☆☆警視庁戦隊!サクラダモン・NEO!!~第一章~☆☆
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
《「大人の秘密基地」ホストクラブ・J》の店の中は、柔らかい光に満たされて意外と明るい。
しかも、アニの心配に反し、広い店内にある多くのテーブルは大勢の男女でほぼ満席で、活況を呈している。
案内係の青年は、淑女を扱うように翼の手を引いて、店内の中央にあるテーブルに誘った。
丸いテーブルの上のオアシスには赤いバラが飾られ、そこには『予約席』と書かれた金色のカードが挿してある。
それを外しながら、青年は、翼に革張りのソファーを勧めた。
そして翼を座らせ、ウェイターに運んで来させた甘いカクテルを差し出したところで、深々と頭を下げる。
男
「改めまして、《「大人の秘密基地」ホストクラブ・J》へようこそ。わたくし当店のフロア担当兼オーナー、山田と申します」
翼
「え、オーナーさん、なんですか?!」
翼は思わず背筋を伸ばした。が、山田はニコニコするばかり。
山田
「はぁい。つまり、僕があなたをご招待しました。どうぞ、心ゆくまでお楽しみ下さい」
翼
「あの、でも、私、山田さんに、こんな素敵なお店にお招きいただくような覚えがありません」
山田
「あなたに無くてもこちらにあります。心配はご無用、今夜は初対面のごあいさつです。当店自慢のホストたちに接待させますからね」
翼
「そうは言われても……ホストクラブなんて初めてだし……」
居心地が悪くて、もじもじしながら明智たちを探すと、さっきまで静かだった店内の一角で、きゃあっと歓声が上がった。
振り向いて見れば、捜査室のメンバーとアニは、二つの丸いテーブルに振り分けられている。
そして、たった今、藤守、如月、小笠原の席には、男女が交互になるように、四人の女性が座ったところだった。
さらにもうひとつの、明智とアニの席にも、それぞれの両脇に侍る形で、四人の女性が座ろうとしている。
女性たちは全員若くて、スタイルも抜群。
山田が自慢するだけあって、いずれ劣らぬ美人ばかりだ。
その美女たちは色とりどりの艶かしいドレスを着て、早くもメンバーたちに枝豆を剥いたり、如才なくお酌をしたりし始めた。
ホステス
「え、刑事さんなんですかぁ?カッコいーい。やっぱり柔道とか強いんですかぁ?」
如月
「いやぁ、そんな事ないよー?まあ黒帯だけどねー?」
ホステス
「こちらの方なんて、きっちり鍛えた素敵な筋肉。こんな刑事さんに守って欲しーい」
明智
「守って、って……何か心配な事でもあるの?」
ホステス
「私はこちらの、クールで上品な方がいいわ。静かにお飲みになりたいなら、お隣に座らせて頂くだけでもいいかしら?」
小笠原
「……」
ホステス
「私は断然面白い方が好き。それにこの方、目がとっても優しそう!」
藤守
「ありがとう。俺、刑事やけど、名前がケンジやねんで。で、そこにいるアニキは、検事やのにケイジ」
ホステス
「お兄様、本当ですかぁ?やーん、面白ーい!それに兄弟揃ってとってもイケメン!」
アニ
「ま、待て!こんなにホステス並べられて飲み食いされたら、いったい支払いはいくらになるんだ!」
ホステス
「今日は、皆様、初めてのお客様ですもの。お一人様5,000円で結構よ。私たちの飲み物や食べ物は全部お店から出ますから、心配しないで?」
アニ
「そ、そうなのか?」
ホステス
「ただし、特別注文なさるものは別料金よ。でも、やっぱりお兄様だけあって、しっかりなさってるのね。ス、テ、キ」
ホステスの一人に指先で胸を撫でられて、アニが真っ赤になる。
アニ
「そ、そうなのか!」
翼
「……」
呆気にとられて見ていた翼の傍らで、山田が微笑んだ。
山田
「ね、楽しそうでしょう?あちらの殿方たちの心配はいりませんよ。あなたも楽しんで下さい」
確かに山田の言う通り、みんな楽しそうだ。
いいのかな、翼がそう思いかけた時、不意に山田が片手を挙げた。
それが合図だったかのように、店の奥から、二人のホストが姿を現す。
先を歩いてくるのは、エナメルの靴に白銀のダブルのスーツ。すらりとした長身で、赤みがかった長い髪をハーフアップにした美青年。
甘く微笑むその顔に、翼は見覚えがあった。
一週間前、翼に挑戦状を送ってきた、祖母の形見の指環を狙っている男。
小野瀬葵。
またの名を、麗王アオイデス。
翼
「……!」
何故、ここにあの男が?
ううん、それよりも……。
翼の目を釘付けにしていたのは、もう一人のホストの方だった。
金髪と見紛うような淡い色の髪。白い肌、深い碧色の目。
世にも美しいその男は、黒のスーツを長身に纏って、小野瀬と共に、山田と翼のいるテーブルに向かって歩いて来る。
笑顔の小野瀬とは対照的に、翼を見つめる彼の目には、深い憂いが浮かんでいた。
山田
「お気に召しましたでしょうか?」
山田がくすくす笑う声で、翼はハッとして、隣の席に視線を戻した。
山田は翼の為に、ピスタチオの殻を剥いている。
翼
「……山田さん、あなたはいったい何者なんですか?」
山田
「僕は真理を求める者」
山田は、殻を剥き終わったピスタチオの実を盛った皿を、翼の前に差し出した。
山田
「山田太郎でもジョン・スミスでもピスタチオでも、お好きな名前で呼んでくれて構いません」
翼
「山田太郎……『山田太郎窃盗団』?!」
山田
「そこは『秘密結社ジョン・スミス』でお願いします」
自尊心が傷付くのか、山田は苦笑いで訂正した。
だが、たった今山田が名乗った『秘密結社ジョン・スミス』は、かつて、翼に相対した時に、アオイデスが自ら告げた組織の名前にほかならない。
あの時、アオイデスは言った。
「闇王スミスデス様の元、世界に散らばる稀有なお宝を集め、この世の全てを手中におさめるのが我々の使命」
翼
「もしかして、あなたが、『闇王スミスデス』?!」
鋭い声で問い質す翼に、山田は口角を上げる事で応えた。
翼
「……!……」
逃げなくては。
腰を浮かせかけた翼の右肩に手を置いた山田は、彼女の身体をソファーに押し付けるかのように、体重をかけて立ち上がった。
その間に、小野瀬と、あの金髪の青年とが、翼のテーブルの両脇に立つ。
翼は、自分が逃げ損ねた事を知った。
山田が微笑む。
山田
「僕は山田太郎ですよ、今日のところはね。言ったでしょう?……今夜はごあいさつ。あなたのお相手は、彼らがいたします」
小野瀬
「どうぞ、心ゆくまでお楽しみ下さい」
翼の右側正面から、小野瀬が、極上の笑みで微笑んだ。