泪さんの犬
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~翼vision~
翼
「……」
瞳
『こんな話でよかったですか?』
翼
「……はい。ありがとうございます」
いつの間にか戻ってきた小野瀬さんが、私の肩を抱いてくれた。
瞳
『翼さんが兄と一緒に鹿児島に来てくれた時、僕は、父の言葉の意味が分かりましたよ』
翼
「……あ」
瞳
『犬が死んだ後、兄は祖父に鍛えられ、櫻井さんの盆栽を守り育て、小野瀬さんという親友と、捜査室の皆さんのような仲間を作り……、そしてようやく、あなたを守るだけの力と自信を得たんだな、と思いました』
瞳さんは、ほっ、と息をついた。
瞳
『兄は自信家に見えますが、決して自分を過信しない。身に余るものは求めない。いつも不安を抱えているんですよ。本当は……いや、これは、翼さんの方がご存知ですよね』
翼
「瞳さん……」
瞳
『今、僕から見た兄はとても強い。それは、あなたがいてくれるからです。翼さん、これからも、どうか、兄をよろしくお願いします』
瞳さんの言葉に、私は慌てて、頭を下げた。
翼
「私の方こそ」
瞳
『小野瀬さんにも、兄の職場の皆さんにも、僕はいつも感謝しているとお伝え下さい』
翼
「あの、泪さんには、何か」
瞳
『何も』
瞳さんは、不意に悪戯っぽく、くすくす笑った。
瞳
『僕から電話があった事は、秘密にして下さいね。では、おやすみなさい』
翼
「あっ」
通話が切れて、私は、小野瀬さんを振り返った。
小野瀬さんは微笑んでいる。
翼
「……小野瀬さん、ありがとうございました」
私は携帯を置いて、小野瀬さんに頭を下げた。
小野瀬
「どういたしまして。俺はただ、二人に仲良くしていて欲しいだけ」
そう言ったそばから、小野瀬さんは、私に、きれいな顔を近付けた。
小野瀬
「もちろん、このまま穂積と喧嘩別れしたら、きみは俺が頂くけどね」
翼
「うふふ」
最近では私も、これが彼なりの友情の表現だと分かってきた。
小野瀬さんはいつでも泪さんの味方だと、私は知っている。
小野瀬
「あれ?どうして笑うの?俺、本気なんだけどな」
苦笑いする小野瀬さんの声に、玄関の扉の方から聴こえてきた、鍵の外れる音とが重なった。
翼
「あ、泪さん帰って来た!」
小野瀬
「ちぇっ」
今度こそ、泪さんに謝ろう。
そうして仲直りしよう。
瞳さんと小野瀬さんに感謝して。
泪さんにまた少し近付けた気がする、ホワイトデーの夜に。
~END~