バッドエンドから始まる物語~小野瀬編~
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
~翼vision~
その夜、私は、小野瀬さんと室長の行きつけのバーに誘われていた。
正直、複雑な気持ちだけど、やっぱり行かずにはいられない。
終業後、お化粧を直して通用口に向かうと、途中に小野瀬さんが立っていた。
相変わらず、たくさんの女性に囲まれている。
何故だろう。
今なら、冷静に見る事が出来る。
取り巻く女の子たちに対して、小野瀬さんは、まるで、まとわりつく子猫に対するような好意以上のものを持っていない。
それが、彼の眼差しや話し方、接する態度でよく分かる。
あの頃、こんな風に見る事が出来ていたら、もっと違う今があったかもしれないのに。
小野瀬さんが、私を見つけた。
小野瀬
「櫻井さん」
彼が手を振った瞬間、私はどきりとした。
……違う。
私に向けられる眼差しは、好意は、他の誰へのとも違う。
……今頃、気付くなんて。
声を掛けられただけなのに、ちくちくと刺すように向けられる視線の棘。
私はお辞儀をして、小野瀬さんと、彼を囲む人垣の横を通り抜けた。
翼
「お疲れ様でした」
ただの挨拶か、と警戒を解く取り巻きたち。
私は歩く速度を速めて、室長の待つ車に向かった。
室長は運転席のシートを倒して、横になっていた。
その窓を、軽く、コンコン、と叩いてから、後部座席のドアに近付くと、ロックが解除された。
室長と私の交際は、警視庁では特別な秘密ではない。
だから辺りを窺う必要も無く、するりと乗り込んだ。
乗ってしまえば、ブラインドガラスのおかげで、外からは私の姿が見えなくなる。
ようやく厄介な視線から逃れた気疲れからか、ほっと溜め息が出た。
穂積
「小野瀬は無理か」
室長がシートを起こす。
翼
「通用口で囲まれてました」
穂積
「だろうな、久し振りだから」
イグニッションキーを回し、エンジンをかける。
穂積
「あいつなら何とかして来る。先に行くぞ」
翼
「はい」
車は滑らかに走り出した。
バーまでは、車ならあっという間で、室長はその間、何も話さなかった。