バッドエンドから始まる物語~穂積編~
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~穂積vision~
櫻井が明智と共に去ったのを見届けて、壁に肩でもたれていた俺は身体を動かし、背中を壁に預けた。
身体が重く、熱い。
震えの止まらない右手で、俺は、服の上から、左胸の下に手を当てた。
それを広げてみると、掌に、ベッタリと真紅の血。
くそ。
もうこんなに染みてきたか。
見なきゃよかった。
……さて、どうするか……。
まだ警護の最中だ。それでなくとも足りない人員を、俺なんかの為に割くわけにはいかない。
俺は左手で携帯を取り出し、小野瀬に電話をかけた。
小野瀬
『はーい』
いつも通りの小野瀬の声に、こんな時なのに笑えてくる。
穂積
「撃たれた」
小野瀬が、短く息を呑んだ。
穂積
「パーティー会場だ。襲撃の直後で警護は削れない。救急車は呼びたくない」
小野瀬
『俺がすぐ行く。止血して転がってろ。死ぬなよ』
小野瀬が立ち上がり、もう鑑識室を飛び出したのが気配で分かる。
穂積
「子供が生まれるんだ。まだ死ねない」
小野瀬
『フラグを立てるな!』
穂積
「だが、もしもの時は、お前、あいつを頼む」
小野瀬
『フラグを立てるな!!』
ずきり、と激痛が来た。
思わず携帯を落としたが、もう拾えない。
下を向いた弾みに、天地が逆転したからだ。
猛烈な吐き気とともに、俺は床に崩れ落ちていた。
自分が作った血溜まりが見える。
廊下まで絨毯敷きやがって。
これ、弁償したら幾らかかるんだろう。
翼
「泪さん!」
ああ、あいつの声がする。
まだちょっと早い気がするが、これが走馬灯ってやつかな。
翼
「泪さん!」
俺は瞼を開いた。
翼が真っ青な顔で、俺に駆け寄って来る。
翼
「まさか、撃たれてたなんて!すぐに救急車を呼びます!」
穂積
「……国際的なパーティーだぞ。……救急車は呼ぶな」
自分の声が掠れていてビックリした。
翼は、俺以上にビックリしたみたいだけど。
ぼろぼろと涙が落ちてくる。
穂積
「泣くなよ。身体に障る。あと、パンツ見えてる」
翼
「泪さん、泪さん、泪さん」
泣くなったら。
起きて抱き締めてやりたいけど、身体が動かない。
翼の方が縋りついてきた。
穂積
「……王女は?」
翼
「政府の方の席で歓談を始めたので、いったん政府のSPにお願いして、抜けて来ました。私、泪さんが、会場に来ないから、変だと思って」
素晴らしい判断力だ。成長したな。
遠くから、パトカーのサイレンが聴こえてきた。
あの、馬鹿。
ここで止めたらぶん殴るぞ。
だが、一時会場の前で停滞したように聴こえたサイレンは、そのまま、前を通過した。
それでいい。
数分とおかず、足音が迫って来た。
抜かりなく医者を連れてきたあたりは、さすが小野瀬だが。
小野瀬
「穂積!」
穂積
「てめえ……監察医連れて来やがったな」
小野瀬
「贅沢言うな」
医者
「まさか、穂積くんを診る事になるとは……」
顔馴染みの監察医は、人の好い顔に涙を浮かべている。
穂積
「生きてるうちにお会い出来て嬉しいですよ、先生」
医者
「……出血が多い。喋らない方がいい」
確かに、目の前が暗くなってきた。
穂積
「翼」
俺は、自分の手を握ってくれている翼の姿を探した。
翼
「はい」
穂積
「愛してる」
翼が、声を立てて泣き出した。
穂積
「俺は……お前の笑顔が、好きなんだ……」
それも、もう、見えない。
穂積
「だから……泣くなよ」
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