『非公式Twitter』

ボツネタ穂積☆後半

2016/07/18 10:52
~穂積vision~


 俺とした事が。


 一瞬、何が起きたのか分からなかった。

 落とし穴。

 予感はした。

 あいつらの態度で気付いた、とかではない。

 条件反射で、砂浜から連想される無意識の経験則で、あるいは、全くのインスピレーションで。

 とにかく、俺の身体が反応し、脳に「落ちる」と信号を送ってきた。

 それなのに、落ちた。

 何故、一旦止まった足をまた自ら踏み出したのか、理解できなかった。

 だから俺は穴の底で仰向けに倒れたまま、しばらく呆然としていた。



藤守
「室長!」

 藤守の声で、現実が戻って来た。

 ぼんやりと見上げていた穴の出口には、青空が広がっている。

 その空を背に、逆光になった藤守の顔が穴の中を覗き込んできた。

藤藤守
「室長、大丈夫ですか?!」

明智
「室長すみません!お怪我は?!」

 明智に言われて、自分の身体を確かめる。

 どこも痛くない、手足の指も動く。

 同時に、身体の下に、不思議な感触があるのに気付いた。

 エアーマットが敷いてある。……しかも、二重に。

小野瀬
「しかし見事に落ちたねえ」

小笠原
「予想外」

 丸い穴の縁に沿って、全員の顔が次々と現れた。


「室長!本当に、お怪我はないですか?!」

 青ざめた翼の高い声が、俺を覚醒させた。

穂積
「……ええ。大丈夫よ。でも、驚いたわ」

 俺が答えると、ようやく、穴の外でどっと笑う声が聞こえた。

如月
「大成功!」

 明るく笑う如月に続いて明智が、藤守が、身を乗り出すようにしてこちらに手を伸ばしてくれる。

 逆光になったいくつもの笑顔と、差し伸べられた何本もの腕。

 穴の底からそれらを見上げて、不意に、胸を衝かれた。

 ああ。

 ……この、感情は。

 ぐっと堪えて、身体を起こした。

 せっかくだから、明智と如月の手を借りて穴から出る。

 翼が、怪我が無いかと何度も確かめながら、スーツに付いた砂を払ってくれた。

穂積
「……」


「え?」

 翼が驚いた顔を上げたので、俺はハッとした。

穂積
「何でもない」

 目を逸らしたところにちょうど小野瀬が立っていたので照れ隠しに捕まえて、穴の縁に立たせて背中を押した。



~翼vision~


小野瀬
「穂積、さっき、何て言ったの?」

 穴から救出され、烏龍茶を手にした小野瀬さんが、私にそっと近付いて、そう、訊いてきた。


「え?」

小野瀬
「穴から、出た時」

 背後では藤守さんと如月さんが泪さんを相手に、バーベキューと言う名の焼き肉争奪戦を展開している。

 明智さんと小笠原さんは、「俺の肉!」「下剋上!」なんていう低レベルな戦いを呆れ顔で眺めながらも、楽しそう。


「……こんな優しい落とし穴に落とされたのは初めてだ、って」

小野瀬
「うん?」


「俺とした事が油断した、って」

 私は小野瀬さんに微笑みながら、胸の奥で、あのときの泪さんの言葉と、はにかむような笑顔とを思い出していた。



  「でも、それは、助けてくれると分かってたからなんだな」




***

おしまい。
追記
名前:小春
本文:
以上、ボツネタの後半でした。

あまり書き込むと、室長の幼少期に絡む暗い話になってしまうし、そこを書かないとただ落ちただけの話になってしまう。

あまり深みが出なかったのでボツにしましたが、ジュンさん、冬子さん、続きを考えてくださってありがとうございました。

お二人の展開も面白いですね。
室長アリジゴク(笑)

楽しいアイディアありがとうございました。

またよろしくお願いします。←オイ

名前:ジュン
本文:
わーい\(^-^)/後半だ~。

小春さん、ありがとうございます。

いいですね。

「優しい落とし穴」

皆の心配顔や笑顔や伸ばしてくれる手に室長も思うところがあったんでしょうね。

仲間っていうか帰ってくる場所っていうか。

室長は幸せ者ですね(^-^)

勝手な解釈をしてしまってごめんなさい(笑)

名前:冬子
本文:
後半があった!

室長ったらやっぱり小野瀬さんを落としているー



そうかー、落とし穴には暗い思い出があるのですね。

では、触れないでおいて上げましょう ←上から目線


小春さん、後半もあげてくださって、ありがとうございました。

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