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刑事部長からの呼び出しが軽いお咎めで済んだ事に安堵しながら、日が暮れて薄暗くなった廊下を通って捜査室に戻ると、まだみんな残って、私たちを待っていてくれた。
如月
「翼ちゃん、小野瀬さん、お帰りなさい!」
如月さんが、飛び付くようにして迎えてくれる。
如月
「どうだった?ねえ、どうだった?まさか、謹慎や、免職なんかにならないよね?」
翼
「大丈夫ですよ。訓告だけで済みました」
如月
「ホント?!良かったあ!」
如月さんが、私の両手をとって跳びはねる。
小笠原
「だから、大丈夫だって言ったでしょ」
明智
「ああ、さすが刑事部長だ。良かったな、櫻井。今まで通り、一緒に仕事が出来るぞ」
藤守
「ホンマに良かった、良かった!」
全員が、一斉に胸を撫で下ろす。
みんなが、私たちを本当に心配してくれていたのを感じて、私は、胸が熱くなった……。
ところが。
小野瀬
「……良くない」
私の隣にいた小野瀬さんが、今まで一度も聞いたことが無いような低い声で、ぼそりと呟いた。
小野瀬
「……良くないよ」
翼
「小野瀬さん?」
実は、刑事部長の話が終わってから、小野瀬さんはずっと深刻な顔をしていた。
会議室を出た後も、いつもの笑顔は無く、話しかけても生返事をするだけだったのだ。
翼
「どうしました?さっきから、顔色が悪いですけど……」
問いかけて、私はハッとした。
なんて馬鹿なのかしら。
刑事部長に叱られたんだもの、悩むに決まっているじゃない。
思ったより軽く済んだと感じているのは私だけで、ラボの責任者である小野瀬さんが注意を受けるという事は、それこそ、部署の査定に影響するのかもしれないのに。
なぜ、そんなことに気付かなかったのかしら。
翼
「小野瀬さん、すみません。私ったら……」
小野瀬
「……きみは、聞いただろう?刑事部長が言った事を。監察では、きみが、立花警部を誘惑した事になってるって。事実は真逆なのにも関わらず、だ」
真顔の小野瀬さんに見つめられて、私の胸は苦しくなった。
小野瀬
「俺はあの場に居たから知ってる」
小野瀬さんはいつも優しくて、たぶん今までに、こんな険しい顔で私を見つめた事はない。
小野瀬
「きみは、立花警部に狙われて、陥れられた。そのせいで、彼と交際しているという噂は警視庁じゅうに広がっている。肉体関係まで疑われている。実際、密着している写真までばらまかれている!」
小野瀬さんはその表情のまま、捜査室の中を見渡した。
小野瀬
「その上、俺とも、いや、俺だけじゃない。ここにいる捜査室のメンバーたちとも深い関係だと噂されていて、1、2、3……立花警部も入れたら、6股の遊び女だ!だから、署内の風紀を乱して、なんて言われる羽目になってるじゃないか!」
小野瀬さんの鋭い指摘は一つ一つが小さい刃になって、私の胸に刺さった。
心当たりがありすぎて反論も出来ず、私は、ただ涙をこらえて、小野瀬さんから放たれた激しい怒りの矢を受けるしか出来なかった。
翼
「……その通りです、けど、何故……」
何故、今、それを蒸し返すの?
如月
「小野瀬さん、どうしたんですか?」
小野瀬
「分からない?!この状況で、あいつが帰って来るんだよ?!」
あいつ?
小野瀬さんは長い髪をかきむしるようにして、頭を抱えた。
小野瀬
「ああ、くっそう!これでまた、あいつに頭が上がらなくなる!」
あの小野瀬さんが、こんなに悔しがるなんて……
私は、答えを求めて明智さんたちを振り返った。
明智
「…………」
藤守
「……あいつ……」
如月
「……あいつ、って……」
明智さんは青い顔をして黙り込み、藤守さんと如月さんは顔を見合わせ、小笠原さんはこちらを見て……
小笠原
「……室長が、帰って来る」
と呟いた。