『非公式Twitter』

番外編『二年目の強化合宿』より~小笠原編~

2016/09/06 09:05

初日の訓練を終えた後、私は、食堂に現れなかった小笠原さんに夕食のカレーライスを届けるために、彼の部屋へ向かった。

穂積
「誘ったけど出て来ないのよ、仕方無い子ねえ。櫻井、甘やかす必要ないわよ」

と、室長には言われたけど。

ドアをノックしてから中へ入ると、彼はベッドの上で本を読んでいた。

「翼ちゃん?どうしたの?」

「諒くんこそ、どうしたの?ご飯は食べなきゃダメだよ」

そう言ってみたけど、小笠原さんはベッドの上から動こうとしない。

「…研修はちゃんと受けたよ。でも、食堂で知らない人とご飯なんて嫌だ」

小笠原さんはそう言って、コンビニでも売っているような携帯食料を出して見せた。

「これで大丈夫。ダイエットにも良いし」

「たったそれだけで、三日間の過酷な合宿を乗りきれるはずがないよ」

ベッドに腰掛けながら言うと、小笠原さんが私のお腹あたりにしがみついてきた。

「もう合宿なんて嫌だ。空調良くないし、暑いし。僕が人前で喋るの苦手だって知っているのに、室長はプログラミングの講義をやらせようとするし」

「それは、室長が諒くんの腕を認めてるからでしょう?」

「…合宿中はきみと二人きりになれないし」

「諒くん…」

私に会えないから、という理由で合宿が嫌だ、と訴える小笠原さんを見ていると、とても愛おしく感じてしまう。

「私、3日目の研修は早目に終わるの。だから、夕方になら会えないかな?」

「うん、大丈夫」

小笠原さんが顔を上げて、目を輝かせた。

「僕、3日目まで頑張るよ。そうしたらご褒美ちょうだい」

「いいよ」

私が了承すると、小笠原さんは嬉しそうに顔を近づけて。

「じゃあ、それまで頑張るための栄養を僕にくれる?」

「うん…」

ゆっくりと目を閉じて、私から小笠原さんに近付く。

重なった唇に、私も頑張ろうと気力を貰った気がした。

***

合宿2日目。

足場も視界も悪い森の中で、隠れた犯人をいかに早く見つけ出せるか。

そんな特殊な訓練で、犯人役の私はじりじりと追いつめられていた。

(逃げるのも大変ね…)

「櫻井さん、見つけた!」

頑張って隠れていたものの、私は、不意に後ろから現れた男性職員に捕まってしまった。

「頑張ったのに、惜しかったね」

刑事役の男性職員に励まされながら、拠点であるテントに向かっていると、森の中から、同じく刑事役の藤守さんが現れた。

藤守
「よぉ! 極悪犯」

「極悪犯って……」

藤守さんが来たので、私を捕まえた職員は再び残りの犯人役を探しに行った。

代わりに、藤守さんが私を誘導してくれる。

「お前が捕まるなんてな」

「す、すみません」

「まだまだやなあ。気配は考えて読むものやなくて、感じるものやで」

テントに着いてみると、どうやら、中にいるほとんどの人は藤守さんに捕まったらしい。

「藤守さん、すごい検挙率ですね。私も、藤守さんみたいに検挙出来るようになりたいです」

「んー…何て言うか、お前は少し隙が多いのかもしれへんな」

「隙?」

「ああ。まぁ、この意味は分からんくて良いよ」

藤守さんは、肩を揺らして大きく笑うとまた森の中へ入っていった。

***
合宿最終日。最後の訓練も終わって、私はシャワーで汗を流した。

外へ出ると爽やかな夜風が肌を撫でて、辛い合宿を終えた充実感が湧いてくる。

(後は諒くんと会って……)

考え事をしていると、後ろから名前を呼ばれた。

声をかけられて振り向くと、交通課時代に何度か目にした男性職員が目の前にいた。

男性職員
「櫻井さん、久し振り。合宿お疲れ様」

「おかげさまで、どうにか最後まで頑張れました」

「お互いにね」

彼は私の同期の子と親しかった人で、今まで直接話をした事はない。

それでも、一緒にきつい合宿を乗り越えたことで、この時はなんとなく親近感を覚えていた。

「実は、この合宿が終わったら、彼女にプロポーズしようと思ってるんだ」

彼は、私の同期のあの子の名前を口にした。

「素敵!頑張ってくださいね!」

「ありがとう。それで、櫻井さんに手伝ってほしい事があって、打ち合わせしたいんだけど…」

彼は照れながら、私に、プロポーズのプランを明かしてくれた。

それはロマンチックなサプライズで、きっと彼女も喜ぶだろうアイディアだった。

二人の幸せの手伝いが出来ると思うと嬉しい。

改めて綿密な打ち合わせをする約束をしてから、彼と別れて、小笠原さんの部屋に向かった。


「ごめんね、遅くなっちゃった」

小笠原さんの部屋へ行くと、彼は初日と同じようにベッドの上にいた。

けれど、なんだかおかしい。

責めるような、拗ねているような口ぶりに、私は首を傾げた。

どうやら、さっき私が男性職員と話をしていたのを見ていたらしい。

「楽しそうだったけど、何の話?」

「内容は…ちょっと」

「僕には言えない?」

私は困ってしまった。

内容は、あの男性職員と同期の子にとって大事な話で、まだ私だけが知っている秘密なのだから。

でも、このままでは小笠原さんは納得してくれないと思い、彼と彼女に心の中で謝りながら、ありのままに説明する。

話を聞き終えると、小笠原さんは心の底から安堵した声を出し、息を吐いた。

「そんな事情があったなんて思わなくて…嫉妬したりして、ごめん」

小笠原さんは、捨てられた子犬のような目で私を見上げた。

「僕って欲張りだよね。どんな些細な事でも、きみの全部を知っていたい」

「諒くん…」

「嫌いにならないで」

「嫌いになんかならないよ」

「不安だったんだ…」

小笠原さんの手が私へと伸び…ぴったりとくっついた身体に、彼の体温を感じる。

「んっ…諒、くん…」

そのまま…私たちは闇へ溶けるように、身体を重ね合わせた。

***

火照った身体を鎮めるように、私たちはホタルの舞う川辺りを歩く。

「都都逸の有名な歌詞にね『恋に焦がれて鳴くセミよりも、鳴かぬホタルが身を焦がす』っていうのがあるんだ。知っている?」

僕はホタルだよ、と呟く彼の深い愛情を感じながら、私は小笠原さんと指を絡めた。

「愛してる。溶け合って、ひとつになってしまいたいぐらいに」

ゆっくりと重ねた唇の奥に、暖かい粘膜が侵入してくる。

「きみは僕だけのものだよ」

本当にこのまま溶けてひとつになってしまいたいと、私も願ってしまう。

甘く痺れる行為と、少しの勘違いが、ますますふたりの愛を強くした気がする…。


~終わり~
 
追記
名前:ジュン
本文:
こんばんは。

さすが、賢史くん!

検挙率ナンバーワンですね。

私も鼻が高いです←なぜ?

小笠原さんの人嫌いは私もわかるので大勢と夕食とかきついですよね。

でも、ご飯はちゃんと食べないとね。

小笠原さんとゆっくりホタルを見てイチャイチャするなんていいですね。

名前:小笠原&穂積
本文:
穂積
「小笠原が嫉妬するってちょっと意外」

小笠原
「そうかな」

ジュン
「でも、普段クールでドライな彼氏がやきもちやいてくれるのは何か嬉しいかも」

小笠原
「ジュンさんの彼氏はホットでウェットだもんね…」

名前:冬子
本文:
おがさーらさん、ご飯皆と食べないと、翼ちゃんかわいいから皆に見られちゃうよ。

それにしても、ベッドの上ですねてる時は膝を抱えているんだろうな。

冬子、きゅんきゅんしちゃいます。


藤守さんはハンターですね。

この刑事役はおがさーらさんには無理かも……

いや、犯人役も無理かも…

この訓練の間、おがさーらさんは何してたんですかね~

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