☆☆警視庁戦隊!サクラダモン・NEO!!~第一章~☆☆
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小野瀬
「さて、と」
山田が立ち去った後、翼の右隣には、小野瀬が座った。
小野瀬は長い脚を組み、指先で翼の顎を持ち上げて、顔を覗き込む。
灰色の目に、怯えた顔の自分が映っている。
翼は身震いした。
小野瀬
「改めまして、今晩は。《「大人の秘密基地」ホストクラブ・J》へようこそ。あなたと二人で紡ぎ織り成す、平成の世の恋絵巻。銀座の夜の光源氏、アオイです」
小野瀬はそう自己紹介すると、にっ、と笑った。
翼
「ふ、ふざけないで下さい」
持ち上げた顎を人差し指に乗せたまま、小野瀬は青ざめた翼の顔を、品定めするように左右に動かす。
小野瀬
「ふざけてなんかいないよ。これでも俺、売れっ子ホストなんだから」
翼
「触らないで下さいっ」
翼は、小野瀬の指から逃れるように身を捩った。
明智
「ねえ、あれ、櫻井嫌がってない?」
少し離れた後方の席から、明智が心配そうに身を乗り出す。
が、すぐに傍らの女性が、その首に腕を掛けるようにして引き戻した。
ホステス
「心配ないわよ。あの二人は、このお店の人気No.1とNo.2。ちなみに、今、話をしている方が、No.2のアオイさん」
明智
「アオイ?」
ホステス
「そうよ。あの二人に揃って接客してもらえるなんて羨ましいわ。ねっ」
ホステスたち
「ねーっ」
どこかで聞いたような名前。
それに、時々覗かせる横顔には、見覚えがあるような気がする。
明智は眉間を押さえた。
何だろう。
とても大事な事なのに、まるで頭の中に靄がかかったように、思い出せない。
自分は確かにあの男を知っている。
そのはずなのに、記憶の糸を辿ってゆくと、途中で何かに阻まれる。
明智
「……」
ホステス
「そんな顔をしないで、室長さん。はい、もっと飲んで」
明智
「……」
視界の端に、さっきの案内係の男が見えた。
こちらを見て笑っている。
何か変だ。変なのに……
明智は傍にいる仲間たちの顔を見たが、全員が、明智と同じような表情をしていた。
穂積
「小野瀬、お客様をからかうのはやめろ」
振りほどかれた後も翼の髪を弄んでいた小野瀬の手の甲を、金髪の青年が軽く叩いた。
小野瀬
「店の中ではアオイって呼んで、って言ってるのに」
小野瀬が、唇を尖らせて手を引っ込める。
翼はホッとして、青年を見つめた。
だが、翼を見つめ返す青年の表情は厳しいままだ。
穂積
「何故ここにいる?」
翼
「えっ」
穂積
「ここは俺たちの本拠地だぞ。そんな場所に」
小野瀬
「まーまーまーまー」
小野瀬が、右側から翼の肩を抱く。
小野瀬
「お客様を苛めちゃいけないよ。でしょ?それより、フルーツ頼んでいい?」
翼
「えっ、はい……」
小野瀬
「いい子だねえ。ドン・ペリ入りまーす」
バーカウンターに向かって、いい声で言う小野瀬。慌てて否定する翼。
翼
「入りません!そんな高いお酒は無理です!」
小野瀬
「ちぇっ」
笑顔で舌打ちする小野瀬から、今度は青年が、翼の肩を掴んで引き戻す。
穂積
「触るな」
広い胸に顔を押し付ける形になって、翼の胸が、とくんと鳴った。
翼
「あの……私、招待状を頂いたから来たんです」
見上げれば、息のかかりそうな距離で青年と目が合う。
穂積
「来て、話をして、小野瀬とオーナーの正体に気付かなかったのか?気付いただろう。それなのに、何故、まだここにいるのかと聞いているんだ」
小野瀬
「喋りすぎじゃない?あと、焼きそばとサラダも頼んでいい?」
翼
「……ええ。気付きました。でも……でも、私、あなたの事が気になって」
青年の秀麗な眉が、ぴくりと動いた。
翼
「あなたは誰?あなたも、山田太郎窃盗団の一員なんですか?」
「『秘密結社ジョン・スミス』」と、二人は声を揃えた。その呼び方だけは、どうしても譲れないようだ。
穂積
「俺の名は穂積泪だ。ここでの名はルイ。都会の迷宮でお前を導く北極星。銀座の夜の魔王」
穂積は名乗るとともに、翼の身体を押し返すように自分から離した。
翼はなおも縋ろうとする。
翼
「穂積さん。私、私……この前別れた時から、あなたの事が頭から離れなくなって」
穂積
「言うな。俺とお前は相容れない。帰れ。二度と来るな」
翼
「穂積さん!」
小野瀬
「ドン・ペリ入ります!」
穂積
「入らないから!」
穂積に一喝されて、小野瀬が「ちっ」と舌打ちをする。
小野瀬
「どういう事ー?何?そのドラマみたいな会話。穂積、いつの間にこの子と会ってたの?」
穂積
「指環を確かめに行っただけだ」
翼
「えっ、でも、キ」
「……スしてくれたじゃないですか」という翼の声は、穂積の大きな掌に塞がれた。
小野瀬
「キスしたの?」
小野瀬の顔から笑顔が消える。
小野瀬
「穂積とキスしたの?」
小野瀬から黒いオーラが放出される。
今度は穂積が小さく舌打ちをし、立ち上がりざま、翼の身体を勢いよく引き寄せた。
悲鳴を上げる間もなく、翼は穂積の背中に匿われる。
小野瀬も立ち上がっていた。
穂積
「やめろ、小野瀬!今日はこいつに手を出さないよう、命令されているだろう!」
小野瀬
「そのつもりだったけど。この小娘が穂積を誘惑したとなれば、話は別だよ」
穂積
「誘惑されたわけじゃない。俺が」
小野瀬
「だとしたら余計、罪深いね」
小野瀬がぐるりと回転する。
すると、その顔の右半分を、銀色の仮面が覆った。
さらに、揺らめくような光とともに、小野瀬の全身を白銀のローブが包んでゆく。
穂積
「まずい。逃げろ!」
翼
「あっ?!」
穂積に突き飛ばされ、よろめいた先で翼を抱き止めたのは明智。
翼
「室長!」
周りを見れば、明智をはじめとする捜査室メンバーと、藤守アニが翼を守るように取り囲んでいる。
明智
「あいつは……麗王アオイデス!」
小野瀬のアオイデスへの変身とともに、捜査室メンバーたちの記憶も蘇っていた。