バッドエンドから始まる物語~明智編~
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明智
「どういう意味だ?……出来る事なら、俺はお前に、警察に復帰してほしいと思っているんだが……」
俺が言うと、櫻井は、何故か悲しそうな顔をした。
翼
「明智さん……」
明智
「何だ?」
翼
「私、どこに復帰すればいいんですか?捜査室は解散するんでしょう?……あの場所には、もう、室長も、明智さんもいないんでしょう?」
俺は返事に詰まった。
だが、この質問は想定内のものだ。
明智
「お前は休職扱いで、まだ除籍されていない。だから、戻るなら当然、俺たちと同じ、緊急特命捜査室だ」
翼
「でも、捜査室は……」
明智
「解散する事になったら、それぞれの行き先は、上層部が決める。だが絶対に、室長が、悪いようにはしないはずだ」
そこは自信がある。
明智
「お前、人の為になる仕事をしたかったんじゃないのか?みんなの暮らしを守るために警官になったんじゃないのか?」
翼
「……!」
明智
「俺は最初、お前が捜査室に入るのを反対した。だが、真剣なお前の態度と気持ちに感じて、応援しようと思ったんだ」
櫻井は唇を噛んだ。
明智
「それなのに、怪我をして、走れなくなったら、もう終わりか。お前の夢はそんなものか?」
翼
「……」
櫻井は俺を見つめたまま、大きな目からぽろぽろと涙を零した。
俺も気持ちが昂っている。
しばらく、俺たちは睨みあった。
翼
「……ほかの」
明智
「え?」
翼
「他の人に言われたなら、『あなたなんかに、私の気持ちは分からない』って言い返してます。警察官になんか、戻らないって言います」
櫻井は、Tシャツの袖で涙を拭った。
翼
「でも、明智さんは、SATのエースとまで言われた射撃の名手で。心の傷で身体が動かなくなって。それでも前を向いて自分と戦ってるから」
俺の差し出したガーゼのハンカチを櫻井は黙礼で受け取り、目頭を押さえた。
翼
「だから、伝わってきました。明智さんの気持ち」
しばらく、ハンカチで顔を覆っていた櫻井は、やがて、涙の消えた顔を上げた。
翼
「すみませんでした。私、復帰を目指します。新しい部署で、今の自分に出来る事から、また頑張ります」
明智
「櫻井……よく言ってくれた。お前の才能を活かせる場所は、室長と俺で、必ず見つける」
実際、櫻井の才能なら、見当たり捜査官でも、サイバーテロ対策室でも働ける。
それについては既に、室長と何度も相談を重ねていた。
俺はホッとして、つい、いつものように、櫻井の頭をぽんぽんと撫でていた。
翼
「明智さん」
櫻井は、唇を尖らせた。
明智
「ん?」
翼
「その、ぽんぽん、ていうの、もうやめて下さい」
明智
「おっと、すまん」
俺は慌てて手を離した。
明智
「無意識にやってしまうんだが……もう、一人前だもんな」
櫻井が笑う。
翼
「他の女の子にも、ですよ」
明智
「ん?」
翼
「何でもないです!」
櫻井はもう一度笑って身体を捻ると、ベッドから脚を下ろして、ぶらぶらさせた。
気のせいか、顔が赤い。
翼
「私、頑張ってリハビリして、明智さんに負けないぐらい、立派な警察官になっちゃいますからね!」
明智
「それは、楽しみだ」
櫻井が立ち上がろうとする素振りを見せたので、俺は、足にスポーツシューズを履かせてやる。
櫻井はくすぐったそうな顔をした。
翼
「明智さんは本当に優しいですね」
俺はスツールを引き、先に立ち上がった。
続いて床に立った櫻井が、ふらりとよろける。
咄嗟に差し出した俺の手をすり抜けて、櫻井の身体が、俺の胸に飛び込んで来た。
明智
「だ、大丈夫か?!」
顔を覗き込もうとした俺を拒むように、櫻井は俯いたまま、強く抱きつく。
翼
「復帰しても、毎日、私に会いに来て下さいね」
ぎゅっ、と縋りつかれて、俺はようやく、自分が告白を受けている事に気が付いた。
明智
「毎日、来るよ」
髪を撫でると、櫻井が、やっと顔を上げてくれる。
明智
「……いっそ、一緒に住まないか?」
俺の渾身のプロポーズに、櫻井は頬を染めて頷く。
愛らしい笑顔に、俺は唇を寄せた。
緊急特命捜査室の解散後、新たに立ち上げられた『特命捜査室』。
夫婦になった俺たちが揃ってそこに配属され、そして、俺がその室長に就任する事になるのは、まだ、もう少し先の話だ。
~END~
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