★★ 仮面ライダー☆HOZUMI-episode1- ★★
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数日後。
穂積と捜査室メンバーは、警視庁グラウンドに来ていた。
グラウンドの中央にただ一人、いつもの紺の三つ揃いで立つ穂積の腰には、近未来的でスタイリッシュでありながら、どこかノスタルジックな白銀のベルト。
その穂積の姿を、少し離れたトラックの一角で見守る捜査室メンバーたち。
明智と翼の手には重箱とランチボックス、そしてレジャーシート。
他のメンバーたちの手にも、それぞれカメラやビデオが握られている。
明智
「……これは確か、警察庁の最新プロジェクトの実験だろう?それなのに、こんな雰囲気でいいのか?」
明智が心配するのも無理はない。
様々な機材を持ち込んで、穂積の状態をチェックする準備に余念の無いR-プロジェクトのスタッフたちと、
ここまでのプロジェクトの進捗状況を確認する為に招かれたのだろう、警察庁と警視庁の幹部の方々はともかくとして。
トラックの外周に設けられた芝生のスペースは開放され、そこには、日曜日の早朝にも関わらず、家族連れや近所の住人たちが集まっていた。
中には正しい情報を元に訪れたらしいマニアックな青年たちもちらほらいるが、ほとんどは何が始まるのかも知らない様子で、寝転んだり、走り回ったりして寛いでいる。
明智
「何というか、その……オープン過ぎはしないか?」
まだ心配そうな明智に、小笠原が手元の資料を広げた。
小笠原
「説明によれば、ライダープロジェクトは税金で賄われているから、その成果を一般市民に見てもらうのは当然だと言っていたけど」
如月
「つまり、警察の宣伝ですか?」
小笠原
「そういう事」
明智
「緊急特命捜査室も、業務内容は機密ではあるものの、存在自体は警察宣伝の一環だという面があるのは知っているが。それと同じような事か」
小野瀬
「まあ、穂積のライダー活動は、今後、人目につく可能性が高いわけで、確かに、周知させておく必要はあるよね」
翼
「正義の味方なのに、不審者として通報されちゃったら洒落にならないですもんね……」
メンバーたちが、穂積を遠目に見ながら思い思いの事を言っていると、不意に、スピーカーから声が聞こえてきた。
スタッフ
『……それでは、ただ今より、警察庁R-プロジェクトチームによる、仮面ライダー変身実験を開始致します。皆様、トラックより外側にてご観覧下さいませ……』
如月
「あっ、始まるみたい」
藤守
「トラックの外に出なあかんの?」
翼
「(泪さん、頑張って)」
ぞろぞろと歩き出しながら、翼は穂積に向けて、ぎゅぎゅっと拳を握ってみせた。
トラックの外の芝生の上にレジャーシートを敷き、前列に如月、翼、小笠原、後列に藤守、小野瀬、明智と並んで、体育座りで穂積を見つめる。
捜査室のメンバーたちと同じ様に観客たちが移動を終え、会場の準備が整うと、全員の視線が、たった一人でグラウンドの中央に立つ穂積に集中した。
如月
「離れた所からこうして改めて見ると、室長って、やっぱりスタイルいいですねー」
小野瀬
「うん、惚れ惚れするねえ。ねっ、櫻井さん」
小笠原
「しーっ」
口の前に人差し指を立てた小笠原にたしなめられて、小野瀬への返事はしなかったものの、翼も全く同感だった。
明るい場所では金色に輝く髪。
完璧な美貌と均整のとれたプロポーション。
いつも自信に満ちていて、真っ直ぐに前を向いている眼差し。
さっきから観客の女性たちがしきりに化粧を直しているような気がするのも、翼の気のせいではないだろう。
如月
「翼ちゃん、どうする?室長ライダーが人気者になったら、ライバルがまた一気に増えちゃうかもだよ?」
翼
「警察のライダーが人気者になるのはいい事ですよね。それに、室長は浮気なんてしないと信じてます」
如月
「うっわーノロケられちゃったー!」
ふざけているように装っているけれど、如月が気を遣ってくれているのは分かっている。
翼はわざとらしくのけぞる如月のリアクションに笑っていたが、ふと、不安な面持ちに変わった。
翼
「……それより、大丈夫でしょうか?」
藤守
「何がや?」
三脚を立てた藤守のカメラは、もうすでに録画を始めている。
翼
「室長、ずっと、『ライダーなんかやりたくない』って言ってたのに……」
心配そうに呟いた翼に、隣に座っている小野瀬が微笑んだ。
小野瀬
「大丈夫。今日は実験用のセリフを言うだけだし、アイツは、根が真面目だからね。やる時はやる男だよ。……ほら!」
小野瀬の声に、翼は急いで穂積に視線を戻した。
その瞬間は、突然訪れた。
スタッフ
『ミッション、スタート!』
声を合図に、穂積が動いた。
長い脚を肩幅に開いて立っていた体勢から、右手で胸の内ポケットの警察手帳を取り出し、警察関係者の居並ぶ正面に向かって、身分証を提示する。
穂積
『警視庁刑事部、穂積泪』
身体のどこかにマイクが着けられているのか、増幅された穂積の落ち着いた声が、グラウンドに響いた。
穂積
『お前を逮捕する為に、特命を帯びてやって来た』
王子様のような穂積の男前な声に、観客の中にいる奥さまたちがざわめきだしている。
翼はひやひやしながらも、穂積から視線を逸らせずにいた。
穂積
『警視庁の名において、特別法を発動する!』
穂積の左手が、ベルトに触れた。
同時にベルトから風が巻き起こって、穂積のジャケットと髪がたなびく。
疾風の中に再び、穂積の声が響いた。
穂積
『変身!』
ベルト
『(小野瀬の声)変身!』
ぞくぞくするような美声の競演とともに、穂積の全身は光を放ち、一瞬で、目の眩むような変貌を遂げた。
輝く髪はフルフェイスのマスクと白銀のマフラーに。
閃光とともに再構成された三つ揃いは、ポリスブルーのバトルスーツに。
ベルトから下を覆う、コートのような白い裾が、風を受けて美しくはためく。
関係者の席からも、おおっ、と声が上がった。
脹ら脛までもある長い裾が華麗に翻る様は、長身の穂積ならではの効果だと言えよう。
突如として現れた変身ヒーローに、観客の子供たちから一斉に「うわー!」「ライダーだ!」「かっけえ!」という大歓声が上がった。
穂積
『仮面ライダーHOZUMI、臨場!』
子供たち
「りんじょうっ!!」
すかさず真似をする子供たちの声がまだ消えないうちに、スタッフの声が重なった。
スタッフ
『ノーマルモードのポリスブルーに続き、チェリーピンクモード、発動!』
穂積
「(は?)」
うっかり間抜けな声を出しそうになって、穂積は息を飲み込んだ。
スタッフからの遠隔操作なのか、穂積の指令で動くはずのベルトが、勝手に作動し始める。
ベルト
『(小野瀬の声)チェリーピンクモード、発動!』
焦ったのは、立ち尽くしていた穂積だ。
穂積
「(勝手にいい声出してるんじゃねえよ!)」
が、小野瀬の声が応えたという事は、ベルトに命令が伝達されたという事で。
再びベルトから風が巻き起こって、穂積の身体が熱と閃光に包まれた。
穂積
「(うわ!)」
スタッフ
『フェロモンを放出し、愛の力で敵を鎮める。桜田門の桜色、チェリーピンクモード!』
穂積を包む光が消えた時、さっきまでブルーだったライダースーツは、全身華やかなピンク色に変化していた。
穂積からは分からないが、複眼の色も濃いピンクに変わる。
マフラーは白銀のままなので、ツートーンの愛らしいカラーリング。
ひらめく裾はドレスのよう。
翼
「可愛いっ」
翼が思わず声に出したのと時を同じくして、子供たちからも再び歓声が上がった。
「ピンクだ!」「オカマだ!」「オカマライダーだ!」
戸惑う穂積をよそに、さらにスタッフの声が追い討ちをかける。
スタッフ
『変身モードには他に、武器と連動したガングレーモード、スピードに特化したイエローモードなど、七色のラインナップを揃える予定です』
穂積
「(ふざけんなーー!)」
スタッフ
『さらに、パワーリミッターを外した最強のブラックモード、通称「桜田門の悪魔モード」では……』
穂積
「(やめてくれーーーー!!)」
会場の雰囲気ばかりが盛り上がっていく中、声にならない穂積の悲鳴が、日曜の朝の青い空に消えていった。
仮面ライダー☆HOZUMI。
これは、公務という名の試練に立ち向かう一人の男と、彼とともに巨大な敵に挑む、仲間たちの物語である。
しかし、我らの仮面ライダー、穂積泪は、まだ知らない。
この日、この変身のデモンストレーションを、ひそかに見つめる影があった事を。
そして、変身によって得た、自らの新しい能力の全てを。
目覚めよ、穂積泪!
戦え、仮面ライダー☆HOZUMI!
続く!!