バッドエンドから始まる物語~穂積編~
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~翼vision~
私と泪さんが結婚して、数ヵ月後の事。
ニーナ王女が来日し、日本政府とトルキアとの間で、天然ガスの輸出入に関する条約が結ばれた。
同時期に開催が決まっていたエネルギー会議の為に警護の人員が不足しており、特命捜査室は再び、ニーナ王女の警護に当たっていた。
条約の調印式も無事に終わり、日を改めて開かれたパーティーの会場。
ニーナ王女の警備中、着替えに戻った控え室の雰囲気に違和感を感じた私は、王女を入室させる前に、室内を調べる事にした。
そこで、事件は起きた。
入り口の警備員さんが『何度も確認した』って言ったけど、何故か、首筋がチリチリするから。
どうしても、確かめないと気が済まない。
ひとりで部屋に入り、あちこち見た後、パウダールームの扉を開く。
次の瞬間、私の前に、黒い人影が飛び出して来た。
翼
「きゃあああ!」
私は、パウダールームから転がり出た。
本当に、襲撃犯が潜んでいたのだ!
犯人
「チッ!人違いか!侍女がいたなんて聞いてないぞ!」
すかさず回り込んだ犯人に、ドアチェーンをかけられ、外にいた明智さんや藤守さんは間に合わない。
私の顔の前に、銃口が突きつけられた。
犯人
「こっちに来い!お前は人質だ!」
混乱する私の脳裏に、閃くように泪さんの顔が浮かんだ。
その瞬間。
凄い速度で何かが宙を飛んで来て、犯人の頭を直撃した。
その勢いで、私にのし掛かっていた犯人の身体は、壁に叩きつけられていた。
目を開けた私の目に映ったのは、泪さんの濃紺のスーツ。
翼
「泪さん!」
穂積
「下がってろ!」
泪さんは続き部屋から椅子を投げ、犯人に命中させて昏倒させた後、如月さんとともに、部屋に飛び込んで来たのだ。
この時、私は気付かなかった。
もう一人の犯人の存在に。
穂積
「てめえっ!」
泪さんが怒鳴った。
その瞬間、私は見た。
私を狙っていた銃口。
それが、泪さんに向きを変えたのを。
警棒を手にしていた泪さんが、もう一方の手で拳銃を抜き撃ちした。
銃声が錯綜し、犯人の拳銃が弾き飛ばされる。
如月さんが犯人に組み付き、投げ技で抑え込む。
手錠がかかった。
部屋の外の仲間は、明智さんと藤守さんが確保していた。
穂積
「傷害の現行犯で、逮捕!」
最初に泪さんが投げた重そうな椅子の下敷きになった犯人は、さらに泪さんに踏みつけにされ、気を失った。
襲撃犯を護送する手配をした後。
穂積
「くそ」
泪さんは壁にもたれかかり、大きなため息をついた。
翼
「室長、大丈夫ですか?」
穂積
「お前のせいで大丈夫じゃねえ!」
振り向きざまに怒鳴られる。
穂積
「明智、全員もとの配置につかせろ。まだ警備は終わってない」
明智
「わかりました。櫻井、行くぞ」
翼
「あ、でも、室長が……」
穂積
「俺はしばらく休んでから行く。心配するな、すぐ戻る」
室長は私たちに背中を向ける。
明智
「では、会場に来て下さい」
穂積
「……ああ」
明智さんは私を引っ張って、エレベーターに乗り込む。
翼
「あの、室長は」
明智
「察してやれ。お前が撃たれるんじゃないかという恐怖が、ぶり返してきたんだよ」
翼
「え……」
明智
「助けるときは必死だったから、ホッとした今になって反動が来たんだろう。俺もSAT時代にはよく経験した」
翼
「……」
明智
「手が震えて冷や汗が出て止まらない。もう過ぎたことになのに、ちょっと遅れて戻ってくるんだな」
翼
「私、また心配をかけてしまったんですね」
気にするな、と言って、明智さんは、私の頭を撫でてくれた。
大丈夫かな、泪さん。
☆様子を見に戻る……12