ユーカリ
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~小野瀬vision~
明日は穂積の誕生日!
……おっと、失礼。
俺の名前は、小野瀬葵。
科学警察研究所から警視庁に出向して、鑑識課にラボラトリーを構えている技術官だよ。
えーと、冒頭で名前を出した穂積というのは、俺と同期で、警察庁に、キャリアと呼ばれる幹部候補として採用された男の事なんだ。
現在は警視庁に出向して、緊急特命捜査室という、ちょっと特殊な部署の室長を務めている。
12月18日は、その穂積の誕生日。
11月の俺の誕生日の時には盛大に祝ってもらったから、今度は俺がお返しをしてあげる番だよね、と思っていたところだったんだ。
なにしろ、同じ年に生まれたから同期なのに、俺の方が先に誕生日を迎えて一つ年上になった途端、「年上、年上」の連呼から始まって、「分析お願いします先輩」「肩をお揉みしますわお兄様」、果ては「アンタの方が、常にワタシより一足先にジジイに近付くのよね」と、鬼の首を獲ったようにはしゃぎまくってくれたんだから。
あ、穂積の口調が何故オカマなのかについては、またいつか、別の機会に……そう、寝物語にでも、教えてあげるね。
もっとも、穂積の子供じみた嫌がらせは、12月に入ると急激に鳴りを潜めた。
たぶん、そろそろ自分も同じ年齢になると気付いたんだろうね。
けれど、ほんの少し誕生日が早かったというだけの理由で、ほぼひと月に渡って続けられた「お兄様」攻撃を笑って水に流せるほど、俺は優しいお兄様じゃない。
さて、どんなプレゼントをお返ししてあげようか。
そもそも、穂積というのは、いたずら好きのガキ大将がそのまま大きくなったような男だ。
頭が良くて力が強くてカリスマ性があって、乱暴で。だけど面倒見が良くて。
口が悪いし性格も悪いし家の中では脱いだものも片付けられないほど自分自身に頓着が無い。職場では身綺麗にしてるのに。
そんな中身のくせに、外見は天使か絵本の王子様みたいに可憐で優雅な美貌の持ち主なんだから、質が悪い。
おかげで、ちょっと穂積が困った顔をしようものなら、何故か俺の方が後ろめたい気分になってしまう。
たまに「悪いな」なんて謝られると、普段が傍若無人なだけに、その一言でもう全部許してあげたくなってしまう始末だ。
まあ、それについては、俺の方も穂積に甘いのかもしれないけれど。
穂積は、一を聞いて十を知るほど頭の回転が速く、日本人離れした見た目のせいで幼少期に苛めを受けたからか、人の心の機微に聡い。
事件の現場を見れば容疑者の行動をおおよそ読み解いてしまうし、取り調べをさせれば相手の口から真実を供述させてしまう、悪魔のような才能の持ち主だ。
感情の整理も状況の判断も速いから、どんなに感情的に見える時でも極めて冷静だ。
そのあたり、俺とは逆のタイプと言っていいだろうな。
だから俺は、解決出来ない悩みや、判断出来ない問題がある時には、つい穂積を頼ってしまうんだよね。
穂積になら、まとまらない感情をまとまらないままぶつけても、受け止める穂積の方で整理してくれるから。
口が堅いし、もしかしたら、俺以上に親身になって、俺の問題を考えてくれるから。
俺に対して遠慮も容赦も無いけれど、俺にもそれを求めない姿勢が快いから、穂積の隣にいると居心地が良いんだ。
ただ、残念な事に、最近、穂積には彼女が出来た。
もうあの部屋を片付けなくていいのと引き換えに、俺の居場所は少し狭くなってしまった。
そう感じるのは正直言うとちょっとだけ寂しいけど、でも、喜んであげなくちゃね。
俺の方が、お兄様なんだから。