女心は秋の空
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その後、私たちは、まだ悪あがきする犯人グループを管区に引き渡し、やがて来てくれた所轄の警察官たちに一部始終を説明し、撮影したカメラのデータを渡した。
それを確認した警察によって、全員が現行犯逮捕されたのを見届けたところで、私と小春ちゃんは、ようやく、駅を後にした。
小日向
「櫻井さん、ありがとうございました」
くるりと振り向いた小春ちゃんに頭を下げられて、私は驚いてしまった。
翼
「とんでもない!頑張ったのは小春ちゃんだよ。私は、カメラで動画を撮っただけ。何もしてない」
小日向
「ううん。それが一番、役に立ったんです」
小春ちゃんは、ふるふると首を横に振った。
小日向
「だって、私のケータイ、ガラケーなんですもの」
小春ちゃんは、自分のケータイを見せてくれた。
録画機能はあるけれど、カメラは外側にしか向いていない。
しかも、レンズはケータイの下部である本体に付いているから、撮影しようとすると、被写体の方に向き直って、かなり高く掲げなくては撮れないのだという。
小春ちゃんは、実演してみせてくれた。
小日向
「ほらね」
なるほど……。
小日向
「それに、何も説明しないのに信じてくれて、嬉しかった。だから、ありがとうございます」
もう一度、ぺこりと頭を下げてから、にこりと笑う。
小日向
「さすが、穂積室長が選んだ人です」
翼
「小春ちゃんたら、もう。それは、言わないで」
小日向
「うふふっ」
急に泪さんの名前が出た事で、私は、ようやく、現実に戻ってきた気がした。
泪さん、褒めてくれるかな。
小日向
「ところで、私、お腹空いちゃいました」
翼
「そういえば、まだ、お夕飯食べてなかったね」
お腹ぺこぺこ、と言いながら、自分のお腹を撫でる小春ちゃんは、さっきの、勇敢な小春ちゃんとはまるで別人のように、あどけない顔をしている。
翼
「ラーメンとか食べちゃう?」
小日向
「私、餃子も付けちゃいます」
私たちは、顔を見合わせて吹き出してから、飾り気の無い、でも美味しいと評判の、ラーメン屋さんの暖簾をくぐったのだった。
穂積
「アンタたち、聞いたわよ!昨日はお手柄だったわね!」
翌朝、出勤した私と小春ちゃんを、泪さんが、満面の笑顔で迎え入れてくれた。
明智さん以下のメンバーも、全員で拍手してくれる。
穂積
「たった2人で、3人組のスリを逮捕したなんて、大したものよ」
小日向
「櫻井さんが、完璧な証拠映像を残してくれたおかげです。それに、乗客の方々も、協力してくださいました」
翼
「スリの存在に気付いて、瞬時に指示をくれた、小春ちゃんの判断が的確だったんです」
穂積
「よしよし。二人とも、偉い偉い」
泪さんが、私と小春ちゃんの頭を、同じように撫でてくれた。
明智
「落ち着いて行動出来て、立派だったな、櫻井」
藤守
「小日向は、さすが、元・鉄道警察隊や」
小笠原
「あいつら、余罪もかなりあるらしいしね」
如月
「室長、二人へのご褒美に、宴会開きましょうよ!」
穂積
「そうねえ」
泪さんは、軽く拳を作って、唇に当てた。
穂積
「ワタシは今日、夕方から会議で、何時になるか分からないわ。小日向も、先約があるのよね。週明けならいいけど、みんな、どう?」
はい、と、返事の声が揃う。
こうして、来週になったら、いつもの居酒屋で、私と小春ちゃんの為に、宴会が開かれる事が決まった。
明智
「まあ、如月は、何かと理由をつけて、飲み会を開きたいだけだと思うがな」
如月
「あ、やっぱりバレてますか?」
明智さんが言い、如月さんが頭をかいて、みんなが笑う。
その笑いの輪の中心で、私と小春ちゃんは肩を並べて、心から笑い合っていた。