★★ 仮面ライダー☆HOZUMI-episode 3- ★★
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仮面ライダー☆HOZUMIは警察官である。
秘密結社ネオ・ジョンスミスは首都圏制覇を企む悪の秘密結社である。
仮面ライダー☆HOZUMIは迫り来る陰謀から人々を守る為、特命を帯びてネオ・ジョンスミスと戦う!
これは、公務という名の試練に立ち向かう一人の男と、彼とともに巨大な敵に挑む仲間たちの物語---
その、第三話である。
★★ 仮面ライダー☆HOZUMI-episode 3- 宿敵!★★
穂積泪は不可解であった。
バイクで走る都心の空気に、いつもと違うところはない。
自分は今、秘密結社からの犯行声明を受けて、現場に臨場する最中のはずなのに、だ。
事実、後方からは、捜査室メンバーの乗る車が、サイレンを鳴らしながら穂積のバイクを追って来ている。
それなのにどうして、こうも緊張感が生まれないのか。
たぶん、この先に、ろくでもない事件の予感しかしないせいだ。
ああ、蝉が鳴いている。
秘密結社なんか放っといて、このまま、あいつらとキャンプにでも行っちまいてえなあ。
~千代田区スポーツセンター・屋内プール~
藤守
「……って、普通に営業続けてるんかい!!」
藤守のツッコミが、プールサイドに溢れる大勢の利用客の歓声に掻き消される。
千代田区スポーツセンターは、いつにも増して大賑わいであった。
おそらく数千匹はいるだろう。競泳用プールの水が赤く見えるほどの、夥しい数の金魚。
係員が外まで行列を作らせて、上手に人数制限をしながら、利用客を金魚プールで遊ばせている。
もちろん、プールサイドはその行列を作っている人たちで満杯だ。
あまりにも和気藹々とした雰囲気に、スーツ姿の穂積たちは完全に出鼻を挫かれた。
如月
「これ……このまま放っておいてもいいんじゃないですか?」
早速如月が日和るし、穂積自身も全く同感だが、そうもいかない。
プール側の許可無しに行われたこれは、明らかな威力業務妨害だからだ。
千代田区スポーツセンターはたまたま上手くいっているようだが、他のプールでは客から苦情が出たり塩素が強すぎて金魚が浮いたり、大混乱に陥っている場所もある。
まずはこの場の状況を記録した後、金魚を回収し、通常営業に戻さなければならない。
それはすなわち水を抜かなくてはならないという事であり、という事は営業を停止しなくてはならないという事であり、然る後に全ての金魚をプールからすくい上げなければならないという事でもある。
きゃあきゃあと楽しそうにはしゃいでいる子供たちの声を聞きながら、その子供たちのがっかりする顔を思い浮かべて、穂積はげんなりした。
本当に、このまま終業時刻まで放っておいてもいいんじゃないかと思った、その時。
建物の外で、悲鳴が上がった。
入り口に顔を向けると、翼が、一緒に周辺の聞き込みに当たっていた明智と共に、硬い表情でプールサイドに入って来るところだった。
二人は利用客たちを混乱させないよう、努めて冷静に穂積の傍らまで小走りで来てから、耳元に手を添えて小声で報告する。
翼
「室長、大変です!」
明智
「外に、怪人が現れました」
真面目な二人の真顔の報告。
ああ帰りたい、と穂積は思った。
体内の「ろくでもないセンサー」が反応している。
ひとまず金魚プールはそのままにして、仲間と共に外へ飛び出した穂積は、そこで目の当たりにした状況に、膝から崩れそうになった。
外にきれいな行列を作っていたはずの利用客が、緑色の全身タイツを着た一団と、巨大な黒い出目金に襲われて、大騒ぎになっていた。
客たちが悲鳴を上げて逃げ惑っているのは、子供たちが、尾ひれで立って二足歩行でもたもた走る黒出目金に追い掛け回されているからだ。
しかも全身タイツの集団の方は、それぞれが小さなバケツを持っていて、近くに置かれた大きなポリバケツから水を掬っては、人垣に向かって振り撒いている。
その水の中に、ご丁寧に個包装された小さな赤い金魚の形のグミのような菓子が入っており、子供たちは地面に落ちたそれを、争うようにして拾っているのだった。
炎天下の打ち水は、あっという間に乾いて、辺りは異様な熱気。
報告を受けながら、穂積は頭痛を覚えた。
R-プロジェクトは発動中だ。
という事は……
JS
「感じますよ、主役のオーラ!」
そこへ、人垣を割って笑顔で現れたのは、見覚えのある黒髪の美青年。
何のつもりか頭から二本の角を生やし、上半身裸の上に派手なローブを纏っている。
アブナイ。
だがその顔は、警視庁に送りつけられた犯行声明に映っていた、ネオ・ジョンスミスの首領、ジョンスミスに間違いなかった。
JS
「来てくれましたね、仮面ライダー☆HOZUMI!」
びしっ、とJSに指差され、その場の視線が穂積に集中する。
穂積は日本人でありながら金髪碧眼の長身だから、好奇の目で見られるのは慣れている。
が、さすがに、衆人環視の状況で「仮面ライダー」と名指しされるのは、迷惑だった。
もう逃げられないじゃないか。
穂積は溜め息をひとつ吐いて、覚悟を決めた。
ジャケットのボタンを外し、長い脚を肩幅に開いて立つ。
穂積
「ジョンスミス、悪いがさっさと終わらせてもらう」
右手で胸の内ポケットの警察手帳を取り出した穂積は、ジョンスミスに向かって、身分証を提示した。
穂積
「警視庁刑事部、穂積泪。お前を逮捕する為に……」
その時。
『穂積くん!』
穂積の左手が、ベルトに触れる直前で止まった。
スポーツセンターの玄関先に面した道路。
そこに、いつの間に来たのか、無音でパトライトだけを点灯させた、警視庁のパトカーが停まっていた。
その車の、助手席には……
穂積
「……副総監……?!」
そう。
パトカーの助手席から乗り出すようにして拡声器で穂積を呼んだのは、R-プロジェクトの最高責任者、警視庁副総監であった。
副総監
『穂積くん、頑張ってくれたまえ!』
さては、穂積の初出動を見届けに来たのか。
副総監
『無理して男らしさを装う必要は無いんだぞ!思う存分に戦いたまえ!オカマだっていいじゃないか人間だもの!』
大音声のせいで、近くの建物の窓からも、新たな見物人が次々と顔を出す。
穂積は泣きたくなった。
穂積
「(帰りたい……)」
せっかくの覚悟が萎れてゆく。
オカマ、オカマだって、とひそひそ囁き笑いあう声がさざ波のように聞こえてきて、居たたまれなさに顔が熱くなる。
だが、こうなったらもうやるしかない。
副総監に悪気はない。
純粋に、穂積がオカマだという噂を信じ、その個性を尊重しようとしてくれているだけなのだ。
とにかく敵を倒せば終わる。
とっとと終わらせて、早く帰って翼に慰めてもらおう。
JS
「あなたも大変みたいですね」
穂積
「うるさい!」
誰のせいでこうなったと思っているのか。
穂積
「警視庁刑事部、穂積泪!」
穂積は改めてジョン・スミスに身分証を突きつけ、裏声を張り上げた。
穂積
「アンタたちを逮捕する為に、特命を帯びてやって来たのよ!
警視庁の名において、特別法を発動するわ!」
手をかざすと同時にベルトから風が巻き起こって、穂積のジャケットと金髪がたなびきだす。
疾風の中に再び、穂積の黄色い声が響いた。
穂積
「変身!」
ベルト(小野瀬の声)
『変身!』
おネエ声と美声の競演とともに、穂積の全身は光と熱を放ち、一瞬で、目の眩むような変貌を遂げた。
輝く髪はフルフェイスのマスクと白銀のマフラーに。
閃光とともに再構成された三つ揃いは、ポリスブルーのバトルスーツに。
ベルトから下を覆う、コートのような白い裾が、風を受けて美しくはためいた。
群衆から、おおっ、と声が上がる。
脹ら脛までもある長い裾が華麗に翻り、完全に姿を変えた穂積の姿を彩る。
穂積
「仮面ライダーHOZUMI、臨場!」
子供たち
「りんじょうっ!!」
突如として現れた変身ヒーローに、穂積に見惚れていた周りの女性陣から声にならない落胆の声が漏れる。
一方、子供たちからは一斉に「変身した!」「ライダーだ!」「かっけえ!」「オカマだけど!」という大歓声が上がった。