『非公式Twitter』
番外編『二年目の強化合宿』より~小野瀬編~
2016/09/04 09:12##IMGU65##
「櫻井さん、荷物持とうか?」
与えられた部屋へ向かおうとしたら、小野瀬さんが戻って来て、私のバッグを持ってくれた。
自分だって重そうな荷物を抱えているのに…。
「いいんだよ」
彼は階段を上りながら微笑んで、私の耳元に唇を寄せた。
「少しでも、きみと一緒にいたいからね。今日の訓練の後で会えるの、楽しみにしているよ」
***
そうして初日の訓練が終わると、夕暮れに染まるロビーに小野瀬さんが姿を現した。
広いロビーなのに、二人きり。
みんな疲れて部屋か風呂だよ、と小野瀬さんは笑った。
「どこかの悪魔のおかげで、今回は俺まで講師だ。忙しいのは仕方ないけど、きみと過ごす時間が無いのが寂しいな」
柔らかく微笑んで、小野瀬さんは私の頭を撫でる。
「きみはどう?」
(寂しいけど、これは仕事だから…わがまま言って迷惑かけたくないし…)
「恋人なんだから、素直な言葉を聞きたいな」
小野瀬さんの優しい言葉に、胸の奥が温かいもので満たされた。
「…私も、寂しい」
「同じ気持ちでいてくれて、良かった。それなら、最終日はここに残って、二人でゆっくりしよう」
そんな事が出来るなんて知らなかった私の頬は、小野瀬さんと時間を過ごせる喜びに、自然と緩んでいた。
***
2日目。
##IMGU61##
「今日は、犯人との交渉術についての講義よ」
会議室の正面には、室長が講師として立っていた。
「まず、相手との距離をいかに縮められるか…」
室長の講義内容を、みんな真剣な顔でノートに書き記している。
私も聞き逃しのないよう、ノートにペンを走らせた。
室長は、捜査の過程で相手の懐に入り込む事の必要性を説明している。
ただし、その為の話術については自ら考えるように、と語り、具体的な例を挙げたりはしない。
隣に座っていた男性職員はそれが納得いかない様子で、私に声をかけてきた。
「今の説明、分かった?きみ、よくあんな上司の下で働けるね」
室長の説明は、私には分かりやすいと思えたので、彼の言葉に首を傾げる。
「悪い人じゃないですよ。部下思いの方です」
「とてもそうは思えないけど」
すると、私たちの会話が聞こえたのか、室長がこちらを向いた。
「…どうやら、ワタシの授業は分かり辛いようね。じゃあ、軽く実践といきましょうか」
室長は、私に声を掛けてきた男性職員を指差した。
「アンタ、昨日も櫻井と同じ講義を受けてたわね?」
「え!?どうしてそれを…」
「櫻井の方は、アンタを覚えてなかったみたいだけど」
「え!?」
これは私。
…さすが室長、鋭い。
室長はしばらく男性職員を見つめ、やがて、再びゆっくりと彼に話し掛けた。
「アンタは今いる彼女と、櫻井の間で悩んでる」
「なっ!」
「櫻井の方が好みで…あわよくば告白しようと思っている。そして…」
「ま、ま、待って下さい。わかりました!」
周囲がざわめき、動揺した男性職員が慌てて遮る。
「なぜ、いったい、どうしてそんな事まで?!」
「つまり、多少の嘘でもこうして使いようで相手の心を揺さぶり、付け入る隙を作れるって話」
「…嘘?!」
全員が固まる中、室長はどこか勝ち誇った顔で、胸を張った。
***
3日目の夕方、全ての訓練を終えてロビーに出ると、帰り支度をしている職員たちの中から、一人の男性が近づいてきた。
「昨日はごめんね」
(昨日?ああ!室長の講義を受けてた時、隣にいた人だ)
「その…あれ、冗談だから」
「あれ?」
「いや!覚えてないなら、良いんだ。それより…」
その時、合宿所の奥から現れた小野瀬さんが私を呼んだ。
「ああ、櫻井さんここにいた。手伝って欲しい事があって探してたんだよ…おや、ごめん。先約かな?」
小野瀬さんは私のそばにいた男性をちらりと見た。
「いえ、俺は…」
「そう?じゃあ、悪いね」
小野瀬さんに見つめられた男性が逡巡した隙に、小野瀬さんはもう歩き出していた。
私も急いで後を追う。
着いた所は、小野瀬さんが合宿中に使ってた部屋。
「あの、急ぎの用事は…?」
「嘘だよ。きみを連れ出す為の方便だ」
小野瀬さんは笑みを浮かべ、ベッドの縁へ腰かけた。
「おいで」
隣へ座ると、小野瀬さんは私の身体を優しく抱きしめた。
「さっきの彼、もっときみと話したそうだったな」
ちょっと意地悪く微笑みながら、小野瀬さんは、私をベッドの上に押し倒した。
「講義で隣に座っただけで、彼とは何も…」
「嫉妬なんかしないよ。きみを信じてるからね」
(それは嬉しいような、少し寂しいような…)
小野瀬さんの指が私の身体を撫で、唇が、耳たぶを軽く咥える。
その感触に、全身が震えてしまいそう。
「愛してる。きみの声を聞きたい、きみの身体に触れたい、俺に触れてほしい…いつだってそう思ってる」
「あお、い…」
いつもよりちょっと強引な口付けに、頭がボーッとしてくる。
「こんなワガママな俺でも、きみは愛してくれる?」
「もちろん」
私が笑顔で頷くと、小野瀬さんは安堵の息を吐いて、私を抱き締めた。
***
シャワーを浴び終え、二人でウッドデッキへ出てみると、夜空には満天の星。
「天の川とはいかないけど、これはすごい星の数だね」
小野瀬さんが用意してくれたスイカを食べながら、夏の夜の雰囲気を楽しむ。
「今日ここで星を見れた事、きっと良い思い出になるな」
「うん」
「一緒にスイカを食べた事も、きみが他の男から言い寄られた事も」
「あれ?さっき、その事は気にしないって…」
「あ…いや、これは別に…」
(もしかして、本当は嫉妬してたのかな…?)
ジッと見つめていると、小野瀬さんは少し顔を赤らめて、恥ずかしそうに言った。
「本当は、少し嫉妬した。でも、余裕のない俺なんて、かっこ悪くてきみに見せられないだろう?」
「そんな事ないよ。嫉妬してくれて、嬉しい」
「きみには敵わないな」
頭を撫でていた手が、私の身体を優しく引き寄せた。
「嫉妬したし、心配した。だって、きみに触れて良いのは、俺だけだからね」
「うん」
小野瀬さんの指が頬を撫でる感触に笑みを浮かべながら、私はゆっくりと頷いた。
「じゃあ、今日はたくさん思い出を作ろうか」
「うん」
「いつか、二人で笑いながら語り合えるように、ね」
小野瀬さんと一緒にいられる時間の全てが、私にはかけがえのない思い出になる。
少しだけ背伸びをする私に、小野瀬さんは甘いキスを落としてくれた。
~終わり~
「櫻井さん、荷物持とうか?」
与えられた部屋へ向かおうとしたら、小野瀬さんが戻って来て、私のバッグを持ってくれた。
自分だって重そうな荷物を抱えているのに…。
「いいんだよ」
彼は階段を上りながら微笑んで、私の耳元に唇を寄せた。
「少しでも、きみと一緒にいたいからね。今日の訓練の後で会えるの、楽しみにしているよ」
***
そうして初日の訓練が終わると、夕暮れに染まるロビーに小野瀬さんが姿を現した。
広いロビーなのに、二人きり。
みんな疲れて部屋か風呂だよ、と小野瀬さんは笑った。
「どこかの悪魔のおかげで、今回は俺まで講師だ。忙しいのは仕方ないけど、きみと過ごす時間が無いのが寂しいな」
柔らかく微笑んで、小野瀬さんは私の頭を撫でる。
「きみはどう?」
(寂しいけど、これは仕事だから…わがまま言って迷惑かけたくないし…)
「恋人なんだから、素直な言葉を聞きたいな」
小野瀬さんの優しい言葉に、胸の奥が温かいもので満たされた。
「…私も、寂しい」
「同じ気持ちでいてくれて、良かった。それなら、最終日はここに残って、二人でゆっくりしよう」
そんな事が出来るなんて知らなかった私の頬は、小野瀬さんと時間を過ごせる喜びに、自然と緩んでいた。
***
2日目。
##IMGU61##
「今日は、犯人との交渉術についての講義よ」
会議室の正面には、室長が講師として立っていた。
「まず、相手との距離をいかに縮められるか…」
室長の講義内容を、みんな真剣な顔でノートに書き記している。
私も聞き逃しのないよう、ノートにペンを走らせた。
室長は、捜査の過程で相手の懐に入り込む事の必要性を説明している。
ただし、その為の話術については自ら考えるように、と語り、具体的な例を挙げたりはしない。
隣に座っていた男性職員はそれが納得いかない様子で、私に声をかけてきた。
「今の説明、分かった?きみ、よくあんな上司の下で働けるね」
室長の説明は、私には分かりやすいと思えたので、彼の言葉に首を傾げる。
「悪い人じゃないですよ。部下思いの方です」
「とてもそうは思えないけど」
すると、私たちの会話が聞こえたのか、室長がこちらを向いた。
「…どうやら、ワタシの授業は分かり辛いようね。じゃあ、軽く実践といきましょうか」
室長は、私に声を掛けてきた男性職員を指差した。
「アンタ、昨日も櫻井と同じ講義を受けてたわね?」
「え!?どうしてそれを…」
「櫻井の方は、アンタを覚えてなかったみたいだけど」
「え!?」
これは私。
…さすが室長、鋭い。
室長はしばらく男性職員を見つめ、やがて、再びゆっくりと彼に話し掛けた。
「アンタは今いる彼女と、櫻井の間で悩んでる」
「なっ!」
「櫻井の方が好みで…あわよくば告白しようと思っている。そして…」
「ま、ま、待って下さい。わかりました!」
周囲がざわめき、動揺した男性職員が慌てて遮る。
「なぜ、いったい、どうしてそんな事まで?!」
「つまり、多少の嘘でもこうして使いようで相手の心を揺さぶり、付け入る隙を作れるって話」
「…嘘?!」
全員が固まる中、室長はどこか勝ち誇った顔で、胸を張った。
***
3日目の夕方、全ての訓練を終えてロビーに出ると、帰り支度をしている職員たちの中から、一人の男性が近づいてきた。
「昨日はごめんね」
(昨日?ああ!室長の講義を受けてた時、隣にいた人だ)
「その…あれ、冗談だから」
「あれ?」
「いや!覚えてないなら、良いんだ。それより…」
その時、合宿所の奥から現れた小野瀬さんが私を呼んだ。
「ああ、櫻井さんここにいた。手伝って欲しい事があって探してたんだよ…おや、ごめん。先約かな?」
小野瀬さんは私のそばにいた男性をちらりと見た。
「いえ、俺は…」
「そう?じゃあ、悪いね」
小野瀬さんに見つめられた男性が逡巡した隙に、小野瀬さんはもう歩き出していた。
私も急いで後を追う。
着いた所は、小野瀬さんが合宿中に使ってた部屋。
「あの、急ぎの用事は…?」
「嘘だよ。きみを連れ出す為の方便だ」
小野瀬さんは笑みを浮かべ、ベッドの縁へ腰かけた。
「おいで」
隣へ座ると、小野瀬さんは私の身体を優しく抱きしめた。
「さっきの彼、もっときみと話したそうだったな」
ちょっと意地悪く微笑みながら、小野瀬さんは、私をベッドの上に押し倒した。
「講義で隣に座っただけで、彼とは何も…」
「嫉妬なんかしないよ。きみを信じてるからね」
(それは嬉しいような、少し寂しいような…)
小野瀬さんの指が私の身体を撫で、唇が、耳たぶを軽く咥える。
その感触に、全身が震えてしまいそう。
「愛してる。きみの声を聞きたい、きみの身体に触れたい、俺に触れてほしい…いつだってそう思ってる」
「あお、い…」
いつもよりちょっと強引な口付けに、頭がボーッとしてくる。
「こんなワガママな俺でも、きみは愛してくれる?」
「もちろん」
私が笑顔で頷くと、小野瀬さんは安堵の息を吐いて、私を抱き締めた。
***
シャワーを浴び終え、二人でウッドデッキへ出てみると、夜空には満天の星。
「天の川とはいかないけど、これはすごい星の数だね」
小野瀬さんが用意してくれたスイカを食べながら、夏の夜の雰囲気を楽しむ。
「今日ここで星を見れた事、きっと良い思い出になるな」
「うん」
「一緒にスイカを食べた事も、きみが他の男から言い寄られた事も」
「あれ?さっき、その事は気にしないって…」
「あ…いや、これは別に…」
(もしかして、本当は嫉妬してたのかな…?)
ジッと見つめていると、小野瀬さんは少し顔を赤らめて、恥ずかしそうに言った。
「本当は、少し嫉妬した。でも、余裕のない俺なんて、かっこ悪くてきみに見せられないだろう?」
「そんな事ないよ。嫉妬してくれて、嬉しい」
「きみには敵わないな」
頭を撫でていた手が、私の身体を優しく引き寄せた。
「嫉妬したし、心配した。だって、きみに触れて良いのは、俺だけだからね」
「うん」
小野瀬さんの指が頬を撫でる感触に笑みを浮かべながら、私はゆっくりと頷いた。
「じゃあ、今日はたくさん思い出を作ろうか」
「うん」
「いつか、二人で笑いながら語り合えるように、ね」
小野瀬さんと一緒にいられる時間の全てが、私にはかけがえのない思い出になる。
少しだけ背伸びをする私に、小野瀬さんは甘いキスを落としてくれた。
~終わり~
追記
名前:ジュン
本文:
こんばんは。
いや~、室長は凄いですね。
あんなに的確に堂々と嘘をつかれた日にゃあ男性職員は冷や汗ものだったでしょうね。
小野瀬さんとの夜はやっぱり甘いですねぇ。
フルーツを用意してくれてるところもにくい(*^^*)
二人で星空を眺めて2回戦……幸せですね。
名前:小野瀬&穂積
本文:
穂積
「あれくらい、あいつが櫻井を見る時の顔をちょっと観察してればすぐに分かる事よ」
小野瀬
「いや普通は分からないだろ。それにしても穂積に因縁をつけるなんて、怖いもの知らずな男だな」
穂積
「講義に文句を言ったのは、櫻井に話し掛けるきっかけが欲しかったからなんじゃないかしら」
小野瀬
「なるほどねえ」
穂積
「それなのに、あの記憶力抜群の櫻井に顔を覚えられてなかったとか、気の毒な男よねえ」
小野瀬
「ああ、三日目の時も、翼は彼を覚えてなかったみたいだったよ。可哀想にねえ」
穂積
「ははは」
小野瀬
「ははは」
ジュン
(二人とも笑顔が怖い…)
名前:エミ
本文:
男性職員クン、怖いもの知らずというか命知らずというか…。
室長はやっぱり地獄耳だった!(笑)
小野瀬さん、メロンじゃなくてスイカなのね。いつ用意したのかしら。まさか、重そうな荷物の中に入ってたとか言わないですよね?
名前:小野瀬&穂積
本文:
小野瀬
「あのスイカは、合宿所に来てたコックさんが、家で育てたものだって言って、くれたんだよ」
エミ
「…そのコックさんって、男性ですか?女性ですか?」
穂積
「そういえば、ウッドデッキがついてるのも小野瀬の部屋だけだったのよねえ」
エミ
「小野瀬さんって何者なんですか?」
名前:冬子
本文:
そうそう、スイカ!?
ワインとかシャンパンとかは無理にしても、なんでスイカ??って思いました。
葡萄とかイチゴとかじゃなくて、スイカって辺りがパンチがきいてます。
さすが、小野瀬さんです。
思い出に残るスイカです。
名前:小野瀬&穂積
本文:
冬子
「ところで、残ったスイカはどうしたんですか?二人とも少食だから、いくら小さいスイカでも食べきれなかったでしょう?」
穂積
「確かに気になるわね」
小野瀬
「そんなとこ気になるの?」
本文:
こんばんは。
いや~、室長は凄いですね。
あんなに的確に堂々と嘘をつかれた日にゃあ男性職員は冷や汗ものだったでしょうね。
小野瀬さんとの夜はやっぱり甘いですねぇ。
フルーツを用意してくれてるところもにくい(*^^*)
二人で星空を眺めて2回戦……幸せですね。
名前:小野瀬&穂積
本文:
穂積
「あれくらい、あいつが櫻井を見る時の顔をちょっと観察してればすぐに分かる事よ」
小野瀬
「いや普通は分からないだろ。それにしても穂積に因縁をつけるなんて、怖いもの知らずな男だな」
穂積
「講義に文句を言ったのは、櫻井に話し掛けるきっかけが欲しかったからなんじゃないかしら」
小野瀬
「なるほどねえ」
穂積
「それなのに、あの記憶力抜群の櫻井に顔を覚えられてなかったとか、気の毒な男よねえ」
小野瀬
「ああ、三日目の時も、翼は彼を覚えてなかったみたいだったよ。可哀想にねえ」
穂積
「ははは」
小野瀬
「ははは」
ジュン
(二人とも笑顔が怖い…)
名前:エミ
本文:
男性職員クン、怖いもの知らずというか命知らずというか…。
室長はやっぱり地獄耳だった!(笑)
小野瀬さん、メロンじゃなくてスイカなのね。いつ用意したのかしら。まさか、重そうな荷物の中に入ってたとか言わないですよね?
名前:小野瀬&穂積
本文:
小野瀬
「あのスイカは、合宿所に来てたコックさんが、家で育てたものだって言って、くれたんだよ」
エミ
「…そのコックさんって、男性ですか?女性ですか?」
穂積
「そういえば、ウッドデッキがついてるのも小野瀬の部屋だけだったのよねえ」
エミ
「小野瀬さんって何者なんですか?」
名前:冬子
本文:
そうそう、スイカ!?
ワインとかシャンパンとかは無理にしても、なんでスイカ??って思いました。
葡萄とかイチゴとかじゃなくて、スイカって辺りがパンチがきいてます。
さすが、小野瀬さんです。
思い出に残るスイカです。
名前:小野瀬&穂積
本文:
冬子
「ところで、残ったスイカはどうしたんですか?二人とも少食だから、いくら小さいスイカでも食べきれなかったでしょう?」
穂積
「確かに気になるわね」
小野瀬
「そんなとこ気になるの?」