Tokyo☆アブナイ☆week
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~翼vision~
穂積
「脅迫メールの差出人は、フローラ・ブラン。つまり、ブランの妻だったの」
翌朝、捜査室でのミーティング。
室長はいきなり、昨夜の余韻が一気に吹き飛ぶような事を言い出した。
明智・藤守・如月・翼
「ええっ?!」
穂積
「フローラは、三ヶ月前まで、『ブラン・ノワール』のメインモデルだった。ブランと結婚し、妊娠が判明した事で、モデルを引退したのよ。現在はフランスにいるわ」
室長は、ファッション情報誌の表紙を飾っている、美しい女性の写真をミーティングテーブルに載せた。
存在感があって、華やかで、本当に綺麗な人。
(……フローラさんが引退して、メインになるチャンスが廻ってきて……)
私は昨日、茉莉花さんが、フローラさんの名前を出した事を思い出していた。
明智
「しかし、それでは……フローラはなぜ、夫の脅迫を?」
明智さんは首を傾げたけれど、その時、如月さんが、はい、と手を挙げた。
如月
「分かった!マタニティーブルーだ!」
小野瀬
「如月くん、ご明察」
扉が開いて、美声とともに入って来たのは、小野瀬さん。
手にした書類を、室長に差し出す。
小野瀬
「たった今、フランスの病院から、正式な診断書が届いた。中程度のノイローゼで、入院治療に入ったそうだよ」
室長はざっと目を通して、それを明智さんにまわした。
穂積
「……元々、例のメールは、社用とは言え、ブラン個人のメールアドレスに届いていた。フローラが街のネットカフェからフリーメールで無記名送信した為に、ブランにとっては、全く知らない第三者からのメールになったわけ」
明智
「蓋を開けて見れば、ごく内輪の問題だったわけですか」
如月
「でも、室長。フランスのネカフェからのフリーメールの発信者を特定するなんて事が、よく出来ましたね!」
如月さんが感嘆の声を漏らすと、室長はにっこり笑って、小笠原さんを背中から抱き締めた。
穂積
「それはこの子の手柄です。はい拍手ー!」
全員
「おお!!」
全員から拍手され、室長から頭を撫でられて、小笠原さんは真っ赤になった。
穂積
「ちなみに、ネットカフェの防犯カメラにフローラの姿が映っていたのを突き止めたのも、小笠原よ」
小笠原さんは、居心地悪そうにもぞもぞしている。でも、室長の腕の中から逃げようとはしない。
小笠原
「……防犯カメラが、警備会社のネットワークと連動してたからだよ。カフェ単独のものなら、ここからハッキングするのは不可能だった」
穂積
「はい、一部不適切な単語があったけど気にしないように。小笠原、本当にアンタ凄いわ。改めて、お手柄よ」
小笠原
「……」
室長に笑顔を向けられた小笠原さんは、いつものポーカーフェイスを浮かべていたけど、唇が震えているのは一目瞭然。
ついにはぴょこんと頭を下げて、逃げるように自分の席に戻ると、パソコンのディスプレイの陰に隠れてしまった。
そんな小笠原さんを、みんな微笑ましく見送って。
明智
「なるほど。……しかし、その事実を把握したのに警護が解除されないという事は、まだ、警戒が必要だと判断されているわけですね」
明智さんはそう言いながら、藤守さんに診断書をまわした。
穂積
「その通り」
室長が頷く。
診断書を手に、藤守さんが眉をひそめた。
藤守
「フローラ本人は妊娠中の女性やし、入院治療に入ったし、直接来日して行動を起こす事は無いんやろけど」
穂積
「そう。脅迫メールの発信者は特定され、監視下に置かれた。問題はここからよ」
室長が、促すように小野瀬さんを見る。
小野瀬さんが頷いた。
小野瀬
「フランスからの連絡によると、フローラは、メール送信後に、たまたまネットカフェに居合わせた十人ほどの連中に金を渡し、『渋谷☆KAGURA』のオープニングイベント……つまり《Tokyo☆Week》の期間中に、『ブラン・ノワール』のショーを妨害するよう依頼したそうだよ」
如月
「えっ、それじゃ」
小野瀬
「そう。フローラ自身も、自分が依頼した相手が誰なのか、そのうち何人が実際に行動を起こすのか、具体的に何をするつもりなのか、全く知らない」
翼
「そんな!」
私は思わず声を出してしまった。
小笠原さんが、パソコンのディスプレイから顔を上げた。
小笠原
「カフェのカメラの映像を細かく解析中だけど、フローラと逆で、全くデータの無い人物を映像から割り出して行くのは難しい」
小野瀬
「犯罪歴が無ければとっくに入国してるはずだし、《Tokyo☆Week》はもう明日からだ。フローラから現金を受け取った全員を、期間中に特定するのは不可能だろうね」
如月
「しかも、フローラと取り引きした人物が、直接来日せず、さらに、日本在住の人間に犯行を依頼する可能性もありますもんね。うわあ」
どんどん困難になる犯人探しに私たちが不安になっていると、室長が手を鳴らした。
穂積
「落ち着きなさい」
ぱん、という音に振り向いて見れば、室長も、そして明智さんも、微かな笑みさえ浮かべている。
穂積
「警護とは、そういうものよ」
明智
「そうだ。最初から相手が誰で何をしてくるか、それが分かっている警護なんてあり得ない」
私はハッとした。
……言われてみれば、確かにそうだ。
普段、捜査に携わっているので、つい、犯人の事が真っ先に気になってしまう。
でも、今回の私たちの任務は警護。
真っ先に考えなければならないのは、警護対象者の安全。
穂積
「明智の言う通りよ。捜査は二の次。全員、対象者の身を守る事を第一に行動してちょうだい」
全員
「はい!」
落ち着きを取り戻した私たちを見渡した室長は笑顔でひとつ頷いて、それから、ちょっと威儀を正した。
穂積
「……ところで、状況が変わったので、警護計画を見直さないといけないの」
全員
「はい」
穂積
「アンタたち、やってみない?」
全員
「はい?」
穂積
「モ・デ・ル♪」
全員
「……はい?!」
室長は、私たちに向かってにっこり微笑むのと同時に、逃げ出しかけた小野瀬さんの襟首を、後ろからがっちりと掴んでいた。