女心は秋の空
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小野瀬
「一緒にホテルにいたのは、当たり前だよね。だって、同じ集まりに参加してたんだから」
小日向
「櫻井さん、本当に、穂積室長の事、好き過ぎ。いじらしくて、可愛い。私、涙が出ちゃいます」
私の勘違いがよほど面白かったのか、小野瀬さんは我慢しながらも笑いっぱなしで、小春ちゃん、いや、小日向さんは、ハンカチで顔を押さえたまま、身体を震わせている。
小野瀬
「愛されてるねえ、穂積」
穂積
「うるせえ。……こいつは、たまに、こうなんだよ。勝手に悩んで、勝手に落ち込んで、おかしな思い込みをして、暴走して。結局、空回りして、俺をハラハラさせるんだ。人の気も知らないで」
小日向
「穂積くんをハラハラさせるなんて、凄いよね」
穂積
「穂積くんて呼ぶな」
いつのまにか、泪さんの顔が赤い。
穂積
「それで、櫻井。誤解は解けたか?」
翼
「……はい」
穂積
「声が小さい!」
翼
「はい!解けました!」
私が飛び上がると、泪さんは、後ろを振り返って、小野瀬さんと小日向さんに顔を向けた。
穂積
「と、いうわけだ。心配させて、悪かったな」
小野瀬さんは、もう、笑いを隠さなかった。
小野瀬
「はははっ、俺は構わないよ。おかげで、櫻井さんの、可愛い寝顔を見られたし」
穂積
「笑いごとじゃねえよ。それも含めて、こいつは、これからお仕置きだ」
小野瀬
「櫻井さん、ご愁傷さま」
小野瀬さんは、そう言って、私にウインクをして見せた。
小野瀬
「さて、そういう事なら、小日向さん。俺たちは、先に仕事に戻ろうか?」
小日向
「え、ええ。でも、お仕置きなんて。駄目ですよ、穂積室長」
小日向さんは、心配そうな顔で、私と泪さんを交互に見てくる。
小野瀬
「大丈夫だよ。穂積の『お仕置き』は、『好きな子にイジワルする』『ちょっと甘やかす』または『イチャイチャする』と同意語だから」
滔々と語っていた小野瀬さんの顔に、泪さんの投げた枕が直撃した。
穂積
「出てけ!」
小野瀬
「はい、はい」
小野瀬さんは怒りもせずに、笑顔で泪さんに枕を投げ返す。
それから小日向さんの手を取ると、
小野瀬
「さあ、小日向さん。馬に蹴られないうちに、今度こそ退散するとしよう」
そう言って、泪さんにもう一度枕を投げられる前に、優雅に声を立てて笑いながら、医務室を出て行った。
穂積
「……どいつもこいつも」
小野瀬さんたちが去ってドアが閉まると、泪さんは、どすん、と私のベッドに腰を下ろした。
そのまま、沈黙が下りる。
私は、おずおずと身体を起こすと、腕組みをしたままの泪さんの背中に向かって、頭を下げた。
翼
「……泪さん、あの……ごめんなさい」
穂積
「お前は、分かってない」
翼
「?」
どういう意味だろう。
聞くわけにもいかず、私は途方に暮れる。
翼
「……その……泪さんと、小日向さんの仲を、疑った事なら……」
穂積
「違う」
泪さんが、振り返った。
穂積
「俺が、お前を、若くて、小さくて、ちょっと可愛くて、頑張ってて、才能がある女だから、だから好きになった、と思っているところが、だ」
泪さんは、一息に捲し立てた。
穂積
「同じような条件の女が現れたら、俺が心変わりするんじゃないかと、お前が思っているところがだ!」
翼
「だって」
穂積
「『だって』じゃない!お前は、自分の価値を分かってない!俺にとって、お前の代わりはいない。その事を、分かってない!」
翼
「泪さん……」
穂積
「もっと、自信と誇りを持て。お前は、俺が、この俺が、心に決めた女だ」
はあっ、と大きく息を吐いた後、泪さんは、昂った気持ちを鎮めるかのように、また、顔を背けてしまった。