priceless
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穂積
『疲れてるのに、悪いわね』
朝、別れたきりで、今日一日の私の行動なんて全然知らないはずなのに……。
そう思いかけて、私は、明智さんが泪さんに「報告を入れます」と言っていた事を思い出した。
もしかしたら、明智さんから私の様子を聞いて、心配して電話をかけてきてくれたのかな。
それとも、泪さんも、横浜で一人で寂しいのかな。
どちらにしても、電話をもらえて、私が嬉しい事に変わりはないけれど。
翼
「大丈夫です。今、どこですか?」
穂積
『ホテルの部屋よ。風呂から出たところ』
翼
「もう飲んでます?」
穂積
『まだこれからよ。さっき、廊下の自販機で缶ビール買って来たわ』
泪さんが携帯にアルミ缶を当てた、コツコツという音が伝わってきた。
穂積
『会議で何時間もおっさん達の声ばかり聞いてたから、アンタの声が聞きたくなったの』
退屈すぎる会議室で、でも真面目に話を聞いているふりをしなければならず、あくびを噛み殺すのに苦労したという泪さんを想像したら、思わず顔が綻んでしまった。
翼
「……私も、泪さんの声が聞きたかったです」
私は、ベッドの上に正座しながら言った。
翼
「……まだ、飲んでないなら……好きだ、って言って欲しいです」
いつもならこんな事言えないけど、電話だから、思い切って言ってみた。
穂積
『好きよ』
予想以上に本気の声が返ってきて、私はときめいてうろたえて枕を抱えてしまう。
翼
「じゃあ……愛してる……って」
穂積
『好きよ。愛してるわ』
まだオカマモードなのに……どうして、そんなに破壊力のある声なの。
翼
「……おネエ言葉で愛を囁かれるの……変な気分です」
穂積
『アンタが敬語だからでしょ』
翼
「泪さんの意地悪」
穂積
『知ってるくせに』
くっくっ、と泪さんが笑った。
穂積
『なあ、下着の隙間から指を入れてみろよ』
不意に、泪さんが男の人の声に戻って囁いたので、私はどきりとした。
穂積
『……ベッドに仰向けに寝て……耳を澄ませて、俺の息遣いを感じながら、俺がいつもするように……自分で、してみろよ』
翼
「……そんなこと……」
穂積
『出来るだろ?』
私の耳に、ふっ、と吐息が吹き込まれた。
穂積
『俺の指だと思って……お前の敏感なトコに触れて……熱くなってる……そう、そこ……』
その声と、羞恥に反して動き始めた自分の指の感触に、身体が震える。
穂積
『気持ちいいだろ?』
翼
「……やっ……あ」
穂積
『いい声だ。……もう、濡れた音が聞こえるぞ』
翼
「ん、んっ……」
否定したいけど、出来ない。
プシュ、という音は、泪さんがプルタブを開けた音。
穂積
『……ほら……お前、とろとろに溢れてきてる。……俺が擦る音も聞かせてやろうか?』
ごくり、と泪さんが喉を鳴らした。
ビールを飲む音にさえ、感じてしまうなんて。
翼
「ん……だめ……る、い、さん……っ、あ、あっ、はあっ」
穂積
『もう?』
私は、声も出せずにこくこくと頷く。
穂積
『お前って、本当に可愛いな』
泪さんの声が、笑いを含んだ。
穂積
『エロすぎ』
意地悪な響きに泣きたくなるけど、それ以上に、泪さんが欲しくてたまらない。
翼
「だって、あっ、ぁあっ、やっ……泪さん、泪さん……っ」
必死で快感を逃がそうと首を振るけれど、涙が滲んだだけ。
穂積
『……翼……、ああ……可愛い、たまんねえ』
たまらないのは私の方。
泪さんの声を聞くだけで、はしたないくらい身体が疼いて、もう、どうにかなってしまいそう。
あと、少しで。
穂積
『……このまま、イかせてやってもいいんだけどな。続きは明日だ』
翼
「イ……えっ?」
白く飛びかけていた思考が、急激に現実に戻されていく。
ちゅ、と泪さんがリップ音を立てた。
穂積
『あ、し、た。俺の誕生日だろ?』
翼
「……そ」
確かに、そうだけど……。
翼
「そうだけど……ひどい!」
だったら、今、こんな事、させなきゃいいのに!
翼
「バカバカバカ、意地悪!」
穂積
『あー、お前にそう言われるの、俺、大好き。ゾクゾクしちゃう』
電話の向こうで、泪さんが声を立てて大笑いしている。
翼
「大嫌い!」
穂積
『俺は愛してる』
翼
「……」
穂積
『世界一愛してる』
翼
「……」
穂積
『お前も、だろ?』
翼
「……うん」
私が降参すると、泪さんはまた、声を立てて笑った。
穂積
『いい子だ、おやすみ。……明日は遅くなるが、必ず帰る。覚悟しておけよ』
ちゅ、ともう一度リップ音を立てて、泪さんの電話は切れた。
翼
「……意地悪……」
でも、好き。
翼
「……世界一、愛してる……」
泪さんとの時間の余韻に浸りながら、私は、携帯を抱き締めて眠りについた……。