『非公式Twitter』

番外編「ムーンライト・セレナーデ」より~小笠原編~

2016/10/25 17:52
「お邪魔します」

私は合鍵で、小笠原さんの部屋に上がった。

いつもなら、玄関まで来て迎えてくれるんだけど…。

##IMGU63##
「ああ、いらっしゃい」

パソコンに集中していた彼は、私を見ても、一瞬視線を合わせただけ。

「何をしてるの?」

「ソフトウェアを開発中。さっき、バグが修復し終わって、これからって感じだよ」

「そうなんだ。すごいね」

「…うん」

「…」

室内には、キーボードを打つ音が響くだけ。

(会話が続かない…)

いつもなら、会話がなくても抱きついたりして、甘えてくるはずだけど…。

何だか気になって、自分から話を振ってみても、集中している小笠原さんは生返事をするだけ。

(もしかして、これがマンネリってやつなのかな…?)

まさかと思いたいけど、小笠原さんの態度がそれを物語っているような。

声をかければいいんだろうけど、邪魔するのも嫌だ。

(諒くん、こっち向いてよ…)」

その時、小笠原さんのケータイがけたたましく鳴り響く。

「…室長からだ」

「え…?今日は休みなのに…」

「何だか嫌な予感がする」

眉を寄せながら、小笠原さんはケータイに出た。



遊園地に集合した私たちは、園内で同時多発した事件について、室長から説明を受けた。

明智
「置き引きと、盗撮と、爆破予告ですか」

そこで、3チームに別れて、捜査する事になった。

私は、室長と藤守さんと共に盗撮犯を追う、チームZ。

私たちは、早速、最初に被害のあった、従業員の更衣室へと向かった。

「無いわねえ」

たくさんあるロッカーを一つ一つ開けながら、室長はため息まじりに呟いた。

「仕掛けられてたカメラは、見つかった一台だけやったんかな」

「そうかもしれないですね…」

それでも隅々まで探していると、ロッカー室のドアが開いた。

警備員
「すみません、刑事さん。実は先程警備室で、変な箱を発見しまして…」

私たちは警備員に案内されて行った先で、手のひらに乗るほどの小さな箱を見せられた。

「ご連絡ありがとうございます。ここから先は我々で処理します」

「お願いします」

室長は警備員を退出させた。

「…カメラっぽくはないわね」

「そうですね」

すると藤守さんは警戒心なく、その箱をゆっくり持ち上げて耳元に近づけた。

「…これ、時計の針の音がしますよ?!」

「櫻井、すぐ、待機中の爆弾処理班に連絡してちょうだい」

「はい!」

その間も、ふたりは険しい表情のままその箱を眺めていた。

「室長、他のチームからも依頼があって、すぐには来れないみたいです」

「…仕方ないわね」

室長は腕まくりをしてから、私と藤守さんを遠ざけた。

警備室に、緊張が走る。

「じゃあ、開けるわよ」

室長が開けた箱には……時計が入っていた。

室長はまだ油断せず、さらにいろんな角度からその目覚まし時計を確認して、ため息を吐いた。

「……これは、どうやら目覚まし時計ね」

「なんや!じゃあ、爆弾騒動の原因はこれか?!人騒がせやな!」

「でもまあ、本物の爆弾じゃなくて良かったじゃない」

爆弾じゃないと分かり、身体から一気に力が抜けた時、別のチームから、盗撮犯を現行犯で捕まえた、という連絡が入った。

***
遊園地が闇に包まれた頃。

「皆、良くやったわね」

室長がねぎらいの言葉をかけてくれるけれど、さんざん園内を歩きまわった全員は疲れてぐったり。

「さあ、封鎖解除の前に、もう一度、爆弾らしきものがないか見回りよ」

室長に励まされ、全員バラバラに最終確認をすることになった。

ところが、小笠原さんだけは、その場から動かない。

「どうしたんですか?」

「もう見回りなんて嫌だ。終わりにしたい。帰って新作のソフトを調整したいんだ」

小笠原さんは本当に嫌そうな表情を浮かべたけれど、「一緒に行きましょう」と誘って歩き出したら、私の後ろについてきた。

ちらりと後ろを見ると、小笠原さんは距離をおいて、私の服を掴みながら歩いてくる。

(終わりにしたい、って、私との関係の事を言われたみたい…)

「刑事さん、すみません」

後ろから声をかけられて振り返ると、さっき私たちに不審物の場所を教えてくれた警備員さんだった。

「何ですか?」

小笠原さんが首を傾げる。

「実は、さっきと似た箱を、観覧車の中で見つけてしまいまして…」

「案内してください」

警備員の後に続いて観覧車に着くと、なるほど、ゴンドラのイスの下に箱があった。

警備員を後ろへ下がらせ、私たちは箱を確認する。

小笠原さんがゆっくりと蓋を開けると…そこには、昼間と同じ目覚まし時計が入っていた。

「愉快犯なんだろうね」

「でも、大事にならなくて良かった」

「うん、そうだね。翼ちゃんに危険が及ばなくて良かったよ」

「りょ、諒くん!今は仕事中なんだから、名前…」

「翼ちゃんこそ」

「あのぉ…爆弾は…?」

二人でほっとした顔を見合わせていると、警備員の声が割り込んできた。

「大丈夫、ただの目覚まし時計でした」

「そうでしたか。お騒がせしてすみませんでした」

警備員さんは笑顔で頷きながら、私たちから離れていった。

すると…

 ガタン!

突如観覧車が揺れ、身体が傾く。

小笠原さんは素早く手を伸ばし、私を受け止めてくれた。

思ったよりも逞しい腕に、一瞬胸が高鳴る。

慌てて見下ろすと、先程の警備員が親指を立てていた。

「あの人、もしかして…」

「わざと?」

彼は私たちを交互に指差して「楽しんで」と口にした。

「僕たちが恋人同士だって気付いて、気を利かせてくれたんだね」

小笠原さんは納得したらしく、イスに腰かけた。

「実は、最近さ…困ってるんだ」

はにかんで、小笠原さんは続けた。

「きみの事、どんどん好きになって…だけど、ドキドキして…まともに顔を見られないぐらいなんだ」

(良かった…飽きられたと思ったのは、私の勘違いだったんだ)

隣同士に座り、手をつなぐ。

それだけなのに、今はすごく嬉しくて…私たちは、自然と唇を重ねた。

小笠原さんが、切なげな瞳で私を覗き込む。

「…翼ちゃんのその…僕を欲しがってくれている目、本当に、ダメだよ」

「え…?」

自分がそんな目で小笠原さんを見ていたと思うと、恥ずかしい。

「翼ちゃん、泊まりに来るよね?今日はもうソフトの開発はしないから」

「良いの?」

「ソフトより、翼ちゃんの方が大切だから」

観覧車の中、大きな月に照らされて交わすキスは、いつもより甘く感じた。


~終わり~
追記
名前:ジュン
本文:
こんにちは。

付き合って1年以上経つのにドキドキして顔も見れないなんて小笠原さん可愛い~。

日に日に好きな気持ちが大きくなっていくんでしょうね。

それにしても警備員さんはナイスアシストですね。

二人の仲が更に深まるきっかけをくれたんですからね。

名前:小春&小笠原
本文:小春
「カットした小笠原さんのセリフで可愛かったのは、

『…そんなにキレイになったら、僕…困っちゃうよ』

とか

『キレイになっただけじゃなくて、傍にいるだけでドキドキして、吸い寄せられる。まるでミツバチみたいに』

『やっぱり、良い匂いする。甘い香り……ハチミツかな?』

ですかね。

いやんもう、『僕がミツバチ』ってか?(≧∇≦)☆」
 
小笠原
「…(怒)…」

藤守
「小春、陳情書…」
 
ジュン
「小春さん、私からも…」

名前:冬子
本文:
開発中のソフトよりも彼女が大事なんて、おがさーらさんとっても彼女のことが好きなんですね。

ミツバチなんですか?

かわいーっ

おがさーらさんは働きものの蜂には見えませんけどね。

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