『非公式Twitter』

番外編紹介「お見合い大作戦」小笠原編

2017/10/22 13:57
翌日、小笠原さんと待ち合わせしたのは、データ室だった。

扉を開くと、既に、一番奥の席で小笠原さんがパソコン画面に向かっている。

##IMGU63##小笠原
「他には誰もいないよ」

ホッとして小笠原さんの隣のデスクに座った。

小笠原さんは流れるようなブラインドタッチで、気候の変化と非行の発生件数とを対比させたデータを作成している。

「それで、何?相談って」

言いながらも指先は止まることなく、軽やかなリズムを刻む。

「あの……実は、前の部署の課長が来て…お見合いをする事になって…」

私は、小笠原さんに、お見合いの話を打ち明けた。

もちろん、義理で会うだけで、断っていいのだという事も、本当は行きたくないのだという事も。

小笠原さんはノートと画面を見比べながら、私の声に耳だけを傾けていたけれど…。

「あの……ごめんなさい……怒ってます、よね?」

カチッ。

軽やかに踊っていた、小笠原さんの指先が止まった。

ハッとして小笠原さんを見たけれど、モニタを見つめたままの横顔からは何の表情も読み取れない。

「別に」

「えっ」

小笠原さんの指が、再びキーの上でリズムを刻みはじめた。

それきり、私の方を見ようともしない。

「『別に』って…それだけですか?」

「何か言わなきゃいけない?だって、きみは断るつもりなんでしょ?なら、それでいいじゃない。それを、わざわざ相談しに来たわけ?俺は気にしないよ、そんな形式的な見合い」

作業の手を止めてくるりと椅子を回し、私に向き直った小笠原さんは、完全なポーカーフェイスだった。

「……そう…ですか…」

作業に戻った小笠原さんに、あれこれ聞くのもためらわれて。

(確かに形式的なものには違いないけど……気にしないってことは、私、もしかしてあんまり真剣に思われていないのかも……)

私はその後、消えない寂しさを胸に抱えたままデータ室を出たのだった。

閑静な住宅街、老人会のホールに集まっていたのは、平均年齢70歳を軽々と飛び越えたご老人たちだった。

「これって意味あんのかなぁ?」

「一応、お孫さんの為に、って、先方から依頼されたと聞いてますけど……」

参加したお年寄りたちの半分以上が寝ている中、如月さんの講義は、静かに静かに終了した。

片づけを始めた頃、お年寄りたちが目を覚まして、次々に声をかけてきた。

「あんたかわいい顔してるねえ。うちの、中学生の孫にそっくりだ」

「如月さん中学生に間違われてますよ」

クスリと笑った瞬間。

「孫じゃなくて曾孫だろ」

「それより、この人、うちの死んだじいちゃんによく似てるよ」

「バカだね、あんたのじいさんまだピンピンしてるじゃないか」

「あれ?」

もう、何がなんだか。

「翼ちゃん、頼むから助けてよ~」

シワシワの集団に囲まれた如月さんが悲鳴を上げる。

その時、私の携帯が鳴った。

藤守さんからだった。

『櫻井か?大変や!小笠原が倒れて、うわごとで櫻井の名前を呼んでる!」

「小笠原さんが!?…如月さんすみません!急用ができましたっ!あとをお願いしますっ!」

おじいちゃんおばあちゃんたちにもみくちゃにされている如月さんを振り切って、私は会場を飛び出した。

タクシーに飛び乗って小笠原さんの部屋に向かう間に、私は片っ端から友達に電話をかけまくった。

『あ、翼。どうしたの?…はあ、お見合い?…え、そうなんだ大変だね。…代わりに?うん、別にいいよ」

何人目かで、代役が見つかった。

「ようするに、翼のふりしてその相手に会ってくればいいわけだよね?」

電話の向こうからサバサバした声が返ってくる。

むちゃな頼みにも関わらず、快く引き受けてくれた友達に心の底から感謝した。

(よかった……あとは小笠原さんの容体が心配だけど……)

心配しているうちに、小笠原さんのマンションが見えてきた。

「小笠原さん!大丈夫ですか!?」

何度も呼び掛けてようやく開いた扉の向こうには、青白い顔をした小笠原さんが立っていた。

「…翼ちゃん?…どうして?」

「小笠原さん、急に倒れたって…ここまで送ってきたのは藤守さんだけど、うわごとで私を呼んでいるからって…だから、私…!」

途端に、小笠原さんの眉間のしわが深くなった。

「…覚えてない。非行防止教室が終わって時計を見て……『ああ、翼ちゃんは今頃、お見合いか…』そう思ったら、急に目の前が暗くなって…。気がついたら、藤守さんの車の中だった」

(小笠原さん、本当は、私のお見合いの事…倒れるほど気にしてくれてたんだ…)

たどたどしい呟きを聞いて、私は、胸が熱くなった。

「とにかく、横になってください。今夜はずっと私がついてますから」

「…お見合いは?」

「身代わりを頼みました」

説明しながら、小笠原さんをベッドに寝かせる。

口ぶりは素っ気ないけれど、彼の手はしっかりと私の手首を握っていた。

「ねえ、翼ちゃん。キスして」

「え……」

私がとまどっていると、小笠原さんがくすっと笑ってまぶたを開けた。真正面から眼が合ってしまう。

「早く」

照れくさくて思わず目をそらした瞬間、ぐっと腕を引かれた。

唇に温かいものが触れる。

「いいでしょ?ここには僕と翼しかいないんだし」

さっきまでの弱々しさはどこへやら、半身を起こした小笠原さんが首を傾げて笑った。

言葉を探してとまどっている間にも、小笠原さんが覆いかぶさって来て、視界が彼で埋め尽くされる。

今ではもう慣れ親しんだ匂いを近くに感じて、心臓がドキドキと音を立てた。

「お見合いなんて、もう、絶対にダメだから。二度と行っちゃダメだから」

「……うん」

胸の中で声に出さずに頷くと、額にやわらかい唇が触れた。

ひとつ、ふたつ。しるしをつけるように。

「今夜は……ずっとここにいて」

無限のぬくもりに体をあずける。

そっと唇がふさがれた。

溶けるほど熱い肌がゆっくりと重なって行く。

「朝まで……ずっと離さない」

耳元で囁かれた呪文に、意識がふんわりと遠くなった―――。

~終わり~
追記
名前:ジュン
本文:
翼ちゃん、今度はこーちゃんを置き去りに…(^_^;)

それにしても小笠原さんったら倒れるほど心配してたなんて。

明智さんも小笠原さんも素直じゃないですね(^-^)

でも、恋人がお見合いなんて万が一があったら!?とか考えちゃいますよね。

私だったら会うだけでもモヤモヤしちゃいます。

小笠原さんが急に倒れちゃって賢史くんも焦ったでしょうね。

名前:冬子
本文:
おがさーらさん 倒れちゃったんだ。

それは演技じゃないんでしょうね。

体に出るくらい、彼女のお見合いが嫌だったんですね。

おがさーらさん かわいいっ



話はガラッと変わりますが

小春さん、お誕生日おめでとうございます。

今年もこうしてお誕生日をお祝いできること、本当に嬉しく思います。

楽しいサイト、Twitter部屋を続けてくれて本当にありがとうございます。

そして、いつも冬子のくだらない書き込みにお返事ありがとうございます。

小春さん、小春日和シスターズの皆さんがかまってくれるから、日々楽しく過ごせます。

私の大事な栄養源です。

顔も見たことのない大事なお友達をつくるきっかけをくれたアブ恋のスタッフさん達にも感謝☆です。

今年も素敵な一年を小春さんとシスターズの皆様が過ごせるように、ディスプレイの向こう側でお祈りしてます。



さーて、冬子はおがさーらさんの看病に行かなくてはなりません。

「大丈夫、冬子はお見合いなんてしないですよー そもそもそんな話がこないしっ」

うははー

名前:小春
本文:
ジュンさんも冬子さんも私の誕生日を祝ってくださって、ありがとうございます。

実はこの「お見合い大作戦」は、私の記憶によれば本家様では最初の番外編、そして、「小春日和」では最後にご紹介する番外編です。

内容は金太郎飴方式ですけど、私はこの番外編が結構好きなんですよね。

ですから、このお話までご紹介出来た事は、自分の中では意味のある事なのです。

本家様の心の広さに感謝しますとともに、ここまでお付き合い頂いた皆さま全てにお礼を申し上げます。

私の大好きな「アブ恋」と「小春日和」を愛してくれて、ありがとうございます。

明日からもきっとこのサイトに来てくださるだろう事に、ありがとうございます。

また来年も誕生日をここで迎えられるよう、頑張ります。

これからもよろしくお願いします。

小春より愛を込めて。( ´ 3`)ちゅー

名前:エミ
本文:

小春さん、お誕生日おめでとうございます。
一日遅れちゃってゴメンナサイ(>_<)

素敵な一年になりますように!


番外編のお約束、誰かを見捨てて彼の元へ急ぐ翼ちゃん。毎回笑っちゃいます。
(*´艸`*)プクク

名前:小春
本文:
エミさん、誕生日おめでとうメッセージありがとうございます!

ワタクシは幸せ者でございます。

常連の皆様は、リアルで弟ばかりの私にとっては可愛い妹たちであり、優しいお姉さまたち。

あるいは、サイトの中に住んでいて、トモコレの姿の小さい小春とキャッキャうふふしながら暮らしてくれている大切なお友達です。

これからもどうぞよろしくお願いします。

番外編で毎回パートナーを置き去りにする翼ちゃん、次回藤守編では誰を置き去りにするのか?!←見どころが違う

頑張って編集してますのでお待ちくださいませ。

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