『非公式Twitter』

番外編から零れたふたり~藤守アニ編~

2016/11/01 16:57
久し振りに会った友達との朝食の後、私は慶史さんのお部屋を訪れていた。

お休みなのに身綺麗にしている慶史さんの穏やかな表情と、コーヒーメーカーからの香りが、私を迎え入れてくれる。

社会人たるもの、休日であってもいつもの時間に目を覚まし、テレビや新聞でニュースを取り込み、朝食と一杯のコーヒーを楽しむぐらいの余裕が無ければ駄目だと彼は言う。

##IMGU75##
「お前の淹れるコーヒーには敵わないが」

そう前置きをして、慶史さんは、コーヒーを注いだカップを私の前に置いてくれた。

ひとくち啜ると、お世辞抜きに美味しい。

「美味しいです」

そう言って微笑んだら、そわそわしながら私の感想を待っていた様子の慶史さんが、ホッとしたように頬を緩めた。

「だろう。最近気に入っている豆なのだ」

「ふふっ、違います。慶史さんが淹れてくれたからですよ」

私の言葉を素直に受け止めるのが照れくさいのか、それとももしかしてやきもちなのか。

「お前、あのムッツリに紅茶を淹れてもらった時にも、同じ事を言っているのではないだろうな?」

見当違いの事を言って怒ったような顔をする慶史さんは、私よりもずっと年上の人なのに、なんだか可愛らしい。

(マンネリなんて、無いよね)

「おい、聞いてるのか?」

その時、私の携帯から、休みの日には最も聞きたくない着信音が鳴り響いた。



慶史さんの車に乗せてもらって到着したのは、とある遊園地。

「あら、アニまで来たの?」

開口一番、室長が驚いた声を出したけれど、その声には、途中から楽しそうな響きが加わったように感じたのは気のせいかしら。

「管理者としてのお前に物申してやろうと思って来たのだ。コイツは今日、正当な休みなのだろう?」

「この遊園地で事件が同時に多発したのよ。置き引き、盗撮、爆破予告。入場客を全員退避させての捜査だから、人海戦術が必要なの」

事情を聞いて、慶史さんは室長への矛先を収め、辺りを見回して、納得したように頷いた。

「…ふむ」

「というわけでアニ。アンタは、明智と一緒に園内を廻って、不審者の捜索をお願い」

「は?」

「疑わしい人物を発見したら声を掛けてちょうだい」

「ちょっと待て!何で俺まで?!」

「櫻井を付けるわ」

「……市民の安全の為ならば仕方がないな」

如月さんと藤守さん、小笠原さんと小野瀬さんが、声を出さずに噴き出した。


それからしばらく三人で見回ったけど、怪しい人物は見つからない。

途中で出会った従業員に、普段と違う事は無いか聞いてみた。

「…そういえば、池の真ん中にスワンボートが浮かんでましたね。係が繋ぎ忘れたのかなと思ったんですけど」

「客が全員退避したのに、岸に戻ってないのは確かに不審だな。行ってみよう」

明智さんに言われて、池に向かう。

「爆発物だと危険だから、櫻井はここで待て」

真顔で告げると、私を陸に残し、二人は並んでスワンボートを漕ぎ出して行った。

無事を祈りながら見守っていると、彼らは浮かんでいた方のスワンボートの中を慎重に覗いて…赤い顔をして戻って来た。

「…カップルがイチャついていた」

「公然わいせつで逮捕するぞ、と注意してやった」

「……」

……気まずい沈黙。

やがて、他の場所で不審物が見つかった、と連絡が入った…。

***

「全員、お疲れ様。見つかった爆弾らしき不審物はただの目覚まし時計で、爆破予告はイタズラだったと判明したわ」

室長の報告に、集合した一同は胸を撫で下ろす。

「盗撮犯も置き引き犯も逮捕出来たし、ひとまず安心ね」

「じゃあ、俺は警視庁に戻るよ。まだ鑑識の仕事があるからね」

そう言って、小野瀬さんは帰って行った。

それ以外のメンバーは、さっき逮捕して園内の仮設留置所に入れた複数の容疑者の取り調べ。

私と慶史さんは元々休みだった事もあって、最後に確認の意味で園内を一回りしたら、そのまま帰っていいという事になった。

二人で歩く夜の遊園地は、まるで別世界のようで、冷え冷えとして怖いくらい。

でも、慶史さんは手を繋いでくれないどころか、無言でスタスタ歩いてゆくだけ。

もちろん、まだ不審物を探しているんだから、それが当たり前なんだけど。

(せっかく二人きりなのに、寂しいな。そういえば慶史さん、部屋でも私に触れてこなかったし…もしかして、もう、私に飽きたのかな…?)

今朝、友達に言われた「マンネリ」という言葉が頭をよぎった時、別の通路から現れたのは、さっきの従業員。

「あ、刑事さんたち、お疲れ様です。こんな奥の方まで調べて下さってるんですか」

「はい」

私が頷くと、彼は思い付いたように言った。

「そうだ。こちらに来てくれませんか」

「?」

彼についてさらに歩いていくと、植え込みの先に見えてきたのは、線路と、かわいらしい小さな駅。

「園内電車か」

ホームには、SLをデフォルメしたような可愛い機関車と、それに連結されたビタミンカラーの二両の客車が停車していた。

「座席の下とか怪しいかもしれませんね」

「うむ、調べる価値はあるな」

早速一両目に乗り込んで、網棚の上と座席の下を目視と手探りで調べていく。

…地味に腰にくる作業だ。

二両目に移った頃、さっきの従業員が戻ってきて、窓の外から話し掛けてきた。

「よろしければ、スイッチ入れましょうか?そうすれば、自動でもう一方の駅、つまり、園の出入口に近い駅まで行ってくれますよ」

「でも…」

「よろしく頼む」

私が迷っているうちに、後ろから先に慶史さんが返事をする。

「分かりました。では、お気をつけて。お疲れ様でした!」

そして、従業員は駅舎の方に走り去ってしまった。

「慶史さん」

「ま、いいではないか」

慶史さんの手が、私の腰に触れる。

促されて、私は座席に座った。

残りの座席を慶史さんが調べ終わり、電車が動き出した。

「あいつ、気を遣ってくれたのだ」

駅舎から、スイッチを入れてくれた従業員が敬礼している。

私たちは感謝を込めて、ゆっくりと遠ざかる彼に手を振った。

私の隣に腰掛けてから、慶史さんが、そっと手を握ってくれる。

「…このぐらいなら、いいか?」

見れば、慶史さんの顔が赤い。

(我慢してただけなんだ)

それに気付いたら、なんだか、今までの自分の勘違いが可笑しくて。

慶史さんが、愛しくて。

「…もっとしても、いいですよ」

手を握りかえすと、慶史さんの顔が近付いて、唇が重なった。

私を安堵させてくれる、優しいキス。

見ているのは窓の外の月だけ。

私たちは電車が終点に着くまで抱き合って、口づけを繰り返していた。


~終わり~
追記
名前:とも
本文:おぉ~、実は捜査に協力していたとは、さっすがアニ! ボートでイチャこらしていたカップルは、具体的にどんな風にイチャこら……、げふんげふん。
室長よりいっこ年の差離れてるのに、室長よりも初々しい感じがするのは、私がアニの魔法にかかってるのかしら'(*゚▽゚*)'?
でも小春さんが笛を吹いちゃうようなコトしてるのも想像つかへんかも…(笑)

名前:小春&アニ
本文:
小春
「わあともさんだ♪おはようございまーす。

イチャついてたカップルの方も、誰もいないと思っていたのに突然、スワンボートで現れた低音voiceの男前二人を見て驚いたでしょうね。

『この人たちはどういう関係なんだろう?もしかして…』」

アニ
「おかしなところを膨らますんじゃない!」

名前:ジュン
本文:
こんにちは。

慶史さん、捜査に駆り出されちゃいましたね。

まあ、それも運命ですよね(笑)

それにしても園内電車の中で抱き合ってキスだなんて、慶史さんもなかなかやりますね。

もちろんお家に帰ったら…やっぱり兄弟ですから慶史さんもややケダモノだったりするんでしょうか?

名前:小春&アニ
本文:
アニ
「だ、抱き合ってと言っても、厳密には櫻井の方が俺に身を寄せてきたのを俺としては受け止めた形でもってしかしその後抱き締めた事には間違いないから大胆と言われてしまえばそれは反論できないが家に帰ってからはそれこそもう我慢する必要はないわけでというよりむしろ恋人なのだからしかも久し振りなのだから当然いや待て兄弟ですからケダモノややケダモノとひとくくりにされてしまったらそこは兄として」

小春
「慶史さん焦りすぎですよ」

名前:冬子
本文:
忙しくささくれだった心にTwitter部屋が染み入る今日この頃……

と思ったら今日はアニさんの日かあ。

いやいや嘘ですよ。アニさん好きですよん。


言われてみればそうですね、あの藤守さんのお兄さんですしね

ケダモノ系かもしれませんね。

しかも明智さんばりに抑圧されているタイプ、仕事でのストレスも多い……

まー、爆発したら大変そう!

翼ちゃん、頑張ってね♪

名前:小春&アニ
本文:
アニ
「愚弟を基準に俺を語るな!なぜ愚弟はケダモノで俺はややケダモノなのだ?!見たのか?お前らは俺の(ピー)を見たのか?!」

小春
「慶史さんいろいろ落ち着いて」

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