『アブナイ☆恋の学園物語』
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
10/14(Mon) 16:04
☆文化祭の朝☆
小春
『桜祭』二日目の朝は快晴。
桜田門学園高校の構内では、午前10時の一般公開を前に、早朝からあちこちでテントを張る音や、生徒たちの元気な声が響いている。
☆茶道部部室☆
エミ
「はい、出来た。可愛いわよ♪」
ジュン
「ありがとうございます!わあ、素敵な帯結び!」
茶道部の部室では、和風カフェの準備として、朝から生徒たちの着物の着付けが行われていた。
本日はいつも和装の理事長、エミも、その手伝いに来てくれている。
着物を着る機会も多い茶道部員の女子たちだが、一年生の中には初めて着物を着るという子や、逆に、袴を穿いてみたいという上級生もいて、着付けの出来るジュンやエミは大忙しだった。
そのジュンも、エミに凝った帯を結んでもらって、姿見の前で大喜びだ。
そこへ紅花がやって来た。
紅花
「おはようございます……わあ、ジュン先輩、素敵!」
ジュン
「ありがとう、紅花さん」
カメラを向けられて、ジュンが頬を染めた。
エミ
「ジュンさんは琴も披露するそうだから、ちょっと面白い帯も良いかと思って」
ジュン
「ありがとうございます」
エミ
「開店したら、私も、お茶菓子を頂きに行くわね」
ジュン
「はい!」
さらに茶道部の室内を映そうとカメラを動かした紅花は、部屋の隅に、熊耳を着けた、振り袖姿の二人の外国人の巨漢が体育座りしているのに気付いた。
思わずぎょっとして画面が揺れる。
気配を察したエミとジュンが、苦笑いで振り返った。
エミ
「あ、その人たちは大丈夫よ。心は乙女だから」
紅花
「……はあ」
何が「大丈夫」なんだか。ツッコミどころが多すぎて逆にツッコめない。
紅花
「ふ、二人とも、インパクトのある振り袖姿で、とても素敵ですよね」
とりあえず呟いた紅花の言葉を、エミが通訳する。
ロバートとポールの表情が明るくなった。
ロバート
『本当に?!』
エミ
『ええ』
紅花の代わりにエミが頷く。
それを聞いて、ポールが俄然元気を取り戻した。
ポール
『ロバート、ワタシたち、昨日は、暗闇からいきなり飛び出したから、ルイとアオイに叱られたのかもしれないわ』
ロバート
『あっ、そうか!それに、全速力で追いかけちゃったし。せっかくの晴れ着なのに、ちょっとはしたなかったわね』
ポール
『今度は、もっと、おしとやかに迫ってみましょう』
ロバート
『そうね!』
紅花
「……」
部員たち
『ドンマイ、ポール!』
部員たち
『ファイト!』
ロバート&ポール
『ありがとう!頑張るわ!』
紅花
「……」
☆その頃の空間先輩☆
きちんと制服を着こなした空間は、正門に来ていた。
開場の前に、入場システムの確認をしておかなければならない。
幸い、小笠原という優秀なブレーンがいるが、一般の入場者というのは予想以上に曲者が多い。
実は、空間の理想とするのは、穂積と小野瀬目当ての客を全てシャットアウトする事なのだが、それでは、生徒の親姉妹まで締め出してしまう。
悩ましいところだった。
せめて、小野瀬ファンだけでも見つけ出して追い出せたらいいのに。
ああ、早く平穏な二人だけの時間に戻りたい。
空間は、宿直の小野瀬の弾くピアノを、ベートーベンの肖像画の裏から自分一人が盗み見るあの時間を思い浮かべながら、静かに溜め息をつくのだった。
[削除]
10/14(Mon) 16:06
☆文化祭の朝☆
小春
☆生徒会室☆
準備期間中はドタバタしていた生徒会だが、当日は、進行や運営にあたる実行委員会を補佐するのが主な仕事。
タイムテーブルを確認した後、特に要請を受けていない一年生の翼は、ともと二人で『生徒会』の腕章を付けるだけで、『見回り』の役を仰せつかった。
つまり、文化祭の会場の中を、どこでも自由に歩き回れるという、かなりな特権を手にしたという事。
その特権をもって、文化祭を楽しんでいいという事だ。
「これ、もしかして、けっこうオイシイんとちゃう?」というともの言葉に、翼は笑ってしまった。
とも
「ほな、一般の入場が始まる前に、展示を見てまわろか?」
翼
「うん。小春ちゃんの編みぐるみも見に行きたいしね」
小春の編みぐるみ。
それは、家庭科部の展示部門のノルマとして、小春が翼をモデルにして製作した、等身大の力作。
明智の妹らしく懲り性の小春が、翼の全身を採寸して取り組んだ1/1モデルの編みぐるみだ。
いったいどんなものなのか、翼には全く想像がつかない。
休み時間に、鍵針を動かしている小春の姿を見た事はある。
ところが、指の動きは速すぎるし、編み目を数えているのか口の中でぶつぶつ言ってるし、そのうえ何が楽しいのか一人でニコニコしながら編んでるしで、とうとう声がかけられなかったのだ。
とも
「そしたら講堂から始めよか。まあ、今日は携帯の使用許可もあるし、用があれば呼んでもらえるやろ。あちこち見ながら、のんびり廻ろうや」
☆職員室☆
職員会議を終えたばかりの穂積と小野瀬を、『桜祭』オフショットリポーターの紅花が取材に来ていた。
窓際に並んでこちらに笑顔を向ける二人のツーショットの撮影に成功しただけでも、先輩たちに褒めてもらえるだろう。
デジタルビデオカメラで撮影を続ける紅花に、穂積が笑った。
穂積
「おはよう紅花。面白いの録れたら見せなさいよ」
紅花
「はい。編集したら、職員室のモニターにも流します」
小野瀬
「ここまででどんなの録ったの?」
コーヒーを飲みながら、小野瀬が訊いてくる。
紅花
「明智兄妹の寝起きとか、茶道部の着付け風景とか録りましたよ。私はオフショット担当なので、生徒目線であちこち見て廻ります」
小野瀬
「楽しみにしてるよ。あっそうだ、サービスショットをプレゼントするね」
小野瀬はそう言うと、カップを置くなり、隣にいた穂積に抱きついた。
小野瀬
「ほーづみ♪」
「キャー!」と黄色い歓声を上げたのは紅花ではなく、背後にいた女性教師や事務員たち。
穂積
「くっつくな!離れろバカっ」
小野瀬
「穂積、オカマキャラ忘れてるよ」
穂積
「はーなーれーろー!」
小野瀬
「生徒が見てるよ?紅花さんの夢は世界を股にかけるリポーターなんだから、協力してあげないと」
穂積
「なるほど。……じゃあ、ワタシからは、コブラツイストをかけられて悶絶する小野瀬の顔をサービスしようかしら」
何だかんだ言いながら、穂積は小野瀬の頭を抱え込んで、反対側の拳でぐりぐりとする。
紅花はほくほくしながら、時間の許す限り、穂積と小野瀬を録り続けるのだった……。
[削除]
10/14(Mon) 21:46
ワクワクドキドキ(*^^*)
くちびる
女子高生で登場させて頂きました!わ~い(笑)
くちびること紅花(べにか)です。
明智兄妹とお近付きになれて嬉しいです(笑)(*^^*)
引き続きよろしくお願いします~深々。
[削除]
10/14(Mon) 21:51
空間センパイに負けてる本人;;
せつな
空間セツナ・・・もとい、せつなです。
いつも楽しくこっそり読んでお腹抱えて笑わせていただいてます!!ロミジュリ受けまくりました。
皆さん、さすがです(≧▽≦)
しかも、小春さんはじめお嬢様方のおかげで、私の分身キャラがどんどん一人歩きしてるため、ご無沙汰という気がしないというね\(^o^)/
本当に感謝です!!
ワタクシも、小野瀬さんに愛を囁かれて悶絶したい!!
デ●ノート片手に校内を散策したい←実はコレ笑えないかもww
ベートーベンの目玉に細工して、コブラツイストかけあいっこするお二人をのぞき見するのが夢です。
あぁ、絡みたい( ;∀;)
後夜祭には復活したい本人でした。
続き楽しみにしてま~す(*´▽`*)
[削除]
10/15(Tue) 00:18
見回りしますよ
とも
校舎内の展示会場でもたくさんの生徒たちで溢れていた。ともと一緒に各展示室に声をかけてまわりながらゆっくりと展示物を見ていた。
とも
「おはようございまーす、生徒会でーす。準備の方はバッチリですか~?あっ、これはスゴい大作ですね!誰が作らはったんですか?」
翼
「ともちゃん、見回りもちゃんとしないと…」
とも
「え?あ、ゴメンゴメン。私はようマネできひんようなもんばっかりやから、つい気になって」
初めての桜祭だからか、少し興奮気味に話すともに翼も笑った。
翼
「確かに文化部の展示は目を見張る作品が多いし、すごく楽しめるね。隣の教室は家庭科部だって!小春ちゃんの編みぐるみ、どんな風に出来上がったのかな?」
とも
「なんや、翼は完成したやつ見てるんやと思ってたんやけど、その様子じゃ文化祭まで秘密、とか言われてたんや? 小春、毎日明智先生の調理の手伝いしながら頑張っとったもんなぁ」
小春は結局出来上がった翼の編みぐるみを、モデル本人に見せていなかった。
休み時間に一度聞いてみたのだが、『当日までナイショ♪』と言われ、それなら、と今日まで楽しみにしていたのだ。
10/15(Tue) 02:16
せつなさん、至る所で使用させていただいております。
清香
色々同時進行で行きますよ。
そして自分で書いたはずの入場に関する設定を全く覚えていなかった人←
☆正門☆
職員会議を終えた後、穂積と小野瀬を除く教職員と生徒会から藤守・小笠原・如月が、生徒達からはクラス委員が、そして実行委員長の空間が正門前に集まっていた。
すでに運動部によって運ばれた会議用の長机が4つ並べられ、A・B・C・Dと張り紙がされている。
空間
「これと同じ物が裏門と校庭横の通用門にもあります。関係者の方には、生徒の在籍するクラスの列に並んでいただくようにします。そして、整理券に印字してある名前と、写真付きの身分証明書を確認してください。」
口頭で説明するよりも実際にやって見せたほうが早いと、空間が小笠原を長机の前へ来るように促した。
小笠原は見本と印字された整理券と己の学生証を空間へと渡し、空間は隣に整然と並べられたIDカードホルダーから一つを取り出しタブレット端末に読み込ませて小笠原へと渡す。
空間
「この流れを二人一組で行っていただきます。教職員の先生方が身分証を確認し、クラス委員が手元にある端末でQRコードを読み取って下さい。これでどれだけの方がいらしているか実数として確認できます。」
初めての試みを黙って見守っている職員達にも、そして開門を今か今かと待ちわびている人々にも聞こえるくらいの凛とした声で空間が話す。
空間
「整理券を発行した段階で、『入場の際には身分証明書は写真付きの原本を持って来て下さい』と明記してあります。…まぁ、たかだか学校の文化祭ごときで公文書である身分証の偽造までする人はそうそういないとは思いますが、くれぐれも見落としがないよう、……先生方、よろしくお願いいたしますね?」
教職員
「…は、はい。」
目は真剣でいながらも、口元で深い笑みを浮かべた空間に反論する事も出来ず、教職員もクラス委員もただ首を縦に振ることしかできなかった。
空間
「では、皆さん持ち場について下さい。各クラス委員は自分のクラスへ。小笠原君はアプリの実動確認、藤守君は2年の裏門で、如月君は1年の通用門で全体を見て下さい。」
生徒だけではなく、教職員にまでも臆することなく指示を飛ばす空間に藤守がおずおずと手を挙げて質問をする。
藤守
「それはええけど、3年の正門はどないすんの?」
空間
「もちろん私がやるのよ。今まで3年が一番不正が多かったんだから。」
『何バカなことを言っているの?』と言いたげに微笑んだ空間に、『…すまんかった』とだけ言い、藤守は言われた通り裏門へと足を向けたのだった。
[削除]
10/15(Tue) 03:37
連投してみる。
清香
☆屋上☆
その頃。
小野瀬
「おー、今年も盛況だね。」
穂積
「…ん、そうか。」
何とも呑気な声で屋上から行列を見下ろす小野瀬に、穂積はつまらなそうに返事をした。
屋上の手摺りに背中を預けて、下を見ないようにしている横顔はふてくされていると言ってもいいほどだ。
小野瀬
「そんなにしょぼくれるなよ。少しの間だけだから、な?」
毎年穂積と小野瀬見たさに多くの関係者やそうでない人が来校するのは分かっていた。
そしてハルメーンの笛吹きのように、大勢の人々が自分が移動する度に後ろをついて回るのも知っていた。
穂積
「分かってる…、さ。」
それでも教職員として自分のクラスや関係のある部活、委員会などに顔を出して生徒達を励ますのが自分の仕事だろうと自負していたのに。
小野瀬
「空間さんも俺達の事と、来年からの防犯を考えて『隠れていてくれ』と進言してくれたんだから。生徒の自主性に任せるのがウチのモットーだろ?」
穂積
「あぁ、そうだな。」
やっと口元にかすかな笑みを浮かべた穂積に、小野瀬は昨日から気になっていた事をあえて切り出す。
小野瀬
「なぁ、穂積。それよりお前ここ最近おかしいぞ?何かあったか?」
穂積と同じように手摺りに背中を預けて顔を覗きこむも、穂積は表情を変えないままジャケットの内ポケットから煙草を取り出し火をつけた。
穂積
「なんもねぇよ、気のせいだ。」
小野瀬
「そうか?…篠崎さんも心配してからさ。」
穂積
「ったく、アイツも人の事より自分の心配しろよ。」
小野瀬
「まぁまぁ、そう言いなさんな。心配してくれているうちが華だよ。」
そう言ったきり、小野瀬は追及をしなかった。
よほどの事がなければ、常に自分の心の中で折り合いをつける穂積を小野瀬は誰よりも知っていたからだ。
流れる雲をぼーっと見上げていると、校内に軽やかな音楽が流れ出す。
小野瀬
「始まるね。」
穂積
「あぁ。」
2013年の『桜祭』、文化祭の部が始まった合図だった。
[削除]
10/15(Tue) 06:08
くちびるさんもせつなさんも、他力本願パワー炸裂ね(* ̄ー ̄)b
小春
☆見回り中・ともと翼☆
家庭科部の展示を見に行こうと手前の教室から廊下に出ると、翼は不意に、向こうから来た知らない女子生徒に声を掛けられた。
生徒
「あ、もしかして翼ちゃん?」
翼
「えっ?……はい、そうです」
すると、相手はにっこり笑った。
生徒
「初めまして、私、ibu。お友達になりましょうね」
翼
「はい?」
相手はきれいで優しそうな人で、学年章は二年生。
翼は面食らったけれど、とりあえず笑顔を返して頭を下げた。
翼
「…はい、もちろん、喜んで。ありがとうございます!」
ibu
「こちらこそ。また会いましょうね」
軽く手を振って去るibuのすらりとした後ろ姿を見送ってから、翼はともの顔を見た。
翼
「……何だろう今の」
とも
「ええやん。友達増えたやん」
ともはニコニコ笑いながら、翼の手を引いた。
とも
「さ、行こ行こ」
翼
「うん……」
翼は首を傾げながら、ともについて歩き出した。
まだ腑に落ちないまま、家庭科部の展示室に入る。
ところが。
翼
「うわあ」
とも
「スゴいな」
この学校が、近隣の高校に比べて、あらゆる面でレベルが高いという評判は聞いていた。
けれど、家庭科部の展示を見た翼とともは、その評判が嘘ではなかったと知った。
とも
「高校生のレベルちゃうやろ……これ」
ともの言う通り、会場のあちこちで感嘆の声が漏れ、何ヵ所も人だかりが出来ている。
最初に目を引くのは、やはり、中央に、一段高くして飾られた純白のウェディングドレス。
三年生の協同製作だと説明が付けられているが、よくブライダルショップの店頭に飾られているものと、全く遜色無い。
いや、それ以上かも……。
近くのテーブルには、アメリカンフラワーのブーケやシルクのリングピローなども飾られ、そのどれにも自由に触れていいという事で、大勢の生徒たちが夢中で見つめていた。
そして、窓際にも、わいわいと盛り上がっている一角があった。
近付いて行くと、人垣から出てきた生徒が、また、翼を見つけて笑顔で声を掛けてきた。
生徒
「あ、翼ちゃん、だよね?初めまして。私ニコ。ねえ、友達になろうね」
二回目だから、今度は若干の余裕があって、求められた握手にもすぐに応える事が出来た。
ibuは上級生だったが、ニコは同級生。
翼は思い切って聞いてみた。
翼
「どうもありがとう、嬉しい。……でもその、どうして急に?」
ニコ
「だって、ほら」
翼が振り返ると、二人の会話が聞こえたのか、人だかりが開いていて、彼女はそこにあるものを指差した。
翼
「!」
翼は息を飲んだ。
それが、小春の編みぐるみだった。
ロッキングチェアにお行儀よく座っている、制服の女の子。
髪型も制服も、全てが手編み。
細い糸と細かい編み目で、抱いても全然チクチクしない。
マイクロビーズが詰まっているのか、なんともいえない優しい手触り。
『つばさ』と書かれて、椅子の肘掛けに紙で添えられた作品の説明文には、さっきからの謎の答えが書いてあった。
『この編みぐるみのモデルは、九月に転入してきた翼ちゃんです。
私は彼女が大好き。
だからもし本物を見かけたら、「友達になろうね」って笑顔で言ってみてくれますか?
その言葉であなたが幸せな気持ちになれるよう、祈りを込めて編みました。
作者:1年 明智小春
※(翼ちゃんが「ありがとう」って答えてくれたら、さらに幸せ度UPだよ!)
』
翼
「……小春ちゃんたら」
『翼ちゃんにお友達が増えますように』と締めくくられた添え書きを読み終え、翼は、編みぐるみの『つばさ』を持ち上げて、ぎゅっと抱き締めた。
とも
「翼、こっち向いて。小春に写メしたる」
翼はともに向き直り、笑顔でカメラにおさまった。
とも
「送信、っと」
翼
「ともちゃん、知ってたの?」
とも
「えー?さあ、どうやろ?」
とぼけるともに、滲んだ涙を拭いながら、翼は笑った。
翼
「ともちゃんも大根役者だね」
[削除]
10/15(Tue) 06:16
弟きた
ジュン
小春さんとかぶっちゃった(;>_<;)
少し話が前後しちゃうけど……
軽やかな音楽を合図に受付が始まった。
事前に告知してあったため、学生の親族などは大きな問題もなく身分証の確認が進みIDホルダーを渡す。
しかし、空間の懸念がやはり実際のものともなる。
どこからか整理券を不正に手に入れた他校の女子高生たちが身分証の提示ができずにごねる。身分証と整理券が一致せずごねる。
女子高生A
「え~?身分証なんか持ってきてないもん。整理券があるんだからいいじゃん?」
女子高生B
「身分証提示したじゃない。整理券と一致しないって言われても知らないし~。」
女子高生C
「お願い。見逃して?入れてよ?一人くらいいいでしょ?」
皆、何かしら言い訳をしながら中に入れてくれるよう頼み込む。
空間
「無理です。お帰りください。」
一刀両断。
藤守
「ごめんな~。アカンねん。」
タジタジ。
如月
「ごめんね~。あきらめて?」
笑顔で拒否。
それぞれが持ち場で上手く立ち回り、一部の不正入場者を食い止め、受付は予想以上にスムーズに進んで行った。
裏門・二年受付
???
「けんたん!」
裏門の担当をしていた藤守の耳に可愛らしい声が聞こえた。
藤守
「お~、空やんか。」
そこにいたのはジュンの両親に連れられた従弟の空。2歳になるジュンの弟であった。
藤守は空を抱き上げる。
空
「おねーたんのとこでお菓子食べるの。」
藤守
「そうかぁ。他にも色々あるからいっぱい遊んでいきや。」
藤守はこの2歳の従弟が可愛くて仕方ないらしく、ほほずりしたり、赤ちゃん言葉になったりして、受付にいた二年の委員は苦笑していた。
空
「けんたんも一緒行こーね。」
藤守
「お~、時間空いたら遊んだるからな~。」
裏門の受付は順調!
なんとなく、弟を書きたかっただけでぶちこんでみました。皆さん、かまってやってください(^_^;)
[削除]
10/15(Tue) 07:34
被りOK♪
小春
みんなノッてきて面白くなってきましたね。
空くん可愛いわ(∩´∇`)
学園祭はあちこち同時進行してますから、被りとか気にしないで楽しく行きましょう。
他力本願♪
10/15(Tue) 06:15
リレーSS専用スレ・5
小春
☆こちらはリレーSS専用スレッドです。
☆書き込みの前に作成した文章を保護した上で、最新の情報に更新する事をお勧めします。
☆お話を書きこむ時は黒では無く文字色を変えて下さい。出来るだけ他の方と被らない色でお願いします。
☆次のお話を書く時や、続きがある時はメッセージを残して下さい。
☆初参加・短文・ぶっこみ大歓迎です。きっと誰かが何とかしてくれます。
☆合言葉は『他力本願』です。
[削除]
10/15(Tue) 06:32
ごあいさつ
小春
こちらのスレッドでは、ただいま『アブナイ☆恋の学園物語』を開催中です。
ストーリーは現在、学園祭『桜祭』二日目、文化祭が始まったばかり。
皆様ふるってご参加下さい。
引き続き「ミス桜祭」、「ミスター桜祭」への投票も受付中です。
[削除]
10/15(Tue) 07:53
みんなついてきてね!
小春
☆『桜祭』とは☆
1日目(前夜祭)……生徒会長藤守の指揮のもと、会場設営、各教室の展示物や模擬店の準備などが行われた。
今年はアニとNYベアーズによるオープニングダンス、実行委員会による仮装寸劇『10分間でロミオとジュリエット』が披露された後、開会宣言。
各部の演奏や、演劇部の正統派『ロミオとジュリエット』も上演された。
ちなみに、ミス桜祭&ミスター桜祭への投票は1日目の正午から受け付け開始されている。
2日目(文化祭)←今ここ
……空間委員長率いる文化祭実行委員会が仕切る。
講堂や体育館で吹奏楽部、合唱部などの演奏、演劇部や有志の手品や漫才などのパフォーマンスが行われる。
各教室ではクラス展示、文化部では部室を開放しての展示や実演など活動の発表の機会になる。
茶道部ではお茶とお茶菓子をふるまう茶店、家庭科部では喫茶店というように、中庭などに模擬店もたくさん並ぶ。
《あらすじ》
転入以来何となく気になっていた担任教師穂積と、生徒会室の寸劇でロミオとジュリエットを演じる事になった翼。
劇のラストでバルコニーから落ちた翼を受けとめた穂積は、暗転中に翼の額にキスしてしまう。
翼はさらに穂積を意識するようになるが、穂積の真意が分からないまま、確かめる機会もなく前夜祭は終わる。
一方の穂積も、翼が気になって仕方ない自分と、無意識にしてしまったキスの結果を整理しきれずにいる。
そんな二人の様子に気付き始めた人物も何人かいるが、沈黙を守ったまま、学園祭は二日目に入る。
被りも前後も気にせず行こう!だってお祭りだから!のスレッド5、スタート!
[削除]
10/15(Tue) 12:53
紅花走る(笑)
小春
コンコン、と屋上の扉がノックされた。
元々静かにしていたが、穂積と小野瀬は急いで声を潜める。
屋上は普段立ち入り禁止なので、他とは違い、校内からは鍵が無いと開かない。
そっと近付くと、向こうでも声をひそめて、紅花が囁いていた。
紅花(声)
「穂積先生、紅花です」
穂積と小野瀬は顔を見合わせた。
紅花(声)
「篠崎先生に、ここだって教わって来ました。私、さっき、先生たちと約束したから」
小野瀬が鍵を外すと、紅花が少しだけ扉を開けて、そっとタブレットを差し出してきた。
紅花
「私、校内くまなく撮影して、みんなからのメッセージもお届けします。だから、ここで、見てて下さいね」
それだけ言うと、紅花は目立たないよう、静かに階段を駆け降りて行った。
小野瀬
「義理堅い子だね」
穂積
「口も堅いし、いい記者になるわよ」
穂積と小野瀬は並んで腰を下ろすと、タブレットの電源を入れた。
[削除]
10/15(Tue) 17:38
翼ちゃん大人気♪
とも
☆見回り中・とも、翼☆
家庭科部の展示室を出て、再び見回り(という名の文化祭めぐり)を開始した二人だったが、小春の編みぐるみのおかげか、行く先々で翼は声をかけられる。
女子生徒A
「あなた、翼ちゃんだよね?私と友達になって!」
女子生徒B
「あの編みぐるみのコ?わぁホントにそっくり!私も友達になりたいな」
翼
「ありがとうございます。こちらこそ、仲良くしてくださいね」
さらには男子生徒まで。
男子生徒A
「あの~、よかったら友達になってくれない?」
男子生徒B
「わ、本物はめちゃくちゃ可愛いね!俺も友達になってよ」
あっという間に人だかりができてしまい、翼は身動きがとれなくなってしまった。
翼
「ともちゃーん、どうしよう…」
とも
「思ったよりエライことになってしもたな~。一旦生徒会室に戻ろか。ハイハイ、ちょっとすいません通りま~す」
ともはすばやく翼の手をとり、人混みをかき分けて生徒会室へと歩きだした。
とも
「翼、一気に人気者になったなぁ。それより大丈夫やったか?」
翼より背の高いともが乱れた髪を直してくれた。
翼
「ありがとう。もう大丈夫。それに、小春ちゃんがまだ学校に慣れない私の為にしてくれたんだもの。私もたくさん友達ができそうな気がして嬉しいよ」
生徒会室のある階は展示などはされていないため、ひっそりとしていた。廊下を歩いていると、階段から紅花が降りてくるのが見えた。
とも
「おーい、紅花~。なんか面白いの撮れた?」
ともの呼びかけに驚いて振り向いた紅花だったが、相手がともだと知ってニッコリ笑顔を返す。
紅花
「えへへ、結構イイの撮れたよ。これから編集して会場のモニターに写すから、楽しみにしてて!今、屋上の穂積先生と小野瀬先生のところにタブレットを渡してきたの」
とも
「今年はずっと隠れてなあかんのは退屈やろうなぁ。穂積先生なんかはきっと自分の仕事ができひんからやきもきしてそう。あ、そや、紅花、私が撮ったこの写メ、役に立つ?」
ともが見せたのは小春の編みぐるみを抱いた笑顔の翼。
紅花
「わぁ、可愛い!もちろん使わせてもらうよ~。それより、自己紹介まだだったね。広報委員の紅花です。ともとは同じクラスなの。櫻井さん、これからよろしくね」
翼
「そうだったの。こちらこそよろしくね」
3人は少し立ち話をしたあと、笑顔で別れた。
紅花さんはともと同じクラスになってもらいました♪
10/15(Tue) 17:41
あっすごい。
小春
くちびるさんからも、ともさんと同じ隣のクラスがいいって言われてたんですよ。
いやー、ともさんすごいわ(*´-`)
[削除]
10/16(Wed) 09:24
よかった~
とも
勝手に同じクラスにしちゃったけどよかったかな~て思ってたので、くちびるさんが同じ事を考えてくださってて私も嬉しいです♪
そして、とも父登場(笑)
☆通用門前☆
???
「ここが桜田門学園か…」
カジュアルなジャケットに白のシャツ、デニム姿の背の高い男性が目の前にそびえる校舎を見上げてつぶやいた。
片方の手には整理券と身分証のパスポート、もう片方には大きなスーツケースがあった。
???
「半年ぶりに会うからなぁ、少しは成長してるかな?」
そして通用門の受付でチェックを受ける。
受付生徒
「ご来場ありがとうございます。1-Bのともさんの…」
とも父
「ええ、父親ですわ」
それを聞いていた如月が驚きの声をあげる。
如月
「えぇっ、お父さん?!(めちゃくちゃ若いし、ちょっとカッコいいし!)」
☆生徒会室☆
生徒会室ではともと翼が窓から外の様子を見ていた。
翼
「ともちゃん、ごめんね。せっかく文化祭を見て回れるチャンスだったのに…」
とも
「そんなん全然気にしてへんからええよ~。翼かて、もっと見に行きたいとこあったやろ?もう少し休憩したら小春のとこ行ってみよか?」
翼
「そうだね。昨日も明智先生と泊まり込みでカレーの仕込みやら軽食の準備をしてたみたいだからね。ところで、ともちゃんとこは桜祭にはご両親は来られるの?」
とも
「あー、うちはおとんが来てくれるねん。海外出張の帰りに寄ってくれるって言うてたんやけど。そろそろ着く頃かな。そういう翼は?」
翼
「うちは両親そろって来てくれるみたい。お父さんの方が、学校の様子を見に行きたいらしくて」
とも
「あはは、翼のお父さん、門限とか以外にもいろいろ厳しそうやもんなぁ」
二人して苦笑していると、ともの携帯が鳴った。
とも
「もしもし?如月先輩?どないしたんですか?」
如月
『今、通用門の受付にともちゃんのお父さんが来られたよ~』
[削除]
10/16(Wed) 12:21
☆その頃の小春☆
小春
毎年、文化祭では一番人気を誇る家庭科部の出店スペースは、顧問の明智の着任以来どんどん需要が高まり、今では、客席を含めて、広い中庭の半分以上を占めるまでになっていた。
特に今年は、昨年、明智が満を持して発売したカレーが爆発的な評価を受け、予想以上の来客と早過ぎた売り切れにあわや暴動が起きそうになった経緯もあって、充分なスペースが確保されている。
さらに、カレーを始めとする人気メニューを扱う軽食部門は、通路からして明確に喫茶部門と区分された。
おそらく、昼食時に上空から見下ろせば、ほとんど男部屋と女部屋、ぐらいの違いが見てとれるような状況になるのではなかろうか。
何故なら、客層はもちろんのこと、喫茶部門は、可愛いメイド服を着た、家庭科部女子のウェイトレス。
提供されるのは、家庭科室で作られるケーキと、チョコレートやクッキーなどの甘い洋菓子。
一方、軽食部門のメインは、数日前から明智が完璧な状態で仕込んだベースを元に作られる、『伝説の』カレー。
そして、明智レシピによる絶妙なバランスのソースとドレッシングで構成される数種類のパスタ、サンドイッチ、サラダ。
さらにスタッフはほとんどが体育会系からのボランティア男子で、服装はジャージにギャルソンエプロンだからだ。
実は、明智のカレーが登場するまで、例年、軽食部門は喫茶部門に比べ、低迷していた。
しかし今年は、明智の妹、小春の入学によって、難題であった『明智レシピの再現』問題が解消された。
そのため、メニューの増加が可能になり、ボランティアが来て賑やかになり、家庭科部は活気に溢れていた。
☆中庭☆
青空のもと、中庭の芝生の上に張ったテントの下。
ホコリ避けに施されたビニールシートでぐるりと囲まれたオープンキッチン。
小春は先輩たちから贈られた特製の給食係の服(本人命名)を着て、朝から黙々と野菜を切っていた。
学校指定のジャージに白いスモック、胸に「小春」の大きな刺繍。頭には白いベレー帽。
小学生のような出で立ちに虹色のゴーグルと白いマスクを着け、物凄い速さと正確さで玉ねぎを刻んでゆくその姿は、鬼気迫るものさえある。
紅花
「こーはるちゃん♪」
小春
「あ、紅花ちゃん」
聞き覚えのある声に、小春は手を止めた。
ビニールシート越しに笑顔で手を振っているのは、右手にハンディタイプのビデオカメラを構えた、広報委員の紅花。
紅花
「それ、スキー用のゴーグル?小春ちゃん、相変わらず面白いねえ」
小春
「たくさん玉ねぎ切る時、これいいんだよ」
小春は虹色のゴーグルを上げ、マスクを指で引き下げた。
紅花
「花粉症用のゴーグルの方が、透明でいいんじゃない?」
小春
「そんなのあるの?今度試してみる」
紅花はテントの中を映すように、ゆっくりとカメラを動かしている。
簡易な厨房の脇には調理器具が整然と並べられ、出来た料理を置く為にかL字型に設置されたテーブル、後ろには冷蔵庫まである。
紅花
「まーくん……じゃなくて、明智先生は?」
小春
「家庭科室。先輩たちが焼いてくれるパンや、お菓子の監督をしながら、カレー仕上げてるの」
紅花
「『伝説の』カレーだね。で、小春ちゃんはここで、パスタやサラダを作るんだ」
小春
「うん。ミートソースとナポリタン、先輩たちが焼いてくれるパンを使ったクラブハウスサンドと照り焼きバーガー、あとサラダ。全部、一から手作りだから美味しいよ」
料理の話をする小春は、さっき赤ん坊のような寝顔を見せていた少女と同一人物とは思えない。
紅花
「頑張ってね」
小春
「うん、ありがとう。出来上がったら、紅花ちゃんの分のサンドイッチお取り置きしておくからね」
紅花
「やった!」
紅花は手を振る小春に別れを告げ、次の取材に向かうのだった。
紅花を見送った時、小春の携帯から、メール着信音の『春の小川』(←本当)が鳴った。
小春は携帯を開いてメールを開け、思わず微笑んだ。
そこには小春の編みぐるみを抱いてちょっと恥ずかしそうに、そして嬉しそうに笑う翼の可愛い笑顔が咲いていたからだ。
写真を待受に保存した小春は、ひとり微笑みながら、マスクを上げゴーグルを装着し、再び、物凄い速さで玉ねぎを刻み始めた。
[削除]
10/16(Wed) 12:25
ともさんのお父さんはダンディなのか(* ̄ー ̄)
小春
身内登場なら、うちも振っとく(笑)
☆家庭科室☆
明智
「うん、上手にパンズが焼けたじゃないか」
家庭科部員A
「ありがとうございます!」
明智
「これなら、美味い照り焼きバーガーが出来るぞ。数が揃ったら、中庭のオープンキッチンの小春の所に運んでやってくれ」
家庭科部員
「はい!」
家庭科部員
「先生、クッキーの試食もお願いします」
明智
「分かった」
その時。明智の携帯から、映画『JAWS』で巨大人喰いザメの現れる時に鳴る、あの音楽が流れ始めた。
大袈裟にではなく、明智の身体が30cmほど飛び上がった。
そんな電話なら出なければいいはずなのだが、明智はすぐに部屋の隅にくっつき、通話口を手で押さえながら電話に出る。
明智
「……はい」
???
『ま~さ~お~み~……』
受話器から聞こえてきたのは、地を這うような女の声。
???
『あんた、お姉ちゃんたちに学園祭の日程を秘密にして教えないとか、いい度胸ねえ……』
明智がぎくりと肩を震わせた。
明智
「……何故それを」
???
『うちの可愛い可愛い末っ子ちゃんが教えてくれたに決まってるでしょ!』
小春ーーー!!
明智は、声に出さずに妹にツッコむ。
???
『とにかくこれから行くからね。カレー用意して待ってなさい。……品切れしたら容赦しないわよ!』
ぶつっ、と一方的に電話が切れた。
明智
「……」
家庭科部員
「……先生?」
明智
「……だ」
家庭科部員
「え?」
明智
「カレーとパスタを30人前、いや、50人前ずつ追加だ!クッキーもケーキも材料のありったけ焼け!急げ!!」
[削除]
10/16(Wed) 14:31
そのころのジュン
ジュン
中庭の家庭科部の隣に赤い毛氈を引いた長椅子に囲まれたスペースが出来上がった。
今年の茶道部はお茶屋さんということで気楽に寄ってもらえるように野点形式である。
色とりどり、様々な着物を着た茶道部員は花を散らしたような雰囲気を醸し出す。
その中に明らかに異質な人物が二人いることには誰も突っ込まない……
ロバート
『ジュン、琴はここでいいの?』
ジュン
『ええ。ありがとうございます、ロバート先生。』
ポール
『楽しみねぇ。』
ジュン
『はい。お客さんがたくさん来てくださるといいんですけど……』
ロバート&ポール
『大丈夫よ!』
笑顔の二人に同じく笑顔を返したジュンのスマホが着信を告げる。
藤守
「ジュンか?今、空たちが来たで。後で
空とそっち行くからなぁ。」
賢史からの電話に頬が緩むジュンを見て微笑むロバートとポール。
ロバート
『本当にジュンはケンジが好きなのね。』
ポール
『ケイジもだけど、ケンジもイケメンだものね』
ジュン
『ええ。でも、賢史くんは私を妹くらいにしか思ってないから……』
ジュンはそう言って少し寂しげに微笑えんだ。
10/16(Wed) 15:36
こんにちは♪
くちびる
ともさんも同じ事思っていてくれて嬉しいです(笑)(*^^*)
紅花は明智兄妹が大好きなんですよ♪
翼ちゃんとも仲良しになれて嬉しいです!
引き続きよろしくお願いします。
[削除]
10/16(Wed) 21:19
その頃の穂積と小野瀬
小春
☆屋上☆
紅花の持ってきてくれたタブレットから送られて来る映像を見ながら、穂積と小野瀬は目を細め、時には感心した声を出し、そして、時には笑い転げていた。
文化部の生徒たちの展示や生き生きとした表情が素晴らしかったが、小野瀬のツボに入ったのはやっぱり小春。
寝起きで伸びをしてお腹とお臍を出す子猫のような仕草に画面を覗き込んで笑い、給食着にゴーグルを装着して野菜を切るインパクトにのけぞってはまた笑う。
屋上の床に転がって笑い続ける小野瀬の傍らで、穂積が目を奪われたのは、廊下で、紅花のカメラに向かってピースサインを出すともと、そのともに肩を抱かれて、楽しそうに笑う翼の笑顔だった。
良かった。
穂積は心の中でそっと呟いた。
昨日は驚かせてしまったかも知れないが、少なくとも、今日、この時は、友達と笑って過ごしている。
その事が、自分でも戸惑うほど、穂積を安堵させる。
そして同時に、そんな事に一喜一憂している自分に気付いて、納得出来ない思いに陥る。
翼を見るたびに感じる胸のざわめきを、この時も穂積は感じていた。
小野瀬が身体を起こした時には、映像は茶道部の部室に変わっていた。
頭の片隅では翼の事を考えながらも、昨夜も見たロバートとポールの振り袖姿に眉をひそめたり、対照的に、本格的なエミやジュンの和服姿に感心したりしながら見続けていると、穂積のポケットの携帯が震えた。
穂積
「?」
表示された発信者の名前は、小春。
穂積は、担任の生徒には携帯の番号を教えてある。
だが、小春からメールが来たのは初めてだった。
何だろう。
首を傾げながら開いた途端、添付されている画像が展開されて、穂積の目は釘付けになった。
穂積
「!」
それは、翼が編みぐるみを抱いて、愛らしい笑顔を見せている写真。
この時の穂積は知らなかったが、ともが撮影して、紅花と、小春に送ってくれた写真だった。
小春がそれを転送してきたのだ。
件名は無い。
穂積は写真に添えられた文面に、息を飲んだ。
『応援します』
本文には、そう、書かれていた。
そして、次の行を読んだ時、穂積は目を見開いた。
『応援しますから、卒業まではみんなの先生でいてください』
頭を殴られたような衝撃だった。
穂積
(……!)
いつの間にか、小野瀬が、隣から穂積の携帯の画面を見つめていた。
小野瀬
「……」
小野瀬も薄々気付いてはいた。
気付いてはいたが、まさか、という思いもあった。
そして、男同士だから、教師だから、大人だから、あえて口に出さずに今日まできたのだ。
けれど、小春は生徒で、女の子で、まだ本当に幼くて……だからこそ、その純粋な目には全てが見えていたのだろう。
見て、そして訴えてきた。
小春からのメールは、ずっとざわめき続けていた穂積の胸の内の波を鎮めた。
穂積
「……ったく、何してんだよ、俺」
苦笑いとともに吐き出す。
いつかと同じ呟きは、けれど、もう、その時と同じ呟きではなかった。
10/17(Thu) 00:30
小春ちゃん、思いのほか早く気がついていたのね(笑)
清香
☆屋上☆
胸の中に渦巻いていた云いようの無い想いが『すとん』と納まるべきところに納まった。
その事だけで爽快感さえ湧きあがってくる。
(…俺、櫻井が好きなんだ)
教師である自分が生徒を好きになる、だなんて考えてもいなかった。
みんな同じように可愛くて、同じように厳しく接していたつもりだった。
それがこんなにもいともあっさり覆されるだなんて。
アイツを気にしてしまうのは、転校してきたばかりだから。
特別に補習をするのは、勉強について来れないと可哀そうだから。
生徒会に入れたのは、学校を好きになって貰うためだから。
『全ては彼女の学園生活を楽しいものにする』と言い訳をしながらも、無意識なのか自分の眼の届く範囲に置いていた自分の身勝手さに、そして震える彼女に反射的にキスをしてしまった節操のなさに気がつく。
穂積
「あはは、ははっ。」
これはもう、笑うっきゃないだろ。
30のおっさんが指摘されて恋心を自覚するなんて。
小野瀬
「どうした、穂積。とうとうおかしくなったか?」
何かを感じたようだが、いつも通りに静かな声で話しかける小野瀬が隣にいてくれてよかったと素直に想う。
穂積
「…何でもねぇよ。」
小野瀬
「そうか?」
穏やかに笑う小野瀬の横顔を見てから空を見ると、ゆっくりと雲が流れて行く。
そして『サァ』っと吹いた風が金木犀の甘い香りを屋上まで運んできた。
(今頃、楽しそうに笑ってんのかな。)
一緒に笑いたくても出来ないもどかしさを決して表に出さないよう、胸の奥に押し込めていたのに。
穂積
「……下、行きてえなぁ。」
金木犀の香りが抱きしめた時に漂った翼の髪の香りのようで、思わず本音が漏れる。
内心『しまった!』っと思いながらも隣にいる小野瀬に聞こえていないよう願って、そっと窺って見ると。
小野瀬
「………送信っと。」
何やらメールを送っていたのか、スマホをポケットに仕舞いながらニコリと笑う小野瀬と目が合った。
小野瀬
「ん?なぁに?」
穂積
「………何でもねぇよ。」
小野瀬
「お前、今日はそればっかりだな。」
穂積
「うるせぇ。」
図星を突かれた気まずさを隠すように小突くと、小野瀬は笑いながらゴロリと横になった。
小野瀬
「そう思っているのは、お前だけじゃないよ。」
穂積
「…なんだよ、それ。」
小野瀬
「まぁ、もうちょっと待ってろって。時期を見るんだ。」
ポンポンっと横を叩かれ同じように寝転ぶと、さっきまで浮かんでいた雲はどこかへ行ってしまったのだろうか。
真っ青な秋の空が視界を支配していく。
眩しすぎて閉じた瞼の奥に映ったのは、彼女の笑顔だけだった。
☆文化祭の朝☆
小春
『桜祭』二日目の朝は快晴。
桜田門学園高校の構内では、午前10時の一般公開を前に、早朝からあちこちでテントを張る音や、生徒たちの元気な声が響いている。
☆茶道部部室☆
エミ
「はい、出来た。可愛いわよ♪」
ジュン
「ありがとうございます!わあ、素敵な帯結び!」
茶道部の部室では、和風カフェの準備として、朝から生徒たちの着物の着付けが行われていた。
本日はいつも和装の理事長、エミも、その手伝いに来てくれている。
着物を着る機会も多い茶道部員の女子たちだが、一年生の中には初めて着物を着るという子や、逆に、袴を穿いてみたいという上級生もいて、着付けの出来るジュンやエミは大忙しだった。
そのジュンも、エミに凝った帯を結んでもらって、姿見の前で大喜びだ。
そこへ紅花がやって来た。
紅花
「おはようございます……わあ、ジュン先輩、素敵!」
ジュン
「ありがとう、紅花さん」
カメラを向けられて、ジュンが頬を染めた。
エミ
「ジュンさんは琴も披露するそうだから、ちょっと面白い帯も良いかと思って」
ジュン
「ありがとうございます」
エミ
「開店したら、私も、お茶菓子を頂きに行くわね」
ジュン
「はい!」
さらに茶道部の室内を映そうとカメラを動かした紅花は、部屋の隅に、熊耳を着けた、振り袖姿の二人の外国人の巨漢が体育座りしているのに気付いた。
思わずぎょっとして画面が揺れる。
気配を察したエミとジュンが、苦笑いで振り返った。
エミ
「あ、その人たちは大丈夫よ。心は乙女だから」
紅花
「……はあ」
何が「大丈夫」なんだか。ツッコミどころが多すぎて逆にツッコめない。
紅花
「ふ、二人とも、インパクトのある振り袖姿で、とても素敵ですよね」
とりあえず呟いた紅花の言葉を、エミが通訳する。
ロバートとポールの表情が明るくなった。
ロバート
『本当に?!』
エミ
『ええ』
紅花の代わりにエミが頷く。
それを聞いて、ポールが俄然元気を取り戻した。
ポール
『ロバート、ワタシたち、昨日は、暗闇からいきなり飛び出したから、ルイとアオイに叱られたのかもしれないわ』
ロバート
『あっ、そうか!それに、全速力で追いかけちゃったし。せっかくの晴れ着なのに、ちょっとはしたなかったわね』
ポール
『今度は、もっと、おしとやかに迫ってみましょう』
ロバート
『そうね!』
紅花
「……」
部員たち
『ドンマイ、ポール!』
部員たち
『ファイト!』
ロバート&ポール
『ありがとう!頑張るわ!』
紅花
「……」
☆その頃の空間先輩☆
きちんと制服を着こなした空間は、正門に来ていた。
開場の前に、入場システムの確認をしておかなければならない。
幸い、小笠原という優秀なブレーンがいるが、一般の入場者というのは予想以上に曲者が多い。
実は、空間の理想とするのは、穂積と小野瀬目当ての客を全てシャットアウトする事なのだが、それでは、生徒の親姉妹まで締め出してしまう。
悩ましいところだった。
せめて、小野瀬ファンだけでも見つけ出して追い出せたらいいのに。
ああ、早く平穏な二人だけの時間に戻りたい。
空間は、宿直の小野瀬の弾くピアノを、ベートーベンの肖像画の裏から自分一人が盗み見るあの時間を思い浮かべながら、静かに溜め息をつくのだった。
[削除]
10/14(Mon) 16:06
☆文化祭の朝☆
小春
☆生徒会室☆
準備期間中はドタバタしていた生徒会だが、当日は、進行や運営にあたる実行委員会を補佐するのが主な仕事。
タイムテーブルを確認した後、特に要請を受けていない一年生の翼は、ともと二人で『生徒会』の腕章を付けるだけで、『見回り』の役を仰せつかった。
つまり、文化祭の会場の中を、どこでも自由に歩き回れるという、かなりな特権を手にしたという事。
その特権をもって、文化祭を楽しんでいいという事だ。
「これ、もしかして、けっこうオイシイんとちゃう?」というともの言葉に、翼は笑ってしまった。
とも
「ほな、一般の入場が始まる前に、展示を見てまわろか?」
翼
「うん。小春ちゃんの編みぐるみも見に行きたいしね」
小春の編みぐるみ。
それは、家庭科部の展示部門のノルマとして、小春が翼をモデルにして製作した、等身大の力作。
明智の妹らしく懲り性の小春が、翼の全身を採寸して取り組んだ1/1モデルの編みぐるみだ。
いったいどんなものなのか、翼には全く想像がつかない。
休み時間に、鍵針を動かしている小春の姿を見た事はある。
ところが、指の動きは速すぎるし、編み目を数えているのか口の中でぶつぶつ言ってるし、そのうえ何が楽しいのか一人でニコニコしながら編んでるしで、とうとう声がかけられなかったのだ。
とも
「そしたら講堂から始めよか。まあ、今日は携帯の使用許可もあるし、用があれば呼んでもらえるやろ。あちこち見ながら、のんびり廻ろうや」
☆職員室☆
職員会議を終えたばかりの穂積と小野瀬を、『桜祭』オフショットリポーターの紅花が取材に来ていた。
窓際に並んでこちらに笑顔を向ける二人のツーショットの撮影に成功しただけでも、先輩たちに褒めてもらえるだろう。
デジタルビデオカメラで撮影を続ける紅花に、穂積が笑った。
穂積
「おはよう紅花。面白いの録れたら見せなさいよ」
紅花
「はい。編集したら、職員室のモニターにも流します」
小野瀬
「ここまででどんなの録ったの?」
コーヒーを飲みながら、小野瀬が訊いてくる。
紅花
「明智兄妹の寝起きとか、茶道部の着付け風景とか録りましたよ。私はオフショット担当なので、生徒目線であちこち見て廻ります」
小野瀬
「楽しみにしてるよ。あっそうだ、サービスショットをプレゼントするね」
小野瀬はそう言うと、カップを置くなり、隣にいた穂積に抱きついた。
小野瀬
「ほーづみ♪」
「キャー!」と黄色い歓声を上げたのは紅花ではなく、背後にいた女性教師や事務員たち。
穂積
「くっつくな!離れろバカっ」
小野瀬
「穂積、オカマキャラ忘れてるよ」
穂積
「はーなーれーろー!」
小野瀬
「生徒が見てるよ?紅花さんの夢は世界を股にかけるリポーターなんだから、協力してあげないと」
穂積
「なるほど。……じゃあ、ワタシからは、コブラツイストをかけられて悶絶する小野瀬の顔をサービスしようかしら」
何だかんだ言いながら、穂積は小野瀬の頭を抱え込んで、反対側の拳でぐりぐりとする。
紅花はほくほくしながら、時間の許す限り、穂積と小野瀬を録り続けるのだった……。
[削除]
10/14(Mon) 21:46
ワクワクドキドキ(*^^*)
くちびる
女子高生で登場させて頂きました!わ~い(笑)
くちびること紅花(べにか)です。
明智兄妹とお近付きになれて嬉しいです(笑)(*^^*)
引き続きよろしくお願いします~深々。
[削除]
10/14(Mon) 21:51
空間センパイに負けてる本人;;
せつな
空間セツナ・・・もとい、せつなです。
いつも楽しくこっそり読んでお腹抱えて笑わせていただいてます!!ロミジュリ受けまくりました。
皆さん、さすがです(≧▽≦)
しかも、小春さんはじめお嬢様方のおかげで、私の分身キャラがどんどん一人歩きしてるため、ご無沙汰という気がしないというね\(^o^)/
本当に感謝です!!
ワタクシも、小野瀬さんに愛を囁かれて悶絶したい!!
デ●ノート片手に校内を散策したい←実はコレ笑えないかもww
ベートーベンの目玉に細工して、コブラツイストかけあいっこするお二人をのぞき見するのが夢です。
あぁ、絡みたい( ;∀;)
後夜祭には復活したい本人でした。
続き楽しみにしてま~す(*´▽`*)
[削除]
10/15(Tue) 00:18
見回りしますよ
とも
校舎内の展示会場でもたくさんの生徒たちで溢れていた。ともと一緒に各展示室に声をかけてまわりながらゆっくりと展示物を見ていた。
とも
「おはようございまーす、生徒会でーす。準備の方はバッチリですか~?あっ、これはスゴい大作ですね!誰が作らはったんですか?」
翼
「ともちゃん、見回りもちゃんとしないと…」
とも
「え?あ、ゴメンゴメン。私はようマネできひんようなもんばっかりやから、つい気になって」
初めての桜祭だからか、少し興奮気味に話すともに翼も笑った。
翼
「確かに文化部の展示は目を見張る作品が多いし、すごく楽しめるね。隣の教室は家庭科部だって!小春ちゃんの編みぐるみ、どんな風に出来上がったのかな?」
とも
「なんや、翼は完成したやつ見てるんやと思ってたんやけど、その様子じゃ文化祭まで秘密、とか言われてたんや? 小春、毎日明智先生の調理の手伝いしながら頑張っとったもんなぁ」
小春は結局出来上がった翼の編みぐるみを、モデル本人に見せていなかった。
休み時間に一度聞いてみたのだが、『当日までナイショ♪』と言われ、それなら、と今日まで楽しみにしていたのだ。
10/15(Tue) 02:16
せつなさん、至る所で使用させていただいております。
清香
色々同時進行で行きますよ。
そして自分で書いたはずの入場に関する設定を全く覚えていなかった人←
☆正門☆
職員会議を終えた後、穂積と小野瀬を除く教職員と生徒会から藤守・小笠原・如月が、生徒達からはクラス委員が、そして実行委員長の空間が正門前に集まっていた。
すでに運動部によって運ばれた会議用の長机が4つ並べられ、A・B・C・Dと張り紙がされている。
空間
「これと同じ物が裏門と校庭横の通用門にもあります。関係者の方には、生徒の在籍するクラスの列に並んでいただくようにします。そして、整理券に印字してある名前と、写真付きの身分証明書を確認してください。」
口頭で説明するよりも実際にやって見せたほうが早いと、空間が小笠原を長机の前へ来るように促した。
小笠原は見本と印字された整理券と己の学生証を空間へと渡し、空間は隣に整然と並べられたIDカードホルダーから一つを取り出しタブレット端末に読み込ませて小笠原へと渡す。
空間
「この流れを二人一組で行っていただきます。教職員の先生方が身分証を確認し、クラス委員が手元にある端末でQRコードを読み取って下さい。これでどれだけの方がいらしているか実数として確認できます。」
初めての試みを黙って見守っている職員達にも、そして開門を今か今かと待ちわびている人々にも聞こえるくらいの凛とした声で空間が話す。
空間
「整理券を発行した段階で、『入場の際には身分証明書は写真付きの原本を持って来て下さい』と明記してあります。…まぁ、たかだか学校の文化祭ごときで公文書である身分証の偽造までする人はそうそういないとは思いますが、くれぐれも見落としがないよう、……先生方、よろしくお願いいたしますね?」
教職員
「…は、はい。」
目は真剣でいながらも、口元で深い笑みを浮かべた空間に反論する事も出来ず、教職員もクラス委員もただ首を縦に振ることしかできなかった。
空間
「では、皆さん持ち場について下さい。各クラス委員は自分のクラスへ。小笠原君はアプリの実動確認、藤守君は2年の裏門で、如月君は1年の通用門で全体を見て下さい。」
生徒だけではなく、教職員にまでも臆することなく指示を飛ばす空間に藤守がおずおずと手を挙げて質問をする。
藤守
「それはええけど、3年の正門はどないすんの?」
空間
「もちろん私がやるのよ。今まで3年が一番不正が多かったんだから。」
『何バカなことを言っているの?』と言いたげに微笑んだ空間に、『…すまんかった』とだけ言い、藤守は言われた通り裏門へと足を向けたのだった。
[削除]
10/15(Tue) 03:37
連投してみる。
清香
☆屋上☆
その頃。
小野瀬
「おー、今年も盛況だね。」
穂積
「…ん、そうか。」
何とも呑気な声で屋上から行列を見下ろす小野瀬に、穂積はつまらなそうに返事をした。
屋上の手摺りに背中を預けて、下を見ないようにしている横顔はふてくされていると言ってもいいほどだ。
小野瀬
「そんなにしょぼくれるなよ。少しの間だけだから、な?」
毎年穂積と小野瀬見たさに多くの関係者やそうでない人が来校するのは分かっていた。
そしてハルメーンの笛吹きのように、大勢の人々が自分が移動する度に後ろをついて回るのも知っていた。
穂積
「分かってる…、さ。」
それでも教職員として自分のクラスや関係のある部活、委員会などに顔を出して生徒達を励ますのが自分の仕事だろうと自負していたのに。
小野瀬
「空間さんも俺達の事と、来年からの防犯を考えて『隠れていてくれ』と進言してくれたんだから。生徒の自主性に任せるのがウチのモットーだろ?」
穂積
「あぁ、そうだな。」
やっと口元にかすかな笑みを浮かべた穂積に、小野瀬は昨日から気になっていた事をあえて切り出す。
小野瀬
「なぁ、穂積。それよりお前ここ最近おかしいぞ?何かあったか?」
穂積と同じように手摺りに背中を預けて顔を覗きこむも、穂積は表情を変えないままジャケットの内ポケットから煙草を取り出し火をつけた。
穂積
「なんもねぇよ、気のせいだ。」
小野瀬
「そうか?…篠崎さんも心配してからさ。」
穂積
「ったく、アイツも人の事より自分の心配しろよ。」
小野瀬
「まぁまぁ、そう言いなさんな。心配してくれているうちが華だよ。」
そう言ったきり、小野瀬は追及をしなかった。
よほどの事がなければ、常に自分の心の中で折り合いをつける穂積を小野瀬は誰よりも知っていたからだ。
流れる雲をぼーっと見上げていると、校内に軽やかな音楽が流れ出す。
小野瀬
「始まるね。」
穂積
「あぁ。」
2013年の『桜祭』、文化祭の部が始まった合図だった。
[削除]
10/15(Tue) 06:08
くちびるさんもせつなさんも、他力本願パワー炸裂ね(* ̄ー ̄)b
小春
☆見回り中・ともと翼☆
家庭科部の展示を見に行こうと手前の教室から廊下に出ると、翼は不意に、向こうから来た知らない女子生徒に声を掛けられた。
生徒
「あ、もしかして翼ちゃん?」
翼
「えっ?……はい、そうです」
すると、相手はにっこり笑った。
生徒
「初めまして、私、ibu。お友達になりましょうね」
翼
「はい?」
相手はきれいで優しそうな人で、学年章は二年生。
翼は面食らったけれど、とりあえず笑顔を返して頭を下げた。
翼
「…はい、もちろん、喜んで。ありがとうございます!」
ibu
「こちらこそ。また会いましょうね」
軽く手を振って去るibuのすらりとした後ろ姿を見送ってから、翼はともの顔を見た。
翼
「……何だろう今の」
とも
「ええやん。友達増えたやん」
ともはニコニコ笑いながら、翼の手を引いた。
とも
「さ、行こ行こ」
翼
「うん……」
翼は首を傾げながら、ともについて歩き出した。
まだ腑に落ちないまま、家庭科部の展示室に入る。
ところが。
翼
「うわあ」
とも
「スゴいな」
この学校が、近隣の高校に比べて、あらゆる面でレベルが高いという評判は聞いていた。
けれど、家庭科部の展示を見た翼とともは、その評判が嘘ではなかったと知った。
とも
「高校生のレベルちゃうやろ……これ」
ともの言う通り、会場のあちこちで感嘆の声が漏れ、何ヵ所も人だかりが出来ている。
最初に目を引くのは、やはり、中央に、一段高くして飾られた純白のウェディングドレス。
三年生の協同製作だと説明が付けられているが、よくブライダルショップの店頭に飾られているものと、全く遜色無い。
いや、それ以上かも……。
近くのテーブルには、アメリカンフラワーのブーケやシルクのリングピローなども飾られ、そのどれにも自由に触れていいという事で、大勢の生徒たちが夢中で見つめていた。
そして、窓際にも、わいわいと盛り上がっている一角があった。
近付いて行くと、人垣から出てきた生徒が、また、翼を見つけて笑顔で声を掛けてきた。
生徒
「あ、翼ちゃん、だよね?初めまして。私ニコ。ねえ、友達になろうね」
二回目だから、今度は若干の余裕があって、求められた握手にもすぐに応える事が出来た。
ibuは上級生だったが、ニコは同級生。
翼は思い切って聞いてみた。
翼
「どうもありがとう、嬉しい。……でもその、どうして急に?」
ニコ
「だって、ほら」
翼が振り返ると、二人の会話が聞こえたのか、人だかりが開いていて、彼女はそこにあるものを指差した。
翼
「!」
翼は息を飲んだ。
それが、小春の編みぐるみだった。
ロッキングチェアにお行儀よく座っている、制服の女の子。
髪型も制服も、全てが手編み。
細い糸と細かい編み目で、抱いても全然チクチクしない。
マイクロビーズが詰まっているのか、なんともいえない優しい手触り。
『つばさ』と書かれて、椅子の肘掛けに紙で添えられた作品の説明文には、さっきからの謎の答えが書いてあった。
『この編みぐるみのモデルは、九月に転入してきた翼ちゃんです。
私は彼女が大好き。
だからもし本物を見かけたら、「友達になろうね」って笑顔で言ってみてくれますか?
その言葉であなたが幸せな気持ちになれるよう、祈りを込めて編みました。
作者:1年 明智小春
※(翼ちゃんが「ありがとう」って答えてくれたら、さらに幸せ度UPだよ!)
』
翼
「……小春ちゃんたら」
『翼ちゃんにお友達が増えますように』と締めくくられた添え書きを読み終え、翼は、編みぐるみの『つばさ』を持ち上げて、ぎゅっと抱き締めた。
とも
「翼、こっち向いて。小春に写メしたる」
翼はともに向き直り、笑顔でカメラにおさまった。
とも
「送信、っと」
翼
「ともちゃん、知ってたの?」
とも
「えー?さあ、どうやろ?」
とぼけるともに、滲んだ涙を拭いながら、翼は笑った。
翼
「ともちゃんも大根役者だね」
[削除]
10/15(Tue) 06:16
弟きた
ジュン
小春さんとかぶっちゃった(;>_<;)
少し話が前後しちゃうけど……
軽やかな音楽を合図に受付が始まった。
事前に告知してあったため、学生の親族などは大きな問題もなく身分証の確認が進みIDホルダーを渡す。
しかし、空間の懸念がやはり実際のものともなる。
どこからか整理券を不正に手に入れた他校の女子高生たちが身分証の提示ができずにごねる。身分証と整理券が一致せずごねる。
女子高生A
「え~?身分証なんか持ってきてないもん。整理券があるんだからいいじゃん?」
女子高生B
「身分証提示したじゃない。整理券と一致しないって言われても知らないし~。」
女子高生C
「お願い。見逃して?入れてよ?一人くらいいいでしょ?」
皆、何かしら言い訳をしながら中に入れてくれるよう頼み込む。
空間
「無理です。お帰りください。」
一刀両断。
藤守
「ごめんな~。アカンねん。」
タジタジ。
如月
「ごめんね~。あきらめて?」
笑顔で拒否。
それぞれが持ち場で上手く立ち回り、一部の不正入場者を食い止め、受付は予想以上にスムーズに進んで行った。
裏門・二年受付
???
「けんたん!」
裏門の担当をしていた藤守の耳に可愛らしい声が聞こえた。
藤守
「お~、空やんか。」
そこにいたのはジュンの両親に連れられた従弟の空。2歳になるジュンの弟であった。
藤守は空を抱き上げる。
空
「おねーたんのとこでお菓子食べるの。」
藤守
「そうかぁ。他にも色々あるからいっぱい遊んでいきや。」
藤守はこの2歳の従弟が可愛くて仕方ないらしく、ほほずりしたり、赤ちゃん言葉になったりして、受付にいた二年の委員は苦笑していた。
空
「けんたんも一緒行こーね。」
藤守
「お~、時間空いたら遊んだるからな~。」
裏門の受付は順調!
なんとなく、弟を書きたかっただけでぶちこんでみました。皆さん、かまってやってください(^_^;)
[削除]
10/15(Tue) 07:34
被りOK♪
小春
みんなノッてきて面白くなってきましたね。
空くん可愛いわ(∩´∇`)
学園祭はあちこち同時進行してますから、被りとか気にしないで楽しく行きましょう。
他力本願♪
10/15(Tue) 06:15
リレーSS専用スレ・5
小春
☆こちらはリレーSS専用スレッドです。
☆書き込みの前に作成した文章を保護した上で、最新の情報に更新する事をお勧めします。
☆お話を書きこむ時は黒では無く文字色を変えて下さい。出来るだけ他の方と被らない色でお願いします。
☆次のお話を書く時や、続きがある時はメッセージを残して下さい。
☆初参加・短文・ぶっこみ大歓迎です。きっと誰かが何とかしてくれます。
☆合言葉は『他力本願』です。
[削除]
10/15(Tue) 06:32
ごあいさつ
小春
こちらのスレッドでは、ただいま『アブナイ☆恋の学園物語』を開催中です。
ストーリーは現在、学園祭『桜祭』二日目、文化祭が始まったばかり。
皆様ふるってご参加下さい。
引き続き「ミス桜祭」、「ミスター桜祭」への投票も受付中です。
[削除]
10/15(Tue) 07:53
みんなついてきてね!
小春
☆『桜祭』とは☆
1日目(前夜祭)……生徒会長藤守の指揮のもと、会場設営、各教室の展示物や模擬店の準備などが行われた。
今年はアニとNYベアーズによるオープニングダンス、実行委員会による仮装寸劇『10分間でロミオとジュリエット』が披露された後、開会宣言。
各部の演奏や、演劇部の正統派『ロミオとジュリエット』も上演された。
ちなみに、ミス桜祭&ミスター桜祭への投票は1日目の正午から受け付け開始されている。
2日目(文化祭)←今ここ
……空間委員長率いる文化祭実行委員会が仕切る。
講堂や体育館で吹奏楽部、合唱部などの演奏、演劇部や有志の手品や漫才などのパフォーマンスが行われる。
各教室ではクラス展示、文化部では部室を開放しての展示や実演など活動の発表の機会になる。
茶道部ではお茶とお茶菓子をふるまう茶店、家庭科部では喫茶店というように、中庭などに模擬店もたくさん並ぶ。
《あらすじ》
転入以来何となく気になっていた担任教師穂積と、生徒会室の寸劇でロミオとジュリエットを演じる事になった翼。
劇のラストでバルコニーから落ちた翼を受けとめた穂積は、暗転中に翼の額にキスしてしまう。
翼はさらに穂積を意識するようになるが、穂積の真意が分からないまま、確かめる機会もなく前夜祭は終わる。
一方の穂積も、翼が気になって仕方ない自分と、無意識にしてしまったキスの結果を整理しきれずにいる。
そんな二人の様子に気付き始めた人物も何人かいるが、沈黙を守ったまま、学園祭は二日目に入る。
被りも前後も気にせず行こう!だってお祭りだから!のスレッド5、スタート!
[削除]
10/15(Tue) 12:53
紅花走る(笑)
小春
コンコン、と屋上の扉がノックされた。
元々静かにしていたが、穂積と小野瀬は急いで声を潜める。
屋上は普段立ち入り禁止なので、他とは違い、校内からは鍵が無いと開かない。
そっと近付くと、向こうでも声をひそめて、紅花が囁いていた。
紅花(声)
「穂積先生、紅花です」
穂積と小野瀬は顔を見合わせた。
紅花(声)
「篠崎先生に、ここだって教わって来ました。私、さっき、先生たちと約束したから」
小野瀬が鍵を外すと、紅花が少しだけ扉を開けて、そっとタブレットを差し出してきた。
紅花
「私、校内くまなく撮影して、みんなからのメッセージもお届けします。だから、ここで、見てて下さいね」
それだけ言うと、紅花は目立たないよう、静かに階段を駆け降りて行った。
小野瀬
「義理堅い子だね」
穂積
「口も堅いし、いい記者になるわよ」
穂積と小野瀬は並んで腰を下ろすと、タブレットの電源を入れた。
[削除]
10/15(Tue) 17:38
翼ちゃん大人気♪
とも
☆見回り中・とも、翼☆
家庭科部の展示室を出て、再び見回り(という名の文化祭めぐり)を開始した二人だったが、小春の編みぐるみのおかげか、行く先々で翼は声をかけられる。
女子生徒A
「あなた、翼ちゃんだよね?私と友達になって!」
女子生徒B
「あの編みぐるみのコ?わぁホントにそっくり!私も友達になりたいな」
翼
「ありがとうございます。こちらこそ、仲良くしてくださいね」
さらには男子生徒まで。
男子生徒A
「あの~、よかったら友達になってくれない?」
男子生徒B
「わ、本物はめちゃくちゃ可愛いね!俺も友達になってよ」
あっという間に人だかりができてしまい、翼は身動きがとれなくなってしまった。
翼
「ともちゃーん、どうしよう…」
とも
「思ったよりエライことになってしもたな~。一旦生徒会室に戻ろか。ハイハイ、ちょっとすいません通りま~す」
ともはすばやく翼の手をとり、人混みをかき分けて生徒会室へと歩きだした。
とも
「翼、一気に人気者になったなぁ。それより大丈夫やったか?」
翼より背の高いともが乱れた髪を直してくれた。
翼
「ありがとう。もう大丈夫。それに、小春ちゃんがまだ学校に慣れない私の為にしてくれたんだもの。私もたくさん友達ができそうな気がして嬉しいよ」
生徒会室のある階は展示などはされていないため、ひっそりとしていた。廊下を歩いていると、階段から紅花が降りてくるのが見えた。
とも
「おーい、紅花~。なんか面白いの撮れた?」
ともの呼びかけに驚いて振り向いた紅花だったが、相手がともだと知ってニッコリ笑顔を返す。
紅花
「えへへ、結構イイの撮れたよ。これから編集して会場のモニターに写すから、楽しみにしてて!今、屋上の穂積先生と小野瀬先生のところにタブレットを渡してきたの」
とも
「今年はずっと隠れてなあかんのは退屈やろうなぁ。穂積先生なんかはきっと自分の仕事ができひんからやきもきしてそう。あ、そや、紅花、私が撮ったこの写メ、役に立つ?」
ともが見せたのは小春の編みぐるみを抱いた笑顔の翼。
紅花
「わぁ、可愛い!もちろん使わせてもらうよ~。それより、自己紹介まだだったね。広報委員の紅花です。ともとは同じクラスなの。櫻井さん、これからよろしくね」
翼
「そうだったの。こちらこそよろしくね」
3人は少し立ち話をしたあと、笑顔で別れた。
紅花さんはともと同じクラスになってもらいました♪
10/15(Tue) 17:41
あっすごい。
小春
くちびるさんからも、ともさんと同じ隣のクラスがいいって言われてたんですよ。
いやー、ともさんすごいわ(*´-`)
[削除]
10/16(Wed) 09:24
よかった~
とも
勝手に同じクラスにしちゃったけどよかったかな~て思ってたので、くちびるさんが同じ事を考えてくださってて私も嬉しいです♪
そして、とも父登場(笑)
☆通用門前☆
???
「ここが桜田門学園か…」
カジュアルなジャケットに白のシャツ、デニム姿の背の高い男性が目の前にそびえる校舎を見上げてつぶやいた。
片方の手には整理券と身分証のパスポート、もう片方には大きなスーツケースがあった。
???
「半年ぶりに会うからなぁ、少しは成長してるかな?」
そして通用門の受付でチェックを受ける。
受付生徒
「ご来場ありがとうございます。1-Bのともさんの…」
とも父
「ええ、父親ですわ」
それを聞いていた如月が驚きの声をあげる。
如月
「えぇっ、お父さん?!(めちゃくちゃ若いし、ちょっとカッコいいし!)」
☆生徒会室☆
生徒会室ではともと翼が窓から外の様子を見ていた。
翼
「ともちゃん、ごめんね。せっかく文化祭を見て回れるチャンスだったのに…」
とも
「そんなん全然気にしてへんからええよ~。翼かて、もっと見に行きたいとこあったやろ?もう少し休憩したら小春のとこ行ってみよか?」
翼
「そうだね。昨日も明智先生と泊まり込みでカレーの仕込みやら軽食の準備をしてたみたいだからね。ところで、ともちゃんとこは桜祭にはご両親は来られるの?」
とも
「あー、うちはおとんが来てくれるねん。海外出張の帰りに寄ってくれるって言うてたんやけど。そろそろ着く頃かな。そういう翼は?」
翼
「うちは両親そろって来てくれるみたい。お父さんの方が、学校の様子を見に行きたいらしくて」
とも
「あはは、翼のお父さん、門限とか以外にもいろいろ厳しそうやもんなぁ」
二人して苦笑していると、ともの携帯が鳴った。
とも
「もしもし?如月先輩?どないしたんですか?」
如月
『今、通用門の受付にともちゃんのお父さんが来られたよ~』
[削除]
10/16(Wed) 12:21
☆その頃の小春☆
小春
毎年、文化祭では一番人気を誇る家庭科部の出店スペースは、顧問の明智の着任以来どんどん需要が高まり、今では、客席を含めて、広い中庭の半分以上を占めるまでになっていた。
特に今年は、昨年、明智が満を持して発売したカレーが爆発的な評価を受け、予想以上の来客と早過ぎた売り切れにあわや暴動が起きそうになった経緯もあって、充分なスペースが確保されている。
さらに、カレーを始めとする人気メニューを扱う軽食部門は、通路からして明確に喫茶部門と区分された。
おそらく、昼食時に上空から見下ろせば、ほとんど男部屋と女部屋、ぐらいの違いが見てとれるような状況になるのではなかろうか。
何故なら、客層はもちろんのこと、喫茶部門は、可愛いメイド服を着た、家庭科部女子のウェイトレス。
提供されるのは、家庭科室で作られるケーキと、チョコレートやクッキーなどの甘い洋菓子。
一方、軽食部門のメインは、数日前から明智が完璧な状態で仕込んだベースを元に作られる、『伝説の』カレー。
そして、明智レシピによる絶妙なバランスのソースとドレッシングで構成される数種類のパスタ、サンドイッチ、サラダ。
さらにスタッフはほとんどが体育会系からのボランティア男子で、服装はジャージにギャルソンエプロンだからだ。
実は、明智のカレーが登場するまで、例年、軽食部門は喫茶部門に比べ、低迷していた。
しかし今年は、明智の妹、小春の入学によって、難題であった『明智レシピの再現』問題が解消された。
そのため、メニューの増加が可能になり、ボランティアが来て賑やかになり、家庭科部は活気に溢れていた。
☆中庭☆
青空のもと、中庭の芝生の上に張ったテントの下。
ホコリ避けに施されたビニールシートでぐるりと囲まれたオープンキッチン。
小春は先輩たちから贈られた特製の給食係の服(本人命名)を着て、朝から黙々と野菜を切っていた。
学校指定のジャージに白いスモック、胸に「小春」の大きな刺繍。頭には白いベレー帽。
小学生のような出で立ちに虹色のゴーグルと白いマスクを着け、物凄い速さと正確さで玉ねぎを刻んでゆくその姿は、鬼気迫るものさえある。
紅花
「こーはるちゃん♪」
小春
「あ、紅花ちゃん」
聞き覚えのある声に、小春は手を止めた。
ビニールシート越しに笑顔で手を振っているのは、右手にハンディタイプのビデオカメラを構えた、広報委員の紅花。
紅花
「それ、スキー用のゴーグル?小春ちゃん、相変わらず面白いねえ」
小春
「たくさん玉ねぎ切る時、これいいんだよ」
小春は虹色のゴーグルを上げ、マスクを指で引き下げた。
紅花
「花粉症用のゴーグルの方が、透明でいいんじゃない?」
小春
「そんなのあるの?今度試してみる」
紅花はテントの中を映すように、ゆっくりとカメラを動かしている。
簡易な厨房の脇には調理器具が整然と並べられ、出来た料理を置く為にかL字型に設置されたテーブル、後ろには冷蔵庫まである。
紅花
「まーくん……じゃなくて、明智先生は?」
小春
「家庭科室。先輩たちが焼いてくれるパンや、お菓子の監督をしながら、カレー仕上げてるの」
紅花
「『伝説の』カレーだね。で、小春ちゃんはここで、パスタやサラダを作るんだ」
小春
「うん。ミートソースとナポリタン、先輩たちが焼いてくれるパンを使ったクラブハウスサンドと照り焼きバーガー、あとサラダ。全部、一から手作りだから美味しいよ」
料理の話をする小春は、さっき赤ん坊のような寝顔を見せていた少女と同一人物とは思えない。
紅花
「頑張ってね」
小春
「うん、ありがとう。出来上がったら、紅花ちゃんの分のサンドイッチお取り置きしておくからね」
紅花
「やった!」
紅花は手を振る小春に別れを告げ、次の取材に向かうのだった。
紅花を見送った時、小春の携帯から、メール着信音の『春の小川』(←本当)が鳴った。
小春は携帯を開いてメールを開け、思わず微笑んだ。
そこには小春の編みぐるみを抱いてちょっと恥ずかしそうに、そして嬉しそうに笑う翼の可愛い笑顔が咲いていたからだ。
写真を待受に保存した小春は、ひとり微笑みながら、マスクを上げゴーグルを装着し、再び、物凄い速さで玉ねぎを刻み始めた。
[削除]
10/16(Wed) 12:25
ともさんのお父さんはダンディなのか(* ̄ー ̄)
小春
身内登場なら、うちも振っとく(笑)
☆家庭科室☆
明智
「うん、上手にパンズが焼けたじゃないか」
家庭科部員A
「ありがとうございます!」
明智
「これなら、美味い照り焼きバーガーが出来るぞ。数が揃ったら、中庭のオープンキッチンの小春の所に運んでやってくれ」
家庭科部員
「はい!」
家庭科部員
「先生、クッキーの試食もお願いします」
明智
「分かった」
その時。明智の携帯から、映画『JAWS』で巨大人喰いザメの現れる時に鳴る、あの音楽が流れ始めた。
大袈裟にではなく、明智の身体が30cmほど飛び上がった。
そんな電話なら出なければいいはずなのだが、明智はすぐに部屋の隅にくっつき、通話口を手で押さえながら電話に出る。
明智
「……はい」
???
『ま~さ~お~み~……』
受話器から聞こえてきたのは、地を這うような女の声。
???
『あんた、お姉ちゃんたちに学園祭の日程を秘密にして教えないとか、いい度胸ねえ……』
明智がぎくりと肩を震わせた。
明智
「……何故それを」
???
『うちの可愛い可愛い末っ子ちゃんが教えてくれたに決まってるでしょ!』
小春ーーー!!
明智は、声に出さずに妹にツッコむ。
???
『とにかくこれから行くからね。カレー用意して待ってなさい。……品切れしたら容赦しないわよ!』
ぶつっ、と一方的に電話が切れた。
明智
「……」
家庭科部員
「……先生?」
明智
「……だ」
家庭科部員
「え?」
明智
「カレーとパスタを30人前、いや、50人前ずつ追加だ!クッキーもケーキも材料のありったけ焼け!急げ!!」
[削除]
10/16(Wed) 14:31
そのころのジュン
ジュン
中庭の家庭科部の隣に赤い毛氈を引いた長椅子に囲まれたスペースが出来上がった。
今年の茶道部はお茶屋さんということで気楽に寄ってもらえるように野点形式である。
色とりどり、様々な着物を着た茶道部員は花を散らしたような雰囲気を醸し出す。
その中に明らかに異質な人物が二人いることには誰も突っ込まない……
ロバート
『ジュン、琴はここでいいの?』
ジュン
『ええ。ありがとうございます、ロバート先生。』
ポール
『楽しみねぇ。』
ジュン
『はい。お客さんがたくさん来てくださるといいんですけど……』
ロバート&ポール
『大丈夫よ!』
笑顔の二人に同じく笑顔を返したジュンのスマホが着信を告げる。
藤守
「ジュンか?今、空たちが来たで。後で
空とそっち行くからなぁ。」
賢史からの電話に頬が緩むジュンを見て微笑むロバートとポール。
ロバート
『本当にジュンはケンジが好きなのね。』
ポール
『ケイジもだけど、ケンジもイケメンだものね』
ジュン
『ええ。でも、賢史くんは私を妹くらいにしか思ってないから……』
ジュンはそう言って少し寂しげに微笑えんだ。
10/16(Wed) 15:36
こんにちは♪
くちびる
ともさんも同じ事思っていてくれて嬉しいです(笑)(*^^*)
紅花は明智兄妹が大好きなんですよ♪
翼ちゃんとも仲良しになれて嬉しいです!
引き続きよろしくお願いします。
[削除]
10/16(Wed) 21:19
その頃の穂積と小野瀬
小春
☆屋上☆
紅花の持ってきてくれたタブレットから送られて来る映像を見ながら、穂積と小野瀬は目を細め、時には感心した声を出し、そして、時には笑い転げていた。
文化部の生徒たちの展示や生き生きとした表情が素晴らしかったが、小野瀬のツボに入ったのはやっぱり小春。
寝起きで伸びをしてお腹とお臍を出す子猫のような仕草に画面を覗き込んで笑い、給食着にゴーグルを装着して野菜を切るインパクトにのけぞってはまた笑う。
屋上の床に転がって笑い続ける小野瀬の傍らで、穂積が目を奪われたのは、廊下で、紅花のカメラに向かってピースサインを出すともと、そのともに肩を抱かれて、楽しそうに笑う翼の笑顔だった。
良かった。
穂積は心の中でそっと呟いた。
昨日は驚かせてしまったかも知れないが、少なくとも、今日、この時は、友達と笑って過ごしている。
その事が、自分でも戸惑うほど、穂積を安堵させる。
そして同時に、そんな事に一喜一憂している自分に気付いて、納得出来ない思いに陥る。
翼を見るたびに感じる胸のざわめきを、この時も穂積は感じていた。
小野瀬が身体を起こした時には、映像は茶道部の部室に変わっていた。
頭の片隅では翼の事を考えながらも、昨夜も見たロバートとポールの振り袖姿に眉をひそめたり、対照的に、本格的なエミやジュンの和服姿に感心したりしながら見続けていると、穂積のポケットの携帯が震えた。
穂積
「?」
表示された発信者の名前は、小春。
穂積は、担任の生徒には携帯の番号を教えてある。
だが、小春からメールが来たのは初めてだった。
何だろう。
首を傾げながら開いた途端、添付されている画像が展開されて、穂積の目は釘付けになった。
穂積
「!」
それは、翼が編みぐるみを抱いて、愛らしい笑顔を見せている写真。
この時の穂積は知らなかったが、ともが撮影して、紅花と、小春に送ってくれた写真だった。
小春がそれを転送してきたのだ。
件名は無い。
穂積は写真に添えられた文面に、息を飲んだ。
『応援します』
本文には、そう、書かれていた。
そして、次の行を読んだ時、穂積は目を見開いた。
『応援しますから、卒業まではみんなの先生でいてください』
頭を殴られたような衝撃だった。
穂積
(……!)
いつの間にか、小野瀬が、隣から穂積の携帯の画面を見つめていた。
小野瀬
「……」
小野瀬も薄々気付いてはいた。
気付いてはいたが、まさか、という思いもあった。
そして、男同士だから、教師だから、大人だから、あえて口に出さずに今日まできたのだ。
けれど、小春は生徒で、女の子で、まだ本当に幼くて……だからこそ、その純粋な目には全てが見えていたのだろう。
見て、そして訴えてきた。
小春からのメールは、ずっとざわめき続けていた穂積の胸の内の波を鎮めた。
穂積
「……ったく、何してんだよ、俺」
苦笑いとともに吐き出す。
いつかと同じ呟きは、けれど、もう、その時と同じ呟きではなかった。
10/17(Thu) 00:30
小春ちゃん、思いのほか早く気がついていたのね(笑)
清香
☆屋上☆
胸の中に渦巻いていた云いようの無い想いが『すとん』と納まるべきところに納まった。
その事だけで爽快感さえ湧きあがってくる。
(…俺、櫻井が好きなんだ)
教師である自分が生徒を好きになる、だなんて考えてもいなかった。
みんな同じように可愛くて、同じように厳しく接していたつもりだった。
それがこんなにもいともあっさり覆されるだなんて。
アイツを気にしてしまうのは、転校してきたばかりだから。
特別に補習をするのは、勉強について来れないと可哀そうだから。
生徒会に入れたのは、学校を好きになって貰うためだから。
『全ては彼女の学園生活を楽しいものにする』と言い訳をしながらも、無意識なのか自分の眼の届く範囲に置いていた自分の身勝手さに、そして震える彼女に反射的にキスをしてしまった節操のなさに気がつく。
穂積
「あはは、ははっ。」
これはもう、笑うっきゃないだろ。
30のおっさんが指摘されて恋心を自覚するなんて。
小野瀬
「どうした、穂積。とうとうおかしくなったか?」
何かを感じたようだが、いつも通りに静かな声で話しかける小野瀬が隣にいてくれてよかったと素直に想う。
穂積
「…何でもねぇよ。」
小野瀬
「そうか?」
穏やかに笑う小野瀬の横顔を見てから空を見ると、ゆっくりと雲が流れて行く。
そして『サァ』っと吹いた風が金木犀の甘い香りを屋上まで運んできた。
(今頃、楽しそうに笑ってんのかな。)
一緒に笑いたくても出来ないもどかしさを決して表に出さないよう、胸の奥に押し込めていたのに。
穂積
「……下、行きてえなぁ。」
金木犀の香りが抱きしめた時に漂った翼の髪の香りのようで、思わず本音が漏れる。
内心『しまった!』っと思いながらも隣にいる小野瀬に聞こえていないよう願って、そっと窺って見ると。
小野瀬
「………送信っと。」
何やらメールを送っていたのか、スマホをポケットに仕舞いながらニコリと笑う小野瀬と目が合った。
小野瀬
「ん?なぁに?」
穂積
「………何でもねぇよ。」
小野瀬
「お前、今日はそればっかりだな。」
穂積
「うるせぇ。」
図星を突かれた気まずさを隠すように小突くと、小野瀬は笑いながらゴロリと横になった。
小野瀬
「そう思っているのは、お前だけじゃないよ。」
穂積
「…なんだよ、それ。」
小野瀬
「まぁ、もうちょっと待ってろって。時期を見るんだ。」
ポンポンっと横を叩かれ同じように寝転ぶと、さっきまで浮かんでいた雲はどこかへ行ってしまったのだろうか。
真っ青な秋の空が視界を支配していく。
眩しすぎて閉じた瞼の奥に映ったのは、彼女の笑顔だけだった。