『非公式Twitter』

番外編『ムーンライトセレナーデ』より~小野瀬編~

2016/10/15 17:58

小野瀬さんの家に行くと、リビングに通された。

##IMGU65##
「きみが見たいって言ってた映画のDVD借りてきたから、今日は、二人でゆっくりと映画観賞といこう?」

「ありがとう!」

肩を並べてソファに座ると、小野瀬さんは早速、DVDをスタートさせた。

恋愛ものの洋画で、最初から甘い雰囲気が漂っていてうっとりしてしまう。

(良いなあ。私も、あんな風に、この人と毎日楽しく過ごせたら幸せだな…)

自然と小野瀬さんと距離が近づく、けど…彼が、そっと私から離れたような気がした。

(え…?)

いつもなら肩を寄せてくれるのに、今日は、私に触れようともしない。

(…久しぶりに二人きりなんだし、もうちょっと触れてくれても良いのに…もしかして、これが友だちの言ってた…マンネリ…?)

幸せな気持ちが、不安に染まっていく。

目が合っても、小野瀬さんは頭を撫でてくれたりせず、ただ笑みを浮かべるだけ。

それだけの事に、私の胸はまた痛んだ。

「そうだ、きみ、ワイン飲む?」

「ううん、私も烏龍茶でいい」

「冷蔵庫に頂き物のチーズがあるんだよ。遠慮しないで…」

小野瀬さんが言いかけたところで、私と、彼のケータイが鳴り響いた。

「あ…捜査室からだ」

「休日だっていうのに俺まで…何かありそうだな」

小野瀬さんはDVDを止めて、早速、出かける準備を始めた。

***

室長が指定したのは、とある遊園地。

「休みなのに悪かったわね」

「いえ、私は良いんですけど…」

「どうして俺まで呼び出されなきゃいけないんだ?」

「盗撮、窃盗、爆破予告。事件が同時多発して、人手が足りないのよ。アンタなら、捜査から指紋採取までコキ使っても問題ないから」

「そんな事だと思ったよ」

小野瀬さんは肩を落とし、諦め顔でため息をついた。

お客さんの退出も完了し、私は、藤守さん、室長と共に盗撮犯を探す、その名もチームZとして捜査を開始した。

「まったく、更衣室を盗撮なんて最低ね」

「ですね」

「そんなに見たいんだったら、○×▲とかに行けば良いでしょうに」

「うわー!室長!朝から卑猥な事言わんで下さい」

「普通の会話でしょ」

相変わらずのテンションで歩き出した私たちの視線の先に、ウサギの着ぐるみが現れた。

「あ、可愛い」

「え?あれ、可愛いんか?」

「可愛くないですか?」

「どっちでも良いわよ。怪しいから声かける」

室長はスタスタと歩いていき、着ぐるみへ声をかけた。

「失礼、警察です。アナタ、ここの従業員?」

すると、着ぐるみは、ウサギ頭を外して、普通の男性の顔を晒した。

…ちょっとがっかり。

室長の職質で、更衣室にはこのウサギさんの他にもう一人、トラの着ぐるみがいたという事が分かった。

「そのトラが怪しいわね。更衣室に急ぐわよ」

「了解っす!」

更衣室に着くと、まだ中に誰かの気配。

「警察だ!」

室長が開けた扉の先にいたのは…トラの着ぐるみ。

そして彼の手には、カメラ…ではなくて、財布。

「盗撮じゃなく、窃盗の方?」

「そうです」

「なーんやゴメンな、てっきり…って、アホか!どっちも犯罪や!現行犯逮捕させてもらうで!」

犯人は、藤守さんに捕まってしまった。


***
その後、見つかった不審物は爆発物ではないと分かり、盗撮犯も別の場所で捕まった。

他のメンバーは犯人の取り調べのために署に向かい、私と小野瀬さんは園内の最終確認に廻る事になった。

「暗くなってきたなあ。遊園地内の明かりがついていない分、なおさら暗く感じるよね」

小野瀬さんがあれこれと話し掛けてくれるけど、私は、彼の家での態度と、友達言われた言葉が気になっていて、つい、返事がおろそかになってしまっていた。

(触れない理由、聞いた方が良いのかな…でも、あなたが、私に飽きたんじゃないかって思ってます……なんて、言えない…)

小野瀬さんはいつも通り優しいから、なおさら言えない。

でも、やっぱり触れてもらえない寂しさはつのるばかりで…。

「コーヒーカップだ。ここで遊具は最後だよね?」

「そうですね」

「じゃあ、しっかり探すか」

先に遊具の中に入った小野瀬さんに続いて、私もコーヒーカップを一つずつ確かめる。

私も中に入って、コーヒーカップの中を探す。

怪しい物は無く、安堵しかけた小野瀬さんの顔が、不意に曇った。

指差す方を見ると、さっきのウサギの着ぐるみさんが、ユサユサと歩いているのが見えた。

「あ、刑事さんたち。お疲れ様です、僕ももう帰ります!」

「お疲れ様です」

「じゃあ、失礼しま…」

 ガコン!

「え?」

突然、コーヒーカップが動き出した。

「ああ、すみません!耳が引っかかっちゃって…係の人を呼んできます!」

着ぐるみはそう言うと、従業員を探しに行った。

「ど、どうしましょう?」

私は焦ったけど、小野瀬さんは落ち着いている。

「あのウサギさんが、せっかく俺たちを不思議の国に連れて来てくれたんだ。楽しもうじゃないか」

促されるままコーヒーカップの中に入ると、それはゆっくりと回りだした。

「ねえ…きみがずっと真剣に悩んでいた理由は、俺のせいかな?」

さりげなく訊いてくれる小野瀬さんの優しさに、涙がにじむ。

「…きみが思っている以上に、俺はきみが好きだよ」

「葵…私も…!」

「不安にさせたかな。でも、俺も不安だった。きみに触れたいという思いが強すぎて、拒まれるのが怖くて、触れられなかった」

私…、嫌われたわけじゃなかったんだ…

「お互い、言わなきゃ分からない事ってあるんだね」

やがて、着ぐるみに連れられて来た従業員が遊具を止めてくれて、私たちはやっと見回りを再開した。

「こっちの道を行こう」

イタズラっぽく笑いながら、小野瀬さんは私の手を掴んだ。

「遠回りだけど」

久しぶりに触れた、小野瀬さんの手の感触と温もりが、私を幸せにする。

「仕事が終わったら、俺の家に来てほしいな」

「…もちろん、行く」

「じゃあ、期待しちゃうよ?」

小野瀬さんの顔が近づき、空いている手が頬を撫でた。

私は頷く。

「…期待、して良いよ」

「きみは誘い上手だね」

言葉の終わりと同時に、唇が触れた。

優しく触れるだけのキスは…私の心を、弾ませる。

「大好きだよ。これからもずっとね」

木陰に隠れて、私たちはキスを交わす。

そんな私たちを、月は淡く照らし出していた。


~終わり~
追記
名前:小春&小野瀬
本文:
小春
「翼ちゃんの誤解が解けてから、コーヒーカップをぐるぐる回してきゃっきゃウフフはしゃぐ小野瀬さんの姿をもっとお伝えしたかったです」

小野瀬
「別にいいから」

名前:ジュン
本文:
あら?小野瀬さんたらコーヒーカップできゃっきゃウフフしてたんですか?

可愛いですね(^-^)

でも、お互いに触れたいと思ってるのに不安になるなんて。

やっぱり小さなことでも話さないとダメですね。

話さないと誤解が誤解を生んじゃうこともありますからね。

小野瀬さんと付き合ってたらマンネリなんてない気がしますけどね。

名前:エミ
本文:
コーヒーカップできゃっきゃウフフ(笑)

やっぱりあれですかね、ハンドル系を目の前にすると昔の血が騒ぐんでしょうか?

名前:小春&小野瀬
本文:小野瀬
「よーし! じゃあせっかくだし、このままコーヒーカップを楽しむか」


「良いのかな?」

小野瀬
「止めてもらうまでの間だけ、だよ」

そう言って、加速する回転板を回しだす小野瀬さん。

そのスピードに、私たちはどちらともなく笑い声を上げていた。

小野瀬
「これ、すごい回るね」


「もう…目が回りそう」

小野瀬
「ごめん、ごめん。じゃあ、そろそろ……お、ウサギさんが戻ってきたよ」

***

ジュンさんの言葉に納得し、エミさんの『昔の血が騒ぐ』に笑ってしまいました(´∇`)なるほど。

私は『あのウサギさんが、せっかく俺たちを不思議の国に連れて来てくれたんだ』に、『さすが小野瀬さん』と思いましたが。

小野瀬
「小春さん、俺をバカにしてるよね?」

いえいえとんでもない。

私は三半規管が弱いので、小野瀬さんとコーヒーカップは無理だなあ。
 
残念です。

名前:冬子
本文:
私もコーヒーカップに乗るのは無理です。

っていうか、遊園地行っても乗れるものがほとんどない。

公園でブランコが揺れてるの見るだけでも気持ち悪くなっちゃうんです。

繊細なんですよ、見かけによらず!



小野瀬さんがコーヒーカップできゃっきゃうふふなんですか?

かわいいところもあるんですね。

それにしても皆さんの深い考察は素晴らしいですね。

昔の血が騒いじゃうんだ。なるほど。

一人で感心してウンウンうなづいています。

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