☆☆警視庁戦隊!サクラダモン・NEO!!~第二章~☆☆
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
~都内、銀座某所~
《「大人の秘密基地」ホストクラブ・J》の店内にある秘密の扉から、さらに奥深く進んだ場所にある、『秘密結社ジョン・スミス』の本拠地。
今日のこの場所は、壁一面のLEDディスプレイに映される映像によって、ゴシック調の重厚な空間が演出されている。
その大広間に置かれた、これは本物のアンティークである紺のビロード張りの長椅子に、黄金色のローブ姿のルイデスが、長身を横たえていた。
この男にしては珍しく、ぼんやりと天井を見つめていたが、やがて、小さく溜め息をつくと、静かに目を閉じる。
顔の上半分を隠す銀色の仮面のせいで表情は窺い知れないが、漂う雰囲気は、深い憂いを帯びていた。
しばらくすると、沈黙に包まれていた部屋に、さらに奥の通路から、もう一人の仮面の男が姿を現した。
ルイデスは肘掛けを枕代わりにして、静かに目を閉じたままだ。
柑橘系の香りを纏って現れた赤い髪の男は、その姿を見て目を細め、傍らに屈むようにしてルイデスの白い頬に手を添えると、おもむろに、ルイデスの唇に自分の唇を重ねた。
ルイデスの右手が拳を作る。
ごん!
アオイデス
「痛い!いきなり何するんだよ?!」
ルイデス
「こっちのセリフだ馬鹿野郎!」
唇を拭いながら跳ね起きたルイデスが、頭を押さえてしゃがみ込んだアオイデスの頭を、もう一発殴る。
アオイデス
「キスなら前にもした事あるじゃん!だからいいじゃん!」
ルイデス
「ホストクラブの王様ゲームでの事だろうが!」
アオイデス
「そうだけど!ルイデスのキス、超、気持ちいいんだもん!だから、あのキス以来、俺、ルイデスの事が頭から離れなくなっちゃったんだもん!」
ルイデス
「だもん!じゃねえよ!ふざけんな!」
小野瀬
「あの、櫻井とかいう女の子にはキスしたくせに!ずるいよ!ね、俺にもして!」
穂積
「くっつくな!」
抱きつこうとするアオイデスと、それを振りほどこうとするルイデスが揉み合っていると。
突如として荘厳なパイプオルガンの音が鳴り響き、『オペラ座の怪人』の曲とともに、漆黒のローブのスミスデスが部屋に入ってきた。
スミスデス
「相変わらず仲良しだね?」
仲良しだね、と言われて嬉しそうなアオイデス、嫌そうな顔のルイデス。
ルイデスがもう一発アオイデスを殴ってから押し返し、二人が揃って一礼すると、スミスデスが、向かい合ったソファーに腰を下ろした。
スミスデス
「例の警視庁戦隊が、アジトの周辺を嗅ぎまわっているようだよ。そろそろ潮時かな」
ルイデスとアオイデスは一瞬視線を交わし、それから、スミスデスの言葉の続きを待った。
スミスデス
「アオイデス」
アオイデス
「はっ」
アオイデスが威儀を正す。
スミスデス
「櫻井翼は、指環を貸金庫に入れると思う?」
スミスデスに問われ、アオイデスはちらりとルイデスを見てから、首を横に振った。
アオイデス
「いいえ」
スミスデス
「なぜ?」
スミスデスは、芝居がかった仕草で首を傾げた。
アオイデス
「前回のホストクラブへの招待ではっきりしましたが、彼女は『穂積泪』に惹かれています。指環を手放してしまったら、もう穂積に会えないかもしれない。彼女はそれを怖れているはず」
ルイデス
「……」
ふむ、とスミスデスが脚を組み直した。
スミスデス
「『ファウストの指環』が発揮する魔力は、二つあると言われている。一つは、『一にして全』である、第一の指環の力。これは、指環の持ち主である櫻井翼が、サクラダモンとして戦う力を得た事で証明されている」
聞いている二人が頷く。
スミスデス
「もう一つは、十個の指環を全て手に入れた瞬間に発現すると言われている、『奇跡の力』だ。……僕は、この力を得たい。そして、この世の真理を知りたいと願ってきた」
アオイデス
「存じ上げております」
スミスデスは頷き、今度はルイデスを見つめた。
スミスデス
「ルイデス、僕たちは長い時間を費やして、九つまで指環を集めたよね。ようやく、あとひとつというところまで来たんだよ」
スミスデスは身を乗り出し、ルイデスの手を握る。
スミスデス
「きみならきっと、櫻井から指環を手に入れる事など容易いに違いない。でも、僕はきみに、愛する女性から大切な祖母の形見を奪う指令など出せない」
ルイデス
「……」
スミスデス
「だから、お願いだ。僕の夢を憐れんで、彼女の指環を手に入れるまで、アオイデスのする事を見逃してくれ。協力しろとまでは言わない。邪魔しないでいてくれるだけでいいんだ」
ルイデスが唇を噛み締める。
アオイデスは、櫻井翼の事を何とも思っていない。
それどころか、ルイデスに思いを寄せる翼に対して、嫉妬に近い感情を抱いてさえいる。
アオイデスはおそらく、手段を選ばず指環を手に入れようとするだろう。
こんな事なら、最初に翼が指環を見せてくれた時、無理にでも奪い取ってしまえば良かったのかもしれない。
そうすれば、一時的には彼女を悲しませる事になったかも知れないが、少なくとも、彼女が祖母への愛着と仲間への友情と、自分への恋心の狭間で苦しんだりはしなかっただろう。
ルイデス自身もまた、翼を、こんなにも愛してしまう事は無かったはずだ。
だが、もう遅い……。
計画を立て始めたスミスデスとアオイデスの会話を遠く聞きながら、ルイデスは、翼の可憐な姿を思い浮かべていた。