☆☆警視庁戦隊!サクラダモン・NEO!!~第二章~☆☆
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~警視庁~
この日も、翼の表情は冴えなかった。
メンバーたちは沈んでいる彼女の憂いを晴らそうとして励ましたり、連日懸命に調査に取り組むのだが、彼らの優しさは、かえって翼の悩みを深めるばかりだった。
そんな中。
朝のミーティングをしていた捜査室のドアにノックの音がして、大きな黄色い塊が入って来た。
ピーポ
「♪ピーポ、ピーポ、ピーポ……♪郵便やさんだよ、ハイハーイ♪」
現れたのは警視庁広報課のアイドル、ピーポ。
空き時間の庁内郵便配達にもだいぶ慣れ、楽しくなってきたらしい。
藤守
「ハイハーイ♪って、如月か!」
お茶目なピーポの相手をするのは、面倒見のいい藤守の仕事だ。
立ち上がって歩み寄る藤守に、ピーポは得意のポーズを返す。
ピーポ
「藤守さん、いつもツッコミありがとう。はーい、櫻井さんへのお手紙を届けに来たよ」
名指しされて、翼が顔を上げた。
翼
「私に、ですか?」
ピーポ
「うん。『穂積泪』さんからだよ。えーと、『ラブレター』」
全員
「ラブレター?!」
ピーポが出て行ってからも、ラブレターを手に立ち尽くす翼を中心に、メンバーたちはざわついていた。
如月
「すっげー。警視庁にラブレター送って来るなんて、情熱的ー!」
藤守
「アホ、ツッコむのはそこやないやろ!櫻井!ほ、ほ、ほ、」
小笠原
「ホタル呼んでるの?」
藤守兄
「『穂積泪』とは何者だー!!」
ばーん、と扉を鳴らして、藤守アニが飛び込んできた。
そのままの勢いで詰め寄られて、翼がうろたえる。
それはそうだろう。彼女自身、突然の穂積からの手紙に戸惑っているのだから。
翼
「あ、あの……」
ふと、翼の肩を、背後から温かい手が包んだ。
明智
「櫻井……ルイ、って……その名前、もしかして、《「大人の秘密基地」ホストクラブ・J》の、ホストのルイ?」
明智に小声で囁かれて、翼は少し逡巡したものの、やがて、溜め息とともに、頷いた。
翼
「……はい」
小笠原
「あの、すらっと背の高い」
如月
「……金髪碧眼の」
藤守
「…………銀座でNo.1の」
藤守兄
「………………男前だったな……」
頬を染める翼を見て、全員が、何となく肩を落とす。
明智
「そう……櫻井は、あの男と交際していたの……」
翼
「いえ、そんなっ」
交際しているとまでは言えない、と翼は否定したが、明智は少し寂しそうに微笑んだ。
明智
「でも、好きなんでしょう?」
自分でも抑えようとしていた気持ちを見透かされて、涙が出そうになる。
翼
「……はい」
翼と、失恋した男たちの人数分の沈黙が、捜査室を満たした。
逸早くそれを破ったのは、やはり、ムードメーカーの藤守。
藤守
「……そっか、そうやな。……まあ、アレやな!」
何が「そうでまあアレ」なのかは、誰にも分からない。
藤守
「あいつが相手やったら、俺なんか勝ち目無いわな……。よっしゃ、俺は応援するで、櫻井!」
翼
「藤守さん……ありがとうございます」
頭を撫でられて、翼の表情も明るくなる。
藤守
「うん、そうやって笑え!ほら、俺らに遠慮せんと、ラブレター読め!そんで、デートの誘いやったらどんどん行け!」
翼
「はい」
藤守の差し出すペーパーナイフを受け取り、翼は手紙の封を開いた。
翼
「……?……」
ところが。
予想に反して、出てきたのは1枚のDVD。
翼
「……お手紙じゃない……」
藤守
「ホンマや」
藤守兄
「イマドキのラブレターというのはそういう物か?」
小笠原
「ルイは美形だから、ビジュアルで勝負するのかも」
如月
「自作のラブソングを歌う映像だったりしたらイタイですね」
明智
「そういうタイプには見えなかったけど……」
口々にいろんな事を言いながら、DVDは小笠原の手に渡り、小笠原はそれをパソコンにセットする。
翼も抵抗するでもなく、小笠原の席の隣に椅子を近付けた。
全員が、二人の後ろに陣取って立ち、画面を見つめる。
小笠原
「始めるよ」
小笠原が再生ボタンをクリックした。
翼
「……」
胸を高鳴らせながら、翼も画面を凝視する。
ディスクの回転する微かな音に続いて、現れたのは、しかし、穂積泪ではなかった。
アオイデス
『警視庁戦隊の皆さん、こんにちは。櫻井さん、愛しの穂積じゃなくてごめんね』
画面の中、甘い声とともににっこりと微笑んだのは、顔の右半分を銀の仮面と赤い髪で隠した、切れ長の目の美しい男。
翼
「!」
藤守
「こいつ……!」
藤守兄
「ホストクラブのNo.2!」
小笠原
「山田太郎窃盗団のアオイデスだよ」
如月
「しーっ」
如月が立てた人差し指を唇に当てて、静かに、という仕草をする。
アオイデスは紺色のビロードの張られたアンティークな長椅子に腰掛け、どうやらパソコンのカメラに向かって、こちらに語りかけていた。
アオイデス
『櫻井さん、きみと、最後の取り引きをしたい』
翼
「えっ?」
アオイデス
『きみの持つ「第一の指環」。それを持って、埼玉県の「いつもの採石場」へ来てほしい。穂積もそこにいる。来てくれなくてもいい。ただし、その時は、《「大人の秘密基地」ホストクラブ・J》は閉店だ。もう、二度と穂積には会えないと思ってくれ』
翼
「そんな……!」
アオイデス
『きみは必ず来る』
アオイデスが妖艶に微笑んだ。
アオイデス
『待ってるよ』
笑いを含んだアオイデスの声を最後に、映像が途切れた。
明智
「……これは、どう考えても罠ね」
明智が唸った。
藤守
「分かってても、行かな、しやあないやろ」
藤守が翼を心配そうに見やる。
翼
「でも、『いつもの採石場』ってどこですか?私、それすら分からないのに……!」
翼はもう泣きそうだ。
藤守兄
「……俺は、何となく分かる気がするぞ」
と、藤守アニ。
翼
「本当ですか?!」
振り返る先で、如月も頷く。
如月
「採石場って、特撮番組なんかでよく使われるじゃん。俺も心当たりあるよ」
藤守
「俺もや。小笠原、ググってみろ」
小笠原
「『いつもの採石場』で検索するの?みんなして、バカじゃないの?」
半ば呆れ顔で検索した小笠原だったが……。
小笠原
「…………あった」