priceless
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結局、私と泪さんは、お台場からそのまま、泪さんのマンションに帰って来た。
穂積
「あー……、やっぱり、いいなあ」
リビングのソファーに長身を投げ出して、泪さんが伸びをする。
翼
「自分のお部屋が、いちばん?」
私が来なかった数日の間に泪さんが脱ぎ散らかした衣類や、床に落ちた雑誌を拾い集めながら、私が笑う。
すると、泪さんは不意に身体を起こして、私の腕を掴むと、勢いよく引き寄せた。
穂積
「バーカ」
翼
「きゃ!」
せっかく拾った洗濯物が、泪さんの腕の中に捕らえられた私の手から、またばらばらと床に落ちる。
穂積
「お前と一緒に部屋に帰って来る事が、に決まってるだろ」
翼
「……っ、ん」
泪さんの膝に乗せられて、キスで唇を塞がれて、きつく抱き締められた。
穂積
「……あんな男にベタベタ触られやがって」
翼
「ごめ、ん……な、さ……い……」
穂積
「許さない」
泪さんは口づけを繰り返しながら、私の服を脱がせていく。
穂積
「まさか、誕生日に、スケベ親父のブリーフに手を突っ込む羽目になるとは思わなかった」
思い出したら、ちょっと笑ってしまった。
あの時は必死で、笑うどころじゃなかったけど。
くすくす笑っていると、ブラウスのボタンを外し終えた泪さんが、唇を尖らせた。
穂積
「笑い事じゃねえよ。反省が足りねえ……ぞ……」
文句を言いながらブラウスの前を開いた途端に、泪さんの声が、途切れた。
穂積
「……」
翼
「……」
穂積
「お前……」
泪さんの掌が、下着の上から私の胸の膨らみを包んだ。
また唇を奪われ、舌を吸われる。
翼
「ん……っ」
穂積
「……ピンクのブラウスだったから……気付かなかった」
泪さんはそう言いながら、今度は性急に私のスカートのファスナーを下ろし、緩んだスカートを、下半身から引き抜いた。
穂積
「……これ……」
私は、両手で、真っ赤になった自分の顔を覆った。
今、泪さんの目に晒されているはずの自分自身の姿を想像するだけで、恥ずかしくて消えてしまいたくなる。
……薄い布地に花模様のレースが施された、赤いブラ。
……大切なところに深い切れ込みの入った、お揃いのショーツ。
両サイドは細い紐。
……そして、黒のガーターベルト……。
今日の為に、恥ずかしいのを我慢して、勇気を振り絞って通販で買ったものだ。
穂積
「……」
翼
「……あの……」
泪さんが黙り込んでしまったので、私は、恥ずかしさのあまり閉じていた目を、顔を覆った指の合間から、そろそろと開いた。
穂積
「……に……?」
翼
「……え?」
穂積
「…………俺の、為に?」
泪さんの両手が、私の身体のラインを愛おしむように、頬から腰までをゆっくりと撫でた。
その手の優しさに、胸の奥が温かくなる。
翼
「……うん……」
穂積
「ありがとう」
泪さんは照れたような表情で私を見つめながら、きちんとお礼を言ってくれた。
こんな事でお礼を言われるの、かえって恥ずかしいんだけど。
でも、泪さんが満足してくれたなら、頑張った甲斐があったかも……。
そんな事を思っていたら。
穂積
「じゃあ……せっかくだから、着たままシよっか」
翼
「へっ?」
……気のせいかしら、今、男前台無しなセリフが聞こえたような……。
でも、気のせいじゃなかったのは、目の前の泪さんが、悪魔の笑顔を浮かべた事で明らか。
穂積
「大丈夫、そういう仕組みになってるんだコレ」
翼
「きゃー!」
せめてシャワーを浴びてから、とか、お願いだから寝室で、とか、いくらなんでも明かりは消して、とか。
私の願いは、片っ端から却下。
穂積
「だって俺の誕生日だから」
翼
「とっくに日付変わってます!」
そんな理屈が通るはずもなく。
穂積
「今夜のお前、最高」
そんな風に言われたら、逆らえるはずもなく。
穂積
「愛してる」
押し倒されて囁かれたら……そう、逆らえるはずがないの。
だって……
私も、この人を愛してるから。
次第に深くなってくる口づけと、私の全てを知り尽くした愛撫が、私の心と体を甘く痺れさせてゆく。
蕩けるような気持ち良さに身を委ねながら、私は、やがて、他には何も考えられなくなるほど、泪さんに溺れていった。
……翌朝。
私が目を覚ました時、泪さんは、枕元で携帯を手にしていた。
……まさか、撮影?!
飛び起きそうになって、泪さんに制される。
穂積
「何だ、じっとしてろよ」
翼
「だって……写真とか、やだ……」
声を出して驚いた。
さんざん啼かされたせいなのか、我ながら酷い声。
穂積
「写真?……おっと、気付かなかったな俺とした事が」
にやりと笑われて、血の気が引いた。
しまった!
穂積
「じゃなくて。……明智?俺だ」
明智
『おはようございます』
なんと、泪さんは、このタイミングで電話をかけていた。
しかも、電話口から聞こえてきたのは、明智さんの声。
穂積
「明智、俺、今日休む」
明智
『は?』
穂積
「急病」
明智
『え?昨日はあんなに……あ!…っと、なるほど』
明智さんは、急に納得したような声になり、その声が、微かに笑いを含んだ。
明智
『分かりました。二人分の有給休暇の手続きを通しておきます』
穂積
「さすが明智」
明智
『あなたの右腕ですから。……櫻井によろしく』
小野瀬
『ほどほどにね、穂積』
明智さんの声の後に、小野瀬さんの笑い声が混じった。
穂積
「うっせ」
明智さんと小野瀬さんとの電話を切ると、泪さんは私を抱き枕のように抱えて、また布団に潜り込んだ。
穂積
「これでよし。さあ、二度寝しようぜ」
二度寝どころか一睡もしてません、と言い返してやりたいけど、もう、喉が掠れて声が出ない。
でも、広くて温かい胸は、擦り寄ると滑らかで気持ちよくて。
穂積
「まだ足りねえのか?」
からかってくる声に反して、私の髪を撫でてくれる手は大きくて優しくて。
上目遣いに睨みつけてみるけれど、返ってくるキスは蕩けそうに甘くて、離れた途端にまた欲しくなる。
穂積
「一日じゅう、こうしていような」
その笑顔と声に、私はやっぱり逆らえないの。
私の恋人は、悪魔の魅力の持ち主だから。
翼
「泪さん」
穂積
「ん?」
翼
「お誕生日、おめでとう」
~END~