『アブナイ☆恋をもう一度』
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01/11(Fri) 20:00
きゃー( 〃▽〃)
小春
ジュンさんありがとう!
小春
「じゃあ、三人で行きましょう?」
明智・JS
「え」
嬉しそうににこにこ笑う無邪気な小春の前で、もう争い続ける気も削がれてしまった明智とJSであった……
うふふうふふ。
予想通りでしょ?(笑)
正直言うと小野瀬さんにトライしようかとも思ってたけど、この二人に挟まれる方がいいわ( 〃▽〃)
いやんもう幸せで小春困っちゃう(←困ってない)
ひとまずパースヽ( ̄▽ ̄)ノ⌒○
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01/21(Mon) 12:03
デートの前に
小春
ともからもらったチケットのおかげで、日曜のグループデートが決まったのは良いけれど、今日はまだ火曜日。
しかも、穂積との距離がなかなか縮まらないままの翼にとっては、デートと言われても単純に喜べない。
なんとなく一緒にTDLに行く雰囲気になってはいるけど、よく考えたら、穂積からちゃんと誘われたわけでもないし。
翼
「はあ……」
最近、すっかり癖になってしまった溜め息をつきながら、これも習慣になった定時上がりで帰宅した翼を、実家の玄関先で迎えたのは、いつものように母だった。
母
「翼、穂積さんは?」
翼
「いつもと同じ。仕事の後、病院で診てもらってから、明智さんか小野瀬さんが車で送ってきてくれるよ」
そして、ほかならぬこの母の提案で、そんな穂積を近くの喫茶店で待つのも、翼の日課になりつつある。
母
「まだ、記憶は戻らないのね……。でも、それなら、お父さんも許してくれるかしら」
翼
「?」
母
「翼、色々あったから忘れてるでしょ。旅行の話」
翼
「旅行?…………あっ!」
忘れていた。
二ヶ月ほど前、翼自身が旅館を予約したのに。
両親に日頃の感謝を込めて、年末で忙しくなる前に温泉で保養してもらおうと提案した事も、父と母がとても喜んでそれを受け入れてくれたことも。
父親は二泊三日の休暇に備えて、すでに仕事の段取りをつけた事だろう。
専業主婦の母親は、忙しい翼や穂積が困らないよう、掃除や洗濯も済ませ、三日分の惣菜の作り置きもしてくれてあるに決まっている。
旅行は明日出発のはず。
誰も何も困らない。
ただ、翼が、あの穂積とこの家で二晩、二人きりだという以外は……
母
「お父さんは、『記憶が戻らないうちは、たとえ二人きりでも、穂積は翼に手を出すまい』。『だから構わん、予定通り行くぞ母さん』って言うんだけど」
父親の言う通りだと翼も思う。
母
「お母さんは、もし、穂積さんが翼に手を出したとしても……」
母親は、そこで、ふふ、と
笑った。
母
「……翼の方が我慢出来なくなって、そうなったとしても……別に、いいと思うのよ。だって、あなたたち、もうすぐ結婚するんですもの」
母親の言う事も、全くその通りだと翼も思う。
それより、本当に、こんな状態で結婚出来るのだろうか。
……むしろ、手を出してくれたらどんなにいいか……。
これはさすがに言えないと、翼は赤面したけれど。
***
喫茶店で、両親の旅行を告げると、穂積は意外な反応を見せた。
穂積
「お前、親孝行なんだなあ」
そう言って、感心したように目を細めたのだ。
違う事の方を心配していた自分たち家族が恥ずかしくなるくらい、至極まともというか、初々しいというか、なんというか。
記憶喪失になっていなかったとしたら、
『さすがに、実家で判事の留守にヤるわけにはいかないよなあ?スリリングだけど』
なんて言い出しそうな人と同一人物とは思えない。
それどころか、
穂積
「主のいない家にお邪魔するのは悪いだろう……。俺は、二晩くらい自分の部屋に帰ってもいいし、明智か小野瀬の家で世話になってもいいし……」
などと呟く始末。
翼
「そ、そんな事言わないでください」
(……私、久し振りに、泪さんと二人でゆっくり過ごしたいのに……)
そんな、翼の内心の嘆きが聞こえたのかどうか。
向かい合う席で翼を見つめていた穂積が、再び口を開いた。
穂積
「……いや、せっかくの機会だ。お前さえ良ければ、二人で過ごそうか」
翼
「……え……」
穂積の表情は、翼の期待したような甘いものではない。
真剣そのものの顔で穂積が口にした言葉は、翼をひやりと不安にさせた。
穂積
「ちゃんと話し合おう。今までの事と……これからの事を」
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01/21(Mon) 12:09
小春
***
翌日の、夕方。
翼の行動は昨日と変わらない。
ただ、帰宅した家には鍵がかかっていて、母の出迎えも父の帰宅も無い事を除けば。
いつもと違って、家族がいない。
寂しさに続いて、これから帰って来る穂積と二人きりなのだという事を意識した途端、翼の胸はドキドキと高鳴り始めた。
けれど同時に、こんな風に緊張しているのは自分だけだということにも、気付いていた。
翼
(……泪さんは、職場でも、いつも通りの室長だったし……)
今までは、たとえ、仕事で会えなくても、会話する暇がなくても、何も気にせず過ごせていた。
それは、たとえ直接的な触れ合いがなくても、穂積からの愛情を感じて、信じていられたから。
でも、今は……
あの事故以来、翼の胸には不安しかない。
このまま、記憶とともに、穂積の愛情まで失われてしまったら……?
じわりと目頭が熱くなって、翼は顔を両手で覆った。
その時。
穂積
「こんばんは」
玄関先で佇んでいた翼の背後で、ガラガラと引き戸が開いた。
現れたのは、穂積。
いつのまに、そんなに時間がたっていたのだろうか……
翼
「お、お帰りなさい」
穂積
「ただいま。これ、おみやげ」
穂積が翼の前に掲げて見せたのは、リカーショップの紙袋。
コルクで封された細長い瓶は、ワインだろうか。
穂積
「……どうかしたか?」
佇んでいたのを不審がられたのだと気付いた翼は、できるだけ平静を装って笑顔を浮かべた。
翼
「な、何でもありません。家に誰もいなくて、ちょっと寂しいな、って」
穂積
「ああ、いつも、お母さんがいてくれるからな」
そう言ってから、穂積は顔を家の中へ向けると、誰もいないはずの奥へ向かって、「ただいま帰りました!」と声を張った。
翼がきょとんとしていると、穂積はにこりと笑う。
穂積
「おまじないだ。やってみろ、怖くなくなるから」
翼は深呼吸すると、穂積がしたように、いつも母がいる台所に向けて、声を出した。
翼
「お母さん、ただいま!」
穂積
「はい、おかえり」
応えてくれたのは、隣にいる穂積だったけれど。
なんだか嬉しくなって、翼は穂積に笑顔を向けた。
穂積
「そうだ、そういう顔をしていろ」
ぽん、と、頭に穂積の手が乗せられる。
ずいぶん久し振りにそうされたような気がして、翼は不思議な気持ちになりながらも、しばらく、穂積に頭を撫でてもらうに任せた。
***
母からの気持ちがこもった、作りおきの料理で夕飯を済ませると、穂積と翼はそれぞれ入浴を終えて、また居間に戻っていた。
穂積がワインを開け、翼が簡単なおつまみを用意する。
座卓に並んで乾杯をした後で、翼はふと思い出した。
穂積は、たしかまだ飲酒を止められているはずだ。
という事は、このワインは、翼の為だけに用意されたもの。
翼
「……あの、しつちょ」
言いかけた翼に、穂積は、いたずらを見つけられたような表情を浮かべて、はにかむように笑った。
穂積
「少し、酔ってくれ。……それから、俺の話を聞いてほしい」
ひとまず、別れ話ではないらしい雰囲気にホッとしてから、翼はグラスに唇をつけた。
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01/22(Tue) 07:50
サイト的に書いておきたかった話
小春
***
穂積の部屋で飲むときとは違って、実家の居間では、翼も穂積も畳の上に座布団を敷いて座っている。
ワインとグラスを乗せた座卓を挟んだ上座……いつもなら翼の父が胡座をかいている席の後ろ……には床の間があって、そこには、立派な紅葉の盆栽が飾られていた。
つい先日まで、穂積の手元にあった盆栽だ。
穂積
「……俺は、あの盆栽の話を、した事があるか?」
空になりかけた翼のグラスに、穂積がワインを注いでくれた。
翼
「父が鹿児島に単身赴任していた頃、近所に住んでいた小学生の室長が、あの盆栽にホームランボールを打ち込んで鉢を割ってしまって、それを、父に内緒で自分の家に持ち帰った、って」
穂積
「そうだ。鉢を直して返そうとしたら、運悪くお前のお父さんは次の赴任先へ引っ越して行ってしまった……おかげで返し損なって、ずっと苦労した……」
苦笑いする穂積を見て、翼もつられて苦笑する。
ふう、と息を吐いてから、穂積は再び、紅葉に目を向けた。
穂積
「俺は、自分の親にも叱られた」
おや、と翼は思った。
これは、初めての話かもしれない。
穂積
「お前は、不思議に思ったことはなかったか?
自分たちの息子が、人様の大事にしている盆栽を黙って持ち帰って来たんだ。
すぐに判事の勤務先に電話をかけて、事情を話して連絡をとってもらい、引っ越し先の住所を聞いたら、直した盆栽と、お詫びの菓子折りを提げて、そこへ俺を連れて行って、目の前で一発殴って、一緒に頭を下げる。
小学生の俺には難しい事でも、親なら簡単に出来る事だ」
翼
「言われてみれば……」
穂積
「ジジイと違って俺の親は、俺の親にしては、ごく普通の、常識ある大人だ。
当然、今言ったようにして、判事に盆栽を返しに行こうと言ってくれた。
俺が、それを拒んだんだ」
翼
「拒んだ?……どうしてですか?……だって、そうすれば、終わるのに」
穂積
「……」
穂積は、黙って、翼のグラスにワインを足した。
勧めるばかりで、自分はワインを飲んでいない。
翼
「室長?」
穂積
「……嫌だったんだ。判事との縁が、終わってしまうのが」
翼
「え?」
胡座をかき、座卓に肘をついていた穂積は、身体を起こし、天井を見上げるようにして、両手を畳につく形に体勢を変えた。
穂積
「もちろん、自分の力で盆栽を返したい、というのが一番の理由だ。でも、それだけじゃない。俺は、判事が好きだった」
放課後や休日になると、翼の父の家の隣にある空き地で野球やサッカーをするのが地元の子供たちの遊びだった。
穂積
「……今でも、忘れていない。俺が、初めてホームランを打って、判事の家の窓ガラスを割った日だ。俺は、もちろん、すぐに謝りに行った。が、その日、判事は、怒らなかった」
翼
「?」
穂積
「『今日は、お前が、打ったんだな』って言ってくれた。割れた窓ガラスを片付ける間も、他には何も言わなかった。……でも、俺は、嬉しかった」
穂積は、天井を見たまま目を細める。
翼は首をかしげた。
翼
「どうして、ですか?」
穂積
「判事は、知ってたんだよ。それまでも、謝ってホームランボールを返してもらいに行ってたのは俺だった。そのたびにこっぴどく叱られたもんだが、でも、打ち込んだのは俺自身じゃなかった」
翼
「?」
穂積
「俺は、最上級生になるまで苛められてたからな。野球の時も、試合には出ず外野で球拾いばかりさせられていた。だから、判事の家に行くのは俺ばかりだったんだ」
ああ、なるほどと翼は納得した。
そういうことか、だから。
穂積
「判事は、それを、知っていてくれたんだ。嬉しかったなあ」
自分の境遇を知っていて、失敗を許してくれた……
たったそれだけの事が、子供心にそれほど染み入ったなんて、その頃の彼は、いったい、どんなに辛い日々を送っていたのだろう?
穂積
「だから、判事の盆栽も、絶対に、親の力じゃなく、自分の責任で返そうと思ったんだよ」
翼
「そうだったんですね」
翼が頷くと、穂積はゆっくりと、翼に視線を向けた。
穂積
「……それに、もうひとつ、理由があった」
翼
「理由?何ですか?」
穂積
「あの判事が、お気に入りの盆栽に名前をつけるほど大事にしている娘に、会ってみたかった」
穂積が翼を見つめる眼差しは優しくて、少し潤んでいる。
穂積
「実は、一度だけ、判事の家で、小さい子を抱いた奥さんを見かけた事がある。お前はもちろん覚えていないだろうが……俺は、それからも、判事の盆栽を眺めるたびに、思ったよ。あの女の子、大きくなったかな。どんな顔なんだろう。やっぱり判事に似てるのかな、あの奥さんに似てるといいな」
翼
「それって」
穂積
「判事が引っ越し、盆栽が俺の手元に残ってからも、俺は、毎日のように、知りもしないお前の姿を思い描いたよ。今頃、どんなふうに成長しているんだろうか、俺に会ったら、何て言うだろうか、って。俺は」
穂積の指が、翼の頬を撫でた。
穂積
「成長したお前に出会う前から、お前に会いたかった」
翼
「室長……」
穂積
「記憶を失って……目を覚ました時、そばにいたのがあの『翼』で……ましてや、俺を好きになってくれていたなんて……夢かと思ったよ」
頬を撫でる指が掌になり、見つめる眼差しに熱が灯った。
穂積
「翼」
穂積の秀麗な顔が、翼に寄せられる。
翼
「しつ」
室長、と呼びかけた翼の唇に、穂積の指が当てられた。
穂積
「酔いが足りないのか?……初恋の話を当の相手にするなんて、恥ずかしすぎるんだが」
翼
「……泪さん」
穂積の前髪が、さらりと翼をくすぐるのを感じて、翼は目を閉じた。
翼
「泪さん……」
腕いっぱいに、愛しい穂積の身体がある。
翼は、その幸せに身を任せた。
***
翌朝、干した布団と洗濯したシーツが一組だけだった事は、父も母も知らないこと……
デート前にそういう関係に。
なぜならうちの室長だから、って事で、パースヽ( ̄▽ ̄)ノ⌒○
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01/24(Thu) 10:50
幸せオーラ出ちゃってます
ジュン
バターン!!
アニ
「愚弟~!!」
翌日、ドアが壊れんばかりの勢いで開き、アニが怒鳴り込んできた。その後ろにはジュンが困った顔でついてきていた。
藤守
「なんやねん!兄貴。仕事中や!」
アニ
「なんだではない!お前、日曜日にジュンとで、デートするらしいな!」
藤守
「はあ?それがどうしてん?」
アニ
「どうしたではない!ジュンは俺の事務官だぞ!!勝手に連れ出すなど」
藤守
「ジュンは俺の恋人や!勝手ってなんやねん!?」
わーわーと言い争いをする藤守兄弟を捜査室のメンバーは呆れた顔で見ている。
ジュンはペコペコと皆に頭を下げた。
その時にジュンは翼を見て少し首を傾げた。そして翼を手招きして部屋の隅に呼ぶと
ジュン
「翼ちゃん、室長さんと何かあった?」
小声でジュンに問われて翼は顔を真っ赤にしてコクリと小さく頷いた。
ジュン
「ふふ、やっぱり。今日の翼ちゃん、すごく幸せそうだもの。」
ジュンの鋭さに驚きながらも翼はジュンと小さく笑い合った。
アニ
「とにかく、ジュンが行くなら俺も行く!」
藤守
「付いてくんな!!」
小春さん、指は大丈夫ですか?お大事にしてくださいね。
さてさて、アニはデートに付いてくるのか!?ここでパース(⌒∇⌒)ノ⌒〇
01/27(Sun) 12:22
ノープランなフラグ
小春
その時。
アニと藤守にとっても捜査室メンバーにとっても見慣れた不毛なやり取りを、一人だけ真面目な顔で見つめていた穂積が、口を開いた。
穂積
「……藤守、『ついてくるな』は酷いんじゃないか?」
「え?」
静かに諌めるような声に、その場にいた全員が驚いて穂積を振り返った。
藤守と、庇われたアニまでもが、信じられないといった面持ちで固まっている。
が、穂積の方も同じ表情だ。
穂積
「二人きりのデートならともかく、今回は大勢で行くんだ。お兄さんを邪険にする理由はないだろう?」
アニ
「……穂積!」
声を震わせたアニが、感極まった様子で駆け寄って、穂積の手を握り締めた。
アニ
「貴様、生まれ変わってようやく、この俺への敬意に目覚めたのだな!」
藤守
「いや死んでへんし」
穂積
「最初から尊敬していますよ」
アニ
「うむ!うむうむそうなのか、そうなのだな!」
アニは激しく頷く。
アニ
「聞いたか愚弟、分かったな?俺も行くぞ!」
藤守
「……へえへえ、分かりました」
堅く繋いだ穂積の手をぶんぶんと上下に振りながら勝ち誇ったように宣言するアニ、されるままの穂積、見守る捜査室メンバー。
なんだかよくわからないうちに話はまとまったらしい。
顔を見合わせる翼とジュンの背後から、ふわりと香る柑橘系の香りとともに優しく肩へ手を乗せたのは、もちろん、警視庁の光源氏こと小野瀬だ。
小野瀬
「にぎやかなデートになりそうだねえ」
ジュン
「すみません小野瀬さん、大騒ぎにしてしまって……」
ジュンは小野瀬にも頭を下げる。
小野瀬
「ふふ、気にしないで。きみのせいじゃないしね」
小野瀬は恐縮するジュンに微笑んだ後、翼にも笑顔を向けた。
小野瀬
「櫻井さん、順調に穂積と距離が縮まっているようで、何より」
翼
「え、あの、……はい、ありがとうございます」
ジュンだけでなく小野瀬にまで見抜かれるなんて、自分はどれだけ分かりやすく顔に出ているのだろう。
けれど、小野瀬は、不意に笑顔を消して、翼とジュンに囁いた。
小野瀬
「それはそうと、気を付けないといけないよ。
このところ、霞ヶ関周辺では、警視庁や検察庁の女性職員を狙った、悪質な痴漢というか、ストーカー事件が多発している」
確かに。
署内のあちこちに、注意を促す貼り紙がされているのを、ジュンも翼も目にしている。
小野瀬
「クロロホルムや刃物を持っているなんて噂もあるしね。藤守くんや穂積だって、四六時中そばにいてきみたちを守れるわけじゃないから。
特に穂積は、警察に入ってから訓練した事の記憶を全て失っている。
今の穂積は、就職したばかりの新卒警官だよ。
逮捕術も、拳銃の使い方も知らないどころか、経験も無いし、知識すら無い。
まあ悪魔だから一般の男性よりは強いかもしれないけど、今までの穂積とは違うつもりでいないといけないよ。
くれぐれも、一人では行動しないようにね。
きみたちの身に何かあったら、俺、辛くて耐えられないから」
翼・ジュン
「小野瀬さん……」
憂いを帯びた美貌で二人を気遣う小野瀬に、翼もジュンも心を動かされていると……。
明智
「小野瀬さん、どさくさ紛れにふぇろもんを放出するのはやめてください」
藤守
「ジュン、こっち来!」
明智の声で気付いた藤守が慌てて走ってきて 、ジュンの手を取って引き寄せると背中に隠した。
ここでパースヽ( ̄▽ ̄)ノ⌒○
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03/07(Thu) 11:34
起承転
小春
翼
「泪さん、明日の服の組合わせ、こんな感じでどうですか?」
TDLでのデート前日。
外出着を選ぶため、翼と穂積は、久し振りに穂積の部屋を訪れていた。
穂積
「お前に任せるよ」
翼が甲斐甲斐しく動き回って穂積のコーディネートを考える一方で、穂積の方は、にこにこしながらのんびりとソファーに腰掛けている。
穂積
「いつも、そうして俺の服を選んでくれていたのか?」
クローゼットの前から離れない翼に、そう、声をかけるが、翼はこちらを振り返りもしないほど真剣に作業中だ。
翼
「うん。でも、泪さんは服装にあまりこだわりがないし、何を着てもそれなりに決まるから、楽なの」
翼に褒められれば、悪い気はしない。
しかし、もしも翼の言葉通りだとしたら、そんなに張り切らなくても良さそうなものだが。
穂積が心に浮かんだ疑問を口に出す前に、翼が頬を染めた。
翼
「だけど……せっかくのデートだから……私の着る服と、色を合わせてほしいなと思って……」
穂積
「……」
可愛い恋人からこんな事を言われて、嬉しく思わない男がいるだろうか?
穂積
「……今なら、ピンクのスーツでも着る」
思わず翼の背中から目を逸らし、こっそりと溢れ出た穂積の独り言は、さいわい翼の耳には届かなかった。
翼
「冬のデートだから、暖色系にしました」
ようやく気が済んだのかソファーに腰を下ろし、隣から穂積を見上げてきた翼を、穂積は労うようにやわらかく抱き寄せた。
穂積
「……たかがデートじゃねえか」
態度とは裏腹な冷たい言葉に、翼の心臓はどきりと鳴った。
穂積
「……それなのに、お前がこんなに喜んでるなんて……記憶を失う前の俺は、何をしてきたんだろうな」
翼
「泪さん……」
穂積
「今の俺は、職場にいても何も出来ない。こうしていても、お前との思い出も無い。……空っぽなんだ」
翼
「……泪さん」
穂積
「ああ、愚痴を言ってるわけじゃない。……だからこそ、見えているものもある、ってことだ」
翼
「……何が、見えているの?」
穂積
「ん?色々、だ」
穂積は、肩に凭れていた翼の頭を撫でた。
翼
「色々?」
粘る翼に、穂積は苦笑する。
今までなら、都合が悪くなると翼を押し倒してそのままベッドへ……となるところだったのだが。
穂積
「……俺はずっと、自分自身の力で生き抜いてきたと思っていた」
翼の髪を梳きながら、穂積はぽつりとそれだけ言った。
穂積
「……でも、こんなに味方がいたんだな」
翼は逆に、警視庁に入って、緊急特命捜査室の室長になってからの穂積しか知らない。
いつも自信満々で、そして、それを裏打ちするだけの実力も実績も持っている。
今、目の前にいるこの穂積は、あの穂積とは違う。
あの、無敵とも思える頼もしさも感じない。
だけど、その代わりに伝わってくるのは、仲間への信頼と、翼への純粋な愛情。
それは、くすぐったいほどに心地好い。
翼
「泪さん、……キスして?」
翼の方も、この穂積の前でなら、いつもなら気にかかってしまう経験の差とか、仕事上の関係だとか……そんな事も忘れていられる。
穂積
「いいのか?」
この穂積は無邪気に笑う。
穂積
「……俺も、そうしたいと思っていた」
はにかむような微笑みを浮かべ、言葉通りに翼を抱き寄せ、唇を重ねてくれる。
拙い翼に合わせて、気持ちよくなるよう導いてくれる。
意地悪を言わない、優しい優しい穂積。
愛されているのが分かるし、翼も今の穂積を愛している。
戸惑いは皆無ではないけれど、感じる幸せは嘘でも偽りでもない。
物語やゲームのように性急でもドラマチックでもない、平凡な恋かもしれない。
けれど、このまま、ゆっくりと時間をかけて、二人の関係を育んでいくのは決して悪くない。
そう、翼は心から思っていた。
翌日のデートで、事件に巻き込まれるまでは。
***
ここでパースヽ( ̄▽ ̄)ノ⌒○
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03/08(Fri) 11:18
気づいてますよ
ジュン
デート前日、ジュンは藤守の部屋にいた。朝から一緒に行こうと藤守が部屋に泊まることを提案したのだ。
だが食事をしていても、一緒にテレビを見ていてもジュンは上の空だった。
小野瀬の『悪質な痴漢というか、ストーカー』という言葉が頭の中を占めていた。
視線を感じたのは十日前ほどだっただろうか。翼とランチをとっていた時だった。
翼はなかなか縮まらない穂積との仲を悩んでいた。
だから珍しく勘の鋭い彼女が気がつかなかったのだろう。
ジュンはどこからか自分達を見ている視線に気がついた。
こっそりと回りを窺ってみたがそれらしい人物は見つけられなかった。
ただ、その1回きりで忘れていたのだ。
(賢史くんに相談した方がいいのかな?)
ジュンは何度となく口を開きかけた。しかし、結局口に出すことはなかった。
自分の気のせいかもしれないし、もし翼が狙われているかもと話せば、普段から後輩である翼を可愛がっている賢史は心配するだろう。少しの嫉妬もあったかもしれない。
ベッドに入ってもジュンはしばらく眠れなかった。
ジュンは意外と勘が鋭い?危険に気づいているのは現在ジュンだけ!デートはどうなる?
ここでパース(⌒∇⌒)ノ⌒〇
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03/14(Thu) 11:45
ストーカーはあの人?
小春
グループデート当日。
とも
「やっほー、皆さん!TDLへようこそ!」
日本一有名なテーマパークにやって来た捜査室メンバーを、メインエントランスでともが待ち構えていてくれた。
いつもの明るい笑顔で駆け寄ってきたともに、捜査室メンバーを代表して、穂積が頭を下げる。
穂積
「白河さん、今日はお招きいただいて……」
ところが、挨拶が終わらないうちに、穂積はともに肩をぱんぱんと叩かれた。
とも
「いややわ室長さん!『白河さん』やのおて、『とも』て呼んで!今日は、友だちとして招待したんやから!」
穂積
「……ありがとうございます。……だけど、それは……諏訪野さんに悪くないかな?」
穂積の視線は、ともの後ろに立っている諏訪野の、白皙の美貌に向けられている。
それに気付いて、ともも諏訪野を振り返った。
とも
「諏訪野さんは、そのくらいで焼きもち焼くような、そんな心の狭い人と違うわ。ねっ、諏訪野さん!」
平気平気、と自分で言って笑いながら、ともは元気良く諏訪野を手招きする。
全員からの注目を浴びた諏訪野は、一同に歩み寄りながら、にこりと微笑んだ。
諏訪野
「そうだね。……いや、そうでもないかもしれないよ」
とも
「え?」
諏訪野
「俺だって、焼きもちくらい焼くってこと」
そう言うと、諏訪野は悪戯っぽく笑った。
諏訪野
「そうだな……他の男がともさんを名前で呼ぶのを俺が許す代わりに、ともさんが俺を名前で呼んでくれるのなら……許してあげようかな」
諏訪野は微笑むと長身を屈め、端整な顔をともに近付けて、じっと見つめた。
諏訪野
「そうしてくれないなら、俺も……、他の男に、きみを『とも』と呼ばせたくはないな」
とも
「諏訪野さん……」
諏訪野
「『翔』だよ、ともさん」
とも
「……し……」
甘えるような優しい口調で、人目を憚らずにともへの想いを伝えてくる諏訪野に、ともはすっかり調子を狂わされてしまったようで。
真っ赤になった顔を、両手で隠してしまった。
それを見て、諏訪野がまた笑う。
とも
「も、もう!ほんま敵わんわ……!」
小野瀬
「あー、ごほん!」
相変わらずの仲の良さを見せつける二人に、ようやく、小野瀬がわざとらしい咳払いをして助け船を出す。
小野瀬
「諏訪野、まだ朝だよ。続きは日が暮れてからにして」
諏訪野
「はは、ごめんごめん」
ともの頭を撫でてから、諏訪野がこちらを向いた。
諏訪野
「さあ、どうぞ。みんなのデートを盛り上げるんだ、って、ともさんが張り切ってるからね」
藤守
「諏訪野さんとともさんに、すっかりあてられてもうたけどな」
ジュン
「ともさん、大切にされてて羨ましいな。ねっ、小春ちゃん」
小春
「はい」
JS
「小春さん、僕だってあなたを大切に想ってますよ」
明智
「こら、勝手に小春の手を握るな」
翼
「うふふ、小春ちゃんもモテモテだね」
それぞれのカップルの姿をほほえましく眺めていた翼の手を、ふと、誰かが握り締めた。
翼
(あ……)
確かめるまでもなく、それは翼の大好きな手が触れた感触。
繋がれた手を目で追って見上げると、そこにはやっぱり穂積がいて、自分を見つめていてくれた。
穂積
「さあ、行こうか」
翼
「……はい!」
元気よく返事をした後、翼は小春たちに誘われて、荷物をロッカーに預けるついでにお手洗いに寄った。
ハンカチをバッグにしまったその時、翼のスマホがメールを受信した。
翼
「?」
翼のアドレスリストには入ってないアドレスだ。
翼の首筋が、チリッと痛んで異変を知らせた。
翼
「……」
慎重にメールを開くと、文章はたった一文だけ。
≪デートを楽しんでください エミ≫
翼
(エミ……?)
添付されていた写真を開いた翼は、ひっ、と上げかけた悲鳴を飲み込んだ。
ジュン・小春
「翼ちゃん、どうしたの?」
そこには、TDLのエントランスを背景に、ついさっき、穂積に手を握られた時の自分の姿が写っていた……
***
魔性の女、ここで登場(笑)。
というところで、パースヽ( ̄▽ ̄)ノ⌒○
[削除]
04/14(Sun) 21:02
魔性の女(笑)
小春
穂積
「どうかしたのか?」
エントランスで待っていた穂積たちの元に戻ってきた翼に、穂積が怪訝な表情を向けた。
穂積
「顔色が悪いぞ」
こういう鋭さは先天的なものなのだろうか。
翼
「……実は……」
言おうか言うまいか迷ったものの、翼は、穂積だけにそっと、スマホの画面を見せた。
メールの内容を見た穂積が、柳眉をひそめた。
穂積
「……」
翼
「泪さん……」
穂積
「例のストーカーか」
翼
「えっ」
穂積
「小野瀬が言っていただろう?最近、霞ヶ関で噂になっている、女性職員を狙ったストーカーだ」
翼
「でも、エミ、って……」
混乱する翼に、穂積は、先程送られてきた写真の、ある部分を指差した。
穂積
「写真の角度からして、身長はこれくらい」
穂積は、翼の身長より少し低い辺りを手で示した。
翼
「じゃあ……本当に、女の人?」
穂積
「たぶんな」
その時、待ちくたびれたのか、如月が小走りに近寄ってきた。
如月
「室長ー、翼ちゃーん。いつまでコソコソいちゃついてるんですか?早く中に入りましょうよー。みんなもう行っちゃいましたよ!」
穂積
「すぐ行く」
そう言うと、穂積は、翼の手を握った。
穂積
「安心しろ、翼。そのストーカーは、お前には安全だ」
翼
「え?」
穂積に手を引かれて歩き出しながら、翼はおかしな声を出してしまった。
翼
「どうしてですか?」
まだ納得いかない翼に、穂積は、振り返って苦笑いして見せた。
穂積
「よく見ろ。その写真、お前じゃなく、俺にピントが合ってる」
翼は驚いた。
慌てて見直せば、確かに、穂積のいう通りだ。
穂積
「明智、小野瀬、諏訪野の三人にだけ、警戒するよう話をしておく。お前は、他のみんなと同じように、テーマパークを楽しめばいい」
翼
「……」
刃物とか、クロロホルムとかいう噂だけを元に、黒ずくめの男性を先入観をもってしまっていた。
そういえば、実際の被害があったのかさえ、ちゃんと調べてもみなかったけれど。
まさか、女性だったなんて。
しかも、本当の目的は、男性の室長の方だったなんて……
翼は、ぎゅっ、と穂積の腕を捕まえて、しっかりと抱え込んだ。
翼
「……渡しません。泪さんは、私のです」
穂積
「翼……ああ、そうだな」
驚いたような一瞬の間をおいて、空いている方の穂積の手が、翼の頭を撫でた。
翼の耳には、その瞬間も、どこかで、シャッター音がしたような気がしていた……
***
魔性の女の目的は?!
ここでパースヽ( ̄▽ ̄)ノ⌒○
04/16(Tue) 16:33
短すぎてごめんなさい!
ジュン
???
「あ~、さすが絵になるわ。これで小野瀬さんと二人のところを撮れれば・・・」
穂積たちの団体を見失わない程度に離れてカメラを構えるエミ。
エミ
「何かハプニングでも起これば二人の格好いい姿を撮れるかしら?」
エミの目的は室長と小野瀬さんのラブラブツーショット!
さて、どんなハプニングが起こるのやら。
ここでパース(⌒∇⌒)ノ⌒〇
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04/18(Thu) 11:59
そういう事ならby小野瀬(笑)
小春
JS
「それにしてもあれですねえ」
柔らかく繋いだ小春の左手を振りながら、ひとり歌うようにジョンスミスが呟いた。
明智
「それとかあれとは何の事だ」
同じように、小春の右手を振りながら、明智がJSに顔を向ける。
JS
「ルイルイの事ですよ」
二人は小春を間に挟んでいるが、小春が頭ひとつ小さいせいで、何の障害もなく互いの顔を見ながら話す事が出来た。
JS
「怪我で記憶を失っているのはお気の毒ですが、僕としては、やっぱり、寂しいと言いますかつまらないと言いますか」
その穂積は、明智たちより数メートル先を、翼の手を引いて歩きながら、小野瀬と肩を寄せ合うようにして、何やら言葉を交わしている。
JS
「ムッツリさんは何かこう、面白いことが起きて、ルイルイの記憶がサクッと戻ればいいとは思いませんか?」
明智
「お前の話は、俺にはよくわからない。だが、おかしな事は考えるなよ」
明智は、交互に話す自分とJSを、テニス観戦のように左右に首を振りながら見上げている小春の頭を撫でてから、JSをじろりと睨んだ。
明智
「記憶があろうと無かろうと、あの人は、俺たちの大事な人なんだ」
JS
「僕にとっても、大事な好敵手ですよ」
JSは、小春と繋いでいる手を持ち上げると、小春の手の甲にキスをした。
JS
「ご心配なく。ルイルイの記憶が戻るまでは休戦です。今はあなた方の味方です」
明智
「そう願いたいな」
明智は、小春の手をぐいと引いて自分に引き寄せた。
明智
「小春、ポップコーン買ってやろうか」
JSも、負けじと小春の腕を組む。
JS
「小春さん、チュロスお好きですよね」
小春
「どっちも大好き」
二人にぎゅうと挟まれて、小春は嬉しそうに笑った。
小春
「明智さん、太郎さん。仲良く力を合わせて、室長と翼ちゃんを助けてあげてくださいね」
二人は顔を見合わせる。
小春
「私、今の室長も好きですけど、やっぱり、前の、お父さんみたいな室長が好きなんです」
小春に恋する二人からすれば爆弾のような発言をして、小春は先を歩く穂積の背中に視線を向ける。
つられて前を向いた明智とJSの視線の先では、小野瀬が、長身の穂積の腕を、自分の肩に誘って乗せるところだった。
***
ここでパースヽ( ̄▽ ̄)ノ⌒○
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05/19(Sun) 09:55
エミを探せ!
小春
穂積
「……小野瀬、どうして肩を組むんだ?」
翼と繋ぐ手の反対側から、頬がくっつきそうなほどに顔を寄せてくる小野瀬の意図が分からなくて、穂積が困惑したように尋ねた。
小野瀬
「ん?いざという時に穂積を守ってあげる為だよ、もちろん」
穂積
「守る?」
小野瀬
「俺の勘では……」
小笠原
「『エミ』の情報を手に入れたよ」
小野瀬の声を遮って、手にしているタブレットから顔を上げたのは、小笠原だ。
小笠原
「諏訪野さん。『エミ』という名前に聞き覚えはない?」
ともと腕を組んで数メートル先を歩いていた、白い髪の美青年が振り向いた。
諏訪野
「『エミ』……何人か知ってるけど」
穂積たちは諏訪野の耳の良さと、ともと歓談しながらこちらの話もしっかり聞いていた注意力に感心する。
諏訪野
「小野瀬、あの『エミさん』じゃないかな?」
小野瀬
「俺もそう思った」
とも
「『エミ』って誰やの」
鋭いともが、すぐに諏訪野を上目遣いに見上げる。
諏訪野
「おや、心配してくれるの?でも、ともさんが妬くような事は何もないよ」
とも
「ほんま?ほな信じるぅ」
如月
「息をするようにイチャつかないでくださいよ」
諏訪野
「『エミさん』は、俺たちが高校に通っていた頃、よく見かけた女の子だよ」
小野瀬
「剣道の大会や練習試合で諏訪野と一緒になる時は、必ず会場にいた気がするよね。だから俺は、熱心な諏訪野のファンだと思ってた」
諏訪野
「俺は小野瀬のファンだと思っていた」
とも
「お互いにそう思うてたやなんて、よっぽど毎試合来てたんやね」
翼
「……あの。もしかして、『エミさん』は、諏訪野さんや小野瀬さんたちみたいな、綺麗な男の人が好きなんですか?」
穂積の手を握りしめながら、翼が小野瀬に尋ねる。
小野瀬
「……うーん……厳密には、『綺麗な男の人たちが好き』なのかな?」
穂積
「どう違うんだ?」
諏訪野
「……知らない方がいいかも」
その時。
カシャカシャカシャ、微かな音とともに、素早い影が動いた。
明智
「藤守、如月、逃がすな!」
周りの迷惑にならないよう、低い声で指示を出した明智と、如月、藤守の三人が『エミ』を追って走り出した。
咄嗟の事に固まるともや翼、ジュンたちの傍らで、小野瀬と諏訪野が顔を見合わせて……はあ、と息を吐いた。
小野瀬
「……簡単には捕まえられないと思うよ……?」
ここで、パースヽ( ̄▽ ̄)ノ⌒○
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05/19(Sun) 19:11
捕まえられない
ジュン
藤守
「どこ行ったんや!?」
如月
「こっちに来たと思ったのに行き止まりですよね?」
足の速い如月と藤守、それに明智も袋小路の前で立ち止まる。
三人とも仕事がら追跡には慣れていた。まさか、女性に逃げ切られるとは・・・。
明智
「逃がしたか・・・とりあえず皆のところに戻ろう。」
三人は首を傾げながら元来た道を辿る。
エミ
「ふふっ、そう簡単には見つからないわよ。」
笑顔を浮かべ三人の背中を見送るエミ。
手にしたカメラには穂積と小野瀬の肩を組んだ写真。
エミ
「いいのが撮れちゃった。」
・・・・・
ジュン
「賢史くんは大丈夫でしょうか?」
いきなり走り出した藤守に驚きつつ、ジュンは恋人の帰りを待っていた。
アニ
「心配するな。あれでも現役の警察官だ。アブナイことにはなっていないだろう。ムッツリも一緒だったしな。」
アニの服の裾を無意識に掴むジュンの背中をポンポンと叩きながらアニはそう口にする。
暫くして三人が首を振りながら戻ってきた。
明智
「すみません、室長。逃げられました。」
三人が穂積に頭を下げる。「仕方ないな。」と答える穂積の横で小春と繋いだ手を離さずJSがスマホを取り出し電話をかけ始めた。
JSはどこに電話しているのか!?
それは私にもわからない!!
ここでパース(⌒0⌒)/⌒〇
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05/24(Fri) 11:45
小春
アニ
「いったい、どういう事なのだ?!」
……どうやら、自分たち一行の周りで、何かが起きているらしい。
その事にようやく気付いたアニが、行列の先頭に回り込んで立ちはだかり、一同の足を停めさせた。
アニ
「さっきから出てくる『エミ』とは誰だ?!ストーカーとは、どういう事だ?今、何が起きているのだ?!」
先頭にいた諏訪野とともが、返事をして良いものかどうか判じかねて、穂積と小野瀬を振り返る。
口を開いたのは小野瀬だった。
小野瀬
「ごめんね、みんな……せっかくのデートだから、出来る事なら知らせずに、内密に済ませたかったんだけど」
肩をすくめる小野瀬の言葉に応えて、明智が続けた。
明智
「そのお心遣いは分かりましたが……、すみません。自分は、室長と小野瀬さんの話を盗み聞きしてしまいました。すぐ後ろにいたので」
小野瀬
「ああ、いいんだ悪かったね。だから、さっき、真っ先に『エミ』を追って飛び出してくれたんだよね」
藤守
「俺と如月は、飛び出してから、明智さんに事情を聞きましたわ」
如月
「まさか、噂のストーカーが、女性だったなんて思いませんでしたよ」
小笠原
「俺は、ここに来る前から、その噂を調査してたから知ってた」
アニ
「なんだと?!……では、何も知らずに、デートだと浮かれていたのは、俺と山田と、女たちだけだったのか?!」
藤守
「いや、アニキはデートちゃうし」
如月
「て言うか浮かれてたんですか」
小笠原
「浮かれてたよね」
アニ
「やかましいぞ三馬鹿!」
憤るアニの前に、穂積が早足で歩み出た。
穂積
「藤守検察官、申し訳ありません。内密にしたのは俺の指示です」
そのまま頭を下げた穂積の姿を見て、アニがぎょっとした表情になる。
アニ
「穂積が俺に頭を下げた……」
翼
「あ、あの!すみません、室長は私の為に……!」
穂積
「櫻井、余計な事を言うな」
アニ
「ああもう!穂積!頭を上げろ!調子が狂う!」
アニは両手を振り回した後、穂積の顔を上げさせた。
アニ
「許す!許してやるから、順序立てて説明しろ!」
穂積
「すみません」
05/24(Fri) 11:48
続きはスレッド38で
小春
小野瀬
「じゃあ、俺から説明するよ」
顔を上げた穂積の隣に立った小野瀬が、霞ヶ関のストーカー事件について、小笠原の調べた最新の内容を加えての説明を始めた。
結果から言えば、これまで自分たちがストーカーされていると申告した女性たちは、実際には何の被害も受けてはいない。
駐車場で視線を感じた、官庁街を歩いている時に後を尾けられた気配があった、職員出入口付近で隠し撮りされた気がする、などなど。
そんな、「なんとなく不安」な出来事を複数の女性職員が体験するうち、いつしか噂に尾鰭がつき、実体の無いストーカーが誕生してしまったのだろう。
小笠原は、それらの申告を冷静に分析した結果、彼女たちの動線上に、常に、穂積がいた事を突き止めていた。
もちろん、穂積と彼女たちが同じ場所にいたのは全くの偶然なので、申告された場所にも、被害に遭ったという女性たちにも、一貫した法則性はない。
だから、彼女たちが、穂積がその場に居たという共通項に気付かず、、それぞれ、自分がストーキングされていると勘違いしたのも、無理はなかった。
小笠原
「……どうする?」
小野瀬が説明を終えた後の沈黙を破って、小笠原が穂積を見た。
小野瀬
「俺たちの知る限り、『エミ』は悪質なストーカーじゃない。だけど、付きまとわれたら迷惑だろう?」
穂積は、自分から離れようとしない翼を一瞬、見つめた。
翼
「……迷惑です」
珍しく、翼が先に答える。
翼
「特に、今の室長には。まだ、事故の怪我だって治ってないんですから」
翼が、ぎゅっ、と穂積の手を握り締める。
穂積
「櫻井……」
小野瀬
「だよね。正直穂積も、好かれたり付きまとわれたり待ち伏せされたりには慣れてるはずだから、隠し撮りされるくらい平気だろうけど」
如月
「何ですかそのスキル。イケメンて凄い」
明智
「写真が欲しいだけだとしたら、いっそ堂々と撮らせてやったらどうですか?」
藤守
「そう言うたらそうやな」
如月
「ちっちっちっ、女心が分かってないなあ二人とも。隠れてコッソリ撮るからいいんじゃないですか」
藤守
「盗撮犯の理論やないか」
明智
「女心とは関係ないだろう」
小笠原
「むしろ如月は何故分かるのさ」
それぞれが勝手に言いたい事を言って収拾がつかなくなり始めたところで、ふと、穂積がある事に気付いた。
きゃー( 〃▽〃)
小春
ジュンさんありがとう!
小春
「じゃあ、三人で行きましょう?」
明智・JS
「え」
嬉しそうににこにこ笑う無邪気な小春の前で、もう争い続ける気も削がれてしまった明智とJSであった……
うふふうふふ。
予想通りでしょ?(笑)
正直言うと小野瀬さんにトライしようかとも思ってたけど、この二人に挟まれる方がいいわ( 〃▽〃)
いやんもう幸せで小春困っちゃう(←困ってない)
ひとまずパースヽ( ̄▽ ̄)ノ⌒○
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01/21(Mon) 12:03
デートの前に
小春
ともからもらったチケットのおかげで、日曜のグループデートが決まったのは良いけれど、今日はまだ火曜日。
しかも、穂積との距離がなかなか縮まらないままの翼にとっては、デートと言われても単純に喜べない。
なんとなく一緒にTDLに行く雰囲気になってはいるけど、よく考えたら、穂積からちゃんと誘われたわけでもないし。
翼
「はあ……」
最近、すっかり癖になってしまった溜め息をつきながら、これも習慣になった定時上がりで帰宅した翼を、実家の玄関先で迎えたのは、いつものように母だった。
母
「翼、穂積さんは?」
翼
「いつもと同じ。仕事の後、病院で診てもらってから、明智さんか小野瀬さんが車で送ってきてくれるよ」
そして、ほかならぬこの母の提案で、そんな穂積を近くの喫茶店で待つのも、翼の日課になりつつある。
母
「まだ、記憶は戻らないのね……。でも、それなら、お父さんも許してくれるかしら」
翼
「?」
母
「翼、色々あったから忘れてるでしょ。旅行の話」
翼
「旅行?…………あっ!」
忘れていた。
二ヶ月ほど前、翼自身が旅館を予約したのに。
両親に日頃の感謝を込めて、年末で忙しくなる前に温泉で保養してもらおうと提案した事も、父と母がとても喜んでそれを受け入れてくれたことも。
父親は二泊三日の休暇に備えて、すでに仕事の段取りをつけた事だろう。
専業主婦の母親は、忙しい翼や穂積が困らないよう、掃除や洗濯も済ませ、三日分の惣菜の作り置きもしてくれてあるに決まっている。
旅行は明日出発のはず。
誰も何も困らない。
ただ、翼が、あの穂積とこの家で二晩、二人きりだという以外は……
母
「お父さんは、『記憶が戻らないうちは、たとえ二人きりでも、穂積は翼に手を出すまい』。『だから構わん、予定通り行くぞ母さん』って言うんだけど」
父親の言う通りだと翼も思う。
母
「お母さんは、もし、穂積さんが翼に手を出したとしても……」
母親は、そこで、ふふ、と
笑った。
母
「……翼の方が我慢出来なくなって、そうなったとしても……別に、いいと思うのよ。だって、あなたたち、もうすぐ結婚するんですもの」
母親の言う事も、全くその通りだと翼も思う。
それより、本当に、こんな状態で結婚出来るのだろうか。
……むしろ、手を出してくれたらどんなにいいか……。
これはさすがに言えないと、翼は赤面したけれど。
***
喫茶店で、両親の旅行を告げると、穂積は意外な反応を見せた。
穂積
「お前、親孝行なんだなあ」
そう言って、感心したように目を細めたのだ。
違う事の方を心配していた自分たち家族が恥ずかしくなるくらい、至極まともというか、初々しいというか、なんというか。
記憶喪失になっていなかったとしたら、
『さすがに、実家で判事の留守にヤるわけにはいかないよなあ?スリリングだけど』
なんて言い出しそうな人と同一人物とは思えない。
それどころか、
穂積
「主のいない家にお邪魔するのは悪いだろう……。俺は、二晩くらい自分の部屋に帰ってもいいし、明智か小野瀬の家で世話になってもいいし……」
などと呟く始末。
翼
「そ、そんな事言わないでください」
(……私、久し振りに、泪さんと二人でゆっくり過ごしたいのに……)
そんな、翼の内心の嘆きが聞こえたのかどうか。
向かい合う席で翼を見つめていた穂積が、再び口を開いた。
穂積
「……いや、せっかくの機会だ。お前さえ良ければ、二人で過ごそうか」
翼
「……え……」
穂積の表情は、翼の期待したような甘いものではない。
真剣そのものの顔で穂積が口にした言葉は、翼をひやりと不安にさせた。
穂積
「ちゃんと話し合おう。今までの事と……これからの事を」
[削除]
01/21(Mon) 12:09
小春
***
翌日の、夕方。
翼の行動は昨日と変わらない。
ただ、帰宅した家には鍵がかかっていて、母の出迎えも父の帰宅も無い事を除けば。
いつもと違って、家族がいない。
寂しさに続いて、これから帰って来る穂積と二人きりなのだという事を意識した途端、翼の胸はドキドキと高鳴り始めた。
けれど同時に、こんな風に緊張しているのは自分だけだということにも、気付いていた。
翼
(……泪さんは、職場でも、いつも通りの室長だったし……)
今までは、たとえ、仕事で会えなくても、会話する暇がなくても、何も気にせず過ごせていた。
それは、たとえ直接的な触れ合いがなくても、穂積からの愛情を感じて、信じていられたから。
でも、今は……
あの事故以来、翼の胸には不安しかない。
このまま、記憶とともに、穂積の愛情まで失われてしまったら……?
じわりと目頭が熱くなって、翼は顔を両手で覆った。
その時。
穂積
「こんばんは」
玄関先で佇んでいた翼の背後で、ガラガラと引き戸が開いた。
現れたのは、穂積。
いつのまに、そんなに時間がたっていたのだろうか……
翼
「お、お帰りなさい」
穂積
「ただいま。これ、おみやげ」
穂積が翼の前に掲げて見せたのは、リカーショップの紙袋。
コルクで封された細長い瓶は、ワインだろうか。
穂積
「……どうかしたか?」
佇んでいたのを不審がられたのだと気付いた翼は、できるだけ平静を装って笑顔を浮かべた。
翼
「な、何でもありません。家に誰もいなくて、ちょっと寂しいな、って」
穂積
「ああ、いつも、お母さんがいてくれるからな」
そう言ってから、穂積は顔を家の中へ向けると、誰もいないはずの奥へ向かって、「ただいま帰りました!」と声を張った。
翼がきょとんとしていると、穂積はにこりと笑う。
穂積
「おまじないだ。やってみろ、怖くなくなるから」
翼は深呼吸すると、穂積がしたように、いつも母がいる台所に向けて、声を出した。
翼
「お母さん、ただいま!」
穂積
「はい、おかえり」
応えてくれたのは、隣にいる穂積だったけれど。
なんだか嬉しくなって、翼は穂積に笑顔を向けた。
穂積
「そうだ、そういう顔をしていろ」
ぽん、と、頭に穂積の手が乗せられる。
ずいぶん久し振りにそうされたような気がして、翼は不思議な気持ちになりながらも、しばらく、穂積に頭を撫でてもらうに任せた。
***
母からの気持ちがこもった、作りおきの料理で夕飯を済ませると、穂積と翼はそれぞれ入浴を終えて、また居間に戻っていた。
穂積がワインを開け、翼が簡単なおつまみを用意する。
座卓に並んで乾杯をした後で、翼はふと思い出した。
穂積は、たしかまだ飲酒を止められているはずだ。
という事は、このワインは、翼の為だけに用意されたもの。
翼
「……あの、しつちょ」
言いかけた翼に、穂積は、いたずらを見つけられたような表情を浮かべて、はにかむように笑った。
穂積
「少し、酔ってくれ。……それから、俺の話を聞いてほしい」
ひとまず、別れ話ではないらしい雰囲気にホッとしてから、翼はグラスに唇をつけた。
[削除]
01/22(Tue) 07:50
サイト的に書いておきたかった話
小春
***
穂積の部屋で飲むときとは違って、実家の居間では、翼も穂積も畳の上に座布団を敷いて座っている。
ワインとグラスを乗せた座卓を挟んだ上座……いつもなら翼の父が胡座をかいている席の後ろ……には床の間があって、そこには、立派な紅葉の盆栽が飾られていた。
つい先日まで、穂積の手元にあった盆栽だ。
穂積
「……俺は、あの盆栽の話を、した事があるか?」
空になりかけた翼のグラスに、穂積がワインを注いでくれた。
翼
「父が鹿児島に単身赴任していた頃、近所に住んでいた小学生の室長が、あの盆栽にホームランボールを打ち込んで鉢を割ってしまって、それを、父に内緒で自分の家に持ち帰った、って」
穂積
「そうだ。鉢を直して返そうとしたら、運悪くお前のお父さんは次の赴任先へ引っ越して行ってしまった……おかげで返し損なって、ずっと苦労した……」
苦笑いする穂積を見て、翼もつられて苦笑する。
ふう、と息を吐いてから、穂積は再び、紅葉に目を向けた。
穂積
「俺は、自分の親にも叱られた」
おや、と翼は思った。
これは、初めての話かもしれない。
穂積
「お前は、不思議に思ったことはなかったか?
自分たちの息子が、人様の大事にしている盆栽を黙って持ち帰って来たんだ。
すぐに判事の勤務先に電話をかけて、事情を話して連絡をとってもらい、引っ越し先の住所を聞いたら、直した盆栽と、お詫びの菓子折りを提げて、そこへ俺を連れて行って、目の前で一発殴って、一緒に頭を下げる。
小学生の俺には難しい事でも、親なら簡単に出来る事だ」
翼
「言われてみれば……」
穂積
「ジジイと違って俺の親は、俺の親にしては、ごく普通の、常識ある大人だ。
当然、今言ったようにして、判事に盆栽を返しに行こうと言ってくれた。
俺が、それを拒んだんだ」
翼
「拒んだ?……どうしてですか?……だって、そうすれば、終わるのに」
穂積
「……」
穂積は、黙って、翼のグラスにワインを足した。
勧めるばかりで、自分はワインを飲んでいない。
翼
「室長?」
穂積
「……嫌だったんだ。判事との縁が、終わってしまうのが」
翼
「え?」
胡座をかき、座卓に肘をついていた穂積は、身体を起こし、天井を見上げるようにして、両手を畳につく形に体勢を変えた。
穂積
「もちろん、自分の力で盆栽を返したい、というのが一番の理由だ。でも、それだけじゃない。俺は、判事が好きだった」
放課後や休日になると、翼の父の家の隣にある空き地で野球やサッカーをするのが地元の子供たちの遊びだった。
穂積
「……今でも、忘れていない。俺が、初めてホームランを打って、判事の家の窓ガラスを割った日だ。俺は、もちろん、すぐに謝りに行った。が、その日、判事は、怒らなかった」
翼
「?」
穂積
「『今日は、お前が、打ったんだな』って言ってくれた。割れた窓ガラスを片付ける間も、他には何も言わなかった。……でも、俺は、嬉しかった」
穂積は、天井を見たまま目を細める。
翼は首をかしげた。
翼
「どうして、ですか?」
穂積
「判事は、知ってたんだよ。それまでも、謝ってホームランボールを返してもらいに行ってたのは俺だった。そのたびにこっぴどく叱られたもんだが、でも、打ち込んだのは俺自身じゃなかった」
翼
「?」
穂積
「俺は、最上級生になるまで苛められてたからな。野球の時も、試合には出ず外野で球拾いばかりさせられていた。だから、判事の家に行くのは俺ばかりだったんだ」
ああ、なるほどと翼は納得した。
そういうことか、だから。
穂積
「判事は、それを、知っていてくれたんだ。嬉しかったなあ」
自分の境遇を知っていて、失敗を許してくれた……
たったそれだけの事が、子供心にそれほど染み入ったなんて、その頃の彼は、いったい、どんなに辛い日々を送っていたのだろう?
穂積
「だから、判事の盆栽も、絶対に、親の力じゃなく、自分の責任で返そうと思ったんだよ」
翼
「そうだったんですね」
翼が頷くと、穂積はゆっくりと、翼に視線を向けた。
穂積
「……それに、もうひとつ、理由があった」
翼
「理由?何ですか?」
穂積
「あの判事が、お気に入りの盆栽に名前をつけるほど大事にしている娘に、会ってみたかった」
穂積が翼を見つめる眼差しは優しくて、少し潤んでいる。
穂積
「実は、一度だけ、判事の家で、小さい子を抱いた奥さんを見かけた事がある。お前はもちろん覚えていないだろうが……俺は、それからも、判事の盆栽を眺めるたびに、思ったよ。あの女の子、大きくなったかな。どんな顔なんだろう。やっぱり判事に似てるのかな、あの奥さんに似てるといいな」
翼
「それって」
穂積
「判事が引っ越し、盆栽が俺の手元に残ってからも、俺は、毎日のように、知りもしないお前の姿を思い描いたよ。今頃、どんなふうに成長しているんだろうか、俺に会ったら、何て言うだろうか、って。俺は」
穂積の指が、翼の頬を撫でた。
穂積
「成長したお前に出会う前から、お前に会いたかった」
翼
「室長……」
穂積
「記憶を失って……目を覚ました時、そばにいたのがあの『翼』で……ましてや、俺を好きになってくれていたなんて……夢かと思ったよ」
頬を撫でる指が掌になり、見つめる眼差しに熱が灯った。
穂積
「翼」
穂積の秀麗な顔が、翼に寄せられる。
翼
「しつ」
室長、と呼びかけた翼の唇に、穂積の指が当てられた。
穂積
「酔いが足りないのか?……初恋の話を当の相手にするなんて、恥ずかしすぎるんだが」
翼
「……泪さん」
穂積の前髪が、さらりと翼をくすぐるのを感じて、翼は目を閉じた。
翼
「泪さん……」
腕いっぱいに、愛しい穂積の身体がある。
翼は、その幸せに身を任せた。
***
翌朝、干した布団と洗濯したシーツが一組だけだった事は、父も母も知らないこと……
デート前にそういう関係に。
なぜならうちの室長だから、って事で、パースヽ( ̄▽ ̄)ノ⌒○
[削除]
01/24(Thu) 10:50
幸せオーラ出ちゃってます
ジュン
バターン!!
アニ
「愚弟~!!」
翌日、ドアが壊れんばかりの勢いで開き、アニが怒鳴り込んできた。その後ろにはジュンが困った顔でついてきていた。
藤守
「なんやねん!兄貴。仕事中や!」
アニ
「なんだではない!お前、日曜日にジュンとで、デートするらしいな!」
藤守
「はあ?それがどうしてん?」
アニ
「どうしたではない!ジュンは俺の事務官だぞ!!勝手に連れ出すなど」
藤守
「ジュンは俺の恋人や!勝手ってなんやねん!?」
わーわーと言い争いをする藤守兄弟を捜査室のメンバーは呆れた顔で見ている。
ジュンはペコペコと皆に頭を下げた。
その時にジュンは翼を見て少し首を傾げた。そして翼を手招きして部屋の隅に呼ぶと
ジュン
「翼ちゃん、室長さんと何かあった?」
小声でジュンに問われて翼は顔を真っ赤にしてコクリと小さく頷いた。
ジュン
「ふふ、やっぱり。今日の翼ちゃん、すごく幸せそうだもの。」
ジュンの鋭さに驚きながらも翼はジュンと小さく笑い合った。
アニ
「とにかく、ジュンが行くなら俺も行く!」
藤守
「付いてくんな!!」
小春さん、指は大丈夫ですか?お大事にしてくださいね。
さてさて、アニはデートに付いてくるのか!?ここでパース(⌒∇⌒)ノ⌒〇
01/27(Sun) 12:22
ノープランなフラグ
小春
その時。
アニと藤守にとっても捜査室メンバーにとっても見慣れた不毛なやり取りを、一人だけ真面目な顔で見つめていた穂積が、口を開いた。
穂積
「……藤守、『ついてくるな』は酷いんじゃないか?」
「え?」
静かに諌めるような声に、その場にいた全員が驚いて穂積を振り返った。
藤守と、庇われたアニまでもが、信じられないといった面持ちで固まっている。
が、穂積の方も同じ表情だ。
穂積
「二人きりのデートならともかく、今回は大勢で行くんだ。お兄さんを邪険にする理由はないだろう?」
アニ
「……穂積!」
声を震わせたアニが、感極まった様子で駆け寄って、穂積の手を握り締めた。
アニ
「貴様、生まれ変わってようやく、この俺への敬意に目覚めたのだな!」
藤守
「いや死んでへんし」
穂積
「最初から尊敬していますよ」
アニ
「うむ!うむうむそうなのか、そうなのだな!」
アニは激しく頷く。
アニ
「聞いたか愚弟、分かったな?俺も行くぞ!」
藤守
「……へえへえ、分かりました」
堅く繋いだ穂積の手をぶんぶんと上下に振りながら勝ち誇ったように宣言するアニ、されるままの穂積、見守る捜査室メンバー。
なんだかよくわからないうちに話はまとまったらしい。
顔を見合わせる翼とジュンの背後から、ふわりと香る柑橘系の香りとともに優しく肩へ手を乗せたのは、もちろん、警視庁の光源氏こと小野瀬だ。
小野瀬
「にぎやかなデートになりそうだねえ」
ジュン
「すみません小野瀬さん、大騒ぎにしてしまって……」
ジュンは小野瀬にも頭を下げる。
小野瀬
「ふふ、気にしないで。きみのせいじゃないしね」
小野瀬は恐縮するジュンに微笑んだ後、翼にも笑顔を向けた。
小野瀬
「櫻井さん、順調に穂積と距離が縮まっているようで、何より」
翼
「え、あの、……はい、ありがとうございます」
ジュンだけでなく小野瀬にまで見抜かれるなんて、自分はどれだけ分かりやすく顔に出ているのだろう。
けれど、小野瀬は、不意に笑顔を消して、翼とジュンに囁いた。
小野瀬
「それはそうと、気を付けないといけないよ。
このところ、霞ヶ関周辺では、警視庁や検察庁の女性職員を狙った、悪質な痴漢というか、ストーカー事件が多発している」
確かに。
署内のあちこちに、注意を促す貼り紙がされているのを、ジュンも翼も目にしている。
小野瀬
「クロロホルムや刃物を持っているなんて噂もあるしね。藤守くんや穂積だって、四六時中そばにいてきみたちを守れるわけじゃないから。
特に穂積は、警察に入ってから訓練した事の記憶を全て失っている。
今の穂積は、就職したばかりの新卒警官だよ。
逮捕術も、拳銃の使い方も知らないどころか、経験も無いし、知識すら無い。
まあ悪魔だから一般の男性よりは強いかもしれないけど、今までの穂積とは違うつもりでいないといけないよ。
くれぐれも、一人では行動しないようにね。
きみたちの身に何かあったら、俺、辛くて耐えられないから」
翼・ジュン
「小野瀬さん……」
憂いを帯びた美貌で二人を気遣う小野瀬に、翼もジュンも心を動かされていると……。
明智
「小野瀬さん、どさくさ紛れにふぇろもんを放出するのはやめてください」
藤守
「ジュン、こっち来!」
明智の声で気付いた藤守が慌てて走ってきて 、ジュンの手を取って引き寄せると背中に隠した。
ここでパースヽ( ̄▽ ̄)ノ⌒○
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03/07(Thu) 11:34
起承転
小春
翼
「泪さん、明日の服の組合わせ、こんな感じでどうですか?」
TDLでのデート前日。
外出着を選ぶため、翼と穂積は、久し振りに穂積の部屋を訪れていた。
穂積
「お前に任せるよ」
翼が甲斐甲斐しく動き回って穂積のコーディネートを考える一方で、穂積の方は、にこにこしながらのんびりとソファーに腰掛けている。
穂積
「いつも、そうして俺の服を選んでくれていたのか?」
クローゼットの前から離れない翼に、そう、声をかけるが、翼はこちらを振り返りもしないほど真剣に作業中だ。
翼
「うん。でも、泪さんは服装にあまりこだわりがないし、何を着てもそれなりに決まるから、楽なの」
翼に褒められれば、悪い気はしない。
しかし、もしも翼の言葉通りだとしたら、そんなに張り切らなくても良さそうなものだが。
穂積が心に浮かんだ疑問を口に出す前に、翼が頬を染めた。
翼
「だけど……せっかくのデートだから……私の着る服と、色を合わせてほしいなと思って……」
穂積
「……」
可愛い恋人からこんな事を言われて、嬉しく思わない男がいるだろうか?
穂積
「……今なら、ピンクのスーツでも着る」
思わず翼の背中から目を逸らし、こっそりと溢れ出た穂積の独り言は、さいわい翼の耳には届かなかった。
翼
「冬のデートだから、暖色系にしました」
ようやく気が済んだのかソファーに腰を下ろし、隣から穂積を見上げてきた翼を、穂積は労うようにやわらかく抱き寄せた。
穂積
「……たかがデートじゃねえか」
態度とは裏腹な冷たい言葉に、翼の心臓はどきりと鳴った。
穂積
「……それなのに、お前がこんなに喜んでるなんて……記憶を失う前の俺は、何をしてきたんだろうな」
翼
「泪さん……」
穂積
「今の俺は、職場にいても何も出来ない。こうしていても、お前との思い出も無い。……空っぽなんだ」
翼
「……泪さん」
穂積
「ああ、愚痴を言ってるわけじゃない。……だからこそ、見えているものもある、ってことだ」
翼
「……何が、見えているの?」
穂積
「ん?色々、だ」
穂積は、肩に凭れていた翼の頭を撫でた。
翼
「色々?」
粘る翼に、穂積は苦笑する。
今までなら、都合が悪くなると翼を押し倒してそのままベッドへ……となるところだったのだが。
穂積
「……俺はずっと、自分自身の力で生き抜いてきたと思っていた」
翼の髪を梳きながら、穂積はぽつりとそれだけ言った。
穂積
「……でも、こんなに味方がいたんだな」
翼は逆に、警視庁に入って、緊急特命捜査室の室長になってからの穂積しか知らない。
いつも自信満々で、そして、それを裏打ちするだけの実力も実績も持っている。
今、目の前にいるこの穂積は、あの穂積とは違う。
あの、無敵とも思える頼もしさも感じない。
だけど、その代わりに伝わってくるのは、仲間への信頼と、翼への純粋な愛情。
それは、くすぐったいほどに心地好い。
翼
「泪さん、……キスして?」
翼の方も、この穂積の前でなら、いつもなら気にかかってしまう経験の差とか、仕事上の関係だとか……そんな事も忘れていられる。
穂積
「いいのか?」
この穂積は無邪気に笑う。
穂積
「……俺も、そうしたいと思っていた」
はにかむような微笑みを浮かべ、言葉通りに翼を抱き寄せ、唇を重ねてくれる。
拙い翼に合わせて、気持ちよくなるよう導いてくれる。
意地悪を言わない、優しい優しい穂積。
愛されているのが分かるし、翼も今の穂積を愛している。
戸惑いは皆無ではないけれど、感じる幸せは嘘でも偽りでもない。
物語やゲームのように性急でもドラマチックでもない、平凡な恋かもしれない。
けれど、このまま、ゆっくりと時間をかけて、二人の関係を育んでいくのは決して悪くない。
そう、翼は心から思っていた。
翌日のデートで、事件に巻き込まれるまでは。
***
ここでパースヽ( ̄▽ ̄)ノ⌒○
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03/08(Fri) 11:18
気づいてますよ
ジュン
デート前日、ジュンは藤守の部屋にいた。朝から一緒に行こうと藤守が部屋に泊まることを提案したのだ。
だが食事をしていても、一緒にテレビを見ていてもジュンは上の空だった。
小野瀬の『悪質な痴漢というか、ストーカー』という言葉が頭の中を占めていた。
視線を感じたのは十日前ほどだっただろうか。翼とランチをとっていた時だった。
翼はなかなか縮まらない穂積との仲を悩んでいた。
だから珍しく勘の鋭い彼女が気がつかなかったのだろう。
ジュンはどこからか自分達を見ている視線に気がついた。
こっそりと回りを窺ってみたがそれらしい人物は見つけられなかった。
ただ、その1回きりで忘れていたのだ。
(賢史くんに相談した方がいいのかな?)
ジュンは何度となく口を開きかけた。しかし、結局口に出すことはなかった。
自分の気のせいかもしれないし、もし翼が狙われているかもと話せば、普段から後輩である翼を可愛がっている賢史は心配するだろう。少しの嫉妬もあったかもしれない。
ベッドに入ってもジュンはしばらく眠れなかった。
ジュンは意外と勘が鋭い?危険に気づいているのは現在ジュンだけ!デートはどうなる?
ここでパース(⌒∇⌒)ノ⌒〇
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03/14(Thu) 11:45
ストーカーはあの人?
小春
グループデート当日。
とも
「やっほー、皆さん!TDLへようこそ!」
日本一有名なテーマパークにやって来た捜査室メンバーを、メインエントランスでともが待ち構えていてくれた。
いつもの明るい笑顔で駆け寄ってきたともに、捜査室メンバーを代表して、穂積が頭を下げる。
穂積
「白河さん、今日はお招きいただいて……」
ところが、挨拶が終わらないうちに、穂積はともに肩をぱんぱんと叩かれた。
とも
「いややわ室長さん!『白河さん』やのおて、『とも』て呼んで!今日は、友だちとして招待したんやから!」
穂積
「……ありがとうございます。……だけど、それは……諏訪野さんに悪くないかな?」
穂積の視線は、ともの後ろに立っている諏訪野の、白皙の美貌に向けられている。
それに気付いて、ともも諏訪野を振り返った。
とも
「諏訪野さんは、そのくらいで焼きもち焼くような、そんな心の狭い人と違うわ。ねっ、諏訪野さん!」
平気平気、と自分で言って笑いながら、ともは元気良く諏訪野を手招きする。
全員からの注目を浴びた諏訪野は、一同に歩み寄りながら、にこりと微笑んだ。
諏訪野
「そうだね。……いや、そうでもないかもしれないよ」
とも
「え?」
諏訪野
「俺だって、焼きもちくらい焼くってこと」
そう言うと、諏訪野は悪戯っぽく笑った。
諏訪野
「そうだな……他の男がともさんを名前で呼ぶのを俺が許す代わりに、ともさんが俺を名前で呼んでくれるのなら……許してあげようかな」
諏訪野は微笑むと長身を屈め、端整な顔をともに近付けて、じっと見つめた。
諏訪野
「そうしてくれないなら、俺も……、他の男に、きみを『とも』と呼ばせたくはないな」
とも
「諏訪野さん……」
諏訪野
「『翔』だよ、ともさん」
とも
「……し……」
甘えるような優しい口調で、人目を憚らずにともへの想いを伝えてくる諏訪野に、ともはすっかり調子を狂わされてしまったようで。
真っ赤になった顔を、両手で隠してしまった。
それを見て、諏訪野がまた笑う。
とも
「も、もう!ほんま敵わんわ……!」
小野瀬
「あー、ごほん!」
相変わらずの仲の良さを見せつける二人に、ようやく、小野瀬がわざとらしい咳払いをして助け船を出す。
小野瀬
「諏訪野、まだ朝だよ。続きは日が暮れてからにして」
諏訪野
「はは、ごめんごめん」
ともの頭を撫でてから、諏訪野がこちらを向いた。
諏訪野
「さあ、どうぞ。みんなのデートを盛り上げるんだ、って、ともさんが張り切ってるからね」
藤守
「諏訪野さんとともさんに、すっかりあてられてもうたけどな」
ジュン
「ともさん、大切にされてて羨ましいな。ねっ、小春ちゃん」
小春
「はい」
JS
「小春さん、僕だってあなたを大切に想ってますよ」
明智
「こら、勝手に小春の手を握るな」
翼
「うふふ、小春ちゃんもモテモテだね」
それぞれのカップルの姿をほほえましく眺めていた翼の手を、ふと、誰かが握り締めた。
翼
(あ……)
確かめるまでもなく、それは翼の大好きな手が触れた感触。
繋がれた手を目で追って見上げると、そこにはやっぱり穂積がいて、自分を見つめていてくれた。
穂積
「さあ、行こうか」
翼
「……はい!」
元気よく返事をした後、翼は小春たちに誘われて、荷物をロッカーに預けるついでにお手洗いに寄った。
ハンカチをバッグにしまったその時、翼のスマホがメールを受信した。
翼
「?」
翼のアドレスリストには入ってないアドレスだ。
翼の首筋が、チリッと痛んで異変を知らせた。
翼
「……」
慎重にメールを開くと、文章はたった一文だけ。
≪デートを楽しんでください エミ≫
翼
(エミ……?)
添付されていた写真を開いた翼は、ひっ、と上げかけた悲鳴を飲み込んだ。
ジュン・小春
「翼ちゃん、どうしたの?」
そこには、TDLのエントランスを背景に、ついさっき、穂積に手を握られた時の自分の姿が写っていた……
***
魔性の女、ここで登場(笑)。
というところで、パースヽ( ̄▽ ̄)ノ⌒○
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04/14(Sun) 21:02
魔性の女(笑)
小春
穂積
「どうかしたのか?」
エントランスで待っていた穂積たちの元に戻ってきた翼に、穂積が怪訝な表情を向けた。
穂積
「顔色が悪いぞ」
こういう鋭さは先天的なものなのだろうか。
翼
「……実は……」
言おうか言うまいか迷ったものの、翼は、穂積だけにそっと、スマホの画面を見せた。
メールの内容を見た穂積が、柳眉をひそめた。
穂積
「……」
翼
「泪さん……」
穂積
「例のストーカーか」
翼
「えっ」
穂積
「小野瀬が言っていただろう?最近、霞ヶ関で噂になっている、女性職員を狙ったストーカーだ」
翼
「でも、エミ、って……」
混乱する翼に、穂積は、先程送られてきた写真の、ある部分を指差した。
穂積
「写真の角度からして、身長はこれくらい」
穂積は、翼の身長より少し低い辺りを手で示した。
翼
「じゃあ……本当に、女の人?」
穂積
「たぶんな」
その時、待ちくたびれたのか、如月が小走りに近寄ってきた。
如月
「室長ー、翼ちゃーん。いつまでコソコソいちゃついてるんですか?早く中に入りましょうよー。みんなもう行っちゃいましたよ!」
穂積
「すぐ行く」
そう言うと、穂積は、翼の手を握った。
穂積
「安心しろ、翼。そのストーカーは、お前には安全だ」
翼
「え?」
穂積に手を引かれて歩き出しながら、翼はおかしな声を出してしまった。
翼
「どうしてですか?」
まだ納得いかない翼に、穂積は、振り返って苦笑いして見せた。
穂積
「よく見ろ。その写真、お前じゃなく、俺にピントが合ってる」
翼は驚いた。
慌てて見直せば、確かに、穂積のいう通りだ。
穂積
「明智、小野瀬、諏訪野の三人にだけ、警戒するよう話をしておく。お前は、他のみんなと同じように、テーマパークを楽しめばいい」
翼
「……」
刃物とか、クロロホルムとかいう噂だけを元に、黒ずくめの男性を先入観をもってしまっていた。
そういえば、実際の被害があったのかさえ、ちゃんと調べてもみなかったけれど。
まさか、女性だったなんて。
しかも、本当の目的は、男性の室長の方だったなんて……
翼は、ぎゅっ、と穂積の腕を捕まえて、しっかりと抱え込んだ。
翼
「……渡しません。泪さんは、私のです」
穂積
「翼……ああ、そうだな」
驚いたような一瞬の間をおいて、空いている方の穂積の手が、翼の頭を撫でた。
翼の耳には、その瞬間も、どこかで、シャッター音がしたような気がしていた……
***
魔性の女の目的は?!
ここでパースヽ( ̄▽ ̄)ノ⌒○
04/16(Tue) 16:33
短すぎてごめんなさい!
ジュン
???
「あ~、さすが絵になるわ。これで小野瀬さんと二人のところを撮れれば・・・」
穂積たちの団体を見失わない程度に離れてカメラを構えるエミ。
エミ
「何かハプニングでも起これば二人の格好いい姿を撮れるかしら?」
エミの目的は室長と小野瀬さんのラブラブツーショット!
さて、どんなハプニングが起こるのやら。
ここでパース(⌒∇⌒)ノ⌒〇
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04/18(Thu) 11:59
そういう事ならby小野瀬(笑)
小春
JS
「それにしてもあれですねえ」
柔らかく繋いだ小春の左手を振りながら、ひとり歌うようにジョンスミスが呟いた。
明智
「それとかあれとは何の事だ」
同じように、小春の右手を振りながら、明智がJSに顔を向ける。
JS
「ルイルイの事ですよ」
二人は小春を間に挟んでいるが、小春が頭ひとつ小さいせいで、何の障害もなく互いの顔を見ながら話す事が出来た。
JS
「怪我で記憶を失っているのはお気の毒ですが、僕としては、やっぱり、寂しいと言いますかつまらないと言いますか」
その穂積は、明智たちより数メートル先を、翼の手を引いて歩きながら、小野瀬と肩を寄せ合うようにして、何やら言葉を交わしている。
JS
「ムッツリさんは何かこう、面白いことが起きて、ルイルイの記憶がサクッと戻ればいいとは思いませんか?」
明智
「お前の話は、俺にはよくわからない。だが、おかしな事は考えるなよ」
明智は、交互に話す自分とJSを、テニス観戦のように左右に首を振りながら見上げている小春の頭を撫でてから、JSをじろりと睨んだ。
明智
「記憶があろうと無かろうと、あの人は、俺たちの大事な人なんだ」
JS
「僕にとっても、大事な好敵手ですよ」
JSは、小春と繋いでいる手を持ち上げると、小春の手の甲にキスをした。
JS
「ご心配なく。ルイルイの記憶が戻るまでは休戦です。今はあなた方の味方です」
明智
「そう願いたいな」
明智は、小春の手をぐいと引いて自分に引き寄せた。
明智
「小春、ポップコーン買ってやろうか」
JSも、負けじと小春の腕を組む。
JS
「小春さん、チュロスお好きですよね」
小春
「どっちも大好き」
二人にぎゅうと挟まれて、小春は嬉しそうに笑った。
小春
「明智さん、太郎さん。仲良く力を合わせて、室長と翼ちゃんを助けてあげてくださいね」
二人は顔を見合わせる。
小春
「私、今の室長も好きですけど、やっぱり、前の、お父さんみたいな室長が好きなんです」
小春に恋する二人からすれば爆弾のような発言をして、小春は先を歩く穂積の背中に視線を向ける。
つられて前を向いた明智とJSの視線の先では、小野瀬が、長身の穂積の腕を、自分の肩に誘って乗せるところだった。
***
ここでパースヽ( ̄▽ ̄)ノ⌒○
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05/19(Sun) 09:55
エミを探せ!
小春
穂積
「……小野瀬、どうして肩を組むんだ?」
翼と繋ぐ手の反対側から、頬がくっつきそうなほどに顔を寄せてくる小野瀬の意図が分からなくて、穂積が困惑したように尋ねた。
小野瀬
「ん?いざという時に穂積を守ってあげる為だよ、もちろん」
穂積
「守る?」
小野瀬
「俺の勘では……」
小笠原
「『エミ』の情報を手に入れたよ」
小野瀬の声を遮って、手にしているタブレットから顔を上げたのは、小笠原だ。
小笠原
「諏訪野さん。『エミ』という名前に聞き覚えはない?」
ともと腕を組んで数メートル先を歩いていた、白い髪の美青年が振り向いた。
諏訪野
「『エミ』……何人か知ってるけど」
穂積たちは諏訪野の耳の良さと、ともと歓談しながらこちらの話もしっかり聞いていた注意力に感心する。
諏訪野
「小野瀬、あの『エミさん』じゃないかな?」
小野瀬
「俺もそう思った」
とも
「『エミ』って誰やの」
鋭いともが、すぐに諏訪野を上目遣いに見上げる。
諏訪野
「おや、心配してくれるの?でも、ともさんが妬くような事は何もないよ」
とも
「ほんま?ほな信じるぅ」
如月
「息をするようにイチャつかないでくださいよ」
諏訪野
「『エミさん』は、俺たちが高校に通っていた頃、よく見かけた女の子だよ」
小野瀬
「剣道の大会や練習試合で諏訪野と一緒になる時は、必ず会場にいた気がするよね。だから俺は、熱心な諏訪野のファンだと思ってた」
諏訪野
「俺は小野瀬のファンだと思っていた」
とも
「お互いにそう思うてたやなんて、よっぽど毎試合来てたんやね」
翼
「……あの。もしかして、『エミさん』は、諏訪野さんや小野瀬さんたちみたいな、綺麗な男の人が好きなんですか?」
穂積の手を握りしめながら、翼が小野瀬に尋ねる。
小野瀬
「……うーん……厳密には、『綺麗な男の人たちが好き』なのかな?」
穂積
「どう違うんだ?」
諏訪野
「……知らない方がいいかも」
その時。
カシャカシャカシャ、微かな音とともに、素早い影が動いた。
明智
「藤守、如月、逃がすな!」
周りの迷惑にならないよう、低い声で指示を出した明智と、如月、藤守の三人が『エミ』を追って走り出した。
咄嗟の事に固まるともや翼、ジュンたちの傍らで、小野瀬と諏訪野が顔を見合わせて……はあ、と息を吐いた。
小野瀬
「……簡単には捕まえられないと思うよ……?」
ここで、パースヽ( ̄▽ ̄)ノ⌒○
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05/19(Sun) 19:11
捕まえられない
ジュン
藤守
「どこ行ったんや!?」
如月
「こっちに来たと思ったのに行き止まりですよね?」
足の速い如月と藤守、それに明智も袋小路の前で立ち止まる。
三人とも仕事がら追跡には慣れていた。まさか、女性に逃げ切られるとは・・・。
明智
「逃がしたか・・・とりあえず皆のところに戻ろう。」
三人は首を傾げながら元来た道を辿る。
エミ
「ふふっ、そう簡単には見つからないわよ。」
笑顔を浮かべ三人の背中を見送るエミ。
手にしたカメラには穂積と小野瀬の肩を組んだ写真。
エミ
「いいのが撮れちゃった。」
・・・・・
ジュン
「賢史くんは大丈夫でしょうか?」
いきなり走り出した藤守に驚きつつ、ジュンは恋人の帰りを待っていた。
アニ
「心配するな。あれでも現役の警察官だ。アブナイことにはなっていないだろう。ムッツリも一緒だったしな。」
アニの服の裾を無意識に掴むジュンの背中をポンポンと叩きながらアニはそう口にする。
暫くして三人が首を振りながら戻ってきた。
明智
「すみません、室長。逃げられました。」
三人が穂積に頭を下げる。「仕方ないな。」と答える穂積の横で小春と繋いだ手を離さずJSがスマホを取り出し電話をかけ始めた。
JSはどこに電話しているのか!?
それは私にもわからない!!
ここでパース(⌒0⌒)/⌒〇
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05/24(Fri) 11:45
小春
アニ
「いったい、どういう事なのだ?!」
……どうやら、自分たち一行の周りで、何かが起きているらしい。
その事にようやく気付いたアニが、行列の先頭に回り込んで立ちはだかり、一同の足を停めさせた。
アニ
「さっきから出てくる『エミ』とは誰だ?!ストーカーとは、どういう事だ?今、何が起きているのだ?!」
先頭にいた諏訪野とともが、返事をして良いものかどうか判じかねて、穂積と小野瀬を振り返る。
口を開いたのは小野瀬だった。
小野瀬
「ごめんね、みんな……せっかくのデートだから、出来る事なら知らせずに、内密に済ませたかったんだけど」
肩をすくめる小野瀬の言葉に応えて、明智が続けた。
明智
「そのお心遣いは分かりましたが……、すみません。自分は、室長と小野瀬さんの話を盗み聞きしてしまいました。すぐ後ろにいたので」
小野瀬
「ああ、いいんだ悪かったね。だから、さっき、真っ先に『エミ』を追って飛び出してくれたんだよね」
藤守
「俺と如月は、飛び出してから、明智さんに事情を聞きましたわ」
如月
「まさか、噂のストーカーが、女性だったなんて思いませんでしたよ」
小笠原
「俺は、ここに来る前から、その噂を調査してたから知ってた」
アニ
「なんだと?!……では、何も知らずに、デートだと浮かれていたのは、俺と山田と、女たちだけだったのか?!」
藤守
「いや、アニキはデートちゃうし」
如月
「て言うか浮かれてたんですか」
小笠原
「浮かれてたよね」
アニ
「やかましいぞ三馬鹿!」
憤るアニの前に、穂積が早足で歩み出た。
穂積
「藤守検察官、申し訳ありません。内密にしたのは俺の指示です」
そのまま頭を下げた穂積の姿を見て、アニがぎょっとした表情になる。
アニ
「穂積が俺に頭を下げた……」
翼
「あ、あの!すみません、室長は私の為に……!」
穂積
「櫻井、余計な事を言うな」
アニ
「ああもう!穂積!頭を上げろ!調子が狂う!」
アニは両手を振り回した後、穂積の顔を上げさせた。
アニ
「許す!許してやるから、順序立てて説明しろ!」
穂積
「すみません」
05/24(Fri) 11:48
続きはスレッド38で
小春
小野瀬
「じゃあ、俺から説明するよ」
顔を上げた穂積の隣に立った小野瀬が、霞ヶ関のストーカー事件について、小笠原の調べた最新の内容を加えての説明を始めた。
結果から言えば、これまで自分たちがストーカーされていると申告した女性たちは、実際には何の被害も受けてはいない。
駐車場で視線を感じた、官庁街を歩いている時に後を尾けられた気配があった、職員出入口付近で隠し撮りされた気がする、などなど。
そんな、「なんとなく不安」な出来事を複数の女性職員が体験するうち、いつしか噂に尾鰭がつき、実体の無いストーカーが誕生してしまったのだろう。
小笠原は、それらの申告を冷静に分析した結果、彼女たちの動線上に、常に、穂積がいた事を突き止めていた。
もちろん、穂積と彼女たちが同じ場所にいたのは全くの偶然なので、申告された場所にも、被害に遭ったという女性たちにも、一貫した法則性はない。
だから、彼女たちが、穂積がその場に居たという共通項に気付かず、、それぞれ、自分がストーキングされていると勘違いしたのも、無理はなかった。
小笠原
「……どうする?」
小野瀬が説明を終えた後の沈黙を破って、小笠原が穂積を見た。
小野瀬
「俺たちの知る限り、『エミ』は悪質なストーカーじゃない。だけど、付きまとわれたら迷惑だろう?」
穂積は、自分から離れようとしない翼を一瞬、見つめた。
翼
「……迷惑です」
珍しく、翼が先に答える。
翼
「特に、今の室長には。まだ、事故の怪我だって治ってないんですから」
翼が、ぎゅっ、と穂積の手を握り締める。
穂積
「櫻井……」
小野瀬
「だよね。正直穂積も、好かれたり付きまとわれたり待ち伏せされたりには慣れてるはずだから、隠し撮りされるくらい平気だろうけど」
如月
「何ですかそのスキル。イケメンて凄い」
明智
「写真が欲しいだけだとしたら、いっそ堂々と撮らせてやったらどうですか?」
藤守
「そう言うたらそうやな」
如月
「ちっちっちっ、女心が分かってないなあ二人とも。隠れてコッソリ撮るからいいんじゃないですか」
藤守
「盗撮犯の理論やないか」
明智
「女心とは関係ないだろう」
小笠原
「むしろ如月は何故分かるのさ」
それぞれが勝手に言いたい事を言って収拾がつかなくなり始めたところで、ふと、穂積がある事に気付いた。