☆☆警視庁戦隊!サクラダモン・NEO!!~第二章~☆☆
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~エピローグ・警視庁~
如月
「結局、『ファウストの指環』って何だったんでしょうね」
いつもの午後、いつもの捜査室。
明智の用意してくれたマカロンとセイロンティーでティータイムを過ごしながら、如月がぽつりと呟いた。
小笠原
「さあね。小野瀬さんは科警研、穂積さんは警察庁に復職したけど、アオイデスとルイデスになってた間の記憶は全く残っていないらしいし」
藤守
「スミスデスはあれきり姿をくらましてもうたし、《「大人の秘密基地」ホストクラブ・J》は閉店してしもた。こうなってみると、もう一度くらい、店内でキレイなホステスさんたちと遊んでおきたかった気もするわー」
藤守兄
「低俗な感想を述べるのはよせ、愚弟!証拠品である指環が散らばってしまったせいで、山田の悪事を暴く事が出来なくなってしまったのだぞ!そもそもお前は……」
明智
「やれやれ、相変わらずね。ねえ、櫻井?」
室内の騒ぎに肩を竦めて、明智が翼に苦笑を向ける。
明智に声を掛けられた事に気付いて、同じように苦笑を浮かべた翼だが、その笑顔はひどくぎこちない。
明智
「……櫻井」
翼
「す、すみません。ちょっとだけ、ぼんやりしてました」
穂積は結局、あの採石場では目を覚まさず、明智たちに運ばれた病院で意識を回復した。
そしてやはり、小野瀬と同じように、秘密結社ジョン・スミスとの関わりも、指環の事も、何ひとつ覚えていなかった。
もちろん、翼の事も……。
翼
「心配しないでください。他の指環と一緒に、お祖母ちゃんの指環も何処かへ行ってしまいましたけど、私、何だかスッキリしてるんです」
明智に向ける笑顔は沈む心を隠す虚勢だが、言っている事は嘘ではなかった。
きっと、今あの指環を見たら大泣きしてしまう。
翼はそう思っていた。
だから、忘れてしまおう。
穂積への想いとともに。
明智
「でもね、櫻井……」
その時、明智の席の電話が鳴った。
明智は後ろ髪を引かれる様子ながら、電話に出る。
それを潮時に、翼は立ち上がった。
そろそろお茶を片付けて、洗い物を済ませたら、今日の仕事を終わらせよう。
それから、久し振りに街へ出て、お買い物をしよう。
流行りの服でもいい、お菓子でも、ずっと欲しかったあの靴でもいい。
この気持ちが、少しでも晴れるなら。
そんな事を思いながら給湯室に向かいかけた翼を、受話器を置いた明智が呼び止めた。
明智
「櫻井、鑑識に依頼してあった証拠品の解析が出来上がったらしいの。細野ラボへ行って、データをもらってきてくれるかしら」
翼
「あ、はい」
明智には悪いが、助かった、と翼は思った。
あまり気を遣われるのも申し訳ないし、正直言って、本当に忘れてしまいたいのだ。
仕事に集中している間は、悲しい事は忘れていられる。
拳をぎゅっぎゅっと握り、気合いを入れてラボに向かった翼を待っていたのは、けれど、意外な人物だった。
小野瀬
「やあ。櫻井さん……だったね?」
細野ラボで翼を待っていたのは、なんと小野瀬だった。
翼
「アオ……小野瀬さん!なぜ、警視庁に?!」
驚く翼を迎え入れながら、小野瀬が優雅に微笑んだ。
小野瀬
「出向が決まってね。俺、次年度から、このラボの責任者になるんだ」
翼
「えっ、そうなんですか」
小野瀬
「よろしくね」
明智の言っていたデータを差し出しながら、小野瀬が笑った。
小野瀬
「さて、と。じゃあ、俺はこれで」
そう言うと、翼を残して出ていこうとする小野瀬に驚いて、翼は「あっ、私も」と慌てて後を追う。
けれど、扉まで来た所で、振り向いた小野瀬は笑って翼を押し留めた。
小野瀬
「ああ、きみは残って」
翼
「でも、他にどなたもいらっしゃらないし、データも頂いたので、もう……」
するとその時、外から扉が開いた。
入って来たのは、……警察庁にいるはずの、穂積。
翼は息を飲んだ。
穂積
「櫻井さん、お時間を頂けますか」
他人行儀なのに、懐かしい声。
胸が締めつけられて、翼は泣きそうになってしまう。
小野瀬
「じゃあ、またね」
耳元で囁いて、小さく手を振りながら、小野瀬が出て行ってしまう。
翼
「……」
扉が閉まり、穂積と二人きりになって、翼は途方に暮れた。
穂積
「どうぞ」
鑑識にあるソファーを翼に勧め、自分は立ったままで、穂積が話し出した。
穂積
「……実は、次年度から、わたしが緊急特命捜査室の室長になる事が決まりました」
翼
「えっ?!」
寝耳に水の話だった。
翼
「じゃあ、明智室長は?!」
思わず立ち上がる。
穂積
「明智には、もちろん、捜査室に残ってもらいます」
穂積の説明によれば、元々、緊急特命捜査室の室長は、穂積の為に用意されていたポストなのだという。
確かに、警察庁と警視庁との連係を目的として実験的に新設された捜査室に、準キャリアの明智が配置されるのは不自然だ、と設立当初から噂されてきたし、明智本人も首を傾げていた。
でもそれが、穂積が行方不明になっていたからだったとは。
穂積
「明智も、快く室長補佐を引き受けてくれました」
翼
「そうですか」
明智の心情を思って、翼はホッとした。
明智が不相応を自覚していた室長の重責から免れて、しかも、今まで通り捜査室にいて、皆をまとめてくれるなら、翼にとっても歓迎すべき事だ。
微笑しかけて、穂積の存在を思い出した翼は、また、表情を暗くした。
そう、それは同時に、穂積とも毎日顔を合わせなければならなくなる、という事。
目の前にいる、ルイでも、ルイデスでも、穂積さんでもない、初対面のこの「穂積室長」と。
自分に耐えられるだろうか。
翼
「……」
俯いた翼の顔の前に、不意に、一通の封筒が差し出された。
翼
「?」
穂積
「開けてみて」
穂積に促されて、翼が糊付けされていない封筒を開くと、中から、小さな鍵がひとつ、出てきた。
見覚えのあるような、鍵。
翼
「……これ……、……もしかして……」
顔を上げて尋ねると、そこにいた穂積は、穏やかに微笑んで、頷いた。
穂積
「『ファウストの第一の指環』」
聞き覚えのある単語が穂積の口から出て、翼はどきりとした。
穂積
「今朝、わたしの部屋の郵便受けに入っていて……勝手ながら、銀行の貸金庫に入れさせてもらいました」
どきん、どきん、どきん。
翼の胸の高鳴りは止まらない。
穂積
「それは、指環を入れた貸金庫の鍵。暗証番号は」
翼の見つめる先で、穂積が悪戯っぽく笑いながら、指先で、自分の頭をとんとんと叩いてみせた。
穂積
「二人が揃わないと、金庫は開かない。あなたが求める時には、いつでも鍵を開けるお手伝いをしますよ」
翼
「……穂積、さん……」
穂積が一歩前に出て、まだ呆然としている翼を見つめる。
穂積
「……お前は指環に選ばれた。たとえ金庫の中にあっても、指環はお前を守るだろう」
翼
「……!……」
穂積
「俺がお前を忘れないように」
穂積が微笑む。
翼
「穂積さん……!」
翼は全てを理解した。
溢れ出す翼の涙ごと、穂積の手が翼の頬を包む。
言いたい事も聞きたい事もたくさんあるのに、翼は声にする事が出来ない。
穂積
「愛してる、翼」
唇が、触れた。
翼は穂積に抱きついた。
互いに求めあい、何度も何度も唇を重ねる。
穂積
「もう、二度と離さない」
深い口づけを交わした後、穂積は笑顔で翼を抱え上げた。
翼はそれに応えて、泣きながら頷き続ける。
運命の不思議な巡り合わせと、自分に指環を遺してくれた祖母の深い愛。そして、共に戦ってくれた仲間たち。
翼は、あふれて来る感謝と幸せを、穂積の温もりとともに、全身に感じていた……。
警視庁戦隊!サクラダモン・NEO!!
指環に選ばれた戦士たちの活躍は、こうして幕を閉じた!
警視庁戦隊!サクラダモン・NEO!!
いつの日か、サクラダモンの勇名を受け継ぐ、新たな戦士が現れるのか?
それとももう二度と現れないのか?
それは誰も知らない!
ひとまず、ご愛読ありがとう!
今回のナレーションは、翼を愛するあまり、ところにより主観を交えた実況をしてしまったものの、反省はしても後悔はしていない、No.1ホストルイこと魔王ルイデスこと穂積泪がお送りしました。
警視庁戦隊!サクラダモン・NEO!!
明智のお母さんキャラは今日も健在!
秘密結社ジョン・スミス!
美しいお嬢さんは、暗い夜道とJSにご用心!
それでは皆様ご一緒に!
警視庁戦隊!サクラダモン・NEO!!
ごきげんようさようなら!!
とう!
~END~