『非公式Twitter』

番外編から零れたふたり~藤守アニ編~

2016/09/14 08:54

強化合宿に到着した初日、最初の講義に現れた講師を見た瞬間、私は思わず叫びそうになった。

##IMGU75##
「東京地方検察庁から来た、検察官の藤守慶史だ。本日から三日間、法規に関する講義を担当する」

(どうして慶史さんが…いや、確かに法律の専門家だから、おかしくはないんだけど…)

先週会った時には、一緒に合宿に参加するなんて、一言も言っていなかったのに。

アニ
「えー、私は京都大学法学部に在籍中、司法試験に合格し、卒業後すぐに研修を受けて検察官になり、東京地検に転勤になった後はダム建設に絡む収賄事件を解決するなど、難事件に取り組んで成果を上げ」

慶史さんがいつもの自己紹介をし始めると、突然、ドン!という音と振動が部屋を揺らした。

『さっさと講義をやりなさい!』

(室長の声だ…)

どうやら、室長は隣の部屋で講義をしていて、壁越しにツッコミを入れたらしい。

「貴様!呼ばれたから来てやったというのに、その態度は何だ!」

大声で怒鳴り返したものの、室長からはもう返事が無い。

慶史さんはぶつぶつ言いながらも、私たちに向き直って、法律の講義を始めた…。

***


「まさか、け…藤守検察官が講師だなんて、びっくりしました」

休み時間になって、私は正直な感想を伝えていた。

休憩所のテーブルには、捜査室メンバーが次々と集まって来る。

藤守
「ホンマやで兄貴。何で弟の俺にまで内緒やねん」

アニ
「ふん。サプライズだ、と言いたい所だが、俺も驚いているのだ。数日前、急に上司から警察の合宿に参加するように言われてな」

慶史さんは、隣の席でカレーライスを頬張っている室長に顔を向けた。

アニ
「どうやら穂積が根回ししたらしい、と気付いたのはここに着いてからだ」

小野瀬
「俺と似たような経緯だね」

穂積
「ワタシ今回は全部教える側なのよ。このうえ鑑識や法規の講義までやらされたらたまらないわ」

小野瀬
「だからって巻き込むなよ」

アニ
「どんな手を使ったのか知らんが迷惑だぞ」


「あっ、でも、小野瀬さんの講義も、藤守検察官の講義も、とても分かりやすくて。参加者の評判は良かったですよ!」

穂積
「…ワタシの名前が無かったような気がするけど」


「室長の講義はちょっと背筋が寒くなると言いますか…きゃー!」

アニ
「こら穂積、ヒヨッコにセクハラをするな!」

穂積
「ちょっとくすぐっただけでしょ。アンタがこの子を庇うなんて意外ねえ」

小野瀬
「最初はあんなに邪険にしてたのにねえ」

アニ
「邪険にしてたのは貴様の方だろうが、桃色鑑識官!」

室長と小野瀬さんがニヤニヤしながら慶史さんをからかうのを、彼と私の交際を知らない他のメンバーたちは笑いながら見ているけど、私は内心、冷や汗をかいていた…。

***

休憩時間が間もなく終わり、午後の講義が始まるという頃。

カレーライスの食器を返却口に運んだ慶史さんが、擦れ違いざま、私のポケットにそっとメモを差し込んでいった。

『最終日、解散したら俺は車で帰るが』

とだけ書かれている。

裏返してもみたけれど、『帰るが』の続きは書かれていない。

(もしかして、一緒に帰ろう、って意味なのかな?)

私は首を傾げながらも、大切にメモをしまった。

***

最終日、全ての研修が終了した合宿所。

参加者たちは過酷な合宿をやり遂げた達成感を胸に、施設の片付けをしたり、帰り支度を整えたりしていた。

男性A
「櫻井さん、お疲れ様!」

「お疲れ様です」

男性B
「最後までよく頑張ったね。ねえ、記念写真撮ってくれる?」

「いいですよ」

男性C
「やった!おい、櫻井さんが一緒に入ってくれるってよ!」

「えっ?!」

わいわいと歓声を上げながら、男性たちが次々と集まって来る。

次々と写真をせがまれるのを断りきれないまま、私はいつしか人垣に囲まれてしまった。

(てっきり、シャッターを押すのを頼まれたかと思ったのに…)

男性D
「笑ってー!」

「は、はぁ…」

ひきつった笑いを浮かべながらカメラに向けた視線の遥か先を、スーツ姿でカバンを提げた慶史さんが横切るのが見えた。

(あっ、慶史さんが帰っちゃう)

男性E
「櫻井さん、肩を抱いていい?」

「えっ、いえ困ります」

拒んだのに、自撮りのカメラが向けられ、ぐい、と肩を引き寄せられる。

(やだっ、慶史さん助けて!)

カシャッ、と音がした瞬間。

彼のカメラのレンズは、横から割り込んだ大きな手によって塞がれていた。

同じその手が翻って、今度は、私の肩を掴んでいた男性職員の腕を掴んで引き剥がす。

男性E
「なっ…」

不愉快そうに振り向いた男性職員の目が、次の瞬間、見開かれた。

「邪魔してごめんなさいねえ」

彼の手を掴んでいたのは…、室長!

「櫻井、車の準備が出来たからもう行きなさい」

室長はそう言って、私を立ち上がらせると背中を押した。

「は、はい」

室長は頷いてから男性職員に向き直り、私と入れ替わるように彼の隣に腰掛けると、にっこりと微笑んだ。

「代わりにワタシじゃ駄目かしら?」

男性E
「え?!」

自分の腕を室長の肩に乗せられて、彼の顔が輝いた。

それはそうだろう。

私となら、その気になればいつでも写真を撮れるけど、穂積室長とツーショットを撮れる機会なんて、滅多にあるはずがない。

「はい!ありがとうございます!」

「つ、次は俺ともお願いします」

「俺も俺も!」

私は胸の内で室長にお礼を言いながら、慶史さんの元に急いだ。

***

「…お前、思っていた以上に人気があるのだな」

走り出した車の運転席で、慶史さんが呟いた。

「女性が私一人だから、珍しかっただけですよ」

「…」

「…もしかして、ですけど…嫉妬してくれてます?」

「馬鹿者」

ハンドルを切りながら、慶史さんが冷静に答えた。

「俺は、嫉妬などとは無縁の男だ」

「え」

「他人の才能を羨んだ事は無い。何故なら、俺もまた全てを持っているからだ。…唯一、悋気を起こす可能性があるとすれば、お前の気持ちが俺から離れて、他の男に向けられてしまった場合だが」

「いいえ、まさか。私、慶史さんが好きです」

顔を前方に向けたまま、慶史さんが頷いた。

「それならば、やはり、今の俺のこの気持ちは嫉妬ではない」

「今の、気持ち…?」

賢史さんの左手がこちらに延びて、私の手を握った。

「満足だ」

嬉しそうに微笑む顔が愛しくて、私は、慶史さんの家に着くまで、彼の手を握り返していた。


~終わり~
追記
名前:ジュン
本文:
こんばんは。

慶史さんがいきなり合宿の講師に来たら驚きますよね。

そして室長の粋な計らい。

格好いい(*^^*)

慶史さんは悋気なんて起こさないんですね。

自分に自信があり過ぎるのかしら(笑)

お家に帰ったらいっぱいイチャイチャしましょうね。

名前:藤守アニ&穂積
本文:
アニ
「ふふふ、ジュン。俺は今いわゆるリア充の状態なのだ。勝者の余裕、自信の絶頂期。悋気など起こすはずがない」

穂積
「けっ、調子に乗って片手運転なんかしやがって。道路交通法第4章第1節第70条、安全運転の義務違反で現行犯逮捕してやろうかしら」

名前:エミ
本文:
「思っていた以上に人気がある」って、室長のことを言ってるのかと一瞬思ってしまった(笑)

それにしても室長ったら大人気!


ん?そこにいるのはもしや小野瀬さん…?
壁|皿´)チッ… Σ(゚ロ゚;)

名前:藤守アニ&小野瀬&穂積
本文:
小野瀬
「エミさん、穂積の場合は『思っていた通り人気がある』だよね。俺と穂積は警視庁の『抱かれたい男アンケート』で1位と2位だけど、男性職員だけで人気投票したら、穂積の方がNo.1になるんじゃないかな」

穂積
「気色の悪い想像をするな。そんな結果が出ても嬉しくない」

小野瀬
「だよね。穂積の良さは、俺だけが知っていればいい事だよね♪」

穂積
「そういう意味じゃねえ!くっつくな!エミ!写真撮るな!!」
 
アニ
「…俺の為の番外編のはずなのに、何故みんな穂積の話になるんだ…」

名前:冬子
本文:
きゃー、室長、かっこいい!


あー、アニさんの日だったか。

まあ、番外編は主役以外がかっこいいってのがお約束みたいですから、

気にしない気にしない。

もちろん、写真、動画を撮りましたよ、  室長と!

名前:藤守アニ&穂積
本文:
アニ
「冬子も穂積か…orz」

穂積
「落ち着きなさいアニ、冬子のはわざとだから」

アニ
「そ、そうか。俺に対するあてつけというか気を引くための手練手管、愛情の裏返しというやつだな!」

穂積
「…多分」

アニ
「多分かーい!(゜ロ゜;はっ、そういえば、番外編でのカッコいい俺というのはどこにいるのだ?!」

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