バッドエンドから始まる物語~明智編~
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翼
「……」
返事を待つ彼女に、俺は答えた。
明智
「もちろん。今のままのお前で、だ」
櫻井は、嬉しそうに笑った。
翼
「……明智さん」
明智
「何だ」
翼
「私、明智さんが好きです」
えっ?!
明智
「えっ?!」
翼
「もしも、今、警官に戻れと言われたら、お断りして、明智さんとも、もうお別れする覚悟でした」
明智
「…………」
俺は口を開きかけて、閉じた。
言葉が見つからなかった。
翼
「今のままの私でいいなら、私、これからも頑張ってリハビリします。車椅子が無くても、自分の足でしっかり歩けるように」
俺は、息をつめて櫻井の声を聞いた。
彼女の話の結論が、まだ見えなかった。
翼
「……そうしたら……」
彼女は一度唇を噛んでから、顔を上げた。
翼
「そうしたら、私を、お嫁さんにしてくれますか?」
俺が見つめるその先で、櫻井の頬が桜色に染まってゆく。
お嫁さん……ということは……
明智
「……櫻井……」
櫻井は、両手で顔を覆った。耳まで真っ赤になっているのが分かる。
翼
「ごめんなさい。私ったら、図々しい。恥ずかしい」
そんな事はない。
むしろ、俺は嬉しい。
そう言おうとして、俺は、櫻井の肩に伸ばしかけた手を止めた。
櫻井は、泣いていた。
翼
「本当は私、ずっと、ずっと、警官に戻りたいと思っていました」
櫻井。
翼
「でも、あの捜査室に戻れないなら、いっそ、このままでいたい。今のままの私でも明智さんを支えられるなら、私、明智さんと一緒にいたい」
明智
「……」
肩に触れると、櫻井は、俺の胸に縋りついた。
翼
「……ぅ、うっ……」
そうか。
捜査室に戻りたい一心で、辛いリハビリにも耐えてきたんだな。
だが、彼女が歩けるようになる頃には、もう、彼女の帰る場所は無い。
俺は、今、目の前で声を殺して泣く櫻井を励ますための言葉を知らなかった。
ただ、抱き締めてやる事しか出来ない。
明智
「……」
翼
「……ごめん、なさい、あけちさん。ごめんなさい」
謝らなくていい。
彼女は目標を見失った。
今この時は、泣いてもいいじゃないか。
明智
「お前は今のままでいい」
俺は、櫻井を抱く腕に力を込めた。
翼
「明智さん……」
明智
「足を治して、人生の新しい目標を見つけて。頑張るのは、それからでもいい。そうだろう?」
櫻井が、俺の胸に顔を押し付けて嗚咽を漏らす。
俺は、その背中を撫で続けた。
明智
「結婚しよう、櫻井」
腕の中で、櫻井が頷く。
明智
「お前が泣き止むまで、待っているから」
櫻井。
俺もお前も、不器用で、不完全で、生きるのが下手な人間だ。
だから、一緒にいよう。
互いに支えあって。
一緒に、生きていこう。
ゆっくりでいい。
遠回りでもいい。
二人で、俺たちの道を探そう。
今はまだ何も見えないけれど。
~END~
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