだスーツなのは、そろそろ帰京の時間が近いからなのだろう。

 私たちは遊んでいたのに、なんだか可哀想……。

 すると、笑顔を浮かべてこちらへ近付きかけていた泪さんの足が、何でもない所で、ふ、と止まった。

明智
「室長、こちらへどうぞ」

 すかさず、明智さんが誘い文句を口にする。

 彼は泪さんに信頼されているから、この役は重要だ。

 ただ、残念ながら大根役者なので、セリフはこれだけだけれども。

穂積
「ありがとう」

 泪さんは再び歩き出して、







 落ちた。



****


室長が落ちたところで、はい、ここまで。

一応このあとエンドマークまで書いたのですが、結局ボツにしました。

皆様ならどう展開させますか?

よろしければ、考えてみてくださいね♪(ゝω・´★)
追記
名前:ジュン
本文:
こんにちは。

せっかくのお話なのにボツなんですか?

もったいない……

私なら落とし穴に落ちたまま上がってこない室長を皆が心配して穴を覗き込む。

そこを室長に足を捕まれて全員穴に落ちるくらいしか思い付かないですね。

でも、室長はわかっててわざと落ちた気もするし……

うーん(-_-;)

難しいですorz

名前:冬子
本文:
わかってて落ちてますね、あの人はそういう人ですよ。


うーん、今後の展開ですか?

なぜか小野瀬さんが、責任者扱いで散々おごらされて、大変な目にあう……

または

落ちたショックで頭打って女の人になっちゃった!とか(頭の中身だけ)

あら、ヤダーを本気で言ってるとか、綺麗好きになっちゃったとか。

毎日女性誌みてるとか、お風呂入って自分をみてギャーッ何これ!とか(大笑)

これは本気でやってるのか?穂積の演技なのか?

とか、あとは……

ファンタジー系とか?その場からパッと消えて、海の王子とかになって出てくる

なーんて

くだらないことしか出てこないですね。

しかし、穴掘ってバーベキューして皆大汗かいてしまいましたね。

おがさーらさんまで参加してるところが面白いかな~

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