バッドエンドから始まる物語~穂積編~
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~翼vision~
穂積さんが去ってしまった扉を見つめて、私は呆然としていた。
どうして?
何がいけなかったの?
すると、少し離れた席から、含み笑いが聞こえた。
聞き覚えのある、声。
そちらを振り向いてみるまでもなく、声の主は、さっきまで穂積さんの座っていた席に来て、腰を下ろした。
翼
「……小野瀬さん……?」
思わず確かめてしまったのは、現れた彼が、あまりにも、冷たい目をしていたから。
小野瀬
「穂積が女にフラれるの、初めて見たよ」
翼
「そんな……フラれたのは、私の方だと思いますけど」
小野瀬さんは、くくっと笑った。
いつもの、あの、向けられた者が赤面するような、艶のある笑みではない。
小野瀬
「やっぱり、鈍感なんだね。仕事では鋭いのに」
棘のある言い方に、腹が立つ前に不安になる。
翼
「……」
小野瀬
「穂積はね、きみの事を、本当に大切にしてきた。俺みたいなのから見たら、ほとんど偶像崇拝のレベルでね」
……確かに。
私も、ずっと、思っていた。
捜査室を離れてからは、特に。
私の身体に触れるどころか、キスひとつしない。
安心して一緒に過ごせる反面、それで満足なのかと心配になった事さえある。
小野瀬
「案の定、きみは、そんな穂積じゃ物足りなかったわけだ」
翼
「そんなんじゃありません。私、本当に、穂積さんが好きでした」
小野瀬
「それは男性として?『お父さん』として?」
翼
「……!……」
小野瀬
「ねえ、俺を試してみない?」
私はどきりとした。
ときめきとは違う、もっと何か、本能的な恐怖で。
本当に、小野瀬さんなの?
物腰は、いつもの通り優雅で、柔らかいのに。
こんな怖い小野瀬さんを、私は知らない。
小野瀬
「興味あるな。穂積が恋した女」
私は、首を横に振った。
小野瀬
「どうして?俺は、穂積よりずっと危険だよ。それに、きみを満足させてあげられる。たぶんね」
翼
「嫌です。今の小野瀬さん、何だか怖い。それに、穂積さんに当て付けみたいな」
小野瀬
「そんなんじゃないよ。だって、穂積の気持ちはもう、きみから離れた。それじゃあ当て付けにならないでしょ?」
小野瀬さんは、不意に、いつもの甘い笑顔になった。
小野瀬
「俺が怖い、って言うけど、おそらく今、穂積は俺と同じ顔をしているよ。事によると、もう、商売女を抱いてるかもね」
私は一瞬想像しかけて、頭から振り払った。穂積さんが、他の女性を。そんな事、考えたくない。
小野瀬
「あいつは本来、性にはドライなタイプだと思うな。きみに触れなかったのは、きちんと付き合って、お父さんにも認めてもらって、きみに求められるのを待ってたからだ」
翼
「……」
小野瀬さんの言葉の一つ一つが、私の心に刺さる。
全部、納得がいく事ばかりだったから。
私が涙を溢すと、小野瀬さんは首を傾げた。
小野瀬
「どうして泣くの?きみには何度も、穂積を手に入れるチャンスはあったよ。きみは、手を伸ばさなかっただけ。今さら惜しい?それとも自分が可哀想?」
翼
「お願い……もう、やめて……」
私は両手で、顔を覆った。
いつの間にか席を立った小野瀬さんが、背中から私の肩を抱いた。
小野瀬
「ここで泣かれると、俺が変な目で見られちゃうよ。おいで?」
☆選択です。
小野瀬さんについて行く……5
強く拒む……10
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