★★ 仮面ライダー☆HOZUMI-episode1- ★★
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仮面ライダー☆HOZUMIは警察官である。
秘密結社ネオ・ジョンスミスは首都圏制覇を企む悪の秘密結社である。
仮面ライダー☆HOZUMIは迫り来る陰謀から人々を守る為、特命を帯びてネオ・ジョンスミスと戦う!
これは、公務という名の試練に立ち向かう一人の男と、彼とともに巨大な敵に挑む仲間たちの物語---
その、第一話である。
★★ 仮面ライダー☆HOZUMI-episode1- 変身!★★
穂積泪は不愉快であった。
今、緊急特命捜査室の室長席に座った彼の目の前には彼の部下たちが顔を揃えていて、いつも以上に楽しそうに談笑している。
彼らの話題は、たった今辞令を受け取って来たばかりの、穂積の新しい任務についてだ。
主に、穂積のサポートを命じられた彼ら自身の仕事の変化について。
そして、警察庁の新規プロジェクトである仮面ライダーに選ばれたという事が、どれほど名誉な事なのかについて、だ。
だが、穂積にとっては、正直、名誉などどうでもいい。
R-プロジェクトの総責任者である警視庁副総監から直々に指名されたのは確かに光栄な事だが、皮肉な事に、その副総監から拝命と同時に賜ったお言葉が、今もまだ、穂積を不愉快にしていたのだった。
副総監
「穂積くん、安心したまえ。きみには多少、変わった性癖があるようだが、それは、きみがライダーになる上では、なんの障害にもならない」
副総監
「オカマだろうが、おネエ言葉のライダーだろうが、結構。実に結構。頑張ってくれたまえ!」
いっそ差し障りがあって欲しかった。
穂積
「…………はあ」
珍しく溜め息を繰り返す上司の姿に気付くと、部下たちは振り返って、口々に穂積に声をかけてきた。
明智
「元気を出してください、室長。ヒーローに溜め息は似合いません」
如月
「そうですよ。仮面ライダーは日本中の男の子の憧れじゃないですか!」
明智は真剣に励まし、如月は半分笑った目を穂積に向けている。
藤守
「ええなあ。俺も、ライダーになりたかったなあ……」
藤守は羨望の眼差しで穂積を見ている。
プライベートでもバイクに乗る藤守にとって、仮面ライダーはやはり格別な存在らしい。
小笠原
「明智さんと藤守さんも、候補者には入ってたんだよ」
藤守
「え、ホンマか?うっわ、何で俺選ばれへんねん」
小笠原のやつ、また、人事のデータをハッキングしたのだろうか。
そうは思ったが、ツッコむ気力も湧かず、穂積は室長席で頬杖をついていた。
小笠原
「明智さんは女性に弱いから。藤守さんはメンタルが弱いから、らしいよ」
如月
「言えてるー」
如月がケラケラと笑う。
しかしそう言う如月自身、柔道の有段者だし、足も速い。
年齢は穂積より若いし、顔だって可愛い。
穂積の目には、いかにも平成ライダーに相応しい容貌に思える。
穂積
「なんで如月じゃねえんだよ?」
翼
「……室長、オカマキャラ忘れてますよ……」
穂積の傍らに来て、熱い番茶の入った湯呑みを置きながら、翼が心配そうに囁いた。
小笠原
「如月は頭が悪いから」
明智と藤守を笑っていた如月を、小笠原がバッサリと切って落とす。
如月
「うわーん!どうせ高校も大学も柔道推薦ですよー!」
如月の泣き声を聞きながら、穂積は机に両肘をついて頭を抱えた。
そこへ。
廊下から上機嫌な鼻歌が近付いて来た。
捜査室の扉が開き、柑橘系の爽やかな香りとともに、その持ち主が室内に入って来る。
現れた小野瀬はメンバーたちの視線を集めてくるりと回り、優雅にお辞儀をした。
小野瀬
「ほーづみ。聞いたよ?ライダーに選ばれたんだって?おめでとう」
笑いを含んだ小野瀬の声に、穂積が恨めしげに視線を上げた。
小野瀬
「でね。それに伴いまして俺、ライダーベルトの声に選ばれちゃいました♪」
全員
「……はあ?!」
小野瀬
「『ライダーベルトの声』だってば」
喜色満面の小野瀬が、その笑顔と美声を穂積に向ける。
小野瀬
「ふふ、俺の声で穂積が変身するなんて、何だかドキドキしちゃうな」
穂積
「変身?」
小野瀬
「そう。『へ・ん・し・ん』」
穂積がゆっくりと身体を起こす。
が、心なしか、その金髪碧眼の美貌が引きつっているような。
穂積
「…………変身?!」
小野瀬がもたらした「変身」という新しい情報は、またしても、捜査室にいるメンバーたちを大いに盛り上がらせた。
藤守
「やっぱ、ライダーと言ったら変身ですよね!」
藤守は大はしゃぎだ。
小野瀬
「スーツのデザインは、もう完成間近らしいよ。穂積のライダー決定を受けて、プログラミングの製作も急ピッチで進められている」
穂積
「……」
小笠原
「マスクは室長をイメージして、碧色の複眼になるらしい」
藤守
「やっぱ、ライダーと言ったら複眼ですよね!」
明智
「スーツのイメージカラーは、ポリスカラーの青だと聞いたが」
如月
「最近のライダーは、戦闘モードによってカラーリングが変わるんですよ!」
穂積
「戦闘モードって何だ……」
メンバーのノリについていけない穂積は、げんなりしながら呟いた。
穂積
「俺、事件が起きたら作業服に着替えて、警視庁からバイクで臨場するんだとばかり」
藤守
「夢を壊さんといて下さいよー。『着替えて』とか言わんといてー」
藤守が悲しそうな顔をする。
小笠原
「最近、警視庁が製法特許を取得した、装着する事によって潜在能力を高め、通常時の7倍の身体能力を発揮出来る強化スーツが、ライダーの基本装備だよ」
小笠原が眼鏡を持ち上げた。
小笠原
「予め装着しているベルトが空中の元素を固定する働きをして、瞬時にスーツを装着させる。3Gプリンターを想像してもらえば、分かりやすいかな?だから、ベルトさえ着けていれば、わざわざ警視庁から出動する必要は無いんだよ」
小野瀬
「空中元素固定装置の内蔵されたベルトは、穂積の掌紋、声紋を内部センサーが感知して作動する。つまり、そのセンサーの反応音が、俺の声、ってわけ」
理系二人の説明を、藤守と如月は子供のように目を輝かせながら、ふんふんと聞いている。
徐々に、いや、もうすでに後戻りできないほど着実に準備は進んでいるのだが、問題は、困った事に、肝心の穂積に、まるでやる気が湧いてこない事だ。
穂積
「……はあ……」
ふと、傍らに立っている翼の、空になったお盆を抱いている手が震えている事に気付いて、穂積は視線を上げた。
穂積
「?」
穂積は翼の顔を見た。
すると、驚いた事に彼の恋人は唇をきゅっと結んで、なんと、穂積を真っ直ぐに見下ろしているではないか。
真剣な表情の翼と思いがけず目が合って、さすがの穂積もちょっと面食らった。
穂積
「どうした、櫻井?」
翼
「……裾……」
穂積
「……すそ?……」
穂積の怪訝な声に、全員の注目が、穂積と翼に集まった。
穂積
「『すそ』って何だ?」
穂積に問われて、翼の頬がぽっと染まった。
翼
「スーツの裾です!」
穂積
「…は?」
話の見えない穂積をよそに、他のメンバーたちには、翼の言いたい事が見え始めていた。
翼
「私、室長が動く時、ジャケットや、ロングコートの裾がひらめくの、凄く好きなんです!!」
穂積
「……は?」
翼
「ですから!」
頬を染めた翼が、思い切ったように穂積に懇願した。
翼
「泪さ……室長が変身した後のライダースーツに、動くと、こう、ひらめくような裾を付けてもらえませんか?!」
穂積
「………はあ?!」
メンバーたちが笑いを堪えている。
今まで知らなかった彼女の意外なこだわりに若干引き気味になりながらも、最愛の翼の頼みとなれば無下に断る事も出来ず。
穂積は首を傾げながらも、「まあ、頼んでみるけど……」と、力無く答えるしかなかったのであった……。