☆☆警視庁戦隊!サクラダモン・NEO!!~第二章~☆☆
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『ファウストの指環』を全て手にし、壮大な夢を語るスミスデスを、サクラダモンたちは、変身の解けた姿で崖の下から見上げていた。
いや、それはもはや夢ではない。
一から十までの指環を全て揃えた時、『ファウストの指環』は持ち主の望みを叶え、奇跡を見せるという。
たった今、スミスデスは、ついに指環の奇跡を手に入れたのだ……。
だが、世界を手に入れるという大それた望みを叶えたにも関わらず、特別、目に見える変化は起きない。
それとも、スミスデスにだけは、何か明らかな兆しが見えているのだろうか?
明智とアニも、他のメンバーたちも、訝しむような表情を見合わせている。
痺れを切らした藤守が、隣に座り込んでいる小笠原を肘でつついて、小声で尋ねた。
藤守
「……おい、小笠原。状況を説明しろや」
小笠原
「分からない。スミスデスの手元にあるのは確かに『ファウストの指環』で、しかも、ちゃんと十個揃っているように見えるけど……」
小笠原が神妙な顔をする。
小笠原
「指環の奇跡は、十個を揃えたその瞬間、持ち主の望みを叶えると言われている。それが現れないとすると、偽物が混ざっているか、それとも……」
一方、こちらは崖の上。
スミスデスは下ろした両手の指環を見つめて、まだ呆然としていた。
ルイデスは少し離れた場所からスミスデスを見守りながらも、出血しているアオイデスの顔にハンカチを当てたりして介抱しており、翼も、所在なくその傍らに佇んでいた。
スミスデス
「……どういう事だ?」
ルイデス
「えっ?」
ようやく発したスミスデスの言葉の意味を測りかねて、ルイデスが聞き返す。
スミスデス
「……何も、起こらない」
翼
「えっ?」
今度は翼が聞き咎める。
スミスデス
「何も見えない!何も感じない!」
ルイデス
「そんな、馬鹿な!」
いつも冷静なルイデスが叫んだのを見て、翼は状況を理解した。
明智
「櫻井?!無事なの?!」
異常を察知して、崖の下から明智が声をかけてくる。
翼
「私は、大丈夫です!……それより、スミスデスが、指環の奇跡が現れないと……きゃあ!」
崖の下に向かって大声で応えていた翼の腕を、突然、スミスデスが背後から掴んで引き寄せた。
翼
「な、何?!嫌、離して!」
スミスデス
「最後の指環をどうした?!」
スミスデスに詰問されて、翼は驚きに目を見開いた。
翼
「わ、私は、何も!」
スミスデス
「いつの間に、指環をすり替えたんだ?!」
今まで紳士的だったスミスデスに手首を掴まれ、大声で問い詰められて、翼は震え上がった。
ルイデス
「スミスデス様!」
二人の間に、ローブを翻して早足で近付いたルイデスが割って入り、翼を背中に庇う。
ルイデス
「落ち着いてください!」
敵だとは分かっていながらも、翼は、スミスデスから逃れて、ルイデスの背中に縋りついた。
ルイデス
「彼女が持っていた指環は本物です!さっきの輝きを、スミスデス様もご覧になったでしょう?!」
スミスデス
「見たからこそ、この状況が理解できないんだよ!何故だ?この女が、指環を守るために、何か細工をしたとしか……!」
言い争う二人の声を聞きながら、翼は、ルイデスの背中に、不思議な安堵感を感じていた。
自分を守ってくれる、広い背中。
何故だろう、不思議と懐かしい。
前にも、こんな事があった気がする……。
明智
「やめなさい、スミスデス!」
記憶の糸を辿っていた翼を現実に呼び戻したのは、明智の声。
そこには明智たちサクラダモン……いや、緊急特命捜査室のメンバーが、再び斜面を登り、崖の上に辿り着いていた。
藤守兄
「説明しよう!」
ずい、と一歩前に踏み出したアニは、そう言うと、顔をスミスデスに向けたまま、ビシッ、と背後の小笠原を指差した。
藤守兄
「こっちのメガネがな!」
藤守弟が溜め息をつく。
藤守
「『説明しよう!』言いたかっただけやん」
小笠原
「櫻井さんの指環は本物だよ」
藤守兄弟のボケとツッコミを完全に無視して、小笠原が一歩前に出た。
小笠原
「そして、スミスデスの持っていた指環も全て本物。だとしたら、スミスデスの望みが叶わなかったのは何故か?俺はここまでの情報を総合して、仮説を立ててみた」
藤守兄
「いいぞ、メガネ!」
藤守
「……兄貴は黙ってろや」
小笠原
「一つは、スミスデスの望みが、指環の意思にそぐわない高望みだった事」
小笠原は、伸ばした腕の先で、指を立てた。
スミスデス
「……」
スミスデスが、その指を凝視する。
小笠原
「もう一つは……、指環が選んだ真の持ち主が、スミスデスではなかったという事」
スミスデス
「馬鹿なっ……」
だが、言いかけたスミスデスはそこで喉を詰まらせ、そして……、
ルイデスを見た。
スミスデス
「まさか……」
小笠原
「これは俺の推論だけど。指環の大半を入手したのは、別の誰かなんじゃない?そして、おそらく、最後の指環を、先に手にしたのも」
スミスデスの視線を追って、全員の視線がルイデスに集まる。
だが、ルイデスは、まだ愕然としていた。
小笠原
「ルイデス、あなたは、今日より前に、櫻井さんの指環をその手に持った事があるよね?」
ある、と、先に心の中で頷いたのは翼。
『ホストクラブ・J』で自由を奪われた時、ルイデスは翼のブラウスのボタンを外し、胸にキスマークを残した。
あの時、確かに、ルイデスは指環を手にしたはずだ。
だが、ルイデスは首を横に振った。
ルイデス
「俺は、スミスデス様の為に指環を集めた。だから、指環の奇跡はスミスデス様のものだ!」
小笠原
「指環はそう思わなかったのかも」
ルイデスは、じっと小笠原を見つめる。
ルイデス
「……小笠原、と言ったな。お前は聡明だ。だったら教えてくれ。たとえ、先に揃えたのが俺だったとしても、その後、スミスデス様が全ての指環を手にしたのは間違いないはずだ。そこを、どう説明する?」
ルイデスの問いに、小笠原は少しの間考え込み、やがて答えた。
小笠原
「あなたの望みが、まだ、叶えられていないんじゃないかな」
ルイデス
「俺の、望み……?」
仮面の奥で、ルイデスの碧眼が揺らいだ。
小笠原
「思い出して。指環を手にした時、何かを願ったはずだ」
ルイデス
「指環を手にした時……あの時……」
ルイデスが、翼を振り返った。
ルイデス
「俺は……お前と、もっと違う形で会いたかった、と……」
仮面の奥から見つめる、碧色の眼差し。
その色とその言葉に、翼の中で全ての謎が解けてゆく。
翼
「ルイデス……あなたは……」
次の瞬間。
パキィン、という金属音とともに、ルイデスの仮面が割れた。
ルイデス
「うあっ!」
割れた仮面は地に落ち、ルイデスが、顔を押さえて膝をつく。
翼
「穂積さん!!」
翼は、愛する男の名を叫んでいた。