バッドエンドから始まる物語~明智編~
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明智
「……愛情です」
考えた末、俺は、そう答えた。
今のこの感情を、他の言葉では説明出来ない。
俺は、櫻井が好きなんだ。
穂積
「……そう」
室長の表情は、まだ険しい。
穂積
「それは本当に愛情?……贖罪の為にアンタのこれから先を犠牲にするつもりなら、ワタシはそれを許さないわよ」
室長は、燃えるような眼で俺を見つめた。
俺の中でずっと燻っていた気持ちが、その炎に炙り出されるように、光を放ち始める。
明智
「……ありがとうございます、室長」
俺は、目の前の室長に頭を下げた。
俺自身が彼女の事しか考えられないのに、今の室長は、それ以上に、俺のこれからの人生を考えてくれている。
明智
「贖罪とか、犠牲とか……そういう気持ちが全く無いとは言えません。責任は感じています。……でも、それだけじゃありません」
口に出したら、気持ちが落ち着いた。覚悟が決まった、と言ってもいい。
明智
「俺は……彼女が好きです。いつも一生懸命で、頑張り屋で……。彼女の、あの明るい笑顔がもう一度見られるなら、何でもします」
室長は、しばらくの間、真っ直ぐに俺を見つめていた。
明智
「……彼女を支えながら、一緒に、生きて行きたいんです」
穂積
「明智……本気ね?」
独り言のような室長の呟きを、俺は、俺の人生への問い掛けだと思った。
俺にとって室長は、上司であり、兄であり、父親だった。
一歳違うだけなのに、俺はほとんど無条件に、この人を信頼している。
明智
「はい」
じっくりと考えた俺が、そう返事をすると、室長は、大きくひとつ息を吐いて、頷いた。
穂積
「……櫻井は、アンタのそういう生真面目さが好きなんだと思うわ」
明智
「えっ」
灰皿に置いたままだった煙草を揉み消しながら、室長が言った。
穂積
「後の事は、アンタに任せれば良さそうね」
明智
「室長……」
室長は、今まで、櫻井を自分の娘だと呼んで憚らなかった。
それほど慈しんできた。
もしかしたら、室長の方が、櫻井の事を。
明智
「……室長。室長は……」
穂積
「櫻井判事に、ぶん殴られたわ」
明智
「えっ?」
急な転換に、ついていけない。
穂積
「今回の件で、謝罪に行った時よ」
室長は、自分の左の頬に手を当てた。
穂積
「判事の細腕に殴られたぐらい、痛くも痒くもないはずだった。……でも」
室長の端整な顔が歪む。
穂積
「今までの誰に殴られたよりも、効いた」
明智
「室長……」
室長は自分の両手を見つめて、呟いた。
穂積
「最初に託されたのに、守りきれなかった。……ワタシに、彼女を預かる資格は無いわ」
明智
「……」
短い沈黙の後、室長が顔を上げた。
穂積
「判事……櫻井の父親から言われたのよ。警察官は辞めさせたいと」
辞めさせる?
明智
「しかし……櫻井は……」
櫻井自身が、警察官を辞めたいと思っているのだろうか。
俺にはそうは思えないが。
穂積
「ワタシもそう言ったわ」
俺の心を読んだように、室長が頷いた。
穂積
「最終的に、判事が出した選択肢は、二つよ。彼女の本心を聞いて、復職したいと思っていたら、それに協力すること」
明智
「……もうひとつは……?」
穂積
「復職したくない、新しい人生を始めたいと言ったら、それを支える事」
明智
「……それを、俺に?」
穂積
「好きあっている者どうしが寄り添う方が自然でしょう」
俺の顔が熱くなる。
室長はわずかに微笑んだが、それはどこか寂しそうに見えた。
穂積
「だから、もちろん出来る限りの協力はするけど。どの道を選ぶかは、アンタたちに任せるわ」
復職するか、違う人生か。
☆選択です。
警察官に復職するか?……5
他の人生を考えるか?……6
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