I WAS BORN TO LOVE YOU
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~穂積vision~
おそらく今年最後になるだろう、二人揃っての公休日。
惰眠を貪っても許される日のはずなのだが、悲しいかな、身体の方がいつもの時間に目を覚ました。
けれど、寝室のドアは開いていて、リビングから光が差し込んでいて、作りたての味噌汁の香りが漂って来て。
そんなささやかないくつかの違いが、今朝は、愛しい女のいる特別な朝なのだという事を、俺に教えてくれる。
翼
「♪はっぴばーすでぃ、とぅゆー……」
翼は小さな声で「HAPPY BIRTHDAY」を口ずさみながら、ベランダで俺の洗濯物を干しているらしい。
翼
「はっぴばーすでぃ、とぅゆー……」
誕生日を祝うこの歌は、昨夜の前祝いでも、翼が、俺の為に手作りしたケーキに添えて歌ってくれた歌だ。
甘さを抑えたケーキと、その後の翼の甘さを思い出しながら微睡んでいると、歌声がそろり、そろりと近付いて来た。
翼
「♪はっぴばーすでぃ、でぃあ、泪さ~ん……」
小声で囁くように歌いながら寝室の入り口に現れたのは、笑顔の翼だった。
なるほど、誕生日の朝らしい目覚まし時計だ。
ポニーテールの新鮮さと白いエプロン姿の可愛さに違うところも目覚めそうだが……、それは、言わないでおこう。
翼
「はっぴばーすでぃ、とぅ、ゆ~……」
俺と目を合わせた翼は、一層、笑顔を輝かせた。
翼
「おはようございます。お誕生日、おめでとうございます」
穂積
「満点」
俺は目を細めて寝返りを打つと、翼に向かって両腕を広げた。
穂積
「キスで起こしてくれたら、120点やろう」
翼
「120点、欲しいけど……」
ベッドの手前で歩みを止めた翼が、ポッと顔を赤くした。
翼
「……でも、裸の泪さんにキスして、違うところを起こしちゃったら困る……」
穂積
「あっはっはっはっ!」
思わず笑ってしまった。
穂積
「俺好みになってきたな。さあ、いいから来い」
笑いながら手招きすると、翼はもじもじしながらも、エプロンを外してベッドに膝を乗せてくる。
翼
「ううう。お誕生日だから。特別だから」
穂積
「誰に言い訳してるんだ」
翼はごにょごにょ言いながらも、俺が持ち上げた布団の中に、四つん這いで潜り込んできた。
抵抗しても無駄だと諦めたのか、おとなしく腕の中におさまる翼に、俺は満足して布団を掛け直す。
すると、裸のままの俺の胸に、翼が柔らかい頬をそっと押し付けてきたので、ちょっと驚いた。
翼
「あったかーい」
穂積
「どうした積極的だな」
翼
「だって、こうすると気持ちいいんだもの」
腕枕をしている手で頭を撫でてやれば、本当に気持ち良さそうに頬を擦り寄せてくる。
穂積
「俺としては、困った顔が見たいんだけどな」
さっきの話を蒸し返してやると、翼は唇を尖らせて、リクエスト通りの表情で俺を見上げた後、頬を染めて俯いた。
翼
「意地悪」
ただ、それも一瞬だけ。
翼
「……でも、好きだから」
下を向いたままでもう一言、翼が呟いた。
翼
「…………本当は、困らないけど」
穂積
「え?」
聞き直そうとした時、ぱっ、と、翼が顔を上げた。
さっきと同じ、輝くような笑顔で。
翼
「びっくりした?」
……こ。
こいつ。
俺は、いたずらを成功させて笑いながら逃げようとする翼の身体を、力ずくで引き戻した。
穂積
「翼のくせに、俺をからかうとは!」
翼
「泪さん、顔が真っ赤!」
穂積
「うるせえ!」
翼
「ドキドキした?」
穂積
「ばっ」
勘弁してくれ。
翼
「いつもは、私が泪さんにドキドキさせられてるから、仕返し!」
こんなお子ちゃまに、俺が振り回されてるなんて。
ぎゅっと抱きつかれたら、恋しくてたまらなくなるなんて。
顎を捕らえてこちらを向かせれば、翼は不意に無邪気な笑顔を消して、戸惑うような誘うような表情を見せる。
思いがけないその色気にまた、翻弄されるなんて。
穂積
「馬鹿みたいじゃねえか、俺」
翼
「……泪さん」
不意に、翼の腕がそっと俺の項にまわされたかと思うと、ぐっと引き寄せられた。
間近から俺を見つめる翼の瞳が、潤んでいる。
翼
「……本当は、自分から、なんて、すごく、恥ずかしいの。……だから……お願い」
穂積
「……翼」
柔らかい唇に吸い付けば、焦れったそうに身を捩る。
翼
「……早く……」
消え入りそうな声でねだられるままに、目の前のポニーテールをほどけば、長い髪が、俺を搦め取るように腕に纏わりついて、ぞくりとした。
穂積
「……困らせて、いいんだな」
うん、と頷くのを、確かめる間も惜しい。
俺は、突き上げる衝動に逆らわず、翼の唇を奪った。
角度を変えながら感じるところを探ると、応える翼の手が熱を持って俺を引き寄せるから、口づけが深くなる。
荒々しく翼の服のリボンを解き、二人を隔てるものを一枚ずつ剥いでゆくにつれて、愛しさが増してくる。
穂積
「気持ち良くなってきたら、『好き』って言え」
翼
「うん」
息も出来ないほどに求め合い、全てを晒して許し合い、やがてひとつに繋がれば、俺を締め付けて身体を震わせた翼の目から、涙が零れた。
翼
「……私、泪さんに、こうしてもらう為に、生まれてきたのかも」
そうだな、きっと、そうだ。
運命なんて、俺は信じない。
だけど、現に、こうして、
俺は翼を愛してる。
穂積
「翼……、翼、翼っ」
俺が、胸を支配する昂りを行動に変えてぶつけると、感極まった翼が啜り泣きながら俺にしがみついてきて、背中に爪を立てた。
翼
「泪さん、好き、好きっ、ぁ、ああああーっ!」
翼
「……泪さん」
身体を重ねたまま、まだ、息も整わないで抱き締め合っていると、翼が、俺の耳に唇を寄せて、囁いてきた。
翼
「……愛してる」
穂積
「……」
返事の代わりに指を絡め、キスの合間に見つめてやれば、翼は、とろけるような笑顔を見せた。
翼
「だから、これからも毎年、お誕生日をお祝いさせてね」
……翼。
お前のその素朴な言葉が、俺にとっては泣きたくなるほど嬉しくて、ずっと欲しかったものだったなんて、お前には、まだ、きっと分からないだろうな。
父さん、母さん、
どう思う?
俺にも、恋人が出来たんだ。
ちゃんとした、人間の女の子なんだぞ。
父さん、母さん。
俺を生んでくれて、ありがとう。
誕生日を祝うなんて、意味が無いと思っていたけど。
俺は、今、本当に、生まれてきて良かったと思っている。
~END~
You have been born to be loved by me.