バッドエンドから始まる物語~小野瀬編~
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~翼vision~
翼
「小野瀬さん、鑑識にいた頃より元気そうですね」
私は、隣を歩く室長を見上げた。
穂積
「向こうも忙しいけど、こちらのように不規則な勤務ではないからかしらね」
翼
「小野瀬さん、こちらでは二徹三徹当たり前でしたもんね」
私はクスクス笑った。
穂積
「元々あいつは科警研の人間だから。研究の方が、性に合うんじゃない?」
室長は階段を昇りながら、呟くように言った。
翼
「そうかもしれませんね。小野瀬さんなら……」
次の瞬間、私は、踊り場の壁に背中を押し付けられていた。
目の前には、室長の真顔。
穂積
「小野瀬、小野瀬、小野瀬か」
私はハッとした。
数ヵ月前、小野瀬さんが科警研に去った後、私は室長からの告白を受け、お付き合いを始めていた。
室長は、それまでの私と小野瀬さんの間に何があったのか、全て知っている。
私が小野瀬さんの言動に一喜一憂してきた事、キスされた事。
私が彼を好きだった事、でも、彼にとって、私は特別じゃなかった事。
知っていて、私を好きだと言ってくれた。
ずっと、好きだったと。
まだ、私と室長に男女の関係は無い。けれど、室長といる時は、小野瀬さんの事を考えずにいられた。
ただの片想いに終わった小野瀬さんへの私の恋心は、今、室長に向けられている。
その恋心が固まるまで、小野瀬さんを忘れるまで待つと言ってくれた、この優しい人の前で……私は。
私は、何て無神経なの。
けれど、室長の激情は一瞬で、次の瞬間、彼は私をそっと抱き締めていた。
穂積
「すまん」
室長の声も手も、震えていた。
穂積
「……そう簡単に、忘れられるはずがないよな」
翼
「室長……」
室長の背中に手をまわそうとしたけれど、それより早く、彼は離れた。
穂積
「今夜、小野瀬に会う事になってる。お前も来いよ」
そう言って微笑む室長の顔は、もう、いつもの優しい室長の顔だった。