いつか大人になる日まで
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おまけ
~明智家~
全員
「ごちそうさまでした!」
三人のお義姉さんと三人の娘たち、それに誠臣さんと私の賑やかな食事が終わる。
キッチンで片付けを始めた私たちの元に、娘たちがリュックサックを背負ってやって来た。
まき
「ママ、わたしたち、今夜はおとなりに泊まっていい?」
翼
「うちはいいけど……」
顔を上げると、三人のお義姉さんたちは、ニコニコしながら頷いている。
翼
「……明日は保育園もお休みだし、じゃあ、お義姉さんたち、お願い出来ますか?」
姉たち
「任せてー!」
まき、まみ、まり
「やったー!」
誠臣さんは、両腕を広げて三人の娘たちを呼び寄せ、抱き締めた。
明智
「いい子で泊めてもらうんだぞ」
まき、まみ、まり
「はーい!」
まき
「パパ、わたし、おとうとがいい!」
明智
「は?」
誠臣さんが固まった。
まみ、まり
「わたしも」「わたしもー」
娘たちは無邪気に笑っている。
まき
「あのね、お姉ちゃんたちがね。そろそろ、パパとママに、あかちゃんつくってもらいなさいって」
まみ
「だから、わたしたち、おとなりで寝るの」
まり
「あかちゃんは、パパとママがふたりだけでつくるんだって。そうでしょ?」
明智
「……」
翼
「……」
姉たち
「はーい、それじゃ、お隣に出発!」
まき、まみ、まり
「はーい!」
真っ赤になって絶句する私と誠臣さんを置いて、三人のお義姉さんたちと三人の娘たちは、元気よく玄関を出て行った。
明智
「……どうする?」
翼
「知りません!」
~藤守家~
翼
「ところで、ずっと気になってたんだけど。賢史くん、大人しくない?」
たこ焼きを頬張りながら聞くと、温いお茶をすすっていた賢史くんの身体が、びくんと跳ねた。
藤守
「な、なな何を言い出すのかなきみは。僕はこれが普通だろ?」
翼
「……怪しい。捜査室でも、あまり会話に加わらなかったし」
賢太郎
「お母ん、鋭い!」
藤守
「あっ、こら言うたらあかん!」
賢太郎
「お父ん、じつは虫歯が痛いねん」
藤守
「わー!裏切り者!」
虫歯?
翼
「だからたこ焼き食べないのね?!歯医者さんに行こう!すぐ行こう!」
藤守
「大丈夫!痛ない!ほら!」
そう言ってたこ焼きを口に放りこんだ賢史くんだったけれど、口の中でたこ焼きを噛み締めた途端、悶絶した。
賢太郎
「痛いんやな」
翼
「賢史くんて、歯医者さんが怖いの?」
藤守
「怖ない!俺はあの、チュイーンいう音が嫌いなだけや!」
賢太郎
「怖いんやな」
翼
「さあ行こう!今行こう!」
藤守
「嫌や!やめてー!」
~小笠原家~
涼子
「ルーマニア人に負けた」
小笠原
「記録は102連勝でストップだね。絶対に負けないよう、ソフト改造してあげようか」
涼子
「お願いします」
翼
「反則ダメーーー!!」
~如月家~
光輝
「父方がハ●で母方が●ゲてない場合、俺がハ●る確率は50%だと思うんだよね」
まだ気にしてます。
まあ、今は、二人で煮干しをかじりながら、仲良く話をしているからいいけど。
如月
「隔世遺伝ていう説もあるよなー」
光輝
「問題は頭皮なんだってさ、頭皮」
如月
「俺の頭を見るな!」
光輝
「俺だって見たくねえよ!だいたい何だよ『光輝』って名前はよ!」
如月
「……『光り輝く』、いい名前じゃん」
光輝
「親父が寝てる時、頭に・◎・って書いてやるからな!あと、お袋!笑い過ぎ!」
~小野瀬家~
藍
「ねえ、お父さん」
進路の話の後、食事をしながら、不意に、娘が目を輝かせた。
藍
「あたし、警察官になったら、穂積のおじ様の下で働きたいな」
小野瀬
「え?」
葵は、箸を上げたままの姿勢で固まっている。
藍
「お母さんは、おじ様に育ててもらって、立派な警察官になれたんでしょ?だから、あたしも」
小野瀬
「………」
藍
「それに」
小野瀬
「……それに?」
藍
「今どき、三十ぐらいの歳の差夫婦なんか、珍しくないよね?」
きゃ、と恥ずかしそうに言って、赤い頬を押さえる娘。
小野瀬
「……!……」
葵の手から、箸が、音を立てて落ちた。
~穂積家~
泪さんの腕の中で、私は思い付くままに未来を語る。
翼
「……ベビーカーで散歩したり、保育園にお迎えに行ったり」
穂積
「小学生になったら、ジジイが俺にしたのとそっくり同じ目に遭わせてやる」
翼
「中学生になったら、泪さんが勉強教えてあげてね」
穂積
「高校生の人生相談はお前か?」
翼
「大学生になって、社会人になって」
穂積
「恋をして、結婚して、またお前と二人になったら、乾杯しよう」
翼
「うん。……それからお爺ちゃんになって、お婆ちゃんになって……」
私と泪さんは、いつしか、どちらからともなく見つめあっていた。
穂積
「一緒の墓に入ろうな」
翼
「うん。私、泪さんと、ずーっと一緒にいる」
泪さんにくしゃくしゃと髪を撫でてもらって、私はうっとりと目を閉じた。
翼
「……あれ?」
穂積
「うん?」
翼
「……あれれ」
穂積
「どうした?」
翼
「……お腹が、痛い」
穂積
「えっ?!」
痛くて怖くて苦しくて。
子供は皆泣きながら生まれてくる。
でも、安心して。
あなたたちを待っててくれる人が、守ってくれる人が必ずいる。
私も今、痛くて怖くて苦しいけど。
でも、大丈夫。
ずっと離さずに手を握ってくれている人が、ここにいるから。
一緒に生きて行くために。
産声が聴こえてきた。
私は微笑んで、大きく息を吐いた。
~END~