『アブナイ☆恋の探偵事務所』
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12/01(Thu) 14:45
アブナイ☆恋の探偵事務所
小春
『アブナイ☆恋の探偵事務所』
《基本設定と主な登場人物》
穂積泪…桜田門探偵事務所所長。リーダーシップがあり、個性的な探偵たちをまとめている。探偵としての能力も高いが面倒くさがってなかなか動かない。
小野瀬葵…桜田門探偵事務所に所属する探偵。証拠品の分析と考察力に優れ、美貌と甘い声が武器。元ヤンでもある。
明智誠臣…桜田門探偵事務所に所属する探偵。射撃と柔道と家事全般が得意。女癖の悪い小野瀬と微妙に仲が悪い。
藤守賢史…桜田門探偵事務所に所属する探偵。乗り物の運転が得意でメカに詳しい。霞ヶ関探偵事務所の藤守慶史の弟。
***
藤守慶史…霞ヶ関探偵事務所所長。司法試験にも合格している法律の専門家。高飛車な性格以外は非の打ち所の無い才能の持ち主。桜田門探偵事務所をライバル視している。
小笠原諒…霞ヶ関探偵事務所に所属する探偵。ややコミュ障だが情報処理の天才で探偵は趣味という資産家。
如月公平…霞ヶ関探偵事務所に所属する探偵。俊足で柔道が強く女装が得意。明るい性格だが実は黒い面も。頭皮が心配。
櫻井翼…霞ヶ関探偵事務所に就職したばかりのヒヨッコ探偵。直観と記憶力に傑出している。
***
ジョンスミス…通称JS。古美術品専門の詐欺師・怪盗で、世界的指名手配犯。探偵たちをからかうのが趣味。
小春…二つの探偵事務所に近いおなじみ万能蕎麦屋、さくら庵の娘。今回は誰と恋しようかしら。
***
舞台は同じ雑居ビルの中でそれぞれ同時期に開業した二つの探偵事務所。
優秀でしかもイケメン揃いだと評判は良く、お互いに行き来したり時には張り合ったりしながら、何だかんだで仲良く楽しく営業中。
そこへ舞い込む難(?)事件?
探偵たちは無事に事件を解決する事が出来るか?
そして、翼の恋の行方は?
***
12/01(Thu) 14:47
~プロローグ~
小春
ここは霞ヶ関、桜田門駅から徒歩5分の距離にある、ビジネス街の一角。
地下1階に骨董品店、道路と歩道に面した1階にはコンビニエンスストア。
見上げれば、3階建ての建物のうち2階の窓ガラスの左半分には『霞ヶ関探偵事務所』、右半分には『桜田門探偵事務所』とプリントされている。
その文字を見つめながら、櫻井翼はぎゅぎゅっ、と両手の拳を握って、気合いを入れた。
彼女は今日から、探偵になるのだ。
窓の内側から見ると、『霞ヶ関』が鏡文字になっている。
ガラス越しに広がる青く晴れた空に、街路樹の満開の桜が映えて美しい。
翼は口元に微笑みを浮かべて、所長である藤守慶史の長い長い話を聞いていた。
藤守兄
「……であるからして、悩める依頼人の為に!これからしっかりと精進するように!分かったなヒヨッコ!」
翼
「はい!」
翼が元気良く返事をすると、藤守所長は満足げに頷き、逆に、傍らのデスクで話を聞いていた2人の同僚が、大きな溜め息をついた。
小笠原
「櫻井さん、て言ったっけ。よく、所長の長広舌を何時間もダレずに聞いていられるね」
如月
「期待の新人だよ翼ちゃん!そして、待ちに待った俺の後輩!これから仲良くしようね!」
翼
「はい!よろしくお願いします!」
藤守兄
「貴様ら…」
その時。
「こんにちは!」
扉の外から大きな声がして、小柄な少女が入って来た。
「《さくら庵》です。ご注文の特上寿司をお持ちしました!」
藤守兄
「おお、もうそんな時間か。ご苦労」
藤守所長が財布を出すのを見て、如月と小笠原が目を丸くしている。
如月
「もしかして、所長がおごってくれるんですか?!」
小笠原
「後が怖いんだけど」
藤守兄
「失礼な奴らだ。貴様らが入って来た時にも同じようにしてやっただろうが」
藤守所長は部下たちを睨みながら財布を開き…小春がテーブルに並べている寿司桶の数を見て、叫んだ。
藤守兄
「こら、小春!俺の注文は4人前だぞ!いくつ並べる気だ?!」
小春、と呼ばれた少女は振り向いて、きょとんとした顔で藤守所長を見た。
少女、といっても、この春高校を卒業したのだから、18歳になる。
小春
「全部で9人前ですけど」
藤守兄
「お前は数が数えられないのか?俺、新人、小さいの、メガネ。どう数えても4人であろうが」
藤守所長が指差し確認してみせる横で、小春は困ったように伝票を見直す。
小春
「あの、最初は確かに4人前だったんですけど…その後で、さらに5人前追加のご注文を頂いてまして」
藤守兄
「受注ミスだな。悪いが持ち帰ってくれ」
小春
「…すみません…」
小春がしゅんとして寿司桶を戻そうと手を伸ばしかけたその時。
「お邪魔するわよ!!」
声と同時に扉が勢いよく開いて、どやどやと数人の男たちが入って来た。
それがまた、揃いも揃って、俳優かモデルのような美青年ばかり。
突然の状況に、翼はびっくりして声も出ない。
小野瀬
「こんにちは小春さん。相変わらず、料理もきみも美味しそうだね」
藤守
「ホンマ美味そうやな。特上寿司なんて久し振りー」
明智
「小春、お茶を淹れるのを手伝ってくれ」
小春
「はい明智さん」
藤守兄
「待てーー!!」
[削除]
12/01(Thu) 14:49
~プロローグ・続き~
小春
穂積
「何よアニ、まったくアンタはいつも騒々しいわねえ」
藤守兄
「アニ言うな!穂積、やはり貴様の差し金か!」
穂積
「小春、寿司の代金はアニからもらった?」
穂積に問われ、お茶を配りながら小春が頷く。
小春
「はい。何だかんだ言って、藤守所長さんはいつもいい人ですね」
藤守兄
「余計な事は言わんでいい!小春、それでもやはり1人前多いぞ!」
穂積
「間違ってないわよ。何故ならワタシが2人前食べるから」
藤守兄
「貴様ー!」
小野瀬
「おやあ、こちらが噂の新人さんか。よろしくね、俺は小野瀬」
きれいな顔をした長い髪の男性にやわらかく手を握られ、とんでもなくいい声で優しく挨拶されて、翼は恐縮してしまう。
翼
「よ、よろしくお願いします」
明智
「余計なお世話かもしれないが、この人によろしくされない方がいいぞ」
翼にお茶を手渡してくれたのは、背の高い男性。さっき、小春に明智さん、と呼ばれていた人だ。
藤守
「俺は藤守賢史や。そこの所長の弟。こんなアニキで悪いなあ。けど、面倒みたってや」
藤守が、翼の前で拝むように手を合わせる。
翼
「いえ、そんな」
翼は、小春を除く全員が席についたところで、一同を見渡して頭を下げた。
翼
「初めまして、櫻井翼です。皆さん、よろしくお願いします!」
期せずして、全員から拍手が起こる。
翼はほっとした。
藤守所長が咳払いをし、立ち上がった。
藤守兄
「では、このヒヨッコを我が探偵事務所に迎えるにあたって俺から挨拶を…」
穂積
「櫻井、お醤油取って」
翼
「は、はい」
目の前にあった醤油の容器を差し出しながら、翼は改めて穂積を見た。
(女言葉だけど…男性だよね?)
穂積は金髪碧眼で、こんなに綺麗な人を、翼は今まで見たことがない。
穂積
「ところでアンタ、どうしてアニの事務所に入ったの?」
翼
「はい。実は私、父が判事なんです」
穂積
「…えっ、櫻井判事?!」
穂積がひどく驚いて、そのあと頭を抱えてしまった理由は、この時の翼にはまだ分からない。
翼
「探偵になりたいと言ったら、最初は反対されたんですけど…就活中に調べたら、こちらの所長さんが、父の出身大学の法学部の後輩で。それなら、と」
藤守
「へー、K大か」
翼
「それに…」
翼が、ぽっ、と頬を染めた。
翼
「所長さん、雰囲気が私の父に似ているんです」
(ファザコン……!)
翼の言葉に、穂積に話の腰を折られて挨拶を諦めて、寿司を食べ始めていた藤守所長が、箸を落とした。
藤守兄
「ヒヨッコお前…面接で俺に一目惚れしてここに入ったのか?!」
全員
「「「それは違うと思う」」」
にゃーん。
場違いなネコの声に、帰りかけて廊下に出ていた小春が気付いてしゃがみこんだ。
小春
「また会ったね。ここに居着いちゃったの?」
小春に指先で撫でられて、ネコは気持ち良さそうに喉を鳴らした。
小春
「きれいな首飾りしてるね」
その小春とネコの横を、階段を上がって来た女性が素通りして行った。
見送った先でコンコン、とノックしたのは、奥にある『桜田門探偵事務所』の扉。
すると手前の『霞ヶ関探偵事務所』の扉が内側から開いて、小野瀬が顔を出した。
小野瀬
「はい!ご依頼ですか?」
女性は一瞬戸惑うような表情をしたものの、深々と頭を下げた。
女性
「娘を探して欲しいんです」
12/01(Thu) 17:05
リレースタート
小春
女性
「すみません、私まで御相伴させていただいて…」
寿司桶を持って隣から移動してきたのは、『桜田門探偵事務所』。
穂積
「どうぞ、お気になさらず」
1人前手付かずだった特上寿司を勧められて恐縮する女性に、テーブルを挟んだソファから穂積が微笑む。
それはそうだろう。穂積が2人前食べると言ったお陰で、元々1人前余計にあるのを譲っただけなのだから。
明智
「(小声)しかも支払いは藤守所長でしたしね」
小野瀬
「(小声)しっ」
女性
「私は、加賀と申します。画家の主人と、鎌倉で画商を営んでおります」
寿司を食べ終え、穂積の傍らに立った明智が、黒い手帳にすらすらと万年筆でメモを執る。
小野瀬
「鎌倉か、良い所ですね。俺も、高校時代は鎌倉にいたんです」
女性
「そうですか。大仏様の近くにある画廊なんですよ」
寿司をつまみながら、如才なく話を合わせる小野瀬につられて、少しずつ女性の顔から緊張がとれてゆく。
穂積
「行方不明になっている娘さんというのは?」
女性
「加賀愛美、この春大学を卒業しました。自慢になりますけれど、利発で優しい娘です。それが、突然いなくなってしまって…」
一方、『霞ヶ関探偵事務所』にも、翼の初仕事となる依頼が舞い込んでいた。
***
「アブナイ☆恋の探偵事務所」さて、どうでしょうか、こんな感じでスタート出来るでしょうか?
では久し振りに、続きをパースヽ( ̄▽ ̄)ノ⌒○
[削除]
12/02(Fri) 11:48
あらまあ
冬子
わー、リレーが始まってる。
あのネコちゃんのお名前はもしかして、最初がエで、最後がミなんでしょうか。
うーん、冬子は何にも思いつかないですね。
お寿司おいしそうだなーってことくらい(笑)
[削除]
12/04(Sun) 09:58
翼ちゃん、初仕事!
ジュン
霞ヶ関探偵事務所
藤守所長
「彼女の素性を調べてほしいと?」
藤守所長の向かいに座っているのは20代前半の男性。
北村と名乗った。
「彼女とは大学の時からの付き合いで、私としてはそろそろ結婚を考えてて。」
小笠原
「結婚のための素性調査?」
北村は首を振る。
「結婚の挨拶のためにご両親に会いたいと言ってもはぐらかされて。」
如月
「それってー、あなたと結婚したくないん……いってー!」
如月の言葉を所長の拳骨が遮った。如月は頭を抱えてのたうち回っている。
そんな如月を気の毒と思いながら翼が北村に質問する。
翼
「今まで付き合ってきて家族の話とか出なかったんですか?」
北村は彼女の両親や実家の話は聞いたことがないと言う。
藤守所長
「わかりました。お引き受けしましょう。」
「ありがとうございます。」
北村は何度も頭を下げながら帰っていった。
藤守所長
「今回の件は櫻井!お前に任せる。」
翼
「えっ!?私ですか?」
藤守所長
「サポートに如月をつけるから。お前の初仕事だ。」
如月
「翼ちゃん、頑張ろうね。」
翼は大きく頷きながら手をぎゅっぎゅっと握った。
翼
「加賀愛美さんの素性、調べてみせます!」
相変わらず拙い文章でごめんなさいm(__)m
二つの依頼がどう重なっていくのか。
それは誰にもわからない(笑)
ここでパース(⌒∇⌒)ノ⌒〇
12/14(Wed) 06:29
ジュンさんありがとうございます
小春
翼ちゃんたち霞ヶ関探偵事務所は加賀愛美の身辺調査、桜田門探偵事務所は行方不明の彼女を探す。
そんな感じで分けていきましょう。
~桜田門探偵事務所~
穂積
「加賀さん。愛美さんは、大学を卒業したばかりだとおっしゃいましたね」
加賀夫人
「はい」
穂積
「では、卒業後の進路は?」
穂積の問いに、心なしか、加賀夫人の顔が曇った。
加賀夫人
「就職はしていません。実は、海外に留学させるつもりでしたので」
明智
「海外…?何故ですか?」
寿司桶を下げ、お茶を入れ直しながら、明智が尋ねた。
加賀夫人
「私の職業は、夫や、契約した画家さんの描いた絵を展示販売する画廊を経営するだけではありません。最近はインターネットでも行われますが、世界中で開催されるオークションに参加して価値のある絵を購入し、転売して利益を得るものです」
小野瀬
「ええ、それが画商さんですね」
加賀夫人
「その為には、本物の絵画に多く接して審美眼を鍛え、手にする絵の真贋を見極める事が出来なくてはなりませんでしょう」
小野瀬
「なるほど。奥様は、愛美さんに海外で経験を積ませようとお考えになった。という事は、彼女自身も、画商を志していらっしゃるんでしょうか」
小野瀬の相槌に、加賀夫人は少し考えてから、首を横に振った。
加賀夫人
「いいえ。愛美は主人に似て、絵画や彫金などが好きで、芸術には人並み以上の才能がありました。…ですが、正直に申しますと、画商というビジネスにはあまり興味が無かったようです」
藤守
「ほな、海外留学にも乗り気やなかったんですか?」
加賀夫人
「はい。愛美には、なんというか、夢見がちなところがありました。芸術は趣味として楽しみながら、好きな人と結婚して普通に暮らせればいい、なんて」
小野瀬
「それはそれで、堅実なお考えだとも言えますけどね」
加賀夫人
「今にして思えばおっしゃる通りなのですが、その時は腹が立って。親としては、画廊を継いで欲しい思いがありましたし、愛美の望むような結婚生活を送るには、相手の方の理解と、それなりの経済力が必要だとも言いました。…それから間もなくです、愛美が失踪したのは」
加賀夫人が俯くと、一同の視線は、穂積に集中した。
穂積
「愛美さんの失踪を手助けしそうな人物に、心当たりはありますか?」
加賀夫人が、潤んだ目を穂積に向ける。
加賀夫人
「…大学には、親しい男性も何人かいたようです。名前は知りませんが。あとは、地元にいる、仲良しの女の子たちぐらいでしょうか」
明智
「どんな小さな縁でも構いません」
明智がメモを執る。
加賀夫人
「夫の友人で、画廊のお得意様でもある、ナカジマさんという男性がいます。愛美は人見知りでしたが、不思議と、ナカジマさんにはなついていました」
穂積
「その方は、今、どちらに?」
加賀夫人
「分かりません。いつもふらりと現れるのです」
加賀夫人の口から、それ以上の有益な情報は得られなかった。
そこで、夫人にはひとまずお帰りいただく事にした。
階下まで加賀夫人を見送りして戻ってきた小野瀬が、何やら真剣な穂積の思案顔を見咎める。
小野瀬
「どうしたの、穂積?」
穂積
「何でもないわ。さあ、手分けして、愛美さんの行方を探しましょう」
12/14(Wed) 06:31
小春
~翼vision~
探偵事務所が入っているビルの階段を降り、外に出たところで、コンビニ前の喫煙所にいた穂積所長と目が合った。
穂積
「外出?」
翼
「はい。初仕事です!」
穂積
「そう、頑張ってね。応援するわ」
碧眼が、優しく細められた。
…さっきも思ったけど、本当に、綺麗な人。
だってほら、歩道を歩く女性たちがみんな、穂積所長の姿をちらちら盗み見しながら通り過ぎてゆくもの。
穂積
「ワタシはこれから小野瀬と鎌倉よ。お土産買ってきてあげるわね」
翼
「ありがとうございます!…そうだ、所長さんのお考えを、お聞きしてもいいですか?」
私が尋ねると、穂積所長は首を傾げた。
穂積
「何かしら」
翼
「えっと…、好きな人が出来て、その人と結婚したい気持ちになったとします」
穂積
「はい」
翼
「でも、その人は、自分の家族の話をしてくれないんです。それって、相手の人は、自分の事を好きじゃないって事なんですか?」
私は、さっき、如月さんが藤守所長に途中で止められていた言葉を、穂積所長にぶつけてみた。
翼
「それとも、何か事情があって教えられないんでしょうか?…だとしたら、調べない方がいいんでしょうか?」
すると、穂積所長は長身を屈めるようにして、正面から私の顔を覗き込んできた。
穂積
「櫻井」
翼
「は、っはい」
穂積
「ワタシに恋をしてみなさい」
翼
「えっ?!」
突然の意外な言葉に、私はびっくりして固まってしまった。
穂積所長は私の反応に軽く笑ってから、さらに、その、綺麗な顔を近づける。
穂積
「結婚したいほど好き、そう思ってごらんなさい。…そしたら、依頼人の気持ちがわかるはずよ」
ここでパースヽ( ̄▽ ̄)ノ⌒○
[削除]
12/14(Wed) 16:49
先日、鎌倉散策しました←いらぬ報告(笑)
エミ
目の前の美貌を直視し続けるのは恥ずかしいのだけれども、視線を逸らす勇気も無ければ、突然の意外な言葉を受け流す度胸も無い。
『結婚したいほど好き、そう思ってごらんなさい』
脳細胞フル回転で必死に考えるも、いろいろと限界間近。そんな翼の足元から、
にゃー
と、のんびりした声がした。
穂積
「あら、エミ。お出掛け?」
穂積が腰を屈めたため、綺麗過ぎる顔は翼の目前から遠のいた。翼は、こっそり、ふぅ…と息を吐いた。呼吸を忘れていたみたい。
穂積が話し掛けているのは一匹のネコ。ちんまりと座って穂積を見上げている。
翼
「事務所で飼われているんですか?」
穂積
「誰かの飼いネコって訳じゃないみたいだけど、このビル内を生活の拠点にしているのよ。名前も誰が名付けたのか知らないけど、エミって呼ばれているわ」
翼
「そうでしたか。エミちゃん、霞ヶ関探偵事務所の桜井翼です。よろしくね」
翼も屈んで律儀にエミに挨拶をすると、にゃーと返ってきた。
穂積
「じゃあね。知らない人に声掛けられてもついて行っちゃダメよ」
翼・エミ
「はい!/にゃー」
*****
ホントにネコで登場(笑)
パース(*^∀^)ノ⌒○
12/14(Wed) 18:56
エミさんありがとうございます
小春
ホントにネコで登場(笑)
いいでしょう、存分に働いてもらいますよ(* ̄ー ̄)
***
買い物を終えてコンビニから出てきた小野瀬とともに穂積が去り、まだドキドキしながら彼らを見送った翼も、また、その場を去った後。
しばらく舌で毛繕いをしていたエミが、階段に向かって歩き出した。
ただし、今度は地下へと降りて行く。
「にゃーん」
薄暗い踊り場、重そうな木製の扉の前でエミが一声鳴くと、内側から、扉が薄く開いた。
「おや、エミさんいらっしゃい」
迎える声に続いて、部屋の中から、また別の声がした。
「ナカジマさん、お客様ですか?」
「愛らしいレディのお越しです」
ネコ一匹だけの隙間からエミが滑り込むと、静かに扉が閉められた。
閉まる寸前、笑いを含んだ声が
「でも少しだけですよ。もうじき僕たちは逃避行に出発するんですから」
そう囁いたけれど、その言葉を聴いていた者は誰もいなかった…
[削除]
12/15(Thu) 06:36
おっと忘れてた
小春
ここでパースヽ( ̄▽ ̄)ノ⌒○
(↑どうしてもやりたいらしい)
12/15(Thu) 11:14
尾行します!
ジュン
翼は北村からあらかじめ聞いていた加賀愛実の自宅前にいた。
可愛らしいマンションはいかにも女性が好みそう。
スマホを操作するふりをしながら部屋の様子を伺う。
小一時間ほどたった頃玄関が開いた。
写真で見た加賀愛実が部屋から出てきたのだ。
翼は如月からのアドバイスに従い加賀愛実の後をついていくことにした。
最寄りの駅から電車に乗り込み着いたのは
(美術館?)
美術館に入ると加賀愛実は楽しそうに絵画を見て回る。
しかし、何かかがおかしい。
このエリアから次には進もうとしない。
あいにく人が少なく翼がいつまでもここにいては不審がられてしまうかもしれない。
仕方なく翼は次のエリアで待つことにした。
次に向かって歩いていく時に翼は髪の長い男性とすれ違った。
(来ない…)
出口に向かうには必ずここを通るはず…なのに加賀愛実は現れなかった。
藤守所長
「まかれた!?」
仕方なく事務所に戻った翼の報告を受けて所長が声をあげる。
小笠原
「加賀愛実に気付かれたの?」
翼
「そんな様子はなかったんですが…すみません!」
勢いよく頭を下げる翼に如月がポンポンと肩を叩く。
如月
「今日はたまたま別の出口から出ただけかもしれないよ?明日は俺も一緒に行くから頑張ろう?」
翼
「はい!」
藤守所長
「チビッ子頼んだぞ。櫻井、次は頑張るんだぞ。」
如月
「チビッ子じゃありません!如月ですぅ~」
如月はプウッと頬を膨らませる。
そんな如月を見ながら翼は美術館で誰かとすれ違ったことを思い出していた。
しかし、顔も姿も思い出せないのであった。
翼ちゃん、初尾行は失敗!
そしてすれ違った男性とは?
この後どうなるのかわからないところでパース(⌒∇⌒)ノ⌒〇
[削除]
12/15(Thu) 20:59
ジュンさんありがとうございます
小春
行方不明の加賀愛美、まさかの自宅(^-^;)ゞ
さてどうしようかな。
***
穂積
「何ですって?自宅にいた?!」
神奈川県、鵠沼に建つマンションの一室で、穂積は受話器を手に大きな声を上げた。
電話の相手は、東京にいる藤守だ。
念を入れて、自宅周辺で聞き込みをさせようと加賀愛美の現住所に向かわせただけだった藤守からのまさかの報告に、さすがの穂積も言葉を失う。
藤守
『はい。自宅を出て、電車に乗って、美術館に寄って、そこを出てからはタクシーで横浜中華街に移動して、今は北京料理の名店で食事をしています』
穂積は頭を抱えた。
穂積
「どうして声をかけて保護しないの?!今すぐ行きなさい!」
藤守
『そんな!あんな高級な店、俺、よう入れませんよ。でも、任せてください。出入り口をしっかり見張ってますから』
穂積
「……」
穂積は深々と溜め息をつくと同時に、がっくりと肩を落とした。
その手から、小野瀬が受話器を取って耳に当てる。
小野瀬
「藤守くん、俺たちが加賀夫人から受けた依頼は、その愛美さんを探す事なんだよ。だから、見つけたら、当然、保護して、加賀夫人に報告しなくちゃ」
藤守
『すんません。せやけど実は、、隣の、アニキのトコロの櫻井が、どうやら加賀愛美を尾行してましてん』
穂積
「はあ?!」
藤守
『だとしたら、初仕事やし、邪魔したら可哀想や思うて…』
穂積
「…今も、櫻井は近くにいるの?」
藤守
『いや、美術館の途中から、おらへんようになりましたけど』
小野瀬
「えっ、それって…」
穂積
「藤守!」
小野瀬の声を遮るように、穂積が叫んだ。
穂積
「店に入って、加賀愛美を保護しなさい!今すぐ!!」
藤守
「は、はい!」
通話状態のまま、数分の沈黙の後。
明らかに意気消沈した藤守の声が返ってきた。
藤守
『すんません、見失いました…』
***
小野瀬
「すまないね、諏訪野。本当は、もう少しゆっくり話したかったんだけど」
鵠沼駅のホームでしきりに謝る小野瀬に、諏訪野、と呼ばれた男性は、穏やかな微笑みで応えた。
諏訪野
「探偵さんも大変だね」
諏訪野は髪の毛も肌も真っ白という極めて目立つ容姿で、しかも、穂積や小野瀬に劣らない、端正な美貌の持ち主だ。
小野瀬の元ヤン時代を知る彼は、東日本屈指の暴走族の先代総長で、いまだに、関東を中心とした広いネットワークを維持している。
諏訪野
「もしも、加賀愛美さんが俺の情報網に引っ掛かったら、すぐにきみたちに連絡するよ。もちろん、可能な範囲で身の安全も保証する」
穂積
「頼むわね。藤守も、いつもはこんな間抜けじゃないのよ。それなのに、全く…」
諏訪野は、穂積の愚痴に相槌を打ちながら、慰めるように言った。
諏訪野
「気を付ける事だね。鎌倉の加賀画廊には、あまり良くない噂もあるようだし」
小野瀬
「噂?」
その直後、ホームに電車が入って来た。
手を振る諏訪野に見送られながら、穂積と小野瀬はそれぞれ、まだ写真でしか知らない、加賀愛美の姿を思い浮かべていた。
***
加賀愛美は見え隠れするのに捕まえられない。
追いかけっこの始まり…?
ここでパースヽ( ̄▽ ̄)ノ⌒○
01/17(Tue) 07:27
大変長らくお待たせしました。
小春
とりあえずリクエスト頂いたともさんを登場させてみます。
「にゃーお」
猫のエミが次に訪れたのは、二つの探偵事務所が入っているマンションの、三階。
???
「エミやん。煮干し食べる?」
声の主に撫でられて、エミが嬉しそうに喉を鳴らす。
三階は、このマンションのオーナーの娘、白河とものオフィスになっている。
関西出身でオープンな性格の彼女に似合いの明るく広いオフィスは、数社と契約している人気ウェディングプランナーとしてのともの仕事場だ。
壁と扉で仕切られたその奥には居住スペースもあり、仕事が追い込みを迎える時など、そこで寝泊まりする事も珍しくなかった。
とも
「ふふ、どないしたん?今日は、彼氏がおらへんの?」
「ぃにゃーぃ」
ともに抱き上げられて、エミはまるで返事をしたような声で鳴いた。
エミは、下の階にある二つの探偵事務所の所長のうちの一人、穂積の事が大好きなのだ。
「そっか。ちょっと聞きたい事があったんやけどな」
ともの仕事と探偵事務所とは、一見関係無い職業のようでいて、意外と接点がある。
「ま、今度会うた時でええわ」
一方、初尾行で加賀愛美を見失った翼は、如月を伴っての二度目の尾行にも失敗しようとしていた。
加賀愛美は、自宅に帰って来なかったのだ。
「翼ちゃん、一旦戻ろうか」
「はい……」
足取りを見失い、藤守所長と小笠原の待つ事務所に戻った翼は、そこで、加賀愛美を待っている間に考えていた事を口に出した。
それは、穂積に言われた言葉から思い付いた事で。
翼
「あの、所長、私、依頼人の北村さんの事を調べてみたいんですけど」
藤守所長
「は?」
翼
「見失った加賀愛美さんの消息は、彼女が美術館で足を止めて見ていた絵画についても含めて、小笠原さんにネットで調べてもらっています。彼女が見つかるまでの間、北村さんを」
如月
「翼ちゃん、どういう事?」
翼
「最初から気になってました。私には、北村さんと加賀愛美さんの関係が、なんだか希薄に思えて仕方ないんです。もしかして……」
藤守所長
「待て、ヒヨッコ。迂闊な言葉を口に出すな」
藤守所長は翼を制してから、腕組みをしてううむ、と唸った。
藤守所長
「分かった、北村さんを調べてこい。責任は俺が持つ。ただし、絶対に、単独行動はするなよ」
翼
「はい!」
ここでパースヽ( ̄▽ ̄)ノ⌒○
01/17(Tue) 11:49
加賀愛実はどこへ?
ジュン
どう進めたらいいのか……
その一方、桜田門探偵事務所では藤守が所長の穂積から拳骨をもらっていた。
穂積
「せっかく見つけたのに保護できなかったなんて!」
小野瀬
「まあまあ、穂積。それくらいにしといてあげなさい。」
拳骨をくらい涙目の藤守を睨み付ける穂積を小野瀬が諭す。
穂積
「で、その後の加賀愛実の足取りは?」
藤守
「それが自宅に帰った形跡がなくて…」
明智
「親しい友人宅にもいないようです。」
こちらも加賀愛実の所在については手詰まりとなっていた。
はあっと穂積から溜め息がもれる。
小野瀬
「他に何か分かってることはないの?」
昨日、明智が加賀愛実の自宅や友人について調べているはずだ。そこから何か糸口を見つけられないだろうか。
明智
「それが加賀愛実は近いうちに引っ越しを予定していたとか。」
穂積
「引っ越し?」
穂積の問いに頷き明智は昨日調べたことを述べた。
加賀愛実は少し前何かに悩んでいるようだったこと。
近いうちに引っ越しを予定していたが友人たちの誰1人としてその事実を知らないこと。
最近になって急に明るくなったこと。
藤守
「そういえば、美術館でも楽しそうにしてたなあ。悩んでる様子なんかなかったで。」
穂積
「加賀愛実は何に悩んでいたのかしら?そしてそれが最近になって解決した?」
明智
「何を悩んでいたのかは友人たちも知らないらしくて。」
小野瀬
「引っ越しが悩みを解決してくれるのかな?」
藤守
「そうやとしてもまだ引っ越してませんやん?」
穂積
「悩みを解決してくれる何かに出会ったことは確かなようね。」
しばらくの沈黙が落ちる。
穂積
「加賀愛実の悩み事を考えていても仕方ないわ。とにかく、新しい引っ越し先を探しましょう。そこにいるかもしれないわ。私たちの仕事は加賀愛実の保護よ。それが最優先。」
「はい!」と返事をして明智と藤守が飛び出していく。
穂積
「小野瀬、一応諏訪野の言っていた加賀画廊の噂とやらを調べてみて。この依頼、何かあるかもしれないわね。」
謎だらけの2つの依頼…どうなっていくんでしょう?
さっぱり先が見えません(^_^;)
でもここでパース(⌒∇⌒)ノ⌒〇
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02/21(Tue) 06:24
小春
藤守アニの霞ヶ関探偵事務所と、穂積の桜田門探偵事務所。
同じビルの同じ階を分け合うようにして隣接する二つの探偵事務所は、互いにそうとは知らぬまま、一人の同じ女性の行方を追いかけていた。
~霞ヶ関探偵事務所~
翼
「藤守所長、北村さんの周辺を調べてみたら、ちょっと気になる事があったのですが」
加賀愛美の姿を見失ってから二日。
彼女の身辺調査を依頼してきた北村自身について、慎重に聞き込みや裏付けをしてきた翼と如月が、藤守所長の机の前に立った。
藤守所長
「…ふむ」
二人の様子に藤守所長は思い当たる事があるのか、椅子に座ったまま、腕組みをして静かに身構えた。
藤守所長
「説明してみろ」
翼
「はい。二人と親しい人たちに聞き込みをした結果を総合してみると、大学時代、彼と加賀さんは確かに交際していましたが、卒業してからは徐々に、加賀さんの方が北村さんから離れようとしていたようです」
藤守所長
「何故だ」
翼
「理由までは分かりません。けれど、少なくとも、彼と結婚するつもりは無かったようです」
藤守所長
「…気持ちも離れていたのだろうか」
珍しく、藤守所長が神妙な顔をする。
翼
「…そこは、分かりません。加賀さんに訊くしかないです」
翼の溜め息とともに訪れた沈黙を破ったのは、小笠原だった。
小笠原
「ところで、美術館で加賀愛美さんが足を停めたブロックにあった絵の事だけど」
如月
「うわびっくりした!小笠原さん、いたんですか!」
小笠原
「最初からずっといたから」
翼の隣で大袈裟に驚いた如月の声を冷たく受け流して、小笠原は藤守所長に顔を向けた。
藤守所長
「誰の絵か分かったのか?」
小笠原
「分かった。ブロックには十数枚の絵があったけど、彼女の目的は、おそらくその絵で間違いない」
藤守所長
「早く言え。そして敬語を使え!」
小笠原は注意に動じる様子もなく、プリントアウトした紙を数枚、藤守所長に差し出した。
小笠原
「あの日、美術館では、新進気鋭と呼ばれる若い作家ばかりを集めた作品展が開催されていた」
如月と翼も、藤守所長の椅子の後ろに回り込んで、肩越しにその紙を一緒に見つめる。
一枚目は館内の見取り図で、加賀愛美が足を停めた場所に印がつけられていた。
小笠原
「櫻井さん、その位置で間違いないよね?」
翼
「はい」
翼が頷くと、小笠原も頷いた。
小笠原
「もう一枚の紙に、パンフレットから抜粋したその絵を拡大した」
藤守所長が紙を捲って、プリントアウトされたその絵が現れた瞬間、三人は息を飲んだ。
それは朴念仁の藤守所長や如月が見てさえ、一目で素晴らしい出来映えだと分かるほどの美しい絵だった。
可憐な花々と、蜜蜂や蝶といった小さな生き物まで正確に写し取り、しかも、風景への愛情をもって描かれた明るい色調の細密画はまるで写真のようでいて、その柔らかさは写真ではあり得ない。
さらに驚いたのは、作者の名前。
小笠原
「そう、北村さんの絵だよ。彼は、ボタニカルアートの天才なんだ」
アブナイ☆恋の探偵事務所
小春
『アブナイ☆恋の探偵事務所』
《基本設定と主な登場人物》
穂積泪…桜田門探偵事務所所長。リーダーシップがあり、個性的な探偵たちをまとめている。探偵としての能力も高いが面倒くさがってなかなか動かない。
小野瀬葵…桜田門探偵事務所に所属する探偵。証拠品の分析と考察力に優れ、美貌と甘い声が武器。元ヤンでもある。
明智誠臣…桜田門探偵事務所に所属する探偵。射撃と柔道と家事全般が得意。女癖の悪い小野瀬と微妙に仲が悪い。
藤守賢史…桜田門探偵事務所に所属する探偵。乗り物の運転が得意でメカに詳しい。霞ヶ関探偵事務所の藤守慶史の弟。
***
藤守慶史…霞ヶ関探偵事務所所長。司法試験にも合格している法律の専門家。高飛車な性格以外は非の打ち所の無い才能の持ち主。桜田門探偵事務所をライバル視している。
小笠原諒…霞ヶ関探偵事務所に所属する探偵。ややコミュ障だが情報処理の天才で探偵は趣味という資産家。
如月公平…霞ヶ関探偵事務所に所属する探偵。俊足で柔道が強く女装が得意。明るい性格だが実は黒い面も。頭皮が心配。
櫻井翼…霞ヶ関探偵事務所に就職したばかりのヒヨッコ探偵。直観と記憶力に傑出している。
***
ジョンスミス…通称JS。古美術品専門の詐欺師・怪盗で、世界的指名手配犯。探偵たちをからかうのが趣味。
小春…二つの探偵事務所に近いおなじみ万能蕎麦屋、さくら庵の娘。今回は誰と恋しようかしら。
***
舞台は同じ雑居ビルの中でそれぞれ同時期に開業した二つの探偵事務所。
優秀でしかもイケメン揃いだと評判は良く、お互いに行き来したり時には張り合ったりしながら、何だかんだで仲良く楽しく営業中。
そこへ舞い込む難(?)事件?
探偵たちは無事に事件を解決する事が出来るか?
そして、翼の恋の行方は?
***
12/01(Thu) 14:47
~プロローグ~
小春
ここは霞ヶ関、桜田門駅から徒歩5分の距離にある、ビジネス街の一角。
地下1階に骨董品店、道路と歩道に面した1階にはコンビニエンスストア。
見上げれば、3階建ての建物のうち2階の窓ガラスの左半分には『霞ヶ関探偵事務所』、右半分には『桜田門探偵事務所』とプリントされている。
その文字を見つめながら、櫻井翼はぎゅぎゅっ、と両手の拳を握って、気合いを入れた。
彼女は今日から、探偵になるのだ。
窓の内側から見ると、『霞ヶ関』が鏡文字になっている。
ガラス越しに広がる青く晴れた空に、街路樹の満開の桜が映えて美しい。
翼は口元に微笑みを浮かべて、所長である藤守慶史の長い長い話を聞いていた。
藤守兄
「……であるからして、悩める依頼人の為に!これからしっかりと精進するように!分かったなヒヨッコ!」
翼
「はい!」
翼が元気良く返事をすると、藤守所長は満足げに頷き、逆に、傍らのデスクで話を聞いていた2人の同僚が、大きな溜め息をついた。
小笠原
「櫻井さん、て言ったっけ。よく、所長の長広舌を何時間もダレずに聞いていられるね」
如月
「期待の新人だよ翼ちゃん!そして、待ちに待った俺の後輩!これから仲良くしようね!」
翼
「はい!よろしくお願いします!」
藤守兄
「貴様ら…」
その時。
「こんにちは!」
扉の外から大きな声がして、小柄な少女が入って来た。
「《さくら庵》です。ご注文の特上寿司をお持ちしました!」
藤守兄
「おお、もうそんな時間か。ご苦労」
藤守所長が財布を出すのを見て、如月と小笠原が目を丸くしている。
如月
「もしかして、所長がおごってくれるんですか?!」
小笠原
「後が怖いんだけど」
藤守兄
「失礼な奴らだ。貴様らが入って来た時にも同じようにしてやっただろうが」
藤守所長は部下たちを睨みながら財布を開き…小春がテーブルに並べている寿司桶の数を見て、叫んだ。
藤守兄
「こら、小春!俺の注文は4人前だぞ!いくつ並べる気だ?!」
小春、と呼ばれた少女は振り向いて、きょとんとした顔で藤守所長を見た。
少女、といっても、この春高校を卒業したのだから、18歳になる。
小春
「全部で9人前ですけど」
藤守兄
「お前は数が数えられないのか?俺、新人、小さいの、メガネ。どう数えても4人であろうが」
藤守所長が指差し確認してみせる横で、小春は困ったように伝票を見直す。
小春
「あの、最初は確かに4人前だったんですけど…その後で、さらに5人前追加のご注文を頂いてまして」
藤守兄
「受注ミスだな。悪いが持ち帰ってくれ」
小春
「…すみません…」
小春がしゅんとして寿司桶を戻そうと手を伸ばしかけたその時。
「お邪魔するわよ!!」
声と同時に扉が勢いよく開いて、どやどやと数人の男たちが入って来た。
それがまた、揃いも揃って、俳優かモデルのような美青年ばかり。
突然の状況に、翼はびっくりして声も出ない。
小野瀬
「こんにちは小春さん。相変わらず、料理もきみも美味しそうだね」
藤守
「ホンマ美味そうやな。特上寿司なんて久し振りー」
明智
「小春、お茶を淹れるのを手伝ってくれ」
小春
「はい明智さん」
藤守兄
「待てーー!!」
[削除]
12/01(Thu) 14:49
~プロローグ・続き~
小春
穂積
「何よアニ、まったくアンタはいつも騒々しいわねえ」
藤守兄
「アニ言うな!穂積、やはり貴様の差し金か!」
穂積
「小春、寿司の代金はアニからもらった?」
穂積に問われ、お茶を配りながら小春が頷く。
小春
「はい。何だかんだ言って、藤守所長さんはいつもいい人ですね」
藤守兄
「余計な事は言わんでいい!小春、それでもやはり1人前多いぞ!」
穂積
「間違ってないわよ。何故ならワタシが2人前食べるから」
藤守兄
「貴様ー!」
小野瀬
「おやあ、こちらが噂の新人さんか。よろしくね、俺は小野瀬」
きれいな顔をした長い髪の男性にやわらかく手を握られ、とんでもなくいい声で優しく挨拶されて、翼は恐縮してしまう。
翼
「よ、よろしくお願いします」
明智
「余計なお世話かもしれないが、この人によろしくされない方がいいぞ」
翼にお茶を手渡してくれたのは、背の高い男性。さっき、小春に明智さん、と呼ばれていた人だ。
藤守
「俺は藤守賢史や。そこの所長の弟。こんなアニキで悪いなあ。けど、面倒みたってや」
藤守が、翼の前で拝むように手を合わせる。
翼
「いえ、そんな」
翼は、小春を除く全員が席についたところで、一同を見渡して頭を下げた。
翼
「初めまして、櫻井翼です。皆さん、よろしくお願いします!」
期せずして、全員から拍手が起こる。
翼はほっとした。
藤守所長が咳払いをし、立ち上がった。
藤守兄
「では、このヒヨッコを我が探偵事務所に迎えるにあたって俺から挨拶を…」
穂積
「櫻井、お醤油取って」
翼
「は、はい」
目の前にあった醤油の容器を差し出しながら、翼は改めて穂積を見た。
(女言葉だけど…男性だよね?)
穂積は金髪碧眼で、こんなに綺麗な人を、翼は今まで見たことがない。
穂積
「ところでアンタ、どうしてアニの事務所に入ったの?」
翼
「はい。実は私、父が判事なんです」
穂積
「…えっ、櫻井判事?!」
穂積がひどく驚いて、そのあと頭を抱えてしまった理由は、この時の翼にはまだ分からない。
翼
「探偵になりたいと言ったら、最初は反対されたんですけど…就活中に調べたら、こちらの所長さんが、父の出身大学の法学部の後輩で。それなら、と」
藤守
「へー、K大か」
翼
「それに…」
翼が、ぽっ、と頬を染めた。
翼
「所長さん、雰囲気が私の父に似ているんです」
(ファザコン……!)
翼の言葉に、穂積に話の腰を折られて挨拶を諦めて、寿司を食べ始めていた藤守所長が、箸を落とした。
藤守兄
「ヒヨッコお前…面接で俺に一目惚れしてここに入ったのか?!」
全員
「「「それは違うと思う」」」
にゃーん。
場違いなネコの声に、帰りかけて廊下に出ていた小春が気付いてしゃがみこんだ。
小春
「また会ったね。ここに居着いちゃったの?」
小春に指先で撫でられて、ネコは気持ち良さそうに喉を鳴らした。
小春
「きれいな首飾りしてるね」
その小春とネコの横を、階段を上がって来た女性が素通りして行った。
見送った先でコンコン、とノックしたのは、奥にある『桜田門探偵事務所』の扉。
すると手前の『霞ヶ関探偵事務所』の扉が内側から開いて、小野瀬が顔を出した。
小野瀬
「はい!ご依頼ですか?」
女性は一瞬戸惑うような表情をしたものの、深々と頭を下げた。
女性
「娘を探して欲しいんです」
12/01(Thu) 17:05
リレースタート
小春
女性
「すみません、私まで御相伴させていただいて…」
寿司桶を持って隣から移動してきたのは、『桜田門探偵事務所』。
穂積
「どうぞ、お気になさらず」
1人前手付かずだった特上寿司を勧められて恐縮する女性に、テーブルを挟んだソファから穂積が微笑む。
それはそうだろう。穂積が2人前食べると言ったお陰で、元々1人前余計にあるのを譲っただけなのだから。
明智
「(小声)しかも支払いは藤守所長でしたしね」
小野瀬
「(小声)しっ」
女性
「私は、加賀と申します。画家の主人と、鎌倉で画商を営んでおります」
寿司を食べ終え、穂積の傍らに立った明智が、黒い手帳にすらすらと万年筆でメモを執る。
小野瀬
「鎌倉か、良い所ですね。俺も、高校時代は鎌倉にいたんです」
女性
「そうですか。大仏様の近くにある画廊なんですよ」
寿司をつまみながら、如才なく話を合わせる小野瀬につられて、少しずつ女性の顔から緊張がとれてゆく。
穂積
「行方不明になっている娘さんというのは?」
女性
「加賀愛美、この春大学を卒業しました。自慢になりますけれど、利発で優しい娘です。それが、突然いなくなってしまって…」
一方、『霞ヶ関探偵事務所』にも、翼の初仕事となる依頼が舞い込んでいた。
***
「アブナイ☆恋の探偵事務所」さて、どうでしょうか、こんな感じでスタート出来るでしょうか?
では久し振りに、続きをパースヽ( ̄▽ ̄)ノ⌒○
[削除]
12/02(Fri) 11:48
あらまあ
冬子
わー、リレーが始まってる。
あのネコちゃんのお名前はもしかして、最初がエで、最後がミなんでしょうか。
うーん、冬子は何にも思いつかないですね。
お寿司おいしそうだなーってことくらい(笑)
[削除]
12/04(Sun) 09:58
翼ちゃん、初仕事!
ジュン
霞ヶ関探偵事務所
藤守所長
「彼女の素性を調べてほしいと?」
藤守所長の向かいに座っているのは20代前半の男性。
北村と名乗った。
「彼女とは大学の時からの付き合いで、私としてはそろそろ結婚を考えてて。」
小笠原
「結婚のための素性調査?」
北村は首を振る。
「結婚の挨拶のためにご両親に会いたいと言ってもはぐらかされて。」
如月
「それってー、あなたと結婚したくないん……いってー!」
如月の言葉を所長の拳骨が遮った。如月は頭を抱えてのたうち回っている。
そんな如月を気の毒と思いながら翼が北村に質問する。
翼
「今まで付き合ってきて家族の話とか出なかったんですか?」
北村は彼女の両親や実家の話は聞いたことがないと言う。
藤守所長
「わかりました。お引き受けしましょう。」
「ありがとうございます。」
北村は何度も頭を下げながら帰っていった。
藤守所長
「今回の件は櫻井!お前に任せる。」
翼
「えっ!?私ですか?」
藤守所長
「サポートに如月をつけるから。お前の初仕事だ。」
如月
「翼ちゃん、頑張ろうね。」
翼は大きく頷きながら手をぎゅっぎゅっと握った。
翼
「加賀愛美さんの素性、調べてみせます!」
相変わらず拙い文章でごめんなさいm(__)m
二つの依頼がどう重なっていくのか。
それは誰にもわからない(笑)
ここでパース(⌒∇⌒)ノ⌒〇
12/14(Wed) 06:29
ジュンさんありがとうございます
小春
翼ちゃんたち霞ヶ関探偵事務所は加賀愛美の身辺調査、桜田門探偵事務所は行方不明の彼女を探す。
そんな感じで分けていきましょう。
~桜田門探偵事務所~
穂積
「加賀さん。愛美さんは、大学を卒業したばかりだとおっしゃいましたね」
加賀夫人
「はい」
穂積
「では、卒業後の進路は?」
穂積の問いに、心なしか、加賀夫人の顔が曇った。
加賀夫人
「就職はしていません。実は、海外に留学させるつもりでしたので」
明智
「海外…?何故ですか?」
寿司桶を下げ、お茶を入れ直しながら、明智が尋ねた。
加賀夫人
「私の職業は、夫や、契約した画家さんの描いた絵を展示販売する画廊を経営するだけではありません。最近はインターネットでも行われますが、世界中で開催されるオークションに参加して価値のある絵を購入し、転売して利益を得るものです」
小野瀬
「ええ、それが画商さんですね」
加賀夫人
「その為には、本物の絵画に多く接して審美眼を鍛え、手にする絵の真贋を見極める事が出来なくてはなりませんでしょう」
小野瀬
「なるほど。奥様は、愛美さんに海外で経験を積ませようとお考えになった。という事は、彼女自身も、画商を志していらっしゃるんでしょうか」
小野瀬の相槌に、加賀夫人は少し考えてから、首を横に振った。
加賀夫人
「いいえ。愛美は主人に似て、絵画や彫金などが好きで、芸術には人並み以上の才能がありました。…ですが、正直に申しますと、画商というビジネスにはあまり興味が無かったようです」
藤守
「ほな、海外留学にも乗り気やなかったんですか?」
加賀夫人
「はい。愛美には、なんというか、夢見がちなところがありました。芸術は趣味として楽しみながら、好きな人と結婚して普通に暮らせればいい、なんて」
小野瀬
「それはそれで、堅実なお考えだとも言えますけどね」
加賀夫人
「今にして思えばおっしゃる通りなのですが、その時は腹が立って。親としては、画廊を継いで欲しい思いがありましたし、愛美の望むような結婚生活を送るには、相手の方の理解と、それなりの経済力が必要だとも言いました。…それから間もなくです、愛美が失踪したのは」
加賀夫人が俯くと、一同の視線は、穂積に集中した。
穂積
「愛美さんの失踪を手助けしそうな人物に、心当たりはありますか?」
加賀夫人が、潤んだ目を穂積に向ける。
加賀夫人
「…大学には、親しい男性も何人かいたようです。名前は知りませんが。あとは、地元にいる、仲良しの女の子たちぐらいでしょうか」
明智
「どんな小さな縁でも構いません」
明智がメモを執る。
加賀夫人
「夫の友人で、画廊のお得意様でもある、ナカジマさんという男性がいます。愛美は人見知りでしたが、不思議と、ナカジマさんにはなついていました」
穂積
「その方は、今、どちらに?」
加賀夫人
「分かりません。いつもふらりと現れるのです」
加賀夫人の口から、それ以上の有益な情報は得られなかった。
そこで、夫人にはひとまずお帰りいただく事にした。
階下まで加賀夫人を見送りして戻ってきた小野瀬が、何やら真剣な穂積の思案顔を見咎める。
小野瀬
「どうしたの、穂積?」
穂積
「何でもないわ。さあ、手分けして、愛美さんの行方を探しましょう」
12/14(Wed) 06:31
小春
~翼vision~
探偵事務所が入っているビルの階段を降り、外に出たところで、コンビニ前の喫煙所にいた穂積所長と目が合った。
穂積
「外出?」
翼
「はい。初仕事です!」
穂積
「そう、頑張ってね。応援するわ」
碧眼が、優しく細められた。
…さっきも思ったけど、本当に、綺麗な人。
だってほら、歩道を歩く女性たちがみんな、穂積所長の姿をちらちら盗み見しながら通り過ぎてゆくもの。
穂積
「ワタシはこれから小野瀬と鎌倉よ。お土産買ってきてあげるわね」
翼
「ありがとうございます!…そうだ、所長さんのお考えを、お聞きしてもいいですか?」
私が尋ねると、穂積所長は首を傾げた。
穂積
「何かしら」
翼
「えっと…、好きな人が出来て、その人と結婚したい気持ちになったとします」
穂積
「はい」
翼
「でも、その人は、自分の家族の話をしてくれないんです。それって、相手の人は、自分の事を好きじゃないって事なんですか?」
私は、さっき、如月さんが藤守所長に途中で止められていた言葉を、穂積所長にぶつけてみた。
翼
「それとも、何か事情があって教えられないんでしょうか?…だとしたら、調べない方がいいんでしょうか?」
すると、穂積所長は長身を屈めるようにして、正面から私の顔を覗き込んできた。
穂積
「櫻井」
翼
「は、っはい」
穂積
「ワタシに恋をしてみなさい」
翼
「えっ?!」
突然の意外な言葉に、私はびっくりして固まってしまった。
穂積所長は私の反応に軽く笑ってから、さらに、その、綺麗な顔を近づける。
穂積
「結婚したいほど好き、そう思ってごらんなさい。…そしたら、依頼人の気持ちがわかるはずよ」
ここでパースヽ( ̄▽ ̄)ノ⌒○
[削除]
12/14(Wed) 16:49
先日、鎌倉散策しました←いらぬ報告(笑)
エミ
目の前の美貌を直視し続けるのは恥ずかしいのだけれども、視線を逸らす勇気も無ければ、突然の意外な言葉を受け流す度胸も無い。
『結婚したいほど好き、そう思ってごらんなさい』
脳細胞フル回転で必死に考えるも、いろいろと限界間近。そんな翼の足元から、
にゃー
と、のんびりした声がした。
穂積
「あら、エミ。お出掛け?」
穂積が腰を屈めたため、綺麗過ぎる顔は翼の目前から遠のいた。翼は、こっそり、ふぅ…と息を吐いた。呼吸を忘れていたみたい。
穂積が話し掛けているのは一匹のネコ。ちんまりと座って穂積を見上げている。
翼
「事務所で飼われているんですか?」
穂積
「誰かの飼いネコって訳じゃないみたいだけど、このビル内を生活の拠点にしているのよ。名前も誰が名付けたのか知らないけど、エミって呼ばれているわ」
翼
「そうでしたか。エミちゃん、霞ヶ関探偵事務所の桜井翼です。よろしくね」
翼も屈んで律儀にエミに挨拶をすると、にゃーと返ってきた。
穂積
「じゃあね。知らない人に声掛けられてもついて行っちゃダメよ」
翼・エミ
「はい!/にゃー」
*****
ホントにネコで登場(笑)
パース(*^∀^)ノ⌒○
12/14(Wed) 18:56
エミさんありがとうございます
小春
ホントにネコで登場(笑)
いいでしょう、存分に働いてもらいますよ(* ̄ー ̄)
***
買い物を終えてコンビニから出てきた小野瀬とともに穂積が去り、まだドキドキしながら彼らを見送った翼も、また、その場を去った後。
しばらく舌で毛繕いをしていたエミが、階段に向かって歩き出した。
ただし、今度は地下へと降りて行く。
「にゃーん」
薄暗い踊り場、重そうな木製の扉の前でエミが一声鳴くと、内側から、扉が薄く開いた。
「おや、エミさんいらっしゃい」
迎える声に続いて、部屋の中から、また別の声がした。
「ナカジマさん、お客様ですか?」
「愛らしいレディのお越しです」
ネコ一匹だけの隙間からエミが滑り込むと、静かに扉が閉められた。
閉まる寸前、笑いを含んだ声が
「でも少しだけですよ。もうじき僕たちは逃避行に出発するんですから」
そう囁いたけれど、その言葉を聴いていた者は誰もいなかった…
[削除]
12/15(Thu) 06:36
おっと忘れてた
小春
ここでパースヽ( ̄▽ ̄)ノ⌒○
(↑どうしてもやりたいらしい)
12/15(Thu) 11:14
尾行します!
ジュン
翼は北村からあらかじめ聞いていた加賀愛実の自宅前にいた。
可愛らしいマンションはいかにも女性が好みそう。
スマホを操作するふりをしながら部屋の様子を伺う。
小一時間ほどたった頃玄関が開いた。
写真で見た加賀愛実が部屋から出てきたのだ。
翼は如月からのアドバイスに従い加賀愛実の後をついていくことにした。
最寄りの駅から電車に乗り込み着いたのは
(美術館?)
美術館に入ると加賀愛実は楽しそうに絵画を見て回る。
しかし、何かかがおかしい。
このエリアから次には進もうとしない。
あいにく人が少なく翼がいつまでもここにいては不審がられてしまうかもしれない。
仕方なく翼は次のエリアで待つことにした。
次に向かって歩いていく時に翼は髪の長い男性とすれ違った。
(来ない…)
出口に向かうには必ずここを通るはず…なのに加賀愛実は現れなかった。
藤守所長
「まかれた!?」
仕方なく事務所に戻った翼の報告を受けて所長が声をあげる。
小笠原
「加賀愛実に気付かれたの?」
翼
「そんな様子はなかったんですが…すみません!」
勢いよく頭を下げる翼に如月がポンポンと肩を叩く。
如月
「今日はたまたま別の出口から出ただけかもしれないよ?明日は俺も一緒に行くから頑張ろう?」
翼
「はい!」
藤守所長
「チビッ子頼んだぞ。櫻井、次は頑張るんだぞ。」
如月
「チビッ子じゃありません!如月ですぅ~」
如月はプウッと頬を膨らませる。
そんな如月を見ながら翼は美術館で誰かとすれ違ったことを思い出していた。
しかし、顔も姿も思い出せないのであった。
翼ちゃん、初尾行は失敗!
そしてすれ違った男性とは?
この後どうなるのかわからないところでパース(⌒∇⌒)ノ⌒〇
[削除]
12/15(Thu) 20:59
ジュンさんありがとうございます
小春
行方不明の加賀愛美、まさかの自宅(^-^;)ゞ
さてどうしようかな。
***
穂積
「何ですって?自宅にいた?!」
神奈川県、鵠沼に建つマンションの一室で、穂積は受話器を手に大きな声を上げた。
電話の相手は、東京にいる藤守だ。
念を入れて、自宅周辺で聞き込みをさせようと加賀愛美の現住所に向かわせただけだった藤守からのまさかの報告に、さすがの穂積も言葉を失う。
藤守
『はい。自宅を出て、電車に乗って、美術館に寄って、そこを出てからはタクシーで横浜中華街に移動して、今は北京料理の名店で食事をしています』
穂積は頭を抱えた。
穂積
「どうして声をかけて保護しないの?!今すぐ行きなさい!」
藤守
『そんな!あんな高級な店、俺、よう入れませんよ。でも、任せてください。出入り口をしっかり見張ってますから』
穂積
「……」
穂積は深々と溜め息をつくと同時に、がっくりと肩を落とした。
その手から、小野瀬が受話器を取って耳に当てる。
小野瀬
「藤守くん、俺たちが加賀夫人から受けた依頼は、その愛美さんを探す事なんだよ。だから、見つけたら、当然、保護して、加賀夫人に報告しなくちゃ」
藤守
『すんません。せやけど実は、、隣の、アニキのトコロの櫻井が、どうやら加賀愛美を尾行してましてん』
穂積
「はあ?!」
藤守
『だとしたら、初仕事やし、邪魔したら可哀想や思うて…』
穂積
「…今も、櫻井は近くにいるの?」
藤守
『いや、美術館の途中から、おらへんようになりましたけど』
小野瀬
「えっ、それって…」
穂積
「藤守!」
小野瀬の声を遮るように、穂積が叫んだ。
穂積
「店に入って、加賀愛美を保護しなさい!今すぐ!!」
藤守
「は、はい!」
通話状態のまま、数分の沈黙の後。
明らかに意気消沈した藤守の声が返ってきた。
藤守
『すんません、見失いました…』
***
小野瀬
「すまないね、諏訪野。本当は、もう少しゆっくり話したかったんだけど」
鵠沼駅のホームでしきりに謝る小野瀬に、諏訪野、と呼ばれた男性は、穏やかな微笑みで応えた。
諏訪野
「探偵さんも大変だね」
諏訪野は髪の毛も肌も真っ白という極めて目立つ容姿で、しかも、穂積や小野瀬に劣らない、端正な美貌の持ち主だ。
小野瀬の元ヤン時代を知る彼は、東日本屈指の暴走族の先代総長で、いまだに、関東を中心とした広いネットワークを維持している。
諏訪野
「もしも、加賀愛美さんが俺の情報網に引っ掛かったら、すぐにきみたちに連絡するよ。もちろん、可能な範囲で身の安全も保証する」
穂積
「頼むわね。藤守も、いつもはこんな間抜けじゃないのよ。それなのに、全く…」
諏訪野は、穂積の愚痴に相槌を打ちながら、慰めるように言った。
諏訪野
「気を付ける事だね。鎌倉の加賀画廊には、あまり良くない噂もあるようだし」
小野瀬
「噂?」
その直後、ホームに電車が入って来た。
手を振る諏訪野に見送られながら、穂積と小野瀬はそれぞれ、まだ写真でしか知らない、加賀愛美の姿を思い浮かべていた。
***
加賀愛美は見え隠れするのに捕まえられない。
追いかけっこの始まり…?
ここでパースヽ( ̄▽ ̄)ノ⌒○
01/17(Tue) 07:27
大変長らくお待たせしました。
小春
とりあえずリクエスト頂いたともさんを登場させてみます。
「にゃーお」
猫のエミが次に訪れたのは、二つの探偵事務所が入っているマンションの、三階。
???
「エミやん。煮干し食べる?」
声の主に撫でられて、エミが嬉しそうに喉を鳴らす。
三階は、このマンションのオーナーの娘、白河とものオフィスになっている。
関西出身でオープンな性格の彼女に似合いの明るく広いオフィスは、数社と契約している人気ウェディングプランナーとしてのともの仕事場だ。
壁と扉で仕切られたその奥には居住スペースもあり、仕事が追い込みを迎える時など、そこで寝泊まりする事も珍しくなかった。
とも
「ふふ、どないしたん?今日は、彼氏がおらへんの?」
「ぃにゃーぃ」
ともに抱き上げられて、エミはまるで返事をしたような声で鳴いた。
エミは、下の階にある二つの探偵事務所の所長のうちの一人、穂積の事が大好きなのだ。
「そっか。ちょっと聞きたい事があったんやけどな」
ともの仕事と探偵事務所とは、一見関係無い職業のようでいて、意外と接点がある。
「ま、今度会うた時でええわ」
一方、初尾行で加賀愛美を見失った翼は、如月を伴っての二度目の尾行にも失敗しようとしていた。
加賀愛美は、自宅に帰って来なかったのだ。
「翼ちゃん、一旦戻ろうか」
「はい……」
足取りを見失い、藤守所長と小笠原の待つ事務所に戻った翼は、そこで、加賀愛美を待っている間に考えていた事を口に出した。
それは、穂積に言われた言葉から思い付いた事で。
翼
「あの、所長、私、依頼人の北村さんの事を調べてみたいんですけど」
藤守所長
「は?」
翼
「見失った加賀愛美さんの消息は、彼女が美術館で足を止めて見ていた絵画についても含めて、小笠原さんにネットで調べてもらっています。彼女が見つかるまでの間、北村さんを」
如月
「翼ちゃん、どういう事?」
翼
「最初から気になってました。私には、北村さんと加賀愛美さんの関係が、なんだか希薄に思えて仕方ないんです。もしかして……」
藤守所長
「待て、ヒヨッコ。迂闊な言葉を口に出すな」
藤守所長は翼を制してから、腕組みをしてううむ、と唸った。
藤守所長
「分かった、北村さんを調べてこい。責任は俺が持つ。ただし、絶対に、単独行動はするなよ」
翼
「はい!」
ここでパースヽ( ̄▽ ̄)ノ⌒○
01/17(Tue) 11:49
加賀愛実はどこへ?
ジュン
どう進めたらいいのか……
その一方、桜田門探偵事務所では藤守が所長の穂積から拳骨をもらっていた。
穂積
「せっかく見つけたのに保護できなかったなんて!」
小野瀬
「まあまあ、穂積。それくらいにしといてあげなさい。」
拳骨をくらい涙目の藤守を睨み付ける穂積を小野瀬が諭す。
穂積
「で、その後の加賀愛実の足取りは?」
藤守
「それが自宅に帰った形跡がなくて…」
明智
「親しい友人宅にもいないようです。」
こちらも加賀愛実の所在については手詰まりとなっていた。
はあっと穂積から溜め息がもれる。
小野瀬
「他に何か分かってることはないの?」
昨日、明智が加賀愛実の自宅や友人について調べているはずだ。そこから何か糸口を見つけられないだろうか。
明智
「それが加賀愛実は近いうちに引っ越しを予定していたとか。」
穂積
「引っ越し?」
穂積の問いに頷き明智は昨日調べたことを述べた。
加賀愛実は少し前何かに悩んでいるようだったこと。
近いうちに引っ越しを予定していたが友人たちの誰1人としてその事実を知らないこと。
最近になって急に明るくなったこと。
藤守
「そういえば、美術館でも楽しそうにしてたなあ。悩んでる様子なんかなかったで。」
穂積
「加賀愛実は何に悩んでいたのかしら?そしてそれが最近になって解決した?」
明智
「何を悩んでいたのかは友人たちも知らないらしくて。」
小野瀬
「引っ越しが悩みを解決してくれるのかな?」
藤守
「そうやとしてもまだ引っ越してませんやん?」
穂積
「悩みを解決してくれる何かに出会ったことは確かなようね。」
しばらくの沈黙が落ちる。
穂積
「加賀愛実の悩み事を考えていても仕方ないわ。とにかく、新しい引っ越し先を探しましょう。そこにいるかもしれないわ。私たちの仕事は加賀愛実の保護よ。それが最優先。」
「はい!」と返事をして明智と藤守が飛び出していく。
穂積
「小野瀬、一応諏訪野の言っていた加賀画廊の噂とやらを調べてみて。この依頼、何かあるかもしれないわね。」
謎だらけの2つの依頼…どうなっていくんでしょう?
さっぱり先が見えません(^_^;)
でもここでパース(⌒∇⌒)ノ⌒〇
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02/21(Tue) 06:24
小春
藤守アニの霞ヶ関探偵事務所と、穂積の桜田門探偵事務所。
同じビルの同じ階を分け合うようにして隣接する二つの探偵事務所は、互いにそうとは知らぬまま、一人の同じ女性の行方を追いかけていた。
~霞ヶ関探偵事務所~
翼
「藤守所長、北村さんの周辺を調べてみたら、ちょっと気になる事があったのですが」
加賀愛美の姿を見失ってから二日。
彼女の身辺調査を依頼してきた北村自身について、慎重に聞き込みや裏付けをしてきた翼と如月が、藤守所長の机の前に立った。
藤守所長
「…ふむ」
二人の様子に藤守所長は思い当たる事があるのか、椅子に座ったまま、腕組みをして静かに身構えた。
藤守所長
「説明してみろ」
翼
「はい。二人と親しい人たちに聞き込みをした結果を総合してみると、大学時代、彼と加賀さんは確かに交際していましたが、卒業してからは徐々に、加賀さんの方が北村さんから離れようとしていたようです」
藤守所長
「何故だ」
翼
「理由までは分かりません。けれど、少なくとも、彼と結婚するつもりは無かったようです」
藤守所長
「…気持ちも離れていたのだろうか」
珍しく、藤守所長が神妙な顔をする。
翼
「…そこは、分かりません。加賀さんに訊くしかないです」
翼の溜め息とともに訪れた沈黙を破ったのは、小笠原だった。
小笠原
「ところで、美術館で加賀愛美さんが足を停めたブロックにあった絵の事だけど」
如月
「うわびっくりした!小笠原さん、いたんですか!」
小笠原
「最初からずっといたから」
翼の隣で大袈裟に驚いた如月の声を冷たく受け流して、小笠原は藤守所長に顔を向けた。
藤守所長
「誰の絵か分かったのか?」
小笠原
「分かった。ブロックには十数枚の絵があったけど、彼女の目的は、おそらくその絵で間違いない」
藤守所長
「早く言え。そして敬語を使え!」
小笠原は注意に動じる様子もなく、プリントアウトした紙を数枚、藤守所長に差し出した。
小笠原
「あの日、美術館では、新進気鋭と呼ばれる若い作家ばかりを集めた作品展が開催されていた」
如月と翼も、藤守所長の椅子の後ろに回り込んで、肩越しにその紙を一緒に見つめる。
一枚目は館内の見取り図で、加賀愛美が足を停めた場所に印がつけられていた。
小笠原
「櫻井さん、その位置で間違いないよね?」
翼
「はい」
翼が頷くと、小笠原も頷いた。
小笠原
「もう一枚の紙に、パンフレットから抜粋したその絵を拡大した」
藤守所長が紙を捲って、プリントアウトされたその絵が現れた瞬間、三人は息を飲んだ。
それは朴念仁の藤守所長や如月が見てさえ、一目で素晴らしい出来映えだと分かるほどの美しい絵だった。
可憐な花々と、蜜蜂や蝶といった小さな生き物まで正確に写し取り、しかも、風景への愛情をもって描かれた明るい色調の細密画はまるで写真のようでいて、その柔らかさは写真ではあり得ない。
さらに驚いたのは、作者の名前。
小笠原
「そう、北村さんの絵だよ。彼は、ボタニカルアートの天才なんだ」
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