『アブナイ☆恋の学園物語』
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01/06(Mon) 11:11
☆ごあいさつ☆
小春
おかげさまで、リレーSSスレも16です。ありがとうございます。
こちらのスレッドでは、ただいま、『アブナイ☆恋の学園物語』を開催中です。
桜田門学園高校に転入してきた櫻井翼が、超イケメンな先生方や個性的な生徒たちと繰り広げる大河ラブコメディ!
皆様ふるってご参加下さいませ(´∇`)
~ここまでのあらすじ~
楽しい学園祭『桜祭』もついに後夜祭のラストダンスを迎える。
それぞれ意中のパートナーと祭の余韻に浸りながら夢のようなひととき……と思いきや、桜田門学園のイベントは、やっぱりただでは終わらない?!
登場人物たちの恋とリレーの行方はどうなる?!のスレッド16、スタート!
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01/07(Tue) 05:43
☆~二曲目と三曲目の間、小春ととも父~☆
小春
二曲目と三曲目の間。
次のパートナーを選んだり移動したりするために、曲と曲との間には、毎回、数分の余裕がある。
先程の男子たちの密かな会話を聞いてしまって、眉をひそめていたとも父の前を、トイレにでも行ってきたのか、小春が、一人で、ひょこひょこ通った。
男子生徒
「小春ちゃん、照り焼きバーガー美味かったよー」
小春
「ありがとうございます。お口に合って良かったです」
男子生徒
「次は誰と踊るの?」
小春
「私、次もまた翼ちゃんと踊ります」
男子生徒
「ラストダンスは誰と踊るかもう決めたー?」
小春
「いえ、だって……」
とも父
「おうい、小春ちゃん!」
思わず声を掛けてしまったとも父の声に、振り向いた小春が、笑顔になって駆け寄って来た。
小春
「ともちゃんのお父さん!ミスターコンテスト入賞おめでとうございます」
床に座っているとも父の手前でぴたりと止まり、小春はぺこりと頭を下げた。
とも父
「あ、おおきに。いや、それはええんやけどな。まだ、最後の相手が決まってへんてほんまか?」
小春はぽっと頬を染めた。
小春
「はい。だって、誰からも誘われてないですもん」
この子は鋭いのか鈍いのか。
とも父は文化祭から小春を見ているが、小春は美形の兄姉を持っているおかげで、将来性に期待されている。
特にギャルソンだった男子生徒たちからは、とも父の知る限りでも、そこそこ本気でアプローチされているのだが。
どうやら、小春本人は、それら男子たちからのアプローチは全部「親切」か「冗談」だと思っているようだ。
しかし、とも父は、なぜ、小春と翼が誰からも誘われないのか、その本当の理由を知っている。
それは、二人に近付こうとする男子生徒がいると、明智と小野瀬、そして穂積が物凄い形相で相手を睨んで、無言のうちに追い払ってしまうからだ。
しかし、とも父は、順位発表の後、舞台裏で小野瀬が空間に声を掛けていたのを知っている。
明智は最後まで篠崎と踊るのは間違いないだろう。
翼は穂積が誘っていたし。
このままでは、小春は相手がいないままラストダンスを迎えてしまうのではないか。
大きなお世話かもしれないが、この後の企てを知っているとも父からしたら、なんとも心配だった。
とも父
「小春ちゃんは、好きな男はいてへんのか?あの、アンドロメダとか、化学部のなんたらとか……」
小春
「みんなお友達です。あ、じゃあ、最後は、みんなで輪になって踊ろうかな?」
とも父
「そうやのおて……」
翼
「小春ちゃーん」
少し離れた場所から、翼が小春を呼んでいる。
小春
「あ!翼ちゃんが探してる。すみません、ともちゃんのお父さん、失礼します。最後まで楽しんでって下さいね!」
もう一度お辞儀をした後、小春は手を振りながら去って行く。
とも父は力無く小春に手を振り返しながら、溜め息をついた。
とも父
「……なんて、危なっかしいお子や……」
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01/07(Tue) 08:44
とも父は何でも知って
とも
☆ダンスパーティー・とも親子☆
小春が翼の元へと向かったのと入れ替わるように、今度はともがとも父のところへやってきた。
とも
「あれ、おとんはもう踊らへんの?」
とも父
「あぁ、今は休憩や。ロバートとポールも俺とばっかり踊るの退屈やろうから、他に行ってこいて言うたんや」
とも父の視線の先にはNYベアーズがアニを追いかけている姿があった。
とももそれを見ながら笑っている。
とも父
「それよりお前は何しに来てん? 如月くんに愛想つかされたか?」
とも
「はぁ?そんなわけないやん。楽しく踊ってるで。次の曲が始まるまで、藤守先輩のとこに行ってくるって、なんや難しい顔して行ってしもたから」
とも父
「…そうか」
とも
「?」
今のともの話だと、如月も例の事を知って、生徒会長の藤守のところに相談に行ったようだ。
生徒会が動いてるなら安心だ。何か対策を立てるだろう。
とも父
「…ま、ウチに関しては心配は無用やろうけどなぁ。いろんな意味で」
とも
「…何をブツブツ言うてるん? ヘンなの」
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01/07(Tue) 11:21
アニとジュン&NYベアーズ
ジュン
藤守が如月たちと作戦を練っている間、ジュンは一人で壁のそばにある椅子に座っていた。周りには男子生徒が集まり口々にダンスに誘う。
藤守アニ
「なんだ?賢史はどうした?」
そんなジュンに声をかけたのはアニだった。両腕にはNYベアーズをぶら下げている。
その異様な集団に周りにいた男子生徒たちは蜘蛛の子を散らすように去っていく。
ジュン
「生徒会の話があるって如月くんたちと向こうにいるよ。」
ダンスの誘いを断るのに苦労していたジュンはアニとベアーズの登場に笑顔を見せる。
ロバート
『お姫様をひとりにするなんて、ケンジはまだまだね。』
アニとベアーズは停電が起こることを知らなかった。ベアーズに追い回されていたこともあるが、アニに知られては絶対に阻止されてしまうだろうとアニに知られることがないよう三年男子が気を配っているからだ。
ポール
『ジュンはもうケンジとは踊らないの?』
藤守アニ
「そうなのか!?なら、俺と……」
ベアーズに捕まってしまいなんとか逃げたいアニはジュンにすがるような目を向けたが、ジュンは笑顔で首を振る。
ジュン
『今日はずっと一緒にいるって約束しましたから。』
アニの希望は打ち砕かれた……
このように何も知らないジュンたちはほのぼのした時間を過ごしていた。
01/07(Tue) 18:47
☆ダンスパーティー~空間と龍鬼~☆
小春
空間
「……はっ」
龍鬼
「お目覚めになりましたか」
体育館のステージの奥。
薄暗い場所の片隅で、横たわった空間を龍鬼が心配そうに見下ろしている。
空間
「……龍鬼さん」
龍鬼
「空間センパイ、小野瀬先生にラストダンスに誘われた後、気を失ってしまわれたのです」
空間
「……小野瀬先生は?」
龍鬼
「小春さんとのダンスを終えた後、二曲目は誰とも踊らず、赤組の生徒たちと談笑しています」
龍鬼は空間にタブレットの画面を見せた。
画面中央に、リアルタイムの映像らしい小野瀬の姿が映っている。
空間
「……これは」
龍鬼
「自作の小型カメラ『何でも撮っちゃうくん』からの映像です。前に小春さんをいじめてたアオイストたちに、秘密で張り付けてあるのです」
空間
「するとこれは、小野瀬先生のファンの女の子目線からの映像……」
龍鬼
「もちろん、体育館内に無数のカメラを設置してあります。私、実はメカに強いのです」
空間は、起き上がるとがっちり龍鬼の手を握り締めた。
空間
「使えるわね、龍鬼さん!」
龍鬼
「恐れ入ります」
龍鬼がついていてくれれば、穂積と小野瀬のダンスはもちろん、自分と小野瀬の一世一代のチャンスを撮り逃す事はあるまい。
空間
「……わたくし、小野瀬先生からラストダンスに誘って頂いたの、夢じゃないのね?」
龍鬼が大きく頷く。
龍鬼
「その場面もしっかり録画しております」
空間
「龍鬼さん……」
龍鬼
「涙は禁物です、空間センパイ。小野瀬先生と踊るときに、心配させてしまいますよ」
空間
「はっ、そうね」
空間は込み上げるものを抑えて、ゆっくりと立ち上がった。
さあ。
これ以上、小野瀬先生の元を離れるわけにはいかないわ。
わたくしには、常に崇高な使命があるのだから。
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01/10(Fri) 03:14
もしかしてコレ待ちでした?
清香
☆ダンスパーティー・小野瀬と穂積☆
2曲目が静かに終わり紅花のインタビューを受け終わると、穂積は和音の手をそっと離して丁寧にお辞儀をした。
穂積
「楽しい時間をありがとう。」
和音
「こちらこそありがとうございます。こうして穂積先生と踊れて……最高の桜祭でした。」
穂積
「村崎と仲良くしなさいね。」
和音
「はい。」
『最後に』と交わした握手は僅かに触れるばかりのものだったが、掌にじんわりと残る温かさがどこか心地よかった。
村崎
「和音殿。」
迎えに来た村崎と共に手を繋いで再び踊ろうとする和音の姿を目でなんとなく追っていると。
小野瀬
「ほーづーみ。さぁ、次は俺の番だね。踊ろうか。」
穂積
「…って、何だよ!いきなり抱きつくな!腕に絡むな!!」
小野瀬
「なんだよ、いいじゃんか。」
小春と踊ったきり壁際で女子生徒と談笑していた小野瀬がいつの間にか傍に来ていたのだった。
小野瀬
「……藤守君や如月君も計画に気がついたらしい。……どうする?全てを生徒に任せるか?」
穂積の腕を引っ張り耳元で小さく話す小野瀬に、穂積は最初こそ嫌な顔を見せたが、内容が内容なので今はされるがままだ。
穂積
「学園の理念から考えればそうすべきなんだが……な。お前はどう思う?」
小野瀬
「出来るならばみんなを守りたいさ。でも、俺達が動くには人の目が多すぎる。ほぼ不可能と言ってもいいだろうな。」
『ラストダンスのパートナーしか守ることができない』という現実のもたらす歯がゆさに、小野瀬は唇を噛みしめる。
いつも柔らかく微笑まれている小野瀬の唇に白い歯が食い込むのを、穂積は初めて見た。
穂積
「小野瀬……。」
小野瀬
「…俺はラストダンスを空間さんと踊る。約束したからね。お前は櫻井さんとだろう?明智君は篠崎さんとだ。……その間に彼女に何かあると考えただけで……。」
視線の先を辿れば、楽しげに手を繋いで三曲目の開始を今か今かと待ちわびる翼と小春の姿があった。
色々と鈍いこの二人には、自分達の身に何かしらの危険が迫って来ている事など分かるはずもない。
むしろ欠片でも分かっていたのなら、自分達ももう少し気が楽だったのにと理不尽な恨み節さえ浮かんでくる。
小野瀬
「篠崎さんは誰かと踊っていた時も、後ろから体を触られたりしたそうだ。…そんなの誰がさせるものか。」
大事にしたいと願った少女だ。
恋をする事は叶わなくても、優しく見守ることを許されたのならば、その責務を全うしたい。
小野瀬の瞳がゆらゆらと揺れる。
穂積
「大丈夫だ、小野瀬。」
柔らかな旋律が流れると同時に、穂積は掴まれている腕をそのままに一歩足を前に出しながら小野瀬の耳元へと話しかけた。
小野瀬
「…うわっ。」
意識が穂積や流れている音へと向いていなかったせいか、バランスを崩しかけた小野瀬の背中を穂積が片手だけで支えようと手を伸ばす。
が、細身だがやはり小野瀬は男性だ。翼や小春などとは比べるまでもなく体も大きく、重い。
片手では不可能だ、このままでは二人とも転ぶ危険性がある、と穂積の本能が警鐘を鳴らす。
穂積
「…っ、と、悪い。大丈夫か?」
掴まれていた腕を解いて逆に自分から掴み、背中を支える事でどうにか小野瀬が転ぶのを防いだが。
小野瀬
「んっ、…あぁ。」
はたから見れば抱きしめるか押し倒す数秒手前の図にしか見えないだろう。
男女ならばそのままキスをしても可笑しくない距離に、どこか遠くでカメラのシャッターを切る音が聞こえる気がするが、あいにくと二人の耳には届いていない。
小野瀬
「なんかカッコ悪いな。…ありがとう。」
背中を穂積に支えられながら体勢を立て直した小野瀬は、どこか恥ずかしそうに穂積を目線だけで見上げた。
穂積
「んなもん気にしてんじゃねぇよ、バーカ。三曲目始まってるぞ。」
小野瀬
「あぁ。みんなが見てるから踊らないと。足踏むなよ?」
穂積
「お前こそ、次転びかけたら助けねぇからな?」
自然と繋がれた指の力の強さは、不安の象徴かもしれない。
皆、大事な人を守りたい。
大事な人が手の届く範囲にいるのなら、こうやって手を差し伸べて抱きしめればいい。
でも、人には手が二本しかない。
それに、片手で抱きしめられない時もある。
ならば、危険な『モノ』を排除するだけだ。
フンッと鼻で笑いながらも小野瀬の唇をうっすらと染める血のような赤さを目にし、穂積は出来うる限りの対策を執ろうと心に決める。
穂積
「…小野瀬」
そして小野瀬も耳元に落とされた穂積の話を聞き漏らすまいと、繋がれた手をギュッと握りしめながら脳内に会場の見取り図を開いたのだった。
→
業界用語で言うリバーシブルな空気にしてみました(爆笑)
01/10(Fri) 07:24
ソレ待ちの間に新サクラダモン書いてました(笑)
小春
清香さんありがとうございます。
こんなに小野瀬先生に愛してもらえて小春幸せ(∩*´∇`*)
業界用語でリバーシブルって……何の業界?Σ(´□`;)
☆ダンスパーティー~三曲目~☆
三曲目の注目は何と言っても穂積と小野瀬。
曲がかかる前は小野瀬の方が積極的だったが、最初のステップがふらついた瞬間から、穂積がリードし、小野瀬が女性側のステップを踏んでいる。
穂積自ら「美技」と言ったのは冗談だったはずだが、二人のダンスはまさに美技だった。
会場の視線は完全に二人に集まっていた。
「上手だねえ」
翼と小春も、手は繋ぎ合っているものの、ほとんどその場で曲に合わせて身体を前後に揺らしているだけのダンスで、穂積と小野瀬を見ていた。
二人の教師は、意外と真剣な顔で踊っている。
その表情の理由は他ならぬ翼と小春にあるのだが、二人の少女はもちろん知るよしもない。
翼
「踊る相手を探してる人が少なくなってきた気がするね」
不意に、翼が言った。
翼
「踊る人と見てる人に分かれてきたみたい」
小春
「本当だ。もう、みんな、最後までのパートナー決まったのかなあ」
翼
「小春ちゃん、ごめんね。私、穂積先生から、最後は戻って来るように、って言われてるの」
翼はすまなそうにそう言って謝ったが、小春はにこにこしている。
小春
「うん、私の事は気にしないで穂積先生と踊って。翼ちゃん、その為に練習したんだもんね」
翼は頬を染めた。
翼
「小春ちゃんはどうするの?」
小春
「私は……」
明智
「小春」
突然、翼と小春の元に、明智と篠崎のペアが寄ってきた。
ステップを踏みながら、篠崎が、挨拶がわりに小さく手を振る。
明智
「四曲目は俺と踊ろう。櫻井は篠崎先生とだ」
別に断る理由も無いけれど。
明智と篠崎からの急なパートナーチェンジの申し込みに、翼と小春は、揃って首を傾げた。
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01/10(Fri) 12:36
☆ダンスパーティー~山田ととも父~☆
小春
三曲目の音楽がかかると、如月がともを迎えに来て、とも父はまたフリーになった。
もじもじしながらダンスを申し込んでくれる女子生徒もいるが、娘と同じ年頃の女の子から顔を赤くして誘われても……。
などと思っていると。
山田
「ともさんのお父さん」
座っているとも父の前に、ひょい、と横から顔を出したのは、校長の山田。
長い髪がとも父の前で揺れる。
とも父
「あ、校長先生」
とも父は急いで立ち上がろうとする。
しかし、山田がとも父を制し、引っ張るようにして隣に座る方が早かった。
山田
「もう、ダンスはなさらないのですか?とてもお見事でしたのに」
肩が触れ合うほどの距離から、山田が小声で尋ねてきた。
とも父
「思いがけず参加させてもろて、もう、充分楽しませて頂きましたわ」
そうですか、と笑うと、山田は、さらにとも父に顔を近付ける。
何か、と問おうとしたとも父は、笑顔を消した山田の囁きに声を失った。
山田
「この後に起きる事をご存知ですよね」
とも父
「……!」
初めて見る山田の真顔に、とも父は緊張しながらも、周りに気付かれないように、小さく頷いた。
自分は門外漢だ。
何が起きようとこの学校のやり方に口を出すな、と言われるのかと思って、とも父は山田を見据えた。
が、それはとも父の杞憂であったようだ。
山田はあっという間に笑顔に戻ると、「ではご一緒に」などと適当な事を言いながら、とも父を促して立ち上がる。
それでいながら、体育館の扉から出る前には、山田は、とも父への内緒話を終わらせていた。
山田
「ご協力をお願い出来ますか」
とも父としても、度が過ぎたいたずらになることを心配していたところだ。
とも父
「取り越し苦労になるよう願ってますわ」
山田
「おっしゃる通りです」
会場では穂積と小野瀬が踊っている。
二つ返事で引き受けたとも父と共に出て行く山田を追うような物好きは、誰もいなかった。
[削除]
01/10(Fri) 21:20
久々によだれ出ちゃう
ジュン
清香さん、さすがです!
うっとり(*´ー`*)
先生方も停電対策に動き出しましたね。
どうなるのか楽しみですねo(^o^)o
01/11(Sat) 06:21
おはようございます(´`)ノシ
小春
☆ダンスパーティー~ジュンとともと紅花~☆
ジュン
「賢史くん、何かあったの?」
如月、小笠原と話をした藤守が戻って来た。
三曲目には充分間に合うタイミングだったが、藤守の顔色が悪い事に気付いてジュンが尋ねる。
藤守
「ん、何でもないで」
ジュン
「でも、顔色が……」
ジュンに知らせるわけにはいかない。
停電を避ける策が見つからない以上、ただ不安にさせるだけだからだ。
藤守は苦笑いしてみせた。
藤守
「ジュンがあんまりモテてるから、心配になっただけや!お前、たったあれだけ離れただけで、何人にダンス申し込まれてんねん!」
藤守の抗議はわざとらしかったが、内容が事実なだけに、ジュンは顔を赤くして反論する。
ジュン
「だって、それは、賢史くんが傍にいなかったから……!私、賢史くん以外の人に誘われて、困ってたんだから……!」
泣き虫のジュンは、それだけ声に出しただけでもう涙ぐんでいる。
もとより、藤守にジュンを責める気持ちはない。
藤守
「ああ、そんなんで泣くなや。悪かったて。ミスコン三位やもんな、誘われて当然や。俺が、気をつけてやらなあかんかった」
ジュン
「……どうやって断ればいいのか分からなくて、慶史兄ちゃんが追い払ってくれるまで、本当に困ってたんだから……」
涙声で訴えて、ジュンは藤守に身を寄せる。
敵わんなあ。
これではやっぱり一人にはさせられない。
音楽に合わせてジュンと踊り出しながら、藤守は、誰にも気付かれないように溜め息をついた。
とも
「如月先輩、何があったんですか?」
戻って来た如月に、ともは単刀直入に訊いた。
如月
「えっ何が?」
明智や藤守と比べたら、如月の演技力はランクが数段上だ。
しかし、ともの目はごまかせない。
とも
「……ふーん……」
如月
「……と、ともちゃん、曲が始まってるよ?」
如月は笑顔でともと組もうとするが、ともは腕組みしたまま手を出さない。
とも
「私には言えない事ですか?」
にっこり笑う。
如月
「……」
如月は悩んだ。
この笑顔を見せる時、ともはもう半ば真実を掴んでいる。
つまりそれは、如月が嘘を言えば見抜かれるという事で。
今も、おそらくまだ停電の企みは知らずにいるだろう。
が、「何か変だ」という事と、「如月が何かを隠している」事には気付いている。
しかも、ジュンや紅花と違って、ともは生徒会役員だ。
とも本人も、狙われる対象の一人でもある。
いっそ打ち明けてしまおうか。
でも……
とも
「分かりました、如月先輩を信じます」
如月
「え?」
如月の顔色を見つめていたともは、不意にそう言うと、如月の手をとってダンスを再開した。
とも
「如月先輩が言えないのは、きっと、私を巻き込むのを躊躇してるからですよね。……さっき、お父んも同じ顔をしてました」
如月
「ともちゃん……」
ともが、如月を見つめていた。
その顔に、如月は意を決した。
如月
「……実はね……」
小笠原が会場に戻ると、紅花の方から駆け寄って来た。
紅花
「小笠原先輩、体調良くなったんですか?」
身長差20cmから紅花が見上げて来る。
紅花
「でもまだ顔色が悪いかなあ」
小笠原
「……取材は?」
紅花
「今、踊ってない生徒たちは、男女それぞれ全体の20%ってところでしょうか。女子はグラウンド側の壁際、男子は反対にステージ側の壁際にいます。微妙な入れ替わりはありますが、どうやらここにいる人たちは、最後まで踊らない人たちみたいですね」
小笠原
「……」
小笠原は紅花の言葉を確かめるように周りを見た。
紅花
「それとは別に、東西のバスケットゴールの下に男女がいますよね。あれは、この後のダンスの相手は決まっているけれど、相手が別の人と踊っている人たち。待機組ですね。あ、ほら。今、西のゴール下に空間センパイが来ましたよ」
小笠原
「……」
小笠原は昨年ダンスパーティーに参加していない。
紅花の分析は小笠原にも新鮮だった。
紅花
「でも、80%の男女はフロアで踊ってます。ダンスパーティーは成功ですね、先輩」
……このまま無事に終われば、だけどね。
そう思いながらも黙って頷きながら聞いていると、紅花は不意に声をひそめた。
紅花
「実はですね。私の気のせいかも知れませんけど、さっきから、男子がそわそわしてるように見えます。……小笠原先輩は……、どうかなあ。ポーカーフェイスだから分からないけど」
紅花は小笠原を見つめたまま呟き、それから笑った。
紅花
「あ、そろそろ三曲目が終わりますね。私また人気生徒のインタビューに行こうかな」
再びフロアに目を向けた紅花を、小笠原は手を掴んで引き止めた。
紅花はびっくりして振り返り、小笠原に掴まれた自分の手と、小笠原の顔とを見比べた。
小笠原
「行かないで」
縋るように言われて、紅花はきゅんとしてしまう。
小笠原
「僕と、ここにいてよ」
きゅーん。
紅花
「はい」
紅花は、小笠原の手を握り返していた。
01/11(Sat) 09:56
アニとベアーズ
ジュン
三曲目を(無理やり)ベアーズと躍りながら、アニは会場の様子に違和感を覚えていた。
パートナーがおらずに壁際にいる男子の様子が例年と違うのだ。例年なら俯きがちのそれらの男子がやけにそわそわと周りを見回している。
ロバート
『ケイジ?どうかしたの?』
アニ
『ああ、少し気になることがあってな。』
ポール
『難しい顔をしているわ。もっとダンスを楽しみましょう?』
ベアーズの二人は会場の違和感に気づいていない。しかし、毎年会場の雰囲気を見ていたアニは昔の記憶が甦る。
アニ
「これは、まずいかもしれないな。」
ロバート
『なに?』
ポール
『どうかしたの?』
二人もアニのただならぬ様子に首をかしげる。
二人も教師だ。話しておくべきだろう。アニはベアーズの二人を抱き込むように顔を寄せ、気づいた可能性の話をした。
アニ
『実はな……』
生徒を守るのが教師の役目、しかも、今年は従妹のジュンもいる。泣かせるわけにはいかない。
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01/11(Sat) 10:33
おはようございます
とも
☆ダンスパーティー・如月、とも☆
3曲目を踊りながら、如月から一通り話を聞いたともはたちまち険しい顔つきになった。
とも
「一部の男子のせいで桜祭が台無しになるやなんて、絶対許さへん!」
如月
「オレたちも同じだよ。だけど、昨年はそんな事は起こらなかったから、正直どうなるのか予想はつかないんだ。さっきも事前に防げる方法がないか、藤守会長と小笠原さんに相談に行ってたんだ」
周りに聞こえないように小声で話しているため、少しずつお互いが寄り添っているのが、近くで踊っている生徒たちには2人が更にいい雰囲気になっているように見えた。
男子生徒
「あの2人、なんかラブラブだな」
女子生徒
「ホント、盛り上がってて、周りが見えてないかんじ? うらやましい~」
穂積
「如月」
あれこれ2人が対策を考えていると、穂積と小野瀬が踊りながら近づいてきた。
如月
「穂積先生!」
如月の顔つきを見た穂積は彼らもまた、同じ事を考えていると瞬時に察した。
穂積
「大丈夫だ、俺たちも協力するから」
小野瀬
「そうだよ、ともさんも。今はダンスをめいっぱい楽しまなくちゃ」
強張ったともの顔を見た小野瀬も、少しでも気を紛らわせようと微笑みながら声をかける。
穂積
「必ず、楽しい桜祭で終わらせような」
01/11(Sat) 13:55
☆ダンスパーティー~会議中~☆
小春
穂積と小野瀬、如月とともは、付かず離れずに踊りながら、ひそひそと話を続けていた。
如月
「こうして見ると、一応、ミスコン入賞者は全員、ラストダンスのパートナーが決まってますね」
とも
「体育祭の女神も大丈夫そうですよ。ibu先輩は、踊ってはいませんけど、さっきからアンドロメダ先輩と二人で、いい雰囲気で話してます。千春先輩は鳥山先生と踊ってますし」
穂積、小野瀬
「えっ」
ともの指摘に、穂積と小野瀬は驚いて鳥山を探した。
ひときわ目立つ長身は、間違いなく二曲目まではいなかった。
遅れて到着してもう踊っているとは、トリン恐るべし。
穂積
「あいつは何故いつも遅れて登場するんだ」
小野瀬
「特撮ヒーローみたいだね」
如月が咳払いをした。
如月
「壁際の、踊らない女子たちの傍には、理事長とジョーさんがいますけど……」
穂積
「……あの辺りは生徒より理事長が心配だな」
小野瀬
「ジョーさんは、ある意味男子よりアブナイかもしれないね」
穂積
「踊らない女子たちの所には、壁としてロバートかポールを配置するか?」
とも
「でも、肝心の、実行犯の男子の方はどうします?」
小野瀬
「校長先生に監視を頼もうかと思ってたけど、いつの間にかいない。……となると、やっぱり、ストッパーになるのはアニ先生かな」
藤守
「アニキの場合、せっかくの雰囲気を凍りつかせてぶち壊しにせんとええけど」
突然、すぐ近くから藤守の声が加わった。
全員が驚いて声の方向を確かめると、藤守と、手を繋いで怯えているジュンの姿が目に入った。
ジュン
「……だいたいの事情は分かりました」
藤守
「実態のはっきりしない実行犯を止めるより、標的になりそうな女子を守る手段を考える方が確実や」
生徒会長の藤守の言葉に、全員が頷く。
藤守
「自分のパートナーを守るのは大前提やけど。フロアにいる女子全員に気を配らなあかん」
小野瀬が大きく頷いている。
藤守
「四曲目を踊り終えて、待機組と入れ替わった直後が危ないんちゃうか?つまり、フリーの女子がまだ近くにいて、ラストダンスの相手が確定した頃や」
穂積
「確かに。実行犯たちからしたら、ラストダンスを最後まで踊らせる必要はないわね」
「ひどい」
「みんな楽しみにしてるのに……」
ジュンもともも憤慨している。
如月
「停電すると音楽も消えるのかな。それによって、パニックの度合いも違うと思うけど」
小野瀬
「念のため、小笠原くんに頼んで、停電しても対応出来るよう、ノートPCの音源からの出力に切り替えておく方がいいね」
如月
「頼んでおきます」
藤守
「確かにパニックは怖いな」
穂積は、暗転した舞台で震えていた翼や、夜の廊下で手を握り締めてきた小春を思い出していた。
穂積
「そうね。まずは落ち着く事、落ち着かせる事。それに尽きるわね。混乱は相手の思うつぼよ」
まもなく、三曲目が終わろうとしていた。
01/11(Sat) 22:25
どうも(笑)(*^^*)
くちびる
こんばんわです(笑)
イヤン....小笠原先輩可愛い(*^^*)
母性本能くすぐられまくりです(笑)
紅花、完全にノックアウトしちゃいました!
みなさまなかなか参加出来ないにもかかわらず紅花を登場させて頂きありがとうございます(笑)
時間のある時はいつも覗きl(^-^ゞに来てますよ♪明後日は休みなのでまた遊びに来ますねぇ♪
明日朝早いので、ではまたm(__)m
01/12(Sun) 12:35
☆四曲目~明智兄妹~☆
小春
ダンスパーティー四曲目は、ラストダンスが近いせいもあってか、三曲目と同じパートナーと踊るペアが目立つ。
先ほど公言していた村崎と和音はもちろん、藤守とジュン、如月ととも。
穂積と小野瀬もそのままだ。
そんな中で、パートナーチェンジした明智と小春の兄妹ペアは、なにやら不穏な雰囲気で踊り始めていた。
明智
「……」
小春
「……」
明智
「……怒ってるか?」
小春
「怒ってない」
小春は下を向いたまま、ふるふる首を横に振る。
明智
「やっぱり怒ってる?」
小春
「怒ってない」
明智
「それなら顔を上げてくれ。でないと、俺、お前のつむじしか見えない」
小春
「……ちっちゃくてごめん」
小春が両手でつむじを隠す。
明智は長身を屈めて、小春の顔を覗き込むようにした。
明智
「……悪かった、謝る。学園祭で疲れてるのに遅くまでダンスの練習に付き合わせた事も、それなのにお前をないがしろにした事も、小野瀬先生と仲良くしてるのを邪魔した事も」
それでも小春は顔を上げない。
明智は途方に暮れる。
明智
「小春……小春、何か言ってくれ」
小春
「本当に、怒ってない」
小春はそう言うと、再び小春の手を握る明智の胸の前で、すん、と小さく鼻を鳴らした。
明智
「小春?」
小春
「篠崎先生の匂いがする」
明智はぎくりとした。
小春
「お兄ちゃんとダンスの練習してる時、私、楽しかった。練習のおかげで、今日、小野瀬先生にも褒めてもらえたし」
下を向いて、小声でぽつぽつと呟く小春の言葉は聞き取りづらい。
明智は耳を澄ませた。
小春
「でも、お兄ちゃんと踊るのは私じゃないの」
音楽が遠ざかり、明智の研ぎ澄まされた耳には、小春の声しか聞こえなくなってくる。
小春
「この場所はもう、私だけの場所じゃないの」
ぞくりとした。
明智は、自分の腕の中で、小春が消えてしまうのではないかと思った。
小春
「その事が、悲しい」
明智
「小春……」
小春
「悲しくて、たまらない」
素直で、聞き分けが良くて、いつも自分の後を追い掛けてきた、可愛い妹。
お兄ちゃんがいれば、お父さんがいなくても、お母さんに会えなくても悲しくない、と言った、小さな妹。
その妹が、目の前で、声を震わせている。
悲しい、と。
明智は反射的に、小春を抱く手に力を込めた。
明智
「お前は俺の妹だ。いつまでだって、ここにいていいんだ」
小春は顔を上げると、首を横に振った。
小春
「妹だから、だめなんだよ」
小春の目から、堪えていた涙がぽろぽろとこぼれて落ちる。
穂積と小野瀬がぎょっとした表情を明智に向けて、二人揃って「泣かすな!」と唇を動かしながら睨んでくるが、当然、明智だって泣かせたいわけではない。
停電に用心するように言うつもりだったのに。
出来る事なら、篠崎と共に守るつもりだったのに。
小春が腕からすり抜けてゆく。
もうじき曲が終わる。
明智は小春を見失った。
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01/12(Sun) 13:25
翼と篠崎
ジュン
翼
「そういうことでしたか……」
篠崎
「ごめんなさいね。急にパートナーのチェンジだなんて驚いたでしょう?」
篠崎は翼に停電のことを話していた。
生徒会のメンバーであるため知らせておいた方がいいだろうとの判断だ。
翼
「いえ、知らない方がきっと驚いたと思いますから。」
意外にも翼は停電のことを聞いても怯えることもなくシャンとしていた。
翼はラストダンスは穂積と踊ることが決まっている。それが心の中で安堵感を生んでいるのだろう。
篠崎
「穂積くんの側を離れないようにしてね。」
翼
「先生も……」
お互いが顔を見合わせて微笑んだとき、翼の視界に小春が横切った。
明智の側を離れてどこかにいってしまう。その横顔が泣いているように見える。
翼
「篠崎、すみません。」
翼は篠崎に頭を下げると小春のあとを追いかけるように走っていった……
書いてみましたが、後が繋がるかしら(;>_<;)
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01/13(Mon) 07:10
ジュンさん、ありがとうございますm(__)m
小春
☆四曲目~終了まで~☆
翼が見つけた時、小春は、体育館の外の水飲み場で顔を洗っていた。
ダンスパーティーが行われている体育館の中は明るく、大勢の生徒や教師がいたが、外はもう日が暮れかけて薄暗い。
翼は少し離れた場所で、気付かれないようにしながら、小春が落ち着くのを待った。
小春は心配性のくせに、自分が心配されるのを嫌がる。
今の翼には小春が泣いていた理由が分からないけれど、きっとあのハンカチをしまうまで待てば、小春は、いつものように「大丈夫だよ」と笑顔を返してくれるに違いない。
体育館の中では、まだ四曲目の音楽が続いている。
篠崎先生の言葉通りなら、停電するまでまだ間があるはずだ。
それまでには、小春を連れて穂積先生の所に帰れるだろう。
小野瀬
「(小声)明智くん、小春さんに何をしたんだ?!」
明智
「(小声)いや、自分は、ただ小春に謝ろうと……」
穂積
「(小声)停電の話は?」
明智
「(小声)……まだです」
穂積と小野瀬に代わる代わる詰問されるのを、明智のパートナーに戻った篠崎が、まあまあととりなす。
篠崎
「(小声)ひとまず、櫻井さんが連れ戻しに行ってくれたから。私たちがあまり騒ぐと、大ごとになるわ」
小野瀬
「(小声)俺たちの目の届かない所で、何かあったらどうする!」
明智
「(小声)……すみません……」
穂積
「(小声)落ち着け、小野瀬。俺が行く」
小野瀬は、次には空間と踊る約束がある。
他の教員や生徒会役員たちにも、秘密裏にそれぞれ役割を与えたところだ。
パートナーが不在で身軽なのは、なんと穂積だけだった。
穂積
「(小声)この曲が終われば、ラストダンスの準備だ。目立たないよう、その間に抜け出す。お前たちは中を頼むぞ」
全員
「(小声)……了解」
四曲目の音楽がフェイドアウトして、徐々に聞こえなくなる。
藤守
「ジュン、俺から離れるなや」
五曲目に備えてジュンを引き寄せながら、体育館の中を見渡して藤守は身構えた。
明らかに人が多い。
ジュン
「うん」
とも
「如月先輩、あれ」
ともが目線で示した先では、ステージに近い場所にたむろしていた男子たちが、急に散り散りになって、慌ただしく動き出していた。
そんな場所に用は無いはずなのに、ステージの奥へ入ってみたり。
パートナーを連れずにフロアに入ってきて、女子の近くでうろついてみたり。
品定めするように、談笑する女子の方をじっと見つめてみたり。
何も知らずにパートナーの入れ代わりをしている生徒たちの混雑に紛れて、興奮した顔の男子たちがフロアを行き来する。
如月とともは互いの手を握り締めながら、顔を見合わせた。
如月
「ヤバいね」
ともはもうムカムカしている。
体育館の隅。
紅花の傍らで、小笠原は誰かに電話をかけている。
紅花は周りの雰囲気が急に変化した事に何となく不安を感じながらも、小笠原に寄り添うようにして立っていた。
小笠原に言われた通り、壁を背にしていると、電話を終えた小笠原が、紅花の肩に手を置いてくれた。
小笠原
「俺はみんなの為に戦うヒーローにはなれないけど……きみだけなら守れると思う……たぶん」
紅花はにこりと笑った。
紅花
「はい。私だけのヒーローでいてください」
穂積と別れた小野瀬は、空間の元に来ていた。
アオイストたちが羨望の眼差しで見つめる中、小野瀬の前で、空間はいつものようにガチガチに緊張している。
その表情を見て、小野瀬の気持ちは逆に平静を取り戻してゆく。
この少女もまた、小野瀬にとって、傷つけてはいけない宝石だった。
何年間も、自分だけを見つめてきてくれた少女。
他の男の勝手にはさせない。
小野瀬は、遠巻きに周りでうろついている男子を牽制するように一瞥してから、空間にとびきりの笑顔を向けた。
小野瀬
「空間さん、お待たせしてごめんね。迎えに来たよ」
01/14(Tue) 00:12
エミ
☆ダンスパーティー・四曲目~理事長~☆
多くの人々の注目を集める穂積&小野瀬ペアを、黒柳は壁際から眺めながら、遠い昔の事を思い出していた。
エミは桜田門学園の出身ではない。
ある日、伯母である先代の理事長のお遣いで初めて学園を訪れた。
その時、これまた偶然居合わせた他校の男子二人組に絡まれてしまった。
「イイ声をした赤い髪の不届き野郎が剣道部にいるはずだから案内しろ」と言う。
剣道部もなにも、自分だって初めて来たのだから知るはずがない。たとえ知っていたとしても案内するような相手でもない。彼らの言い分を聞くと、単なるフラれた腹いせだとわかった。
押し問答の末、目的の人物を呼び出す為の人質にされそうになったところで、グイッと腕を引かれ、エミは大きな背に隠された。
不逞の輩に対峙するその人は、悪魔か魔王が降臨したかのような圧倒的な威圧感で、耳を疑うような言葉を吐き、指をバキバキ鳴らす。
なんと!それだけで、招かれざる客は逃げていってしまったのだ。
(す、すごい!)
くるりと振り返ったその人は、綺麗な碧い瞳と美しい顔立ちをしていた。金色の髪が夕陽に照らされてキラキラ眩しい。
(…うわぁ……)
正義のヒーローのように強くて、物語の王子様みたいな人がこの世にいるなんて!
ところが。
「大丈夫か?」と背の低いエミの目線に合わせるように長身を屈めた王子様と、お礼を述べ頭を下げたエミのタイミングが合ってしまい、ゴッツンッッ!!!と派手に頭突きをしてしまった。
ひたすら謝るエミに、王子様は「気にするな」と笑って見送ってくれた。
その後、王子様の正体は生徒会長の穂積くんだと知る。それからずっと、穂積はエミの永遠の王子様だ。
理事長に就任して穂積と再会したが、あの時の事を穂積が覚えているか訊いた事は無い。できれば忘れていてもらいたいのが乙女心と云うもので。
ただ、王子様への想いは最初から恋愛感情とは違っていた。それは今も同じだ。
だから、王子様が誰と恋をしようが、ロリコンだろうが構わない。王子様が幸せなら、それでいい。
王子様のお相手は可愛らしいお姫様って相場が決まっているものだ。
ふと意識を現実に戻すと、四曲目が終わろうとしていた。
ノンビリした性格の黒柳にも、会場の空気が先ほどと違う事が分かる。
こんな時、いち早く事態を把握して、安心させてくれる山田の姿も見あたらない。
不安な気持ちがジワジワと広がるなか、ラストダンスが始まろうとしていた。
理事長……いじらしい・゜・(つД`)・゜・
小春
☆☆『停電』☆☆
その時は唐突に訪れた。
つまり、予想よりも早く。
まだ五曲目の音楽がかからないうちに起きた、『停電』。
手を繋ぎかけていた小野瀬は、咄嗟に空間を引き寄せて抱き締めた。
押し付けた胸から、空間の「むぎゅ」という声がする。
小野瀬
「空間さん、ごめん。じっとしてて」
小野瀬の声に、空間がかろうじて頷く。
が、思わぬ事態が起きた。
暗闇の中、小野瀬は誰かから背中に抱きつかれた。
反射的に叫びそうになったが、振り払おうとしてある事に気付く。
……背中に当たる、「女性」の感触。
それはさらに肩にも、なんと、抱いている空間越しにも。
シャツや髪を引っ張られ、いくつもの小さい手が身体じゅうを這い回るのを感じて、小野瀬は戦慄した。
小野瀬の周りは空間狙いの男子よりも速く、小野瀬狙いの女子に囲まれていたのだった。
停電は突然すぎて、エミはただ立ち尽くしていた。
とにかく目が慣れるまでじっとしていなくては。
けれど、そんなエミは不意に、誰かに抱き締められた。
制服の生地が頬を掠める。
生徒、と思った瞬間、その頬に柔らかい感触が押し付けられた。
……覚えのある感触。
『リジチョー……』
ビシッ。
『痛!』
キスと甘い囁きは、乾いた音と短い悲鳴で終わりを告げた。
同時に、ぐい、と腕を引かれる。
これもまた、覚えのある感触。
既視感に包まれるエミの耳に、思い出の中と同じ声が聞こえてきた。
穂積
「理事長、穂積です」
耳元で囁かれて、強張っていた身体の力が抜ける。
穂積
「櫻井と小春を探しに行くところです。ご一緒に」
ああ。
やっぱり、王子様はお姫様たちを助けに行くのね。
不思議と寂しさも嫉妬も感じない。
この人と行けるなら、喜んで白馬の役を務めましょう。
エミ
「はい」
エミは頷いて、穂積に手を引かれるまま、暗闇に駆け出していた。
☆ごあいさつ☆
小春
おかげさまで、リレーSSスレも16です。ありがとうございます。
こちらのスレッドでは、ただいま、『アブナイ☆恋の学園物語』を開催中です。
桜田門学園高校に転入してきた櫻井翼が、超イケメンな先生方や個性的な生徒たちと繰り広げる大河ラブコメディ!
皆様ふるってご参加下さいませ(´∇`)
~ここまでのあらすじ~
楽しい学園祭『桜祭』もついに後夜祭のラストダンスを迎える。
それぞれ意中のパートナーと祭の余韻に浸りながら夢のようなひととき……と思いきや、桜田門学園のイベントは、やっぱりただでは終わらない?!
登場人物たちの恋とリレーの行方はどうなる?!のスレッド16、スタート!
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01/07(Tue) 05:43
☆~二曲目と三曲目の間、小春ととも父~☆
小春
二曲目と三曲目の間。
次のパートナーを選んだり移動したりするために、曲と曲との間には、毎回、数分の余裕がある。
先程の男子たちの密かな会話を聞いてしまって、眉をひそめていたとも父の前を、トイレにでも行ってきたのか、小春が、一人で、ひょこひょこ通った。
男子生徒
「小春ちゃん、照り焼きバーガー美味かったよー」
小春
「ありがとうございます。お口に合って良かったです」
男子生徒
「次は誰と踊るの?」
小春
「私、次もまた翼ちゃんと踊ります」
男子生徒
「ラストダンスは誰と踊るかもう決めたー?」
小春
「いえ、だって……」
とも父
「おうい、小春ちゃん!」
思わず声を掛けてしまったとも父の声に、振り向いた小春が、笑顔になって駆け寄って来た。
小春
「ともちゃんのお父さん!ミスターコンテスト入賞おめでとうございます」
床に座っているとも父の手前でぴたりと止まり、小春はぺこりと頭を下げた。
とも父
「あ、おおきに。いや、それはええんやけどな。まだ、最後の相手が決まってへんてほんまか?」
小春はぽっと頬を染めた。
小春
「はい。だって、誰からも誘われてないですもん」
この子は鋭いのか鈍いのか。
とも父は文化祭から小春を見ているが、小春は美形の兄姉を持っているおかげで、将来性に期待されている。
特にギャルソンだった男子生徒たちからは、とも父の知る限りでも、そこそこ本気でアプローチされているのだが。
どうやら、小春本人は、それら男子たちからのアプローチは全部「親切」か「冗談」だと思っているようだ。
しかし、とも父は、なぜ、小春と翼が誰からも誘われないのか、その本当の理由を知っている。
それは、二人に近付こうとする男子生徒がいると、明智と小野瀬、そして穂積が物凄い形相で相手を睨んで、無言のうちに追い払ってしまうからだ。
しかし、とも父は、順位発表の後、舞台裏で小野瀬が空間に声を掛けていたのを知っている。
明智は最後まで篠崎と踊るのは間違いないだろう。
翼は穂積が誘っていたし。
このままでは、小春は相手がいないままラストダンスを迎えてしまうのではないか。
大きなお世話かもしれないが、この後の企てを知っているとも父からしたら、なんとも心配だった。
とも父
「小春ちゃんは、好きな男はいてへんのか?あの、アンドロメダとか、化学部のなんたらとか……」
小春
「みんなお友達です。あ、じゃあ、最後は、みんなで輪になって踊ろうかな?」
とも父
「そうやのおて……」
翼
「小春ちゃーん」
少し離れた場所から、翼が小春を呼んでいる。
小春
「あ!翼ちゃんが探してる。すみません、ともちゃんのお父さん、失礼します。最後まで楽しんでって下さいね!」
もう一度お辞儀をした後、小春は手を振りながら去って行く。
とも父は力無く小春に手を振り返しながら、溜め息をついた。
とも父
「……なんて、危なっかしいお子や……」
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01/07(Tue) 08:44
とも父は何でも知って
とも
☆ダンスパーティー・とも親子☆
小春が翼の元へと向かったのと入れ替わるように、今度はともがとも父のところへやってきた。
とも
「あれ、おとんはもう踊らへんの?」
とも父
「あぁ、今は休憩や。ロバートとポールも俺とばっかり踊るの退屈やろうから、他に行ってこいて言うたんや」
とも父の視線の先にはNYベアーズがアニを追いかけている姿があった。
とももそれを見ながら笑っている。
とも父
「それよりお前は何しに来てん? 如月くんに愛想つかされたか?」
とも
「はぁ?そんなわけないやん。楽しく踊ってるで。次の曲が始まるまで、藤守先輩のとこに行ってくるって、なんや難しい顔して行ってしもたから」
とも父
「…そうか」
とも
「?」
今のともの話だと、如月も例の事を知って、生徒会長の藤守のところに相談に行ったようだ。
生徒会が動いてるなら安心だ。何か対策を立てるだろう。
とも父
「…ま、ウチに関しては心配は無用やろうけどなぁ。いろんな意味で」
とも
「…何をブツブツ言うてるん? ヘンなの」
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01/07(Tue) 11:21
アニとジュン&NYベアーズ
ジュン
藤守が如月たちと作戦を練っている間、ジュンは一人で壁のそばにある椅子に座っていた。周りには男子生徒が集まり口々にダンスに誘う。
藤守アニ
「なんだ?賢史はどうした?」
そんなジュンに声をかけたのはアニだった。両腕にはNYベアーズをぶら下げている。
その異様な集団に周りにいた男子生徒たちは蜘蛛の子を散らすように去っていく。
ジュン
「生徒会の話があるって如月くんたちと向こうにいるよ。」
ダンスの誘いを断るのに苦労していたジュンはアニとベアーズの登場に笑顔を見せる。
ロバート
『お姫様をひとりにするなんて、ケンジはまだまだね。』
アニとベアーズは停電が起こることを知らなかった。ベアーズに追い回されていたこともあるが、アニに知られては絶対に阻止されてしまうだろうとアニに知られることがないよう三年男子が気を配っているからだ。
ポール
『ジュンはもうケンジとは踊らないの?』
藤守アニ
「そうなのか!?なら、俺と……」
ベアーズに捕まってしまいなんとか逃げたいアニはジュンにすがるような目を向けたが、ジュンは笑顔で首を振る。
ジュン
『今日はずっと一緒にいるって約束しましたから。』
アニの希望は打ち砕かれた……
このように何も知らないジュンたちはほのぼのした時間を過ごしていた。
01/07(Tue) 18:47
☆ダンスパーティー~空間と龍鬼~☆
小春
空間
「……はっ」
龍鬼
「お目覚めになりましたか」
体育館のステージの奥。
薄暗い場所の片隅で、横たわった空間を龍鬼が心配そうに見下ろしている。
空間
「……龍鬼さん」
龍鬼
「空間センパイ、小野瀬先生にラストダンスに誘われた後、気を失ってしまわれたのです」
空間
「……小野瀬先生は?」
龍鬼
「小春さんとのダンスを終えた後、二曲目は誰とも踊らず、赤組の生徒たちと談笑しています」
龍鬼は空間にタブレットの画面を見せた。
画面中央に、リアルタイムの映像らしい小野瀬の姿が映っている。
空間
「……これは」
龍鬼
「自作の小型カメラ『何でも撮っちゃうくん』からの映像です。前に小春さんをいじめてたアオイストたちに、秘密で張り付けてあるのです」
空間
「するとこれは、小野瀬先生のファンの女の子目線からの映像……」
龍鬼
「もちろん、体育館内に無数のカメラを設置してあります。私、実はメカに強いのです」
空間は、起き上がるとがっちり龍鬼の手を握り締めた。
空間
「使えるわね、龍鬼さん!」
龍鬼
「恐れ入ります」
龍鬼がついていてくれれば、穂積と小野瀬のダンスはもちろん、自分と小野瀬の一世一代のチャンスを撮り逃す事はあるまい。
空間
「……わたくし、小野瀬先生からラストダンスに誘って頂いたの、夢じゃないのね?」
龍鬼が大きく頷く。
龍鬼
「その場面もしっかり録画しております」
空間
「龍鬼さん……」
龍鬼
「涙は禁物です、空間センパイ。小野瀬先生と踊るときに、心配させてしまいますよ」
空間
「はっ、そうね」
空間は込み上げるものを抑えて、ゆっくりと立ち上がった。
さあ。
これ以上、小野瀬先生の元を離れるわけにはいかないわ。
わたくしには、常に崇高な使命があるのだから。
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01/10(Fri) 03:14
もしかしてコレ待ちでした?
清香
☆ダンスパーティー・小野瀬と穂積☆
2曲目が静かに終わり紅花のインタビューを受け終わると、穂積は和音の手をそっと離して丁寧にお辞儀をした。
穂積
「楽しい時間をありがとう。」
和音
「こちらこそありがとうございます。こうして穂積先生と踊れて……最高の桜祭でした。」
穂積
「村崎と仲良くしなさいね。」
和音
「はい。」
『最後に』と交わした握手は僅かに触れるばかりのものだったが、掌にじんわりと残る温かさがどこか心地よかった。
村崎
「和音殿。」
迎えに来た村崎と共に手を繋いで再び踊ろうとする和音の姿を目でなんとなく追っていると。
小野瀬
「ほーづーみ。さぁ、次は俺の番だね。踊ろうか。」
穂積
「…って、何だよ!いきなり抱きつくな!腕に絡むな!!」
小野瀬
「なんだよ、いいじゃんか。」
小春と踊ったきり壁際で女子生徒と談笑していた小野瀬がいつの間にか傍に来ていたのだった。
小野瀬
「……藤守君や如月君も計画に気がついたらしい。……どうする?全てを生徒に任せるか?」
穂積の腕を引っ張り耳元で小さく話す小野瀬に、穂積は最初こそ嫌な顔を見せたが、内容が内容なので今はされるがままだ。
穂積
「学園の理念から考えればそうすべきなんだが……な。お前はどう思う?」
小野瀬
「出来るならばみんなを守りたいさ。でも、俺達が動くには人の目が多すぎる。ほぼ不可能と言ってもいいだろうな。」
『ラストダンスのパートナーしか守ることができない』という現実のもたらす歯がゆさに、小野瀬は唇を噛みしめる。
いつも柔らかく微笑まれている小野瀬の唇に白い歯が食い込むのを、穂積は初めて見た。
穂積
「小野瀬……。」
小野瀬
「…俺はラストダンスを空間さんと踊る。約束したからね。お前は櫻井さんとだろう?明智君は篠崎さんとだ。……その間に彼女に何かあると考えただけで……。」
視線の先を辿れば、楽しげに手を繋いで三曲目の開始を今か今かと待ちわびる翼と小春の姿があった。
色々と鈍いこの二人には、自分達の身に何かしらの危険が迫って来ている事など分かるはずもない。
むしろ欠片でも分かっていたのなら、自分達ももう少し気が楽だったのにと理不尽な恨み節さえ浮かんでくる。
小野瀬
「篠崎さんは誰かと踊っていた時も、後ろから体を触られたりしたそうだ。…そんなの誰がさせるものか。」
大事にしたいと願った少女だ。
恋をする事は叶わなくても、優しく見守ることを許されたのならば、その責務を全うしたい。
小野瀬の瞳がゆらゆらと揺れる。
穂積
「大丈夫だ、小野瀬。」
柔らかな旋律が流れると同時に、穂積は掴まれている腕をそのままに一歩足を前に出しながら小野瀬の耳元へと話しかけた。
小野瀬
「…うわっ。」
意識が穂積や流れている音へと向いていなかったせいか、バランスを崩しかけた小野瀬の背中を穂積が片手だけで支えようと手を伸ばす。
が、細身だがやはり小野瀬は男性だ。翼や小春などとは比べるまでもなく体も大きく、重い。
片手では不可能だ、このままでは二人とも転ぶ危険性がある、と穂積の本能が警鐘を鳴らす。
穂積
「…っ、と、悪い。大丈夫か?」
掴まれていた腕を解いて逆に自分から掴み、背中を支える事でどうにか小野瀬が転ぶのを防いだが。
小野瀬
「んっ、…あぁ。」
はたから見れば抱きしめるか押し倒す数秒手前の図にしか見えないだろう。
男女ならばそのままキスをしても可笑しくない距離に、どこか遠くでカメラのシャッターを切る音が聞こえる気がするが、あいにくと二人の耳には届いていない。
小野瀬
「なんかカッコ悪いな。…ありがとう。」
背中を穂積に支えられながら体勢を立て直した小野瀬は、どこか恥ずかしそうに穂積を目線だけで見上げた。
穂積
「んなもん気にしてんじゃねぇよ、バーカ。三曲目始まってるぞ。」
小野瀬
「あぁ。みんなが見てるから踊らないと。足踏むなよ?」
穂積
「お前こそ、次転びかけたら助けねぇからな?」
自然と繋がれた指の力の強さは、不安の象徴かもしれない。
皆、大事な人を守りたい。
大事な人が手の届く範囲にいるのなら、こうやって手を差し伸べて抱きしめればいい。
でも、人には手が二本しかない。
それに、片手で抱きしめられない時もある。
ならば、危険な『モノ』を排除するだけだ。
フンッと鼻で笑いながらも小野瀬の唇をうっすらと染める血のような赤さを目にし、穂積は出来うる限りの対策を執ろうと心に決める。
穂積
「…小野瀬」
そして小野瀬も耳元に落とされた穂積の話を聞き漏らすまいと、繋がれた手をギュッと握りしめながら脳内に会場の見取り図を開いたのだった。
→
業界用語で言うリバーシブルな空気にしてみました(爆笑)
01/10(Fri) 07:24
ソレ待ちの間に新サクラダモン書いてました(笑)
小春
清香さんありがとうございます。
こんなに小野瀬先生に愛してもらえて小春幸せ(∩*´∇`*)
業界用語でリバーシブルって……何の業界?Σ(´□`;)
☆ダンスパーティー~三曲目~☆
三曲目の注目は何と言っても穂積と小野瀬。
曲がかかる前は小野瀬の方が積極的だったが、最初のステップがふらついた瞬間から、穂積がリードし、小野瀬が女性側のステップを踏んでいる。
穂積自ら「美技」と言ったのは冗談だったはずだが、二人のダンスはまさに美技だった。
会場の視線は完全に二人に集まっていた。
「上手だねえ」
翼と小春も、手は繋ぎ合っているものの、ほとんどその場で曲に合わせて身体を前後に揺らしているだけのダンスで、穂積と小野瀬を見ていた。
二人の教師は、意外と真剣な顔で踊っている。
その表情の理由は他ならぬ翼と小春にあるのだが、二人の少女はもちろん知るよしもない。
翼
「踊る相手を探してる人が少なくなってきた気がするね」
不意に、翼が言った。
翼
「踊る人と見てる人に分かれてきたみたい」
小春
「本当だ。もう、みんな、最後までのパートナー決まったのかなあ」
翼
「小春ちゃん、ごめんね。私、穂積先生から、最後は戻って来るように、って言われてるの」
翼はすまなそうにそう言って謝ったが、小春はにこにこしている。
小春
「うん、私の事は気にしないで穂積先生と踊って。翼ちゃん、その為に練習したんだもんね」
翼は頬を染めた。
翼
「小春ちゃんはどうするの?」
小春
「私は……」
明智
「小春」
突然、翼と小春の元に、明智と篠崎のペアが寄ってきた。
ステップを踏みながら、篠崎が、挨拶がわりに小さく手を振る。
明智
「四曲目は俺と踊ろう。櫻井は篠崎先生とだ」
別に断る理由も無いけれど。
明智と篠崎からの急なパートナーチェンジの申し込みに、翼と小春は、揃って首を傾げた。
[削除]
01/10(Fri) 12:36
☆ダンスパーティー~山田ととも父~☆
小春
三曲目の音楽がかかると、如月がともを迎えに来て、とも父はまたフリーになった。
もじもじしながらダンスを申し込んでくれる女子生徒もいるが、娘と同じ年頃の女の子から顔を赤くして誘われても……。
などと思っていると。
山田
「ともさんのお父さん」
座っているとも父の前に、ひょい、と横から顔を出したのは、校長の山田。
長い髪がとも父の前で揺れる。
とも父
「あ、校長先生」
とも父は急いで立ち上がろうとする。
しかし、山田がとも父を制し、引っ張るようにして隣に座る方が早かった。
山田
「もう、ダンスはなさらないのですか?とてもお見事でしたのに」
肩が触れ合うほどの距離から、山田が小声で尋ねてきた。
とも父
「思いがけず参加させてもろて、もう、充分楽しませて頂きましたわ」
そうですか、と笑うと、山田は、さらにとも父に顔を近付ける。
何か、と問おうとしたとも父は、笑顔を消した山田の囁きに声を失った。
山田
「この後に起きる事をご存知ですよね」
とも父
「……!」
初めて見る山田の真顔に、とも父は緊張しながらも、周りに気付かれないように、小さく頷いた。
自分は門外漢だ。
何が起きようとこの学校のやり方に口を出すな、と言われるのかと思って、とも父は山田を見据えた。
が、それはとも父の杞憂であったようだ。
山田はあっという間に笑顔に戻ると、「ではご一緒に」などと適当な事を言いながら、とも父を促して立ち上がる。
それでいながら、体育館の扉から出る前には、山田は、とも父への内緒話を終わらせていた。
山田
「ご協力をお願い出来ますか」
とも父としても、度が過ぎたいたずらになることを心配していたところだ。
とも父
「取り越し苦労になるよう願ってますわ」
山田
「おっしゃる通りです」
会場では穂積と小野瀬が踊っている。
二つ返事で引き受けたとも父と共に出て行く山田を追うような物好きは、誰もいなかった。
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01/10(Fri) 21:20
久々によだれ出ちゃう
ジュン
清香さん、さすがです!
うっとり(*´ー`*)
先生方も停電対策に動き出しましたね。
どうなるのか楽しみですねo(^o^)o
01/11(Sat) 06:21
おはようございます(´`)ノシ
小春
☆ダンスパーティー~ジュンとともと紅花~☆
ジュン
「賢史くん、何かあったの?」
如月、小笠原と話をした藤守が戻って来た。
三曲目には充分間に合うタイミングだったが、藤守の顔色が悪い事に気付いてジュンが尋ねる。
藤守
「ん、何でもないで」
ジュン
「でも、顔色が……」
ジュンに知らせるわけにはいかない。
停電を避ける策が見つからない以上、ただ不安にさせるだけだからだ。
藤守は苦笑いしてみせた。
藤守
「ジュンがあんまりモテてるから、心配になっただけや!お前、たったあれだけ離れただけで、何人にダンス申し込まれてんねん!」
藤守の抗議はわざとらしかったが、内容が事実なだけに、ジュンは顔を赤くして反論する。
ジュン
「だって、それは、賢史くんが傍にいなかったから……!私、賢史くん以外の人に誘われて、困ってたんだから……!」
泣き虫のジュンは、それだけ声に出しただけでもう涙ぐんでいる。
もとより、藤守にジュンを責める気持ちはない。
藤守
「ああ、そんなんで泣くなや。悪かったて。ミスコン三位やもんな、誘われて当然や。俺が、気をつけてやらなあかんかった」
ジュン
「……どうやって断ればいいのか分からなくて、慶史兄ちゃんが追い払ってくれるまで、本当に困ってたんだから……」
涙声で訴えて、ジュンは藤守に身を寄せる。
敵わんなあ。
これではやっぱり一人にはさせられない。
音楽に合わせてジュンと踊り出しながら、藤守は、誰にも気付かれないように溜め息をついた。
とも
「如月先輩、何があったんですか?」
戻って来た如月に、ともは単刀直入に訊いた。
如月
「えっ何が?」
明智や藤守と比べたら、如月の演技力はランクが数段上だ。
しかし、ともの目はごまかせない。
とも
「……ふーん……」
如月
「……と、ともちゃん、曲が始まってるよ?」
如月は笑顔でともと組もうとするが、ともは腕組みしたまま手を出さない。
とも
「私には言えない事ですか?」
にっこり笑う。
如月
「……」
如月は悩んだ。
この笑顔を見せる時、ともはもう半ば真実を掴んでいる。
つまりそれは、如月が嘘を言えば見抜かれるという事で。
今も、おそらくまだ停電の企みは知らずにいるだろう。
が、「何か変だ」という事と、「如月が何かを隠している」事には気付いている。
しかも、ジュンや紅花と違って、ともは生徒会役員だ。
とも本人も、狙われる対象の一人でもある。
いっそ打ち明けてしまおうか。
でも……
とも
「分かりました、如月先輩を信じます」
如月
「え?」
如月の顔色を見つめていたともは、不意にそう言うと、如月の手をとってダンスを再開した。
とも
「如月先輩が言えないのは、きっと、私を巻き込むのを躊躇してるからですよね。……さっき、お父んも同じ顔をしてました」
如月
「ともちゃん……」
ともが、如月を見つめていた。
その顔に、如月は意を決した。
如月
「……実はね……」
小笠原が会場に戻ると、紅花の方から駆け寄って来た。
紅花
「小笠原先輩、体調良くなったんですか?」
身長差20cmから紅花が見上げて来る。
紅花
「でもまだ顔色が悪いかなあ」
小笠原
「……取材は?」
紅花
「今、踊ってない生徒たちは、男女それぞれ全体の20%ってところでしょうか。女子はグラウンド側の壁際、男子は反対にステージ側の壁際にいます。微妙な入れ替わりはありますが、どうやらここにいる人たちは、最後まで踊らない人たちみたいですね」
小笠原
「……」
小笠原は紅花の言葉を確かめるように周りを見た。
紅花
「それとは別に、東西のバスケットゴールの下に男女がいますよね。あれは、この後のダンスの相手は決まっているけれど、相手が別の人と踊っている人たち。待機組ですね。あ、ほら。今、西のゴール下に空間センパイが来ましたよ」
小笠原
「……」
小笠原は昨年ダンスパーティーに参加していない。
紅花の分析は小笠原にも新鮮だった。
紅花
「でも、80%の男女はフロアで踊ってます。ダンスパーティーは成功ですね、先輩」
……このまま無事に終われば、だけどね。
そう思いながらも黙って頷きながら聞いていると、紅花は不意に声をひそめた。
紅花
「実はですね。私の気のせいかも知れませんけど、さっきから、男子がそわそわしてるように見えます。……小笠原先輩は……、どうかなあ。ポーカーフェイスだから分からないけど」
紅花は小笠原を見つめたまま呟き、それから笑った。
紅花
「あ、そろそろ三曲目が終わりますね。私また人気生徒のインタビューに行こうかな」
再びフロアに目を向けた紅花を、小笠原は手を掴んで引き止めた。
紅花はびっくりして振り返り、小笠原に掴まれた自分の手と、小笠原の顔とを見比べた。
小笠原
「行かないで」
縋るように言われて、紅花はきゅんとしてしまう。
小笠原
「僕と、ここにいてよ」
きゅーん。
紅花
「はい」
紅花は、小笠原の手を握り返していた。
01/11(Sat) 09:56
アニとベアーズ
ジュン
三曲目を(無理やり)ベアーズと躍りながら、アニは会場の様子に違和感を覚えていた。
パートナーがおらずに壁際にいる男子の様子が例年と違うのだ。例年なら俯きがちのそれらの男子がやけにそわそわと周りを見回している。
ロバート
『ケイジ?どうかしたの?』
アニ
『ああ、少し気になることがあってな。』
ポール
『難しい顔をしているわ。もっとダンスを楽しみましょう?』
ベアーズの二人は会場の違和感に気づいていない。しかし、毎年会場の雰囲気を見ていたアニは昔の記憶が甦る。
アニ
「これは、まずいかもしれないな。」
ロバート
『なに?』
ポール
『どうかしたの?』
二人もアニのただならぬ様子に首をかしげる。
二人も教師だ。話しておくべきだろう。アニはベアーズの二人を抱き込むように顔を寄せ、気づいた可能性の話をした。
アニ
『実はな……』
生徒を守るのが教師の役目、しかも、今年は従妹のジュンもいる。泣かせるわけにはいかない。
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01/11(Sat) 10:33
おはようございます
とも
☆ダンスパーティー・如月、とも☆
3曲目を踊りながら、如月から一通り話を聞いたともはたちまち険しい顔つきになった。
とも
「一部の男子のせいで桜祭が台無しになるやなんて、絶対許さへん!」
如月
「オレたちも同じだよ。だけど、昨年はそんな事は起こらなかったから、正直どうなるのか予想はつかないんだ。さっきも事前に防げる方法がないか、藤守会長と小笠原さんに相談に行ってたんだ」
周りに聞こえないように小声で話しているため、少しずつお互いが寄り添っているのが、近くで踊っている生徒たちには2人が更にいい雰囲気になっているように見えた。
男子生徒
「あの2人、なんかラブラブだな」
女子生徒
「ホント、盛り上がってて、周りが見えてないかんじ? うらやましい~」
穂積
「如月」
あれこれ2人が対策を考えていると、穂積と小野瀬が踊りながら近づいてきた。
如月
「穂積先生!」
如月の顔つきを見た穂積は彼らもまた、同じ事を考えていると瞬時に察した。
穂積
「大丈夫だ、俺たちも協力するから」
小野瀬
「そうだよ、ともさんも。今はダンスをめいっぱい楽しまなくちゃ」
強張ったともの顔を見た小野瀬も、少しでも気を紛らわせようと微笑みながら声をかける。
穂積
「必ず、楽しい桜祭で終わらせような」
01/11(Sat) 13:55
☆ダンスパーティー~会議中~☆
小春
穂積と小野瀬、如月とともは、付かず離れずに踊りながら、ひそひそと話を続けていた。
如月
「こうして見ると、一応、ミスコン入賞者は全員、ラストダンスのパートナーが決まってますね」
とも
「体育祭の女神も大丈夫そうですよ。ibu先輩は、踊ってはいませんけど、さっきからアンドロメダ先輩と二人で、いい雰囲気で話してます。千春先輩は鳥山先生と踊ってますし」
穂積、小野瀬
「えっ」
ともの指摘に、穂積と小野瀬は驚いて鳥山を探した。
ひときわ目立つ長身は、間違いなく二曲目まではいなかった。
遅れて到着してもう踊っているとは、トリン恐るべし。
穂積
「あいつは何故いつも遅れて登場するんだ」
小野瀬
「特撮ヒーローみたいだね」
如月が咳払いをした。
如月
「壁際の、踊らない女子たちの傍には、理事長とジョーさんがいますけど……」
穂積
「……あの辺りは生徒より理事長が心配だな」
小野瀬
「ジョーさんは、ある意味男子よりアブナイかもしれないね」
穂積
「踊らない女子たちの所には、壁としてロバートかポールを配置するか?」
とも
「でも、肝心の、実行犯の男子の方はどうします?」
小野瀬
「校長先生に監視を頼もうかと思ってたけど、いつの間にかいない。……となると、やっぱり、ストッパーになるのはアニ先生かな」
藤守
「アニキの場合、せっかくの雰囲気を凍りつかせてぶち壊しにせんとええけど」
突然、すぐ近くから藤守の声が加わった。
全員が驚いて声の方向を確かめると、藤守と、手を繋いで怯えているジュンの姿が目に入った。
ジュン
「……だいたいの事情は分かりました」
藤守
「実態のはっきりしない実行犯を止めるより、標的になりそうな女子を守る手段を考える方が確実や」
生徒会長の藤守の言葉に、全員が頷く。
藤守
「自分のパートナーを守るのは大前提やけど。フロアにいる女子全員に気を配らなあかん」
小野瀬が大きく頷いている。
藤守
「四曲目を踊り終えて、待機組と入れ替わった直後が危ないんちゃうか?つまり、フリーの女子がまだ近くにいて、ラストダンスの相手が確定した頃や」
穂積
「確かに。実行犯たちからしたら、ラストダンスを最後まで踊らせる必要はないわね」
「ひどい」
「みんな楽しみにしてるのに……」
ジュンもともも憤慨している。
如月
「停電すると音楽も消えるのかな。それによって、パニックの度合いも違うと思うけど」
小野瀬
「念のため、小笠原くんに頼んで、停電しても対応出来るよう、ノートPCの音源からの出力に切り替えておく方がいいね」
如月
「頼んでおきます」
藤守
「確かにパニックは怖いな」
穂積は、暗転した舞台で震えていた翼や、夜の廊下で手を握り締めてきた小春を思い出していた。
穂積
「そうね。まずは落ち着く事、落ち着かせる事。それに尽きるわね。混乱は相手の思うつぼよ」
まもなく、三曲目が終わろうとしていた。
01/11(Sat) 22:25
どうも(笑)(*^^*)
くちびる
こんばんわです(笑)
イヤン....小笠原先輩可愛い(*^^*)
母性本能くすぐられまくりです(笑)
紅花、完全にノックアウトしちゃいました!
みなさまなかなか参加出来ないにもかかわらず紅花を登場させて頂きありがとうございます(笑)
時間のある時はいつも覗きl(^-^ゞに来てますよ♪明後日は休みなのでまた遊びに来ますねぇ♪
明日朝早いので、ではまたm(__)m
01/12(Sun) 12:35
☆四曲目~明智兄妹~☆
小春
ダンスパーティー四曲目は、ラストダンスが近いせいもあってか、三曲目と同じパートナーと踊るペアが目立つ。
先ほど公言していた村崎と和音はもちろん、藤守とジュン、如月ととも。
穂積と小野瀬もそのままだ。
そんな中で、パートナーチェンジした明智と小春の兄妹ペアは、なにやら不穏な雰囲気で踊り始めていた。
明智
「……」
小春
「……」
明智
「……怒ってるか?」
小春
「怒ってない」
小春は下を向いたまま、ふるふる首を横に振る。
明智
「やっぱり怒ってる?」
小春
「怒ってない」
明智
「それなら顔を上げてくれ。でないと、俺、お前のつむじしか見えない」
小春
「……ちっちゃくてごめん」
小春が両手でつむじを隠す。
明智は長身を屈めて、小春の顔を覗き込むようにした。
明智
「……悪かった、謝る。学園祭で疲れてるのに遅くまでダンスの練習に付き合わせた事も、それなのにお前をないがしろにした事も、小野瀬先生と仲良くしてるのを邪魔した事も」
それでも小春は顔を上げない。
明智は途方に暮れる。
明智
「小春……小春、何か言ってくれ」
小春
「本当に、怒ってない」
小春はそう言うと、再び小春の手を握る明智の胸の前で、すん、と小さく鼻を鳴らした。
明智
「小春?」
小春
「篠崎先生の匂いがする」
明智はぎくりとした。
小春
「お兄ちゃんとダンスの練習してる時、私、楽しかった。練習のおかげで、今日、小野瀬先生にも褒めてもらえたし」
下を向いて、小声でぽつぽつと呟く小春の言葉は聞き取りづらい。
明智は耳を澄ませた。
小春
「でも、お兄ちゃんと踊るのは私じゃないの」
音楽が遠ざかり、明智の研ぎ澄まされた耳には、小春の声しか聞こえなくなってくる。
小春
「この場所はもう、私だけの場所じゃないの」
ぞくりとした。
明智は、自分の腕の中で、小春が消えてしまうのではないかと思った。
小春
「その事が、悲しい」
明智
「小春……」
小春
「悲しくて、たまらない」
素直で、聞き分けが良くて、いつも自分の後を追い掛けてきた、可愛い妹。
お兄ちゃんがいれば、お父さんがいなくても、お母さんに会えなくても悲しくない、と言った、小さな妹。
その妹が、目の前で、声を震わせている。
悲しい、と。
明智は反射的に、小春を抱く手に力を込めた。
明智
「お前は俺の妹だ。いつまでだって、ここにいていいんだ」
小春は顔を上げると、首を横に振った。
小春
「妹だから、だめなんだよ」
小春の目から、堪えていた涙がぽろぽろとこぼれて落ちる。
穂積と小野瀬がぎょっとした表情を明智に向けて、二人揃って「泣かすな!」と唇を動かしながら睨んでくるが、当然、明智だって泣かせたいわけではない。
停電に用心するように言うつもりだったのに。
出来る事なら、篠崎と共に守るつもりだったのに。
小春が腕からすり抜けてゆく。
もうじき曲が終わる。
明智は小春を見失った。
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01/12(Sun) 13:25
翼と篠崎
ジュン
翼
「そういうことでしたか……」
篠崎
「ごめんなさいね。急にパートナーのチェンジだなんて驚いたでしょう?」
篠崎は翼に停電のことを話していた。
生徒会のメンバーであるため知らせておいた方がいいだろうとの判断だ。
翼
「いえ、知らない方がきっと驚いたと思いますから。」
意外にも翼は停電のことを聞いても怯えることもなくシャンとしていた。
翼はラストダンスは穂積と踊ることが決まっている。それが心の中で安堵感を生んでいるのだろう。
篠崎
「穂積くんの側を離れないようにしてね。」
翼
「先生も……」
お互いが顔を見合わせて微笑んだとき、翼の視界に小春が横切った。
明智の側を離れてどこかにいってしまう。その横顔が泣いているように見える。
翼
「篠崎、すみません。」
翼は篠崎に頭を下げると小春のあとを追いかけるように走っていった……
書いてみましたが、後が繋がるかしら(;>_<;)
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01/13(Mon) 07:10
ジュンさん、ありがとうございますm(__)m
小春
☆四曲目~終了まで~☆
翼が見つけた時、小春は、体育館の外の水飲み場で顔を洗っていた。
ダンスパーティーが行われている体育館の中は明るく、大勢の生徒や教師がいたが、外はもう日が暮れかけて薄暗い。
翼は少し離れた場所で、気付かれないようにしながら、小春が落ち着くのを待った。
小春は心配性のくせに、自分が心配されるのを嫌がる。
今の翼には小春が泣いていた理由が分からないけれど、きっとあのハンカチをしまうまで待てば、小春は、いつものように「大丈夫だよ」と笑顔を返してくれるに違いない。
体育館の中では、まだ四曲目の音楽が続いている。
篠崎先生の言葉通りなら、停電するまでまだ間があるはずだ。
それまでには、小春を連れて穂積先生の所に帰れるだろう。
小野瀬
「(小声)明智くん、小春さんに何をしたんだ?!」
明智
「(小声)いや、自分は、ただ小春に謝ろうと……」
穂積
「(小声)停電の話は?」
明智
「(小声)……まだです」
穂積と小野瀬に代わる代わる詰問されるのを、明智のパートナーに戻った篠崎が、まあまあととりなす。
篠崎
「(小声)ひとまず、櫻井さんが連れ戻しに行ってくれたから。私たちがあまり騒ぐと、大ごとになるわ」
小野瀬
「(小声)俺たちの目の届かない所で、何かあったらどうする!」
明智
「(小声)……すみません……」
穂積
「(小声)落ち着け、小野瀬。俺が行く」
小野瀬は、次には空間と踊る約束がある。
他の教員や生徒会役員たちにも、秘密裏にそれぞれ役割を与えたところだ。
パートナーが不在で身軽なのは、なんと穂積だけだった。
穂積
「(小声)この曲が終われば、ラストダンスの準備だ。目立たないよう、その間に抜け出す。お前たちは中を頼むぞ」
全員
「(小声)……了解」
四曲目の音楽がフェイドアウトして、徐々に聞こえなくなる。
藤守
「ジュン、俺から離れるなや」
五曲目に備えてジュンを引き寄せながら、体育館の中を見渡して藤守は身構えた。
明らかに人が多い。
ジュン
「うん」
とも
「如月先輩、あれ」
ともが目線で示した先では、ステージに近い場所にたむろしていた男子たちが、急に散り散りになって、慌ただしく動き出していた。
そんな場所に用は無いはずなのに、ステージの奥へ入ってみたり。
パートナーを連れずにフロアに入ってきて、女子の近くでうろついてみたり。
品定めするように、談笑する女子の方をじっと見つめてみたり。
何も知らずにパートナーの入れ代わりをしている生徒たちの混雑に紛れて、興奮した顔の男子たちがフロアを行き来する。
如月とともは互いの手を握り締めながら、顔を見合わせた。
如月
「ヤバいね」
ともはもうムカムカしている。
体育館の隅。
紅花の傍らで、小笠原は誰かに電話をかけている。
紅花は周りの雰囲気が急に変化した事に何となく不安を感じながらも、小笠原に寄り添うようにして立っていた。
小笠原に言われた通り、壁を背にしていると、電話を終えた小笠原が、紅花の肩に手を置いてくれた。
小笠原
「俺はみんなの為に戦うヒーローにはなれないけど……きみだけなら守れると思う……たぶん」
紅花はにこりと笑った。
紅花
「はい。私だけのヒーローでいてください」
穂積と別れた小野瀬は、空間の元に来ていた。
アオイストたちが羨望の眼差しで見つめる中、小野瀬の前で、空間はいつものようにガチガチに緊張している。
その表情を見て、小野瀬の気持ちは逆に平静を取り戻してゆく。
この少女もまた、小野瀬にとって、傷つけてはいけない宝石だった。
何年間も、自分だけを見つめてきてくれた少女。
他の男の勝手にはさせない。
小野瀬は、遠巻きに周りでうろついている男子を牽制するように一瞥してから、空間にとびきりの笑顔を向けた。
小野瀬
「空間さん、お待たせしてごめんね。迎えに来たよ」
01/14(Tue) 00:12
エミ
☆ダンスパーティー・四曲目~理事長~☆
多くの人々の注目を集める穂積&小野瀬ペアを、黒柳は壁際から眺めながら、遠い昔の事を思い出していた。
エミは桜田門学園の出身ではない。
ある日、伯母である先代の理事長のお遣いで初めて学園を訪れた。
その時、これまた偶然居合わせた他校の男子二人組に絡まれてしまった。
「イイ声をした赤い髪の不届き野郎が剣道部にいるはずだから案内しろ」と言う。
剣道部もなにも、自分だって初めて来たのだから知るはずがない。たとえ知っていたとしても案内するような相手でもない。彼らの言い分を聞くと、単なるフラれた腹いせだとわかった。
押し問答の末、目的の人物を呼び出す為の人質にされそうになったところで、グイッと腕を引かれ、エミは大きな背に隠された。
不逞の輩に対峙するその人は、悪魔か魔王が降臨したかのような圧倒的な威圧感で、耳を疑うような言葉を吐き、指をバキバキ鳴らす。
なんと!それだけで、招かれざる客は逃げていってしまったのだ。
(す、すごい!)
くるりと振り返ったその人は、綺麗な碧い瞳と美しい顔立ちをしていた。金色の髪が夕陽に照らされてキラキラ眩しい。
(…うわぁ……)
正義のヒーローのように強くて、物語の王子様みたいな人がこの世にいるなんて!
ところが。
「大丈夫か?」と背の低いエミの目線に合わせるように長身を屈めた王子様と、お礼を述べ頭を下げたエミのタイミングが合ってしまい、ゴッツンッッ!!!と派手に頭突きをしてしまった。
ひたすら謝るエミに、王子様は「気にするな」と笑って見送ってくれた。
その後、王子様の正体は生徒会長の穂積くんだと知る。それからずっと、穂積はエミの永遠の王子様だ。
理事長に就任して穂積と再会したが、あの時の事を穂積が覚えているか訊いた事は無い。できれば忘れていてもらいたいのが乙女心と云うもので。
ただ、王子様への想いは最初から恋愛感情とは違っていた。それは今も同じだ。
だから、王子様が誰と恋をしようが、ロリコンだろうが構わない。王子様が幸せなら、それでいい。
王子様のお相手は可愛らしいお姫様って相場が決まっているものだ。
ふと意識を現実に戻すと、四曲目が終わろうとしていた。
ノンビリした性格の黒柳にも、会場の空気が先ほどと違う事が分かる。
こんな時、いち早く事態を把握して、安心させてくれる山田の姿も見あたらない。
不安な気持ちがジワジワと広がるなか、ラストダンスが始まろうとしていた。
理事長……いじらしい・゜・(つД`)・゜・
小春
☆☆『停電』☆☆
その時は唐突に訪れた。
つまり、予想よりも早く。
まだ五曲目の音楽がかからないうちに起きた、『停電』。
手を繋ぎかけていた小野瀬は、咄嗟に空間を引き寄せて抱き締めた。
押し付けた胸から、空間の「むぎゅ」という声がする。
小野瀬
「空間さん、ごめん。じっとしてて」
小野瀬の声に、空間がかろうじて頷く。
が、思わぬ事態が起きた。
暗闇の中、小野瀬は誰かから背中に抱きつかれた。
反射的に叫びそうになったが、振り払おうとしてある事に気付く。
……背中に当たる、「女性」の感触。
それはさらに肩にも、なんと、抱いている空間越しにも。
シャツや髪を引っ張られ、いくつもの小さい手が身体じゅうを這い回るのを感じて、小野瀬は戦慄した。
小野瀬の周りは空間狙いの男子よりも速く、小野瀬狙いの女子に囲まれていたのだった。
停電は突然すぎて、エミはただ立ち尽くしていた。
とにかく目が慣れるまでじっとしていなくては。
けれど、そんなエミは不意に、誰かに抱き締められた。
制服の生地が頬を掠める。
生徒、と思った瞬間、その頬に柔らかい感触が押し付けられた。
……覚えのある感触。
『リジチョー……』
ビシッ。
『痛!』
キスと甘い囁きは、乾いた音と短い悲鳴で終わりを告げた。
同時に、ぐい、と腕を引かれる。
これもまた、覚えのある感触。
既視感に包まれるエミの耳に、思い出の中と同じ声が聞こえてきた。
穂積
「理事長、穂積です」
耳元で囁かれて、強張っていた身体の力が抜ける。
穂積
「櫻井と小春を探しに行くところです。ご一緒に」
ああ。
やっぱり、王子様はお姫様たちを助けに行くのね。
不思議と寂しさも嫉妬も感じない。
この人と行けるなら、喜んで白馬の役を務めましょう。
エミ
「はい」
エミは頷いて、穂積に手を引かれるまま、暗闇に駆け出していた。