『アブナイ☆恋の共同生活』
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11/26(Thu) 21:26
どうなっちゃうの?
小春
髪を乾かすドライヤーの音が止むのを待って、泪は、隣の翼の部屋の扉をノックした。
すぐに、はい、と返事があって、扉が開く。
パジャマにカーディガンを羽織っただけの、無防備な普段着姿を自分に見せてくれる翼に、ほっとする。
けれど同時に、二人の間を、昨日までは見えなかった白い男の影が塞いだような気がして、泪は柳眉を寄せた。
翼
「……あの」
泪
「ああ、ごめん。……入っていいか」
翼
「はい」
招き入れられて、床に置かれたクッションを勧められる。
壁際のベッドが目に入ったが、見ない事にした。
クッションに胡座をかき、壁に背を預けて、はあ、と息を吐く。
翼
「……怒って、ますよね……」
隣に座った翼の小さな呟きに、泪は閉じていた瞼を開いた。
目が合うと、翼の大きな目が、じわりと潤んだ。
泪はそっと右手を伸ばして翼の頭を抱き寄せると、柔らかい栗色の髪を撫でた。
泪
「怒ってなんかいない。
……俺の方こそ、お前に謝るつもりで来たんだ」
翼
「……?」
泪
「嫉妬してる」
翼
「…あの…誰が、誰に、ですか?」
泪
「俺が、諏訪野に」
こつん、と、泪のこめかみが翼の額に当たる。
泪
「同じ職場になってから、かえってお前と距離が開いた」
翼
「…それは…」
泪
「幼馴染みで、……恋人だったのに。
お前を好きな気持ちは今も変わらないのに、上司と部下になったせいで、手が出せなくなった」
翼も、気持ちは同じだった。
警察官になったのは、当たり前だけれど翼の方が後だった。
翼は泪の傍にいたかったから、追いかけた。
それが、こんな、皮肉な結果になるなんて。
泪
「……諏訪野は、シロだ」
翼
「えっ」
泪
「少なくとも、露出狂の犯人じゃない」
翼
「……泪さんは、それが分かってて、諏訪野と私の交際を許したんですか?」
頷く泪を見て、翼は、胸の奥が冷えてゆく気がした。
泪
「……お前は、まだ若い。
この機会に、俺以外の男と付き合ってみるのも…」
翼
「泪さん」
泪の言葉を、翼は遮った。
身体を離して、泪を見つめる。
翼
「私……信じてくれているからだと思ってました」
泪
「翼」
翼
「泪さんが、私が諏訪野さんを好きになってもいいと思っていたなんて」
泪
「俺は」
翼
「それなら…それなら、私、もっと真剣に諏訪野さんと向き合います。
そうでないと、失礼だと思うから」
泪
「翼」
翼
「今日はもう出て行ってください」
翼は立ち上がり、泪の身体を押した。
泪
「翼…!」
翼
「お願い!」
それ以上、翼はもう何も言わなかった。
泪は唇を噛んで立ち上がり、溜め息だけを残して隣室に消えた。
こんなに近くにいるのに。
この日、翼と泪は、壁を挟んで背中合わせに座ったまま、一睡もせずに夜を過ごした。
誰かなんとかして。←
ここでパースヽ( ̄▽ ̄)ノ⌒○
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11/27(Fri) 09:26
おはよーございまーす( ´ ▽ ` )ノ
とも
お久しぶりでーす( ´ ▽ ` )ノ
いつの間にか話が進んでる~⁉
けどなんとかしてともを登場させてみる。
とも
「…え? あの二人がケンカ?」
公平
「あ、ありがと!そーなんだよ。 泪兄さんは朝イチで会議があるってオレたちよりも出勤が早かったし顔は見てないんだけど、翼ちゃんが明らかにテンション低かったんだよねぇ」
誠臣
「室…じゃなかった、泪兄さんも今朝は不機嫌というか、心ここに在らず、といった感じだったな。 そのあとで翼の様子を見たら、何かあったんじゃないかと」
遅めの昼食を、と外回り中の誠臣と公平が立ち寄ったのは捜査室御用達のさくら庵。ともは近くの外務省に勤める外交官になった。警視庁からも近いので、恋人である誠臣とはよく通勤を一緒にしている。
泪と翼の関係を藤守兄弟と見守ってきたともにとっても、それは驚くべき事件だ。
とも
「うーん、それやったら私が一度話聞いてみよか? 翼さんに帰りにでもお茶できひんか聞いてみるわ。 というわけやから、まーくん、今日は一緒に帰られへんで」
誠臣
「仕方ないが頼む。 翼と一緒にうちに来て、夕飯を食べて帰るといい」
とも
「やった! じゃあ私はそろそろ戻るわ~」
こんなんで繋がりましたかね?
続きをパース( ´ ▽ ` )ノ⌒◯
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11/28(Sat) 16:18
ともさんありがとうございます(´ 3`)ちゅー
小春
~終業後~
日暮れ間近。
ともの姿は再び『さくら庵』にあった。
昼食と違うのは、テーブルを挟んだ向かい側の席に、誠臣と公平ではなく、翼が座っている事だ。
いつも輝いている桜色の頬も大きな瞳も、今日は、心なしか憔悴して見える。
ともに求められるまま、翼は、諏訪野に誘われたところから、昨夜の泪との会話までを隠さずに話していた。
とも
「うーん、話を聞いてみれば、翼さんが不安になる気持ち、よお分かるわ。
でも、泪さんの言う事も、一理あるんちゃうかな?」
歯に衣着せないともの言葉に、翼は思わず腰を浮かせた。
翼
「えっ、そう思う?」
とも
「うん。
こーちゃんに聞いたけど、諏訪野さんて、超イケメンで、超いい人らしいやん。
翼さんは今まで泪さんひとすじやったから、そういう目で他の男の人を見たことないかもしれへんけど…
泪さんの言う通り、視野を広げるいい機会かも」
ともは、運ばれて来たパンケーキをひとくち、フォークに刺して口に運んだ。
生クリームをふんだんに使い、色とりどりの果物を盛ったパンケーキやプチフールの置かれた皿の並ぶテーブルの上の華やかさは、とても蕎麦屋とは思えない。
翼
「そういうものなのかな…」
まだ納得いかない顔の翼に向かって、ともは、不意に、にやりと笑った。
とも
「これは私の勘やけど。
泪さんも、今、不安になってんねんで、きっと」
翼
「泪さんが?」
とも
「子供の頃から一緒にいるから、翼さんが自分を好きなのは、あくまでも隣の優しいお兄さんとしてなんやないかな、って」
翼はどきりとした。
翼
「それは…そういう気持ちだってもちろんあるけど、でも、でも…」
でも、泪さんは特別。
とも
「どう特別なん?」
翼
「……初めてキスしてもらった時、ドキドキしたし……嬉しかったし…」
とも
「……」
ともは頭を抱えた。
それを見て、翼は急いで言い足す。
翼
「頭を撫でてもらうのだって、泪さんに触られるのが一番気持ちいいし、
そ、それに、隣の部屋に泪さんがいると思うだけでよく眠れるし!」
とも
「翼さん」
翼
「……はい」
ともは、落ち着いて、とでもいうように、いつしか翼がぎゅっと握り締めていた拳に自分の手を重ねて、そっと下ろさせた。
とも
「どうやら、私の勘は当たってしまったみたい」
それから、はあ、と、溜め息をついた。
とも
「翼さん、もう少し成長した方がええわ」
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11/28(Sat) 16:41
小春
諏訪野
「翼さん、悩み事かな」
遊園地のベンチに座って物思いに耽っていた翼に、諏訪野が紙コップを差し出してくれた。
翼
「あっ、ごめんなさい、ぼんやりしてて。ありがとうございます」
諏訪野
「どういたしまして。
熱いから、気をつけてね」
カフェオレを受け取ると、背中から、ふわりと男物のコートが肩に掛けられた。
お礼を言うと、諏訪野は、静かに、翼の隣に腰を下ろした。
諏訪野
「もしかして、俺の事で悩ませてる?」
穏やかな諏訪野の声に、心配そうな響きが加わっていた。
何度か会ってみて分かったが、諏訪野は他人の気持ちに敏感だ。
だからといって、悩む翼の胸の内に土足で踏み込んで来るような真似はしない。
悩んでいる翼に気を遣い、いたわってくれる想いだけが伝わってくる。
その想いは純粋な善意で、だから、翼は正直に頷いた。
翼
「…確かに、諏訪野さんがきっかけではあります。
けど…
自分自身の事なのに、よく分からなくなってしまって。
だめですね」
無理して笑おうとしたけれど、笑えなかった。
いつもよく笑う諏訪野が、今は、真剣な表情で翼を見つめていたから。
アルビノだという諏訪野の目は、透き通るように薄い茶色。
目が合うと、逸らせなくなる。
その不思議な色の目に、吸い込まれそうな気持ちになる。
諏訪野
「……きみは、葵の弟さん……泪くんが好きなんだよね」
諏訪野の言葉に、翼はハッと我にかえった。
翼
「知ってたんですか?
それなのに、どうして私に交際を…」
諏訪野
「きみは正直だから、俺も正直に話すよ」
諏訪野の眼差しが和らいだ。
諏訪野
「きみは、葵の大切な人だ。
もちろん、泪くんも、葵にとってかけがえのない人だろう。
その二人の仲を裂くつもりは無いし、迷惑もかけたくない」
翼
「……」
仲を裂くつもりは無い?
でも……
諏訪野
「俺の本心は、一番最初にきみに伝えた通りなんだ」
翼
「一番、最初に…?」
俺と、付き合ってくれないかな。
友達から、よろしくね。
あれが、言葉通りの、意味、だとすると。
翼
「……」
諏訪野
「きみの事を可愛いお嬢さんだと思っているのも、本心だよ」
失礼だけど、葵の想い人じゃないよね?
葵の彼女ではないなら、いいんだ。
連絡先は葵に伝えて。
デートは葵も一緒でいいよ。
翼
「……」
なにかが、翼の中で引っ掛かった。
翼
「諏訪野さん、は、もしかして」
もしかして。
諏訪野
「ただ、少しでも近くにいたいだけなんだ」
翼の頭の中で結論が出たのを見計らって、白い頬を染め、はにかむように諏訪野が微笑む。
諏訪野
「内緒にしてくれるかな」
翼
「……誰にも言いません」
翼は、瞬きをするのも忘れて、目の前の綺麗な男友達を、今朝までとは違う思いで見つめていた。
翼ちゃんと諏訪野の友情が深まったところで(←オイ)
ここでパースヽ( ̄▽ ̄)ノ⌒○
11/29(Sun) 22:14
ともさんお帰りなさい*\(^o^)/*
澪
珍しく全員が揃った捜査室では、溜め込みがちな事務作業が進められていた。
賢史や公平を中心に雑談を交えながらも、全員が泪と翼の様子を気にしている。
泪も翼も平静を装ってはいるが、長年一つ屋根の下で二人を見てきた家族にはお見通しだ。
一体、何があったのだろう。
思い当たることといえばやはり諏訪野の件くらいしかない。
数日前、翼はともには何か話をしたらしい。
その後しばらく何か悩んでいる風ではあったが、また諏訪野と出掛けたかと思えば、今度はぼうっとして帰ってきた。
けれど、泪とはぎこちないままだ。
弟たちが考えを巡らせる中、捜査室のドアがノックされる。
ガチャリとドアの開く音がした、次の瞬間。
翼
「……!」
立ち上がった翼の視線を追った捜査室の一同が、目を見開く。
澪
「ハイ!翼、藤守さん方」
翼
「澪さん!」
「はー、ほんとに藤守家の部署ねえ」とデスクの顔ぶれに感心する澪に、泪もまた立ち上がった。
泪
「…お前、なんで」
澪
「組対の捜査協力の担当になったの。
ついでに寄っていいか聞いたら案内してくれたから、来ちゃった」
翼
「で、でも、澪さんって関西じゃ…」
澪は卒業後、法務省入国管理局へ入局した。
関東圏での異動を繰り返していたのだが、翼の言葉通り、ここ一年は関西国際空港で入国審査業務などに就いていたのだった。
しかし。
澪
「うっふっふ。
実はこの度、本省入国管理局に戻ってまいりました!」
諒
「アニと一緒か」
ボソリと呟いた諒の言葉に、澪がにやりと笑う。
澪
「そう、6号館。
アニの驚きっぷりはなかなかだった」
捜査室の全員が、慶史の驚き様を想像してか口元を緩める。
そんな一人一人の顔を懐かしく見ていた澪が、思い出したように声を上げた。
澪
「そうだ、葵は鑑識だっけ?
顔出しても大丈夫かな」
賢史
「あー、そしたら俺もこの資料返さなあかんし、一緒に行きますわ」
そう言って立ち上がりかけた賢史の手から、資料が奪われた。
泪
「アンタは報告書書いてなさい。
ワタシが行ってくるから」
驚いて振り返った賢史の頭を取り上げた資料で叩いた泪は、澪に「行くわよ」と声を掛けると早々と捜査室を出る。
澪
「あ、それじゃ、お邪魔しました」
捜査室の面々に見送られ、慌てて泪の後を追った澪が廊下に出ると、泪はそこに立ったままだった。
澪
「なんだ、待っててくれたの」
近づいてくる澪を見ながら、泪は大きく息を吐いた。
泪
「お前な、びっくりしただろ」
泪が驚くのも無理はない。
卒業後も交友は続いていたものの、澪が関西に異動してからのこの一年、会うことはおろか、メッセージのやり取りも稀になっていた。
本省勤務になったなど、初耳だった。
澪
「私だって今びっくりしたわよ」
泪
「…今?」
眉を顰めた泪に、澪は捜査室のドアへちらりと視線を投げる。
澪
「何かあったんでしょ、翼と」
泪
「……!」
澪の碧眼に映る自分が動揺したように見えて、泪は踵を返して歩き始めた。
澪
「賢史に構ってる時、翼がどんな目で泪を見てたか、気付いてないわけないでしょ。
しょっちゅう見つめ合ってたのに、一度も目合わさないなんて」
後をついて歩く澪が、泪の背中に声を掛ける。
その通りだ、と泪は唇を噛んだ。
翼がこちらを見ているのは気付いていた。
その瞳にあの夜とはどこか違う色が滲んでいたことにも、気付いていた。
しかし、あの夜の一件以来、翼とまともに話をできていない。
決して、翼と別れるつもりなどない。
翼を誰よりも想っている自信もある。
けれど。
けれど…
泪
「…ここだ」
鑑識室のドアを開くと、奥に白衣を着た葵の背中が見える。
太田と細野が何用かと腰を上げかけたのを、泪が手で制した。
泪
「いや、賢史が借りてた資料を返しに来ただけだ。
葵」
葵
「ああ、そこ置いといて」
くるりと振り返った葵が、泪の横に立つ澪の姿を見て動きを止める。
澪
「ハイ!久しぶり」
笑って手を上げた澪に葵が反応するよりも早く、鑑識室の電話が鳴った。
太田
「はい鑑識室…少々お待ちください。
すみません、御大」
太田が通話口を押さえて声をかけると、葵が頷いて受話器を取った。
泪
「…ま、地味だけど驚いてたんじゃねえか」
澪
「だね」
再びデスクに向かった葵の背中を見ながら、泪と澪はフッと笑い合う。
澪
「忙しいみたいだし、そろそろ戻るわ。
…じゃあ、またね」
おう、と手を上げた泪に手を振り、太田と細野に頭を下げ、澪は法務省へと戻っていった。
泪
「…じゃ、ワタシも戻るわ」
まだ通話中の葵を見て、泪は資料をレタートレーに置くと鑑識室を出た。
捜査室への廊下を歩きながらガシガシと頭を掻く。
同居する兄弟たちの様子を見れば、気付かれているのはわかっていた。
しかし、久しぶりに会った澪にもすぐ気付かれるほどわかりやすいのだろうか。
翼の、さっきの、不安そうで、どこか縋るような瞳。
離したくなんてないのに。
このまま、翼が諏訪野を好きになったら…
廊下に重い嘆息を残し、泪は捜査室へと戻った。
*
いやー、元々澪を教師にはせず何か法学部を活かした方向に就かせる予定だったんですが、そこからノープランだったので悩みました( ̄∇ ̄*)ゞ
もしかして頑張ればオイシイ方向へ持っていける…?と思いつつ(笑)、澪は泪さんの翼ちゃんを見る優しい目を見てますから。
もう叶わないこともわかってるし翼ちゃんと幸せになれよ!と思いながらも、告白もしない恋だし他の恋も見つけられないしで、完全に泪さんへの思いを断ち切れてなさそうだなと。
とりあえず友達としてみんなと一緒に泪さん翼ちゃんのことでハラハラしよう(笑)
それにしても、「澪が葵さんにちょっかい出した日」って澪何したの諏訪野ごめんね、と思いきや…!
楽しい展開で楽しみですo(≧▽≦)o
ではここでパースヽ( ̄▽ ̄)ノ⌒〇
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12/05(Sat) 10:05
澪さんありがとうございます(´ 3`)ちゅー
小春
葵
「……」
いつの間にか、週末のたびに諏訪野と会うのが習慣になりつつあった。
泪が翼とぎこちないままなのとは逆に、翼と諏訪野は順調に仲良くなっていっているように見える。
相変わらず互いへの連絡は葵を通してだし、デートとは言っても、毎回、常に葵や公平や、小春やその仲間たちが一緒だ。
しかし諏訪野も翼もそれでいいらしく、今も、ベンチで編み物をする翼を、諏訪野は隣でただただ優しく眺めている。
時折、公平や高校生たちがヒーローショーの動きを教えてくれとじゃれつくのに相手をしたり、皆に飲み物を買って来てやったりしているが、基本的に、諏訪野は翼に対して受け身で、寛容だった。
葵は迷っていた。
自分としては、デートに同行するのは、諏訪野が翼を泪から奪わないように見守る、監視役のつもりなのだ。
しかし、二人の交際は、葵の目には健全すぎる。
いや、その事自体は安心し歓迎するべきなのだが、どうにも解せない。
そのうえ、一方の翼も、最近の泪の前ではなかなか見せない笑顔を、諏訪野には見せるのだ。
今も、編み目が飛んだと諏訪野に指摘されたらしく、二人で顔を見合わせて笑っているが、葵の知る限り、今まで、翼が、よその男と、あんなに打ち解けているのを見たことがない。
泪と翼がぎこちなくなったのは諏訪野が原因ではなく、もっと前からだったのだと、今では葵たちも気付いていた。
だとすると、逆に、諏訪野がきっかけで泪と翼は元に戻るかも知れないとさえ、考えるようになってきていた。
少なくとも、諏訪野といると翼はリラックスしている。
葵は複雑な思いを抱えたまま、そんな仲の良い二人と、エミーズの楽屋裏にいる他のメンバーたち、その両方が見えるベンチで、溜め息をついた。
諏訪野はもちろん葵の存在を知っているから、葵が軽く合図するだけで、こちらに来てくれる。
諏訪野
「編み物をしている女の子って、可愛いよね」
翼を振り返りながら、諏訪野が微笑む。
葵
「飽きもせず、よく見ていられるな」
諏訪野
「俺もお前にそう言いたいけどね」
それもそうだ。
邪魔だと言われても仕方ない状況だけれど、諏訪野は相変わらず穏やかに微笑んでいる。
諏訪野
「手編みのセーターをプレゼントなんて、いじらしいじゃない」
どきり、と葵の心臓が音を立てた。
セーターだったのか、と気付くと同時に、さっき、翼が、編みかけのそれを、諏訪野の背中に当てたりしていたのを思い出したのだ。
ライトブラウンのセーター。
きっと諏訪野に似合うだろう。
葵
「…でも、そういうの、ちょっと重くないか?」
諏訪野
「そうかな。俺なら嬉しいけど」
他愛ない話をしながら、ふと、葵は今の会話に不自然さを感じた。
……?
葵の頭に浮かんだ疑問符の続きは、諏訪野の声に遮られた。
諏訪野
「ところで葵、……葵?」
葵
「あ、ごめん。ちょっと考え事をしていて」
諏訪野
「当ててみようか」
葵
「え」
ぎくりとした葵の顔をじっと見て、諏訪野はにこりと笑った。
諏訪野
「いや、違う話にしよう。
……特撮仲間から聞いた話だ。
最近、いつもの採石場に時々、不埒な輩が集まるらしい。
どうやら、露出するだけじゃ気が済まなくなってきたらしいな」
ここでパースヽ( ̄▽ ̄)ノ⌒○
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12/06(Sun) 22:42
張り込み開始
ジュン
その日、朝から捜査室はピリピリとした空気が流れていた。
諏訪野の情報を基に諒が調べたところ、確かに採石場近くで幾つかの事件が起こっていた。
後ろからいきなり抱き締められたり、人気のない採石場に引きずり込まれそうになったり……
その曜日や日時を割り出し張り込みをすることになった。
賢史
「最初は俺と公平が見張ってるわ。」
誠臣
「頼んだぞ。三時間経ったら俺と翼が交代する。」
泪
「皆、頼んだわよ。」
翼を現場に向かわせることに何故だかの不安が拭いきれない。だが今は上司として命令を下さなければならない。
泪は翼と目を合わせることはなかった。
目を合わせば自分の不安が翼にも移ってしまうような気がしたのだ。
賢史・公平
「じゃあ、行ってきます!」
泪の不安をよそにその日の張り込みは始まった。
これだけでもいいですかね?
ここでパースヽ( ̄▽ ̄)ノ⌒〇
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12/09(Wed) 10:00
ジュンさんありがとうございます(´ 3`)ちゅー
小春
リレーですから1行だけでも全然OKなんですよー。
では私もちょっとだけ。
賢史
「なあ、泪兄貴と翼ちゃん、実際のところどうやねん」
公平
「あの二人、学生の頃は、すぐにでも結婚しそうなぐらい仲良しだったのになあ。
最近は、休日でも翼ちゃんは諏訪野さんとばっかりだし、そもそも泪兄さんが休みを合わせないと同じ日には休めないし」
採石場の入り口が見下ろせる高い位置に、腹這いになって双眼鏡を手に見張りながら、賢史と公平は、藤守兄弟の五男と七男の会話を交わしていた。
賢史
「考えてみたら、兄貴が警察に入って偉くなるたびに、家にいる時間は短くなってったからなあ」
公平
「それが寂しくて、翼ちゃんは警察に入ったのに。皮肉だよね」
賢史
「まさか、直属の上司と部下になるやなんてなぁ」
公平
「賢史兄さんだって、他人事じゃないよ。ジュンさんが優しいから、事件が起きて約束すっぽかしても許してもらえてるけど。そのうち飽きられて見放されちゃうかも」
賢史
「おまっ、不吉な事を言うなや!……俺かて、そろそろプロポーズせなあかんやろかと思てんねん」
公平
「慶史兄さんはまだ魔法使いだし、誠臣兄さんは上の兄さんたちが結婚しなければともさんとゴールインしないだろうし、このぶんだと、諒兄さんと紅花ちゃんが一番先に結婚しちゃったりして」
賢史
「泪兄貴は翼ちゃんひとすじやからな。けど、葵兄貴かて分からんで。最近は、澪さんと会うようになってるらしいし」
公平
「知ってる。泪兄さんと翼ちゃんの事を、澪さんに相談してるんだよね」
賢史
「葵兄貴はブラコンやからな。泪兄貴の事が心配でたまらんねん」
公平
「でも、俺も毎週のように諏訪野さんに会ってるけどさ。あの人、翼ちゃんとは本当にただの」
賢史
「しっ!」
公平の言葉を遮った賢史が頭を低くし、公平もまた瞬時に頭を下げた。
採石場にある無数の岩陰や坑道のひとつから、数人の人影が明るい場所に出てきたのだ。
赤、青、黄…派手な色の、いわゆる戦隊もののコスチュームとヒーローマスクを着けた男たちが、マントのようにも見えるコートを羽織って、広い岩場の間の道を歩いて行く。
さらに、隠すように停めてあったバイクを出してきて跨がると、それぞれ、別々の方向に散っていった。
賢史
「結構な人数やん。十二、三人はおったかな…撮れたか?」
公平
「うん。すぐに諒兄さんに映像を転送するよ。そうだ、諏訪野さんにも見てもらう?特撮繋がりで、もしかしたら何か分かるかも」
賢史
「せやな。ほな、ちょうどそろそろ時間になるし、誠臣兄貴と翼ちゃんが来たらここを任せて、俺らは諏訪野さんとこに行ってみよか」
ここでパースヽ( ̄▽ ̄)ノ⌒○
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12/13(Sun) 20:59
では私も少ーしだけ
澪
賢史
「ああ、お疲れ様」
誠臣
「お疲れ」
それからまもなく、誠臣と翼が姿を見せると、賢史と公平はそっと体をずらした。
誠臣と翼が腹這いになり定位置につくのを確認しつつ、注意深く体を隠しながら、公平が引き継ぎの報告を行う。
公平
「──ということで、諒兄さんには転送したから。
オレたちはこれから諏訪野さんにも映像を見てもらってくるよ」
翼
「わかりました。お願いします」
誠臣と翼に見張りを任せ、賢史と公平は採石場を後にした。
賢史
「諏訪野さん、急にすみません」
急遽諏訪野に連絡を取った賢史と公平は、ショーの稽古中の諏訪野を訪ねていた。
諏訪野
「いや、いいよ。
それより、俺に見てほしいものっていうのは?」
休憩になり、二人の元へ歩み寄ってきた諏訪野の前に、公平がタブレットの画面を示す。
公平
「これです。採石場で撮ったものなんですが」
先ほど撮った映像を再生すると、諏訪野はじっと画面を見つめる。
派手な戦隊ものの衣装を身につけた十数人の姿が画面から消えると、賢史が口を開いた。
賢史
「諏訪野さんから情報をいただいた件の人物なのかどうか、まだわかりません。
どんな些細なことでも結構です。
何か気付いたことなどあれば教えていただきたいのですが」
映像では、男たちは皆ヒーローマスク姿で顔も見えない。
しかし、諏訪野たち特撮の世界に身を置く者ならば、何かわかるかもしれない。
賢史と公平は、真っ直ぐな視線を諏訪野へと注いだのだった。
*
何も進んでないですね(笑)ごめんなさい。
さて事件の行方はどうなる!?
ここでパースヽ( ̄▽ ̄)ノ⌒〇
12/16(Wed) 10:27
澪さんありがとうございます(´ 3`)ちゅー
小春
諏訪野
「…ふむ」
公平
「どうですか?」
諏訪野
「……二人ほど、思い当たる人物がいる」
賢史
「マジですか?!」
諏訪野
「もう一度、冒頭から再生してくれるかな」
公平
「はい!」
公平がタブレットを操作すると、画面に、再び、先程と同じ映像が流れ始めた。
眼下の岩場に大勢のヒーローたちが次々と登場する場面まで来たところで、諏訪野は声を出して、映像を一時停止させた。
諏訪野
「ここだ」
そうして、画面を指差す。
諏訪野
「この大柄で筋肉質なのは、ジミー。こちらの小柄なのは、ハーデーだ。歩き方で分かる」
賢史
「ジミーとハーデー?」
諏訪野
「同業者の《ミズイ》に所属しているアクターたちだよ。そこは、個性的なスーツアクターの集まりでね。中でも、ジミーとハーデーは、敵役に特化したアクターだ。俺は、何度か一緒のステージに立った事がある」
正確には、二人とも主役に憧れてはいる。
だが、ハーデーは演技が巧い上にオーバーアクションなので舞台では浮いてしまい、ジミーは逆に動きは鈍いが体格が大きいので重宝され、いつも怪人役ばかりになってしまうらしい。
ジミーとハーデーはどちらもアマチュアながらレスリングやボクシングでの試合経験があり、本職は、都内のホストクラブやゲイバーで警備員をしていると諏訪野は聞いている。
さらに詳しく話を聞くと、《ミズイ》は都内にあって《エミーズ》より規模の大きいスーツアクターの組織で、だから余計に、彼らは出番に恵まれないのだという。
賢史
「ありがとうございます。すごく参考になりました!」
公平
「早速《ミズイ》に当たってみなきゃ」
諏訪野
「でも、逆に、その二人以外は全く分からないな。アクターじゃないのかも」
賢史
「そしたら、そいつらの事はまた俺たちで調べてみますわ」
諏訪野は賢史の言葉に頷いてから、付け足した。
諏訪野
「俺も、採石場の異変を教えてくれた仲間に連絡して、そいつらに周辺を探らせよう。
人数が多いから、情報は多い方がいいだろう?
ついでに防犯にもなる。
何か分かれば、逐一きみたちに報告するよ」
賢史と公平は、諏訪野が元、大規模な暴走族のリーダーだったということを思い出していた。
公平
「諏訪野さんがこっちの味方で良かったです…」
賢史
「こら!お前失礼やぞ!確かに、敵にまわしたら怖そうやけど」
二人揃って失礼な発言に、諏訪野は声を立てて笑った。
諏訪野
「ところで、中身の事は分からないけど、着ているスーツの事なら知っているよ」
賢史
「……実は、俺たちも、このヒーローの名前を知っています。警察をモチーフにしたヒーローを犯罪に使うとか、何考えてんねん!て、憤ってるんですよ」
諏訪野
「警察にあるのは本物だろうけど、この連中が着ているのは廉価版だ。うちにもあるから、もしも潜入捜査に使うなら持っていくといい」
諏訪野はそう言って、スーツケースをひとつ持って来た。
賢史、公平
「何から何まで、すみません…」
受け取りながら礼を言うと、諏訪野は、にっこりと笑った。
諏訪野
「きみたちの力になれれば、俺はそれで嬉しいんだよ。きみたちは、葵の、大切な人だからね」
ここでパースヽ( ̄▽ ̄)ノ⌒○
[削除]
12/16(Wed) 10:44
ボツにしたけど捨てきれない(笑)
小春
こっちはボツにした部分ですが自分的には面白いのでみんなに見せたいだけ(笑)
*****
諏訪野
「何人か、それらしい人物に心当たりがあるけど……
賢史
「ホンマですか!」
諏訪野
「確認してみよう」
諏訪野はタブレットから視線を上げると、稽古場の奥に向かって声を張った。
諏訪野
『ロバート、ポール。悪いけど、ちょっと力を貸してくれないか』
急に英語になった諏訪野に賢史と公平が驚くよりも早く、稽古場の奥から、野太い裏声が答えた。
???
『ショウ!今、ワタシを呼んだ?!』
???
『違うわよッ!ショウは!ワタシに!「俺にはキミの愛と協力が必要なんだ」って言ったのよッ!』
ドスドスドスドスドスドス!
地響きとともに、重い足音が近付いて来た。
ぬっ、と現れたのは、どちらも2メートルを超える巨漢。
アメリカ人らしき丸顔にちょび髭の大男と、中東っぽい濃い顔付きで、褐色の肌の大男だ。
……が、なんというか、雰囲気がおかしい。
二人は競うように諏訪野に駆け寄ってきたものの、諏訪野が椅子から立ち上がるとたちまち大人しくなって、それどころか、揃ってもじもじし始めた。
諏訪野
『悪いけど、このタブレットの映像を見て欲しい』
見つめる諏訪野に頼まれて、二人はたちまち顔を輝かせた。
ポール
『ショウが見ろって言うなら、ワタシ、大嫌いなヘビが、もっと大嫌いなカエルを飲み込むVTRだって頑張って見るわ!』
ロバート
『ワタシなんか、ネズミがゴキ』
諏訪野
『レディたちにそんな不愉快なものは見せないよ』
諏訪野は苦笑して、ポールとロバートを丁寧に椅子までエスコートした。
公平
(諏訪野さん、あの怪物たちを『レディ』って呼んだ……)
賢史
(嘘やろ。どんだけフェミニストやねん……)
テーブルを挟んだ反対側で、賢史と公平は圧倒されて口もきけない。
諏訪野
『この映像を見て、中の人が誰かを当てて欲しいんだ』
ポール
『あら。と、いうコトは、このヒーローたちの中に、ワタシたちの知っている人物がいるってコト?』
ロバート
『自慢じゃないけど、この界隈の男性アクターなら、身体のラインを見れば誰か分かるわよ』
ポール
『もしかして、ショウも映っているの?』
諏訪野は、ちらりと藤守兄弟に視線を送ってから、微笑んで頷いた。
諏訪野
『いるかもしれないよ』
途端に、ロバートとポールの目の色が変わった。
ロバート
『本当ッ?』
ポール
『だってこのヒーローたち、アンダー穿いてないわよッ?!』
賢史
「(マジで?……けど、露出犯だからやとしたら、下着着てないのも納得できるな)」
公平
「(暴行未遂とも関係あるのかも……)」
賢史
「(それにしても、こんな遠くからの映像で、よおそんな事まで分かるな…)」
食い入るように映像を見るロバートとポールを邪魔しないように、賢史と公平は小声で囁きあう。
ロバート
『みんな、いいカラダしてるわね。だけど、ショウはいないわ!』
ロバートは残念そう。
ポール
『でも、ショウ!ワタシ、分かったわよ!この大柄なマッチョは、ジミー!この小柄でキュートなのはハーデーだわ!』
諏訪野
『やっぱり、そうか』
賢史
「ジミーとハーデー?」
*****
大丈夫、諏訪野は穿いてます(笑)
そして、こっちはボツですから、くれぐれも膨らまさないように(笑)
[削除]
12/16(Wed) 17:53
ニヤニヤ
ジュン
ロバートとポール!まさか、こんなところにいようとは(笑)
ボツにするのは勿体ないですね。
ニヤニヤするくらい楽しかったです。さすが、小春さん。
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12/18(Fri) 09:55
穿いてて安心(笑)
エミ
ロバート&ポールったら、相変わらず可愛いっ!(笑)
紳士な諏訪野氏、素敵です。
(*´艸`*)
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12/27(Sun) 22:37
ボツなのに爆笑~!!
澪
泪
「……なるほど。
《ミズイ》も当たる必要がありそうね」
捜査室に戻った賢史と公平の報告を聞いた後、泪は諒に視線をやった。
その視線に諒が応える。
諒
「調べてみたけど、情報は少ない。
《ミズイ》の責任者は、泉という女性。
スーツアクターという性質上仕方ないけど、アクターについての公式な詳細情報はなし。
ただ、特撮ファンが集う掲示板等にはいくつかアクターについての記述がある。
今のところ特に注視すべき書き込みは見当たらない」
諒は自身のパソコンモニターを、スクリーンに表示させた。
個人のものらしい、ブログが映し出される。
諒
「それから、特撮ファンのブログに掲載されている写真を見つけた。
この写真は、ミズイ所属アクターによるステージを写したものとわかった。
そこで、この悪役らしきキャラクターの写真を映像と照合してみたところ、二人とも一致。
諏訪野さんからの情報もあるし、《ミズイ》所属のアクターが、さらに言えばジミーとハーデーが映像の人物であるとみていいだろうね。
映像のその他の人物についても、一応他のキャラクター写真と照合してみる」
泪
「よくわかったわ。ありがとう」
言葉を切った諒の頭を、泪が満足そうに撫でた。
照れ臭いのを隠すように小さく咳払いした諒は、さらにマウスを操作する。
諒
「あと、ジミーとハーデーについて」
今度は、スクリーンにポップな色合いが踊る。
ゲイバーのウェブサイトだ。
諒
「諏訪野さんによると、二人ともレスリングやボクシングの経験者で、ホストクラブやゲイバーの警備員をしているようだけど。
今年の夏、新宿二丁目のゲイバーでトラブルがあった際に警備員が場を収拾したという情報があった。
その警備員は大柄で、動きも素早いようには見えなかったのに、あっという間に暴れる客を取り押さえた。
店主によれば、レスリング経験者と聞いているらしい。
…少ない情報だけど、ジミーである可能性もゼロじゃない。
ハーデーらしき情報はまだ見つからない。以上」
今度こそ報告を終えた諒の頭を、泪がもう一度撫でる。
泪
「なるほどね、ありがとう。でも仕事中は敬語」
額を軽く弾かれ顔を顰めた諒から離れると、泪は顎に手をあてて思案する。
泪
「……そうね、今はまだ情報が少なすぎる。片っ端から調べていくしかないわね。
まずは賢史と公平には《ミズイ》に当たってもらうから、そのつもりで準備して」
賢史・公平
「はい!」
泪
「諒は引き続き情報を調べながら、皆から届く情報を管理して」
諒
「了解」
指示を終えた泪は、自席でパソコンに向かいながらちらりと時計を見る。
誠臣と翼が採石場の監視について、もうすぐ二時間半が経過しようとしていた。
*
ロバートとポール!!(笑)
相変わらずの乙女っぷりと、諏訪野のジェントルマンぶりに笑いましたo(≧▽≦)o
小春さん、面白すぎです(*´艸`)
そして名前から泉さん巻き込んじゃったんですが…ドキドキ。
それではここでパースヽ( ̄▽ ̄)ノ⌒○
01/03(Sun) 13:14
ありがとうございます
小春
おかげさまで新スレッドです。
皆さま引き続きよろしくお願いします。
*****
泉
「うちのアクターが、不埒な連中と行動を一緒にしてるなんて」
事情聴取に素直に協力してくれた泉は、VTRを見終わったところで、憤慨して声を上げた。
あいつらクビにしてやる、と息巻く泉。
泉は、成人を機に、高校以来の演劇仲間たちと共にスーツアクターの会社を起業したという経歴の持ち主だったが、驚くべき事に、いまだに中学生、せいぜい高校生ぐらいにしか見えない。
それはともかく、聴取に当たった賢史と公平の前で、泉はきっぱり言った。
泉
「ご指摘のとおり、ジミーとハーデーに間違いありません。他の連中の事は分かりませんが、二人は、プライベートでは新宿のホストたちと遊んでいるようなので、そいつらかも」
賢史
「ジミーとハーデーは、もしかしてゲイなん?」
泉
「そうですよ」
賢史の質問に、泉はけろりとした顔で答えた。
泉
「みなさんなんか格好いいから、あっという間に喰われちゃいますよ」
賢史
「女性には興味が無い?」
泉
「少なくとも私には」
賢史と公平は顔を見合せた。
泉は小柄で童顔だが、二人の目にはじゅうぶん可愛らしく、魅力的な女性に映る。
公平
「だとすると、露出狂かどうかはまだ判断出来ないけど、婦女暴行未遂の方には関係ないのかな」
賢史
「ジミーとハーデーは用心棒的な役割で、実際に犯行を行なっているのは、そのホスト連中やいう事はないか?」
公平
「なるほど!それなら、アクターじゃないのに全員がヒーロー体型でもおかしくない」
二人は泉に礼を言い、今後の協力の約束を取り付けて、聴取を終了した。
帰宅する泉を見送りに出たところで、賢史たちは、警視庁の玄関に現れた長兄の慶史と鉢合わせた。
賢史
「あれ?アニキ、どないしたん?」
慶史
「いや、俺は今日休みなので、誠臣に頼まれて特売の肉を買いに行ってきたのだ。すると揚げたてコロッケを売っていた。そこで、お前らに差し入れに来てやったのだ」
なるほど、賢史が手に提げた袋からは、香ばしいコロッケの香りがぷんと漂っている。
泉
「美味しそう」
慶史
「うむ。俺も先ほどひとつ味見をしてみたが美味いぞ。熱いうちに食え」
泉
「いただきまーす」
慶史
「ところでお前は誰だ?」
二人は初対面のはずだが。そして泉は人見知りだと聴取の時に自分で言っていたはずだが。
慶史
「まあいい、食え食え」
泉
「はーい」
泉はアニを見つめて、にっこり笑った。
*****
一方。
誠臣と翼のチームと交代するべく採石場に向かいながら、泪と葵は、徐々に表情を硬くしていた。
二人と連絡がつかないのだ。
もしや張り込みがバレて、相手に捕らえられたのか?
いや、誠臣がついていながら、そんなはずは。
だが、人数では向こうの方が多い。
信号待ちで、泪はハンドルを叩いた。
葵
「大丈夫だよ、…きっと、電波が悪いだけだ」
泪
「翼の身に何かあれば、俺は正気でいられない」
葵
「泪……」
泪
「俺が、馬鹿だった。意地を張らずに抱き締めて、離さなければよかった」
01/14(Thu) 07:45
続けます
小春
葵と泪の車が採石場に到着する直前、諒から電話がかかってきた。
諒
『たった今、ヒーロースーツで痴漢していた犯人が逮捕されたよ』
諒の報告によれば、とあるイベント施設の裏手で、黒、白、銀のスーツのヒーローが、二人組の女の子に対して、わいせつな行為をしようとしたという。
たまたま居合わせたオートバイの青年たちがそれに気付いて即時に通報、女の子たちに怪我は無かったが、近くにはエンジンのかかったバイクが停めてあり、犯人たちはそれで被害者を連れ去る計画だったらしい。
諒
『「たまたま」防いでくれたのは、諏訪野さんの仲間じゃないかな』
葵
「かもね。…諒、その事件はまだ、報道されていないよね?だとしたら、黒、白、銀のスーツで変装して採石場に行けば、そいつらの仲間のいるアジトに、怪しまれずに入れるかも」
諒
『うん。泪兄さんの車のトランクには、《ミズイ》の泉さんから借りた、捕まった奴らが着ているのと同じヒーロースーツが入っているよ。それを着て、潜入する?』
葵と泪は、顔を見合わせた。
葵
「泪、今、アジトにいるのは何人ぐらいだと思う?」
泪
「全部戻っているとしたら、ジミーやハーデーも含めて十人ぐらいじゃないか」
こちらは二人。
諒
『他の兄さんたちにも、《エミーズ》の《廉価版サクラダモンスーツ》を持たせて、そちらに向かわせるよ』
葵
「分かった。そういうことなら、賢史たちが到着するのを待って、一気に突入しよう」
ねっ、と、泪に同意を求めようとした瞬間、車がいきなり左折してどこかの地下駐車場に飛び込んだので、葵は舌を噛みそうになった。
葵
「ち、ちょっと、泪!」
泪
「あいつらが来るまで待てねえ」
泪は車を降りると、素早く後部座席に乗り移って、服を脱ぎ、黒のヒーロースーツに着替え始めた。
さいわい地下だから薄暗いし、回りに人気はないものの。
葵
「翼ちゃんと誠臣と連絡が取れなくて、焦る気持ちは分かるけど!」
泪
「お前も早く着替えろ。ぐずぐずしていて、残りのヤツらに、仲間が捕まった事がバレると面倒だ」
泪の勢いにおされ、葵も後部座席に移ると、覚悟を決めて白のスーツに着替え始めた。
葵
「泪、落ち着けって。翼ちゃんと誠臣が捕まっていたとしたら、人質を抱えながら、俺とお前の二人だけで、十人の相手をしなきゃならないんだぞ」
???
「三人だよ」
不意に、すぐ近くから声がした。
いつの間に来たのか、泪と葵の上げた視線の先で、隣に並んだバイクに跨がったサクラダモン・シルバーが片手を挙げる。
協力的な市民で、確かに役に立ちそうな恋敵の男の出現に、泪は複雑な顔で挙手を返した。
ここでパースヽ( ̄▽ ̄)ノ⌒○
どうなっちゃうの?
小春
髪を乾かすドライヤーの音が止むのを待って、泪は、隣の翼の部屋の扉をノックした。
すぐに、はい、と返事があって、扉が開く。
パジャマにカーディガンを羽織っただけの、無防備な普段着姿を自分に見せてくれる翼に、ほっとする。
けれど同時に、二人の間を、昨日までは見えなかった白い男の影が塞いだような気がして、泪は柳眉を寄せた。
翼
「……あの」
泪
「ああ、ごめん。……入っていいか」
翼
「はい」
招き入れられて、床に置かれたクッションを勧められる。
壁際のベッドが目に入ったが、見ない事にした。
クッションに胡座をかき、壁に背を預けて、はあ、と息を吐く。
翼
「……怒って、ますよね……」
隣に座った翼の小さな呟きに、泪は閉じていた瞼を開いた。
目が合うと、翼の大きな目が、じわりと潤んだ。
泪はそっと右手を伸ばして翼の頭を抱き寄せると、柔らかい栗色の髪を撫でた。
泪
「怒ってなんかいない。
……俺の方こそ、お前に謝るつもりで来たんだ」
翼
「……?」
泪
「嫉妬してる」
翼
「…あの…誰が、誰に、ですか?」
泪
「俺が、諏訪野に」
こつん、と、泪のこめかみが翼の額に当たる。
泪
「同じ職場になってから、かえってお前と距離が開いた」
翼
「…それは…」
泪
「幼馴染みで、……恋人だったのに。
お前を好きな気持ちは今も変わらないのに、上司と部下になったせいで、手が出せなくなった」
翼も、気持ちは同じだった。
警察官になったのは、当たり前だけれど翼の方が後だった。
翼は泪の傍にいたかったから、追いかけた。
それが、こんな、皮肉な結果になるなんて。
泪
「……諏訪野は、シロだ」
翼
「えっ」
泪
「少なくとも、露出狂の犯人じゃない」
翼
「……泪さんは、それが分かってて、諏訪野と私の交際を許したんですか?」
頷く泪を見て、翼は、胸の奥が冷えてゆく気がした。
泪
「……お前は、まだ若い。
この機会に、俺以外の男と付き合ってみるのも…」
翼
「泪さん」
泪の言葉を、翼は遮った。
身体を離して、泪を見つめる。
翼
「私……信じてくれているからだと思ってました」
泪
「翼」
翼
「泪さんが、私が諏訪野さんを好きになってもいいと思っていたなんて」
泪
「俺は」
翼
「それなら…それなら、私、もっと真剣に諏訪野さんと向き合います。
そうでないと、失礼だと思うから」
泪
「翼」
翼
「今日はもう出て行ってください」
翼は立ち上がり、泪の身体を押した。
泪
「翼…!」
翼
「お願い!」
それ以上、翼はもう何も言わなかった。
泪は唇を噛んで立ち上がり、溜め息だけを残して隣室に消えた。
こんなに近くにいるのに。
この日、翼と泪は、壁を挟んで背中合わせに座ったまま、一睡もせずに夜を過ごした。
誰かなんとかして。←
ここでパースヽ( ̄▽ ̄)ノ⌒○
[削除]
11/27(Fri) 09:26
おはよーございまーす( ´ ▽ ` )ノ
とも
お久しぶりでーす( ´ ▽ ` )ノ
いつの間にか話が進んでる~⁉
けどなんとかしてともを登場させてみる。
とも
「…え? あの二人がケンカ?」
公平
「あ、ありがと!そーなんだよ。 泪兄さんは朝イチで会議があるってオレたちよりも出勤が早かったし顔は見てないんだけど、翼ちゃんが明らかにテンション低かったんだよねぇ」
誠臣
「室…じゃなかった、泪兄さんも今朝は不機嫌というか、心ここに在らず、といった感じだったな。 そのあとで翼の様子を見たら、何かあったんじゃないかと」
遅めの昼食を、と外回り中の誠臣と公平が立ち寄ったのは捜査室御用達のさくら庵。ともは近くの外務省に勤める外交官になった。警視庁からも近いので、恋人である誠臣とはよく通勤を一緒にしている。
泪と翼の関係を藤守兄弟と見守ってきたともにとっても、それは驚くべき事件だ。
とも
「うーん、それやったら私が一度話聞いてみよか? 翼さんに帰りにでもお茶できひんか聞いてみるわ。 というわけやから、まーくん、今日は一緒に帰られへんで」
誠臣
「仕方ないが頼む。 翼と一緒にうちに来て、夕飯を食べて帰るといい」
とも
「やった! じゃあ私はそろそろ戻るわ~」
こんなんで繋がりましたかね?
続きをパース( ´ ▽ ` )ノ⌒◯
[削除]
11/28(Sat) 16:18
ともさんありがとうございます(´ 3`)ちゅー
小春
~終業後~
日暮れ間近。
ともの姿は再び『さくら庵』にあった。
昼食と違うのは、テーブルを挟んだ向かい側の席に、誠臣と公平ではなく、翼が座っている事だ。
いつも輝いている桜色の頬も大きな瞳も、今日は、心なしか憔悴して見える。
ともに求められるまま、翼は、諏訪野に誘われたところから、昨夜の泪との会話までを隠さずに話していた。
とも
「うーん、話を聞いてみれば、翼さんが不安になる気持ち、よお分かるわ。
でも、泪さんの言う事も、一理あるんちゃうかな?」
歯に衣着せないともの言葉に、翼は思わず腰を浮かせた。
翼
「えっ、そう思う?」
とも
「うん。
こーちゃんに聞いたけど、諏訪野さんて、超イケメンで、超いい人らしいやん。
翼さんは今まで泪さんひとすじやったから、そういう目で他の男の人を見たことないかもしれへんけど…
泪さんの言う通り、視野を広げるいい機会かも」
ともは、運ばれて来たパンケーキをひとくち、フォークに刺して口に運んだ。
生クリームをふんだんに使い、色とりどりの果物を盛ったパンケーキやプチフールの置かれた皿の並ぶテーブルの上の華やかさは、とても蕎麦屋とは思えない。
翼
「そういうものなのかな…」
まだ納得いかない顔の翼に向かって、ともは、不意に、にやりと笑った。
とも
「これは私の勘やけど。
泪さんも、今、不安になってんねんで、きっと」
翼
「泪さんが?」
とも
「子供の頃から一緒にいるから、翼さんが自分を好きなのは、あくまでも隣の優しいお兄さんとしてなんやないかな、って」
翼はどきりとした。
翼
「それは…そういう気持ちだってもちろんあるけど、でも、でも…」
でも、泪さんは特別。
とも
「どう特別なん?」
翼
「……初めてキスしてもらった時、ドキドキしたし……嬉しかったし…」
とも
「……」
ともは頭を抱えた。
それを見て、翼は急いで言い足す。
翼
「頭を撫でてもらうのだって、泪さんに触られるのが一番気持ちいいし、
そ、それに、隣の部屋に泪さんがいると思うだけでよく眠れるし!」
とも
「翼さん」
翼
「……はい」
ともは、落ち着いて、とでもいうように、いつしか翼がぎゅっと握り締めていた拳に自分の手を重ねて、そっと下ろさせた。
とも
「どうやら、私の勘は当たってしまったみたい」
それから、はあ、と、溜め息をついた。
とも
「翼さん、もう少し成長した方がええわ」
[削除]
11/28(Sat) 16:41
小春
諏訪野
「翼さん、悩み事かな」
遊園地のベンチに座って物思いに耽っていた翼に、諏訪野が紙コップを差し出してくれた。
翼
「あっ、ごめんなさい、ぼんやりしてて。ありがとうございます」
諏訪野
「どういたしまして。
熱いから、気をつけてね」
カフェオレを受け取ると、背中から、ふわりと男物のコートが肩に掛けられた。
お礼を言うと、諏訪野は、静かに、翼の隣に腰を下ろした。
諏訪野
「もしかして、俺の事で悩ませてる?」
穏やかな諏訪野の声に、心配そうな響きが加わっていた。
何度か会ってみて分かったが、諏訪野は他人の気持ちに敏感だ。
だからといって、悩む翼の胸の内に土足で踏み込んで来るような真似はしない。
悩んでいる翼に気を遣い、いたわってくれる想いだけが伝わってくる。
その想いは純粋な善意で、だから、翼は正直に頷いた。
翼
「…確かに、諏訪野さんがきっかけではあります。
けど…
自分自身の事なのに、よく分からなくなってしまって。
だめですね」
無理して笑おうとしたけれど、笑えなかった。
いつもよく笑う諏訪野が、今は、真剣な表情で翼を見つめていたから。
アルビノだという諏訪野の目は、透き通るように薄い茶色。
目が合うと、逸らせなくなる。
その不思議な色の目に、吸い込まれそうな気持ちになる。
諏訪野
「……きみは、葵の弟さん……泪くんが好きなんだよね」
諏訪野の言葉に、翼はハッと我にかえった。
翼
「知ってたんですか?
それなのに、どうして私に交際を…」
諏訪野
「きみは正直だから、俺も正直に話すよ」
諏訪野の眼差しが和らいだ。
諏訪野
「きみは、葵の大切な人だ。
もちろん、泪くんも、葵にとってかけがえのない人だろう。
その二人の仲を裂くつもりは無いし、迷惑もかけたくない」
翼
「……」
仲を裂くつもりは無い?
でも……
諏訪野
「俺の本心は、一番最初にきみに伝えた通りなんだ」
翼
「一番、最初に…?」
俺と、付き合ってくれないかな。
友達から、よろしくね。
あれが、言葉通りの、意味、だとすると。
翼
「……」
諏訪野
「きみの事を可愛いお嬢さんだと思っているのも、本心だよ」
失礼だけど、葵の想い人じゃないよね?
葵の彼女ではないなら、いいんだ。
連絡先は葵に伝えて。
デートは葵も一緒でいいよ。
翼
「……」
なにかが、翼の中で引っ掛かった。
翼
「諏訪野さん、は、もしかして」
もしかして。
諏訪野
「ただ、少しでも近くにいたいだけなんだ」
翼の頭の中で結論が出たのを見計らって、白い頬を染め、はにかむように諏訪野が微笑む。
諏訪野
「内緒にしてくれるかな」
翼
「……誰にも言いません」
翼は、瞬きをするのも忘れて、目の前の綺麗な男友達を、今朝までとは違う思いで見つめていた。
翼ちゃんと諏訪野の友情が深まったところで(←オイ)
ここでパースヽ( ̄▽ ̄)ノ⌒○
11/29(Sun) 22:14
ともさんお帰りなさい*\(^o^)/*
澪
珍しく全員が揃った捜査室では、溜め込みがちな事務作業が進められていた。
賢史や公平を中心に雑談を交えながらも、全員が泪と翼の様子を気にしている。
泪も翼も平静を装ってはいるが、長年一つ屋根の下で二人を見てきた家族にはお見通しだ。
一体、何があったのだろう。
思い当たることといえばやはり諏訪野の件くらいしかない。
数日前、翼はともには何か話をしたらしい。
その後しばらく何か悩んでいる風ではあったが、また諏訪野と出掛けたかと思えば、今度はぼうっとして帰ってきた。
けれど、泪とはぎこちないままだ。
弟たちが考えを巡らせる中、捜査室のドアがノックされる。
ガチャリとドアの開く音がした、次の瞬間。
翼
「……!」
立ち上がった翼の視線を追った捜査室の一同が、目を見開く。
澪
「ハイ!翼、藤守さん方」
翼
「澪さん!」
「はー、ほんとに藤守家の部署ねえ」とデスクの顔ぶれに感心する澪に、泪もまた立ち上がった。
泪
「…お前、なんで」
澪
「組対の捜査協力の担当になったの。
ついでに寄っていいか聞いたら案内してくれたから、来ちゃった」
翼
「で、でも、澪さんって関西じゃ…」
澪は卒業後、法務省入国管理局へ入局した。
関東圏での異動を繰り返していたのだが、翼の言葉通り、ここ一年は関西国際空港で入国審査業務などに就いていたのだった。
しかし。
澪
「うっふっふ。
実はこの度、本省入国管理局に戻ってまいりました!」
諒
「アニと一緒か」
ボソリと呟いた諒の言葉に、澪がにやりと笑う。
澪
「そう、6号館。
アニの驚きっぷりはなかなかだった」
捜査室の全員が、慶史の驚き様を想像してか口元を緩める。
そんな一人一人の顔を懐かしく見ていた澪が、思い出したように声を上げた。
澪
「そうだ、葵は鑑識だっけ?
顔出しても大丈夫かな」
賢史
「あー、そしたら俺もこの資料返さなあかんし、一緒に行きますわ」
そう言って立ち上がりかけた賢史の手から、資料が奪われた。
泪
「アンタは報告書書いてなさい。
ワタシが行ってくるから」
驚いて振り返った賢史の頭を取り上げた資料で叩いた泪は、澪に「行くわよ」と声を掛けると早々と捜査室を出る。
澪
「あ、それじゃ、お邪魔しました」
捜査室の面々に見送られ、慌てて泪の後を追った澪が廊下に出ると、泪はそこに立ったままだった。
澪
「なんだ、待っててくれたの」
近づいてくる澪を見ながら、泪は大きく息を吐いた。
泪
「お前な、びっくりしただろ」
泪が驚くのも無理はない。
卒業後も交友は続いていたものの、澪が関西に異動してからのこの一年、会うことはおろか、メッセージのやり取りも稀になっていた。
本省勤務になったなど、初耳だった。
澪
「私だって今びっくりしたわよ」
泪
「…今?」
眉を顰めた泪に、澪は捜査室のドアへちらりと視線を投げる。
澪
「何かあったんでしょ、翼と」
泪
「……!」
澪の碧眼に映る自分が動揺したように見えて、泪は踵を返して歩き始めた。
澪
「賢史に構ってる時、翼がどんな目で泪を見てたか、気付いてないわけないでしょ。
しょっちゅう見つめ合ってたのに、一度も目合わさないなんて」
後をついて歩く澪が、泪の背中に声を掛ける。
その通りだ、と泪は唇を噛んだ。
翼がこちらを見ているのは気付いていた。
その瞳にあの夜とはどこか違う色が滲んでいたことにも、気付いていた。
しかし、あの夜の一件以来、翼とまともに話をできていない。
決して、翼と別れるつもりなどない。
翼を誰よりも想っている自信もある。
けれど。
けれど…
泪
「…ここだ」
鑑識室のドアを開くと、奥に白衣を着た葵の背中が見える。
太田と細野が何用かと腰を上げかけたのを、泪が手で制した。
泪
「いや、賢史が借りてた資料を返しに来ただけだ。
葵」
葵
「ああ、そこ置いといて」
くるりと振り返った葵が、泪の横に立つ澪の姿を見て動きを止める。
澪
「ハイ!久しぶり」
笑って手を上げた澪に葵が反応するよりも早く、鑑識室の電話が鳴った。
太田
「はい鑑識室…少々お待ちください。
すみません、御大」
太田が通話口を押さえて声をかけると、葵が頷いて受話器を取った。
泪
「…ま、地味だけど驚いてたんじゃねえか」
澪
「だね」
再びデスクに向かった葵の背中を見ながら、泪と澪はフッと笑い合う。
澪
「忙しいみたいだし、そろそろ戻るわ。
…じゃあ、またね」
おう、と手を上げた泪に手を振り、太田と細野に頭を下げ、澪は法務省へと戻っていった。
泪
「…じゃ、ワタシも戻るわ」
まだ通話中の葵を見て、泪は資料をレタートレーに置くと鑑識室を出た。
捜査室への廊下を歩きながらガシガシと頭を掻く。
同居する兄弟たちの様子を見れば、気付かれているのはわかっていた。
しかし、久しぶりに会った澪にもすぐ気付かれるほどわかりやすいのだろうか。
翼の、さっきの、不安そうで、どこか縋るような瞳。
離したくなんてないのに。
このまま、翼が諏訪野を好きになったら…
廊下に重い嘆息を残し、泪は捜査室へと戻った。
*
いやー、元々澪を教師にはせず何か法学部を活かした方向に就かせる予定だったんですが、そこからノープランだったので悩みました( ̄∇ ̄*)ゞ
もしかして頑張ればオイシイ方向へ持っていける…?と思いつつ(笑)、澪は泪さんの翼ちゃんを見る優しい目を見てますから。
もう叶わないこともわかってるし翼ちゃんと幸せになれよ!と思いながらも、告白もしない恋だし他の恋も見つけられないしで、完全に泪さんへの思いを断ち切れてなさそうだなと。
とりあえず友達としてみんなと一緒に泪さん翼ちゃんのことでハラハラしよう(笑)
それにしても、「澪が葵さんにちょっかい出した日」って澪何したの諏訪野ごめんね、と思いきや…!
楽しい展開で楽しみですo(≧▽≦)o
ではここでパースヽ( ̄▽ ̄)ノ⌒〇
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12/05(Sat) 10:05
澪さんありがとうございます(´ 3`)ちゅー
小春
葵
「……」
いつの間にか、週末のたびに諏訪野と会うのが習慣になりつつあった。
泪が翼とぎこちないままなのとは逆に、翼と諏訪野は順調に仲良くなっていっているように見える。
相変わらず互いへの連絡は葵を通してだし、デートとは言っても、毎回、常に葵や公平や、小春やその仲間たちが一緒だ。
しかし諏訪野も翼もそれでいいらしく、今も、ベンチで編み物をする翼を、諏訪野は隣でただただ優しく眺めている。
時折、公平や高校生たちがヒーローショーの動きを教えてくれとじゃれつくのに相手をしたり、皆に飲み物を買って来てやったりしているが、基本的に、諏訪野は翼に対して受け身で、寛容だった。
葵は迷っていた。
自分としては、デートに同行するのは、諏訪野が翼を泪から奪わないように見守る、監視役のつもりなのだ。
しかし、二人の交際は、葵の目には健全すぎる。
いや、その事自体は安心し歓迎するべきなのだが、どうにも解せない。
そのうえ、一方の翼も、最近の泪の前ではなかなか見せない笑顔を、諏訪野には見せるのだ。
今も、編み目が飛んだと諏訪野に指摘されたらしく、二人で顔を見合わせて笑っているが、葵の知る限り、今まで、翼が、よその男と、あんなに打ち解けているのを見たことがない。
泪と翼がぎこちなくなったのは諏訪野が原因ではなく、もっと前からだったのだと、今では葵たちも気付いていた。
だとすると、逆に、諏訪野がきっかけで泪と翼は元に戻るかも知れないとさえ、考えるようになってきていた。
少なくとも、諏訪野といると翼はリラックスしている。
葵は複雑な思いを抱えたまま、そんな仲の良い二人と、エミーズの楽屋裏にいる他のメンバーたち、その両方が見えるベンチで、溜め息をついた。
諏訪野はもちろん葵の存在を知っているから、葵が軽く合図するだけで、こちらに来てくれる。
諏訪野
「編み物をしている女の子って、可愛いよね」
翼を振り返りながら、諏訪野が微笑む。
葵
「飽きもせず、よく見ていられるな」
諏訪野
「俺もお前にそう言いたいけどね」
それもそうだ。
邪魔だと言われても仕方ない状況だけれど、諏訪野は相変わらず穏やかに微笑んでいる。
諏訪野
「手編みのセーターをプレゼントなんて、いじらしいじゃない」
どきり、と葵の心臓が音を立てた。
セーターだったのか、と気付くと同時に、さっき、翼が、編みかけのそれを、諏訪野の背中に当てたりしていたのを思い出したのだ。
ライトブラウンのセーター。
きっと諏訪野に似合うだろう。
葵
「…でも、そういうの、ちょっと重くないか?」
諏訪野
「そうかな。俺なら嬉しいけど」
他愛ない話をしながら、ふと、葵は今の会話に不自然さを感じた。
……?
葵の頭に浮かんだ疑問符の続きは、諏訪野の声に遮られた。
諏訪野
「ところで葵、……葵?」
葵
「あ、ごめん。ちょっと考え事をしていて」
諏訪野
「当ててみようか」
葵
「え」
ぎくりとした葵の顔をじっと見て、諏訪野はにこりと笑った。
諏訪野
「いや、違う話にしよう。
……特撮仲間から聞いた話だ。
最近、いつもの採石場に時々、不埒な輩が集まるらしい。
どうやら、露出するだけじゃ気が済まなくなってきたらしいな」
ここでパースヽ( ̄▽ ̄)ノ⌒○
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12/06(Sun) 22:42
張り込み開始
ジュン
その日、朝から捜査室はピリピリとした空気が流れていた。
諏訪野の情報を基に諒が調べたところ、確かに採石場近くで幾つかの事件が起こっていた。
後ろからいきなり抱き締められたり、人気のない採石場に引きずり込まれそうになったり……
その曜日や日時を割り出し張り込みをすることになった。
賢史
「最初は俺と公平が見張ってるわ。」
誠臣
「頼んだぞ。三時間経ったら俺と翼が交代する。」
泪
「皆、頼んだわよ。」
翼を現場に向かわせることに何故だかの不安が拭いきれない。だが今は上司として命令を下さなければならない。
泪は翼と目を合わせることはなかった。
目を合わせば自分の不安が翼にも移ってしまうような気がしたのだ。
賢史・公平
「じゃあ、行ってきます!」
泪の不安をよそにその日の張り込みは始まった。
これだけでもいいですかね?
ここでパースヽ( ̄▽ ̄)ノ⌒〇
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12/09(Wed) 10:00
ジュンさんありがとうございます(´ 3`)ちゅー
小春
リレーですから1行だけでも全然OKなんですよー。
では私もちょっとだけ。
賢史
「なあ、泪兄貴と翼ちゃん、実際のところどうやねん」
公平
「あの二人、学生の頃は、すぐにでも結婚しそうなぐらい仲良しだったのになあ。
最近は、休日でも翼ちゃんは諏訪野さんとばっかりだし、そもそも泪兄さんが休みを合わせないと同じ日には休めないし」
採石場の入り口が見下ろせる高い位置に、腹這いになって双眼鏡を手に見張りながら、賢史と公平は、藤守兄弟の五男と七男の会話を交わしていた。
賢史
「考えてみたら、兄貴が警察に入って偉くなるたびに、家にいる時間は短くなってったからなあ」
公平
「それが寂しくて、翼ちゃんは警察に入ったのに。皮肉だよね」
賢史
「まさか、直属の上司と部下になるやなんてなぁ」
公平
「賢史兄さんだって、他人事じゃないよ。ジュンさんが優しいから、事件が起きて約束すっぽかしても許してもらえてるけど。そのうち飽きられて見放されちゃうかも」
賢史
「おまっ、不吉な事を言うなや!……俺かて、そろそろプロポーズせなあかんやろかと思てんねん」
公平
「慶史兄さんはまだ魔法使いだし、誠臣兄さんは上の兄さんたちが結婚しなければともさんとゴールインしないだろうし、このぶんだと、諒兄さんと紅花ちゃんが一番先に結婚しちゃったりして」
賢史
「泪兄貴は翼ちゃんひとすじやからな。けど、葵兄貴かて分からんで。最近は、澪さんと会うようになってるらしいし」
公平
「知ってる。泪兄さんと翼ちゃんの事を、澪さんに相談してるんだよね」
賢史
「葵兄貴はブラコンやからな。泪兄貴の事が心配でたまらんねん」
公平
「でも、俺も毎週のように諏訪野さんに会ってるけどさ。あの人、翼ちゃんとは本当にただの」
賢史
「しっ!」
公平の言葉を遮った賢史が頭を低くし、公平もまた瞬時に頭を下げた。
採石場にある無数の岩陰や坑道のひとつから、数人の人影が明るい場所に出てきたのだ。
赤、青、黄…派手な色の、いわゆる戦隊もののコスチュームとヒーローマスクを着けた男たちが、マントのようにも見えるコートを羽織って、広い岩場の間の道を歩いて行く。
さらに、隠すように停めてあったバイクを出してきて跨がると、それぞれ、別々の方向に散っていった。
賢史
「結構な人数やん。十二、三人はおったかな…撮れたか?」
公平
「うん。すぐに諒兄さんに映像を転送するよ。そうだ、諏訪野さんにも見てもらう?特撮繋がりで、もしかしたら何か分かるかも」
賢史
「せやな。ほな、ちょうどそろそろ時間になるし、誠臣兄貴と翼ちゃんが来たらここを任せて、俺らは諏訪野さんとこに行ってみよか」
ここでパースヽ( ̄▽ ̄)ノ⌒○
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12/13(Sun) 20:59
では私も少ーしだけ
澪
賢史
「ああ、お疲れ様」
誠臣
「お疲れ」
それからまもなく、誠臣と翼が姿を見せると、賢史と公平はそっと体をずらした。
誠臣と翼が腹這いになり定位置につくのを確認しつつ、注意深く体を隠しながら、公平が引き継ぎの報告を行う。
公平
「──ということで、諒兄さんには転送したから。
オレたちはこれから諏訪野さんにも映像を見てもらってくるよ」
翼
「わかりました。お願いします」
誠臣と翼に見張りを任せ、賢史と公平は採石場を後にした。
賢史
「諏訪野さん、急にすみません」
急遽諏訪野に連絡を取った賢史と公平は、ショーの稽古中の諏訪野を訪ねていた。
諏訪野
「いや、いいよ。
それより、俺に見てほしいものっていうのは?」
休憩になり、二人の元へ歩み寄ってきた諏訪野の前に、公平がタブレットの画面を示す。
公平
「これです。採石場で撮ったものなんですが」
先ほど撮った映像を再生すると、諏訪野はじっと画面を見つめる。
派手な戦隊ものの衣装を身につけた十数人の姿が画面から消えると、賢史が口を開いた。
賢史
「諏訪野さんから情報をいただいた件の人物なのかどうか、まだわかりません。
どんな些細なことでも結構です。
何か気付いたことなどあれば教えていただきたいのですが」
映像では、男たちは皆ヒーローマスク姿で顔も見えない。
しかし、諏訪野たち特撮の世界に身を置く者ならば、何かわかるかもしれない。
賢史と公平は、真っ直ぐな視線を諏訪野へと注いだのだった。
*
何も進んでないですね(笑)ごめんなさい。
さて事件の行方はどうなる!?
ここでパースヽ( ̄▽ ̄)ノ⌒〇
12/16(Wed) 10:27
澪さんありがとうございます(´ 3`)ちゅー
小春
諏訪野
「…ふむ」
公平
「どうですか?」
諏訪野
「……二人ほど、思い当たる人物がいる」
賢史
「マジですか?!」
諏訪野
「もう一度、冒頭から再生してくれるかな」
公平
「はい!」
公平がタブレットを操作すると、画面に、再び、先程と同じ映像が流れ始めた。
眼下の岩場に大勢のヒーローたちが次々と登場する場面まで来たところで、諏訪野は声を出して、映像を一時停止させた。
諏訪野
「ここだ」
そうして、画面を指差す。
諏訪野
「この大柄で筋肉質なのは、ジミー。こちらの小柄なのは、ハーデーだ。歩き方で分かる」
賢史
「ジミーとハーデー?」
諏訪野
「同業者の《ミズイ》に所属しているアクターたちだよ。そこは、個性的なスーツアクターの集まりでね。中でも、ジミーとハーデーは、敵役に特化したアクターだ。俺は、何度か一緒のステージに立った事がある」
正確には、二人とも主役に憧れてはいる。
だが、ハーデーは演技が巧い上にオーバーアクションなので舞台では浮いてしまい、ジミーは逆に動きは鈍いが体格が大きいので重宝され、いつも怪人役ばかりになってしまうらしい。
ジミーとハーデーはどちらもアマチュアながらレスリングやボクシングでの試合経験があり、本職は、都内のホストクラブやゲイバーで警備員をしていると諏訪野は聞いている。
さらに詳しく話を聞くと、《ミズイ》は都内にあって《エミーズ》より規模の大きいスーツアクターの組織で、だから余計に、彼らは出番に恵まれないのだという。
賢史
「ありがとうございます。すごく参考になりました!」
公平
「早速《ミズイ》に当たってみなきゃ」
諏訪野
「でも、逆に、その二人以外は全く分からないな。アクターじゃないのかも」
賢史
「そしたら、そいつらの事はまた俺たちで調べてみますわ」
諏訪野は賢史の言葉に頷いてから、付け足した。
諏訪野
「俺も、採石場の異変を教えてくれた仲間に連絡して、そいつらに周辺を探らせよう。
人数が多いから、情報は多い方がいいだろう?
ついでに防犯にもなる。
何か分かれば、逐一きみたちに報告するよ」
賢史と公平は、諏訪野が元、大規模な暴走族のリーダーだったということを思い出していた。
公平
「諏訪野さんがこっちの味方で良かったです…」
賢史
「こら!お前失礼やぞ!確かに、敵にまわしたら怖そうやけど」
二人揃って失礼な発言に、諏訪野は声を立てて笑った。
諏訪野
「ところで、中身の事は分からないけど、着ているスーツの事なら知っているよ」
賢史
「……実は、俺たちも、このヒーローの名前を知っています。警察をモチーフにしたヒーローを犯罪に使うとか、何考えてんねん!て、憤ってるんですよ」
諏訪野
「警察にあるのは本物だろうけど、この連中が着ているのは廉価版だ。うちにもあるから、もしも潜入捜査に使うなら持っていくといい」
諏訪野はそう言って、スーツケースをひとつ持って来た。
賢史、公平
「何から何まで、すみません…」
受け取りながら礼を言うと、諏訪野は、にっこりと笑った。
諏訪野
「きみたちの力になれれば、俺はそれで嬉しいんだよ。きみたちは、葵の、大切な人だからね」
ここでパースヽ( ̄▽ ̄)ノ⌒○
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12/16(Wed) 10:44
ボツにしたけど捨てきれない(笑)
小春
こっちはボツにした部分ですが自分的には面白いのでみんなに見せたいだけ(笑)
*****
諏訪野
「何人か、それらしい人物に心当たりがあるけど……
賢史
「ホンマですか!」
諏訪野
「確認してみよう」
諏訪野はタブレットから視線を上げると、稽古場の奥に向かって声を張った。
諏訪野
『ロバート、ポール。悪いけど、ちょっと力を貸してくれないか』
急に英語になった諏訪野に賢史と公平が驚くよりも早く、稽古場の奥から、野太い裏声が答えた。
???
『ショウ!今、ワタシを呼んだ?!』
???
『違うわよッ!ショウは!ワタシに!「俺にはキミの愛と協力が必要なんだ」って言ったのよッ!』
ドスドスドスドスドスドス!
地響きとともに、重い足音が近付いて来た。
ぬっ、と現れたのは、どちらも2メートルを超える巨漢。
アメリカ人らしき丸顔にちょび髭の大男と、中東っぽい濃い顔付きで、褐色の肌の大男だ。
……が、なんというか、雰囲気がおかしい。
二人は競うように諏訪野に駆け寄ってきたものの、諏訪野が椅子から立ち上がるとたちまち大人しくなって、それどころか、揃ってもじもじし始めた。
諏訪野
『悪いけど、このタブレットの映像を見て欲しい』
見つめる諏訪野に頼まれて、二人はたちまち顔を輝かせた。
ポール
『ショウが見ろって言うなら、ワタシ、大嫌いなヘビが、もっと大嫌いなカエルを飲み込むVTRだって頑張って見るわ!』
ロバート
『ワタシなんか、ネズミがゴキ』
諏訪野
『レディたちにそんな不愉快なものは見せないよ』
諏訪野は苦笑して、ポールとロバートを丁寧に椅子までエスコートした。
公平
(諏訪野さん、あの怪物たちを『レディ』って呼んだ……)
賢史
(嘘やろ。どんだけフェミニストやねん……)
テーブルを挟んだ反対側で、賢史と公平は圧倒されて口もきけない。
諏訪野
『この映像を見て、中の人が誰かを当てて欲しいんだ』
ポール
『あら。と、いうコトは、このヒーローたちの中に、ワタシたちの知っている人物がいるってコト?』
ロバート
『自慢じゃないけど、この界隈の男性アクターなら、身体のラインを見れば誰か分かるわよ』
ポール
『もしかして、ショウも映っているの?』
諏訪野は、ちらりと藤守兄弟に視線を送ってから、微笑んで頷いた。
諏訪野
『いるかもしれないよ』
途端に、ロバートとポールの目の色が変わった。
ロバート
『本当ッ?』
ポール
『だってこのヒーローたち、アンダー穿いてないわよッ?!』
賢史
「(マジで?……けど、露出犯だからやとしたら、下着着てないのも納得できるな)」
公平
「(暴行未遂とも関係あるのかも……)」
賢史
「(それにしても、こんな遠くからの映像で、よおそんな事まで分かるな…)」
食い入るように映像を見るロバートとポールを邪魔しないように、賢史と公平は小声で囁きあう。
ロバート
『みんな、いいカラダしてるわね。だけど、ショウはいないわ!』
ロバートは残念そう。
ポール
『でも、ショウ!ワタシ、分かったわよ!この大柄なマッチョは、ジミー!この小柄でキュートなのはハーデーだわ!』
諏訪野
『やっぱり、そうか』
賢史
「ジミーとハーデー?」
*****
大丈夫、諏訪野は穿いてます(笑)
そして、こっちはボツですから、くれぐれも膨らまさないように(笑)
[削除]
12/16(Wed) 17:53
ニヤニヤ
ジュン
ロバートとポール!まさか、こんなところにいようとは(笑)
ボツにするのは勿体ないですね。
ニヤニヤするくらい楽しかったです。さすが、小春さん。
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12/18(Fri) 09:55
穿いてて安心(笑)
エミ
ロバート&ポールったら、相変わらず可愛いっ!(笑)
紳士な諏訪野氏、素敵です。
(*´艸`*)
[削除]
12/27(Sun) 22:37
ボツなのに爆笑~!!
澪
泪
「……なるほど。
《ミズイ》も当たる必要がありそうね」
捜査室に戻った賢史と公平の報告を聞いた後、泪は諒に視線をやった。
その視線に諒が応える。
諒
「調べてみたけど、情報は少ない。
《ミズイ》の責任者は、泉という女性。
スーツアクターという性質上仕方ないけど、アクターについての公式な詳細情報はなし。
ただ、特撮ファンが集う掲示板等にはいくつかアクターについての記述がある。
今のところ特に注視すべき書き込みは見当たらない」
諒は自身のパソコンモニターを、スクリーンに表示させた。
個人のものらしい、ブログが映し出される。
諒
「それから、特撮ファンのブログに掲載されている写真を見つけた。
この写真は、ミズイ所属アクターによるステージを写したものとわかった。
そこで、この悪役らしきキャラクターの写真を映像と照合してみたところ、二人とも一致。
諏訪野さんからの情報もあるし、《ミズイ》所属のアクターが、さらに言えばジミーとハーデーが映像の人物であるとみていいだろうね。
映像のその他の人物についても、一応他のキャラクター写真と照合してみる」
泪
「よくわかったわ。ありがとう」
言葉を切った諒の頭を、泪が満足そうに撫でた。
照れ臭いのを隠すように小さく咳払いした諒は、さらにマウスを操作する。
諒
「あと、ジミーとハーデーについて」
今度は、スクリーンにポップな色合いが踊る。
ゲイバーのウェブサイトだ。
諒
「諏訪野さんによると、二人ともレスリングやボクシングの経験者で、ホストクラブやゲイバーの警備員をしているようだけど。
今年の夏、新宿二丁目のゲイバーでトラブルがあった際に警備員が場を収拾したという情報があった。
その警備員は大柄で、動きも素早いようには見えなかったのに、あっという間に暴れる客を取り押さえた。
店主によれば、レスリング経験者と聞いているらしい。
…少ない情報だけど、ジミーである可能性もゼロじゃない。
ハーデーらしき情報はまだ見つからない。以上」
今度こそ報告を終えた諒の頭を、泪がもう一度撫でる。
泪
「なるほどね、ありがとう。でも仕事中は敬語」
額を軽く弾かれ顔を顰めた諒から離れると、泪は顎に手をあてて思案する。
泪
「……そうね、今はまだ情報が少なすぎる。片っ端から調べていくしかないわね。
まずは賢史と公平には《ミズイ》に当たってもらうから、そのつもりで準備して」
賢史・公平
「はい!」
泪
「諒は引き続き情報を調べながら、皆から届く情報を管理して」
諒
「了解」
指示を終えた泪は、自席でパソコンに向かいながらちらりと時計を見る。
誠臣と翼が採石場の監視について、もうすぐ二時間半が経過しようとしていた。
*
ロバートとポール!!(笑)
相変わらずの乙女っぷりと、諏訪野のジェントルマンぶりに笑いましたo(≧▽≦)o
小春さん、面白すぎです(*´艸`)
そして名前から泉さん巻き込んじゃったんですが…ドキドキ。
それではここでパースヽ( ̄▽ ̄)ノ⌒○
01/03(Sun) 13:14
ありがとうございます
小春
おかげさまで新スレッドです。
皆さま引き続きよろしくお願いします。
*****
泉
「うちのアクターが、不埒な連中と行動を一緒にしてるなんて」
事情聴取に素直に協力してくれた泉は、VTRを見終わったところで、憤慨して声を上げた。
あいつらクビにしてやる、と息巻く泉。
泉は、成人を機に、高校以来の演劇仲間たちと共にスーツアクターの会社を起業したという経歴の持ち主だったが、驚くべき事に、いまだに中学生、せいぜい高校生ぐらいにしか見えない。
それはともかく、聴取に当たった賢史と公平の前で、泉はきっぱり言った。
泉
「ご指摘のとおり、ジミーとハーデーに間違いありません。他の連中の事は分かりませんが、二人は、プライベートでは新宿のホストたちと遊んでいるようなので、そいつらかも」
賢史
「ジミーとハーデーは、もしかしてゲイなん?」
泉
「そうですよ」
賢史の質問に、泉はけろりとした顔で答えた。
泉
「みなさんなんか格好いいから、あっという間に喰われちゃいますよ」
賢史
「女性には興味が無い?」
泉
「少なくとも私には」
賢史と公平は顔を見合せた。
泉は小柄で童顔だが、二人の目にはじゅうぶん可愛らしく、魅力的な女性に映る。
公平
「だとすると、露出狂かどうかはまだ判断出来ないけど、婦女暴行未遂の方には関係ないのかな」
賢史
「ジミーとハーデーは用心棒的な役割で、実際に犯行を行なっているのは、そのホスト連中やいう事はないか?」
公平
「なるほど!それなら、アクターじゃないのに全員がヒーロー体型でもおかしくない」
二人は泉に礼を言い、今後の協力の約束を取り付けて、聴取を終了した。
帰宅する泉を見送りに出たところで、賢史たちは、警視庁の玄関に現れた長兄の慶史と鉢合わせた。
賢史
「あれ?アニキ、どないしたん?」
慶史
「いや、俺は今日休みなので、誠臣に頼まれて特売の肉を買いに行ってきたのだ。すると揚げたてコロッケを売っていた。そこで、お前らに差し入れに来てやったのだ」
なるほど、賢史が手に提げた袋からは、香ばしいコロッケの香りがぷんと漂っている。
泉
「美味しそう」
慶史
「うむ。俺も先ほどひとつ味見をしてみたが美味いぞ。熱いうちに食え」
泉
「いただきまーす」
慶史
「ところでお前は誰だ?」
二人は初対面のはずだが。そして泉は人見知りだと聴取の時に自分で言っていたはずだが。
慶史
「まあいい、食え食え」
泉
「はーい」
泉はアニを見つめて、にっこり笑った。
*****
一方。
誠臣と翼のチームと交代するべく採石場に向かいながら、泪と葵は、徐々に表情を硬くしていた。
二人と連絡がつかないのだ。
もしや張り込みがバレて、相手に捕らえられたのか?
いや、誠臣がついていながら、そんなはずは。
だが、人数では向こうの方が多い。
信号待ちで、泪はハンドルを叩いた。
葵
「大丈夫だよ、…きっと、電波が悪いだけだ」
泪
「翼の身に何かあれば、俺は正気でいられない」
葵
「泪……」
泪
「俺が、馬鹿だった。意地を張らずに抱き締めて、離さなければよかった」
01/14(Thu) 07:45
続けます
小春
葵と泪の車が採石場に到着する直前、諒から電話がかかってきた。
諒
『たった今、ヒーロースーツで痴漢していた犯人が逮捕されたよ』
諒の報告によれば、とあるイベント施設の裏手で、黒、白、銀のスーツのヒーローが、二人組の女の子に対して、わいせつな行為をしようとしたという。
たまたま居合わせたオートバイの青年たちがそれに気付いて即時に通報、女の子たちに怪我は無かったが、近くにはエンジンのかかったバイクが停めてあり、犯人たちはそれで被害者を連れ去る計画だったらしい。
諒
『「たまたま」防いでくれたのは、諏訪野さんの仲間じゃないかな』
葵
「かもね。…諒、その事件はまだ、報道されていないよね?だとしたら、黒、白、銀のスーツで変装して採石場に行けば、そいつらの仲間のいるアジトに、怪しまれずに入れるかも」
諒
『うん。泪兄さんの車のトランクには、《ミズイ》の泉さんから借りた、捕まった奴らが着ているのと同じヒーロースーツが入っているよ。それを着て、潜入する?』
葵と泪は、顔を見合わせた。
葵
「泪、今、アジトにいるのは何人ぐらいだと思う?」
泪
「全部戻っているとしたら、ジミーやハーデーも含めて十人ぐらいじゃないか」
こちらは二人。
諒
『他の兄さんたちにも、《エミーズ》の《廉価版サクラダモンスーツ》を持たせて、そちらに向かわせるよ』
葵
「分かった。そういうことなら、賢史たちが到着するのを待って、一気に突入しよう」
ねっ、と、泪に同意を求めようとした瞬間、車がいきなり左折してどこかの地下駐車場に飛び込んだので、葵は舌を噛みそうになった。
葵
「ち、ちょっと、泪!」
泪
「あいつらが来るまで待てねえ」
泪は車を降りると、素早く後部座席に乗り移って、服を脱ぎ、黒のヒーロースーツに着替え始めた。
さいわい地下だから薄暗いし、回りに人気はないものの。
葵
「翼ちゃんと誠臣と連絡が取れなくて、焦る気持ちは分かるけど!」
泪
「お前も早く着替えろ。ぐずぐずしていて、残りのヤツらに、仲間が捕まった事がバレると面倒だ」
泪の勢いにおされ、葵も後部座席に移ると、覚悟を決めて白のスーツに着替え始めた。
葵
「泪、落ち着けって。翼ちゃんと誠臣が捕まっていたとしたら、人質を抱えながら、俺とお前の二人だけで、十人の相手をしなきゃならないんだぞ」
???
「三人だよ」
不意に、すぐ近くから声がした。
いつの間に来たのか、泪と葵の上げた視線の先で、隣に並んだバイクに跨がったサクラダモン・シルバーが片手を挙げる。
協力的な市民で、確かに役に立ちそうな恋敵の男の出現に、泪は複雑な顔で挙手を返した。
ここでパースヽ( ̄▽ ̄)ノ⌒○