☆☆警視庁戦隊!サクラダモン・NEO!!~序章~☆☆
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~警視庁、朝~
翼
「おはようございます!」
明智
「はい、おはよう」
元気よく出勤してきた翼に、室長席で婦人雑誌を広げていた明智が笑顔を返した。
早朝の特命捜査室には、ハーブティの芳香が漂っている。
翼
「あっ、今朝ももう、お花が変わってお掃除が終わっていますね。すみません、何から何まで室長に済ませて頂いて」
恐縮して頭を下げる翼に、明智は立ち上がりながら優しく微笑んだ。
明智
「いいのよ、わたしが好きでやってるんだから。それより、ハーブティを淹れてあげるわね」
翼
「うわあ、嬉しいです」
ニコニコしながら、翼は荷物をロッカーに入れに行く。
身支度をして自分の机に就く頃には、明智が、翼の前に香りの良いお茶を用意してくれていた。
明智
「はい、どうぞ」
明智はいつも穏やかで優しい。
柔道黒帯で、かつてはSATにも所属していたという銃の名手で、仕事も出来て上層部からの信頼も厚い優秀な刑事。
けれど、準キャリアなのに若くして緊急特命捜査室の室長に大抜擢された時、彼は部下である捜査室メンバーの前でだけ、その本性を明らかにした。
それは、家事が万能で趣味も女らしい、お母さんキャラだということ。
最近は、口調まで何だか女らしくなってきた気がするけれど、捜査室ではおおむね受け入れられている。
翼
「ありがとうございます!」
明智
「どういたしまして。……あら」
翼
「?」
明智
「櫻井、そんな指環してた?」
明智に指差されて、翼は左手を掲げた。
翼
「あ、これ、祖母の形見なんです。……私あての遺品の中にあって……留守の部屋に置いてくるのも心配なので、着けて来ちゃいました」
明智
「それは大切にしなくてはね。でも、普段使いには少し大きいかしら。……ちょっと待ってて」
そう言うと明智は室長席に戻り、引き出しから、綺麗な鎖を出してきた。
明智
「手芸用の鎖だけど、これをあげるわ。とりあえず、ここに通して、ネックレスにしておいたらどう?」
鎖はしっかりしていて、丈夫そうだった。
明智は鎖に指環を通すと、翼の首にかけてくれる。
翼
「ありがとうございます!これなら安心して持っていられます」
明智
「そう、良かったわ」
翼がネックレスを服の下にしまって立ち上がり、明智に礼を言っていると、続々と他のメンバーが出勤してきた。
藤守
「おはようございます」
如月
「おっはよーございまーす!」
小笠原
「……おはよ、ございます」
明智
「はい、おはよう。じゃ、早速ミーティングを始めるわね。継続になっている下着泥棒の件だけど……」
明智が全員に挨拶を返し、部屋の中央に集めて話し始めたその時。
ノックと同時に捜査室の扉が開いて、眼鏡をかけた長身の男が入って来た。
藤守兄
「キリキリ働いてるか、雑用室の諸君!」
明智
「藤守と如月は三課に協力して、現地捜査を続けてちょうだい。櫻井と小笠原は、過去の発生状況から、犯人の行動をマッピングする作業よ」
全員
「了解」
藤守兄
「……無視すんなや、ボケェ!」
尊大な態度の藤守兄に、全員が冷たい表情で顔をしかめる。
ひとり弟の藤守だけが、申し訳なさそうに明智に頭を下げた。
藤守
「すんません、室長。ほんますんません」
藤守兄
「何でそっちに謝るのだ!それより俺に用件を聞かんか!」
如月
「アニさん、今日は何ですか?」
面倒臭そうに如月が尋ねる。
藤守兄は如月の態度に不満顔だったが、それでも、「ふふん、聞きたいか」と言いながらメンバーの前で胸を張った。
全員が溜め息をつくが、藤守兄はお構い無しだ。
アニ
「お前らが相変わらず下着泥棒だの、露出狂だの、変態さんを捕まえるお仕事ばかりしている間に、世の中は大変な事になっているのだぞ!」
藤守
「どういう事や、アニキ?」
アニ
「黙って聞け、愚弟!いいか、世界を股にかけて活動している、骨董品専門の窃盗団がいるというのは、いくらお前らでも聞いた事があるだろう。首領の日本名を山田太郎、またの名をジョン・スミス」
小笠原
「それは外事課の仕事だよ、メガネ」
アニ
「黙って聞け、メガネ!その、山田太郎窃盗団がだ。数年前からこの警視庁管内にアジトを建設してだ。日本の首都東京で暗躍しているのだ!そして今、奴らは何と、『ファウストの指環』を全て揃えようとしている!」
如月
「『ファウストの指環』って何ですか?」
アニ
「黙って聞け、チビ!『ファウストの指環』とは、十個全て揃えると、持ち主の望みを叶えると言われている、非科学的かつ幻の秘宝なのだ!スミスの山田太郎窃盗団は、すでにその指環のうち九個を揃えているという情報が、我々検察庁に入ってきたのだ!」
明智
「どんな指環なのですか?」
アニ
「どうしてお前らは人の話を黙って聞けないのだ!明智!お茶は入れなくていいから聞け!『ファウストの指環』は骨董品、古美術品だ。古くて手作りで、素人が見ればどうという事もない指環だ。だが、残る『第一の指環』は、300億の価値があると言われているのだ!」
如月、藤守
「さんびゃくおくぅ?!」
明智
「古い指環……櫻井」
翼
「藤守検察官、こんな指環でしょうか?」
アニ
「こ、これは?!……おい、見習い!貴様、いま、これをどこから出した?!」
明智に促された翼が、服の下からネックレスを引っ張り出して藤守兄の掌に乗せると、藤守兄の顔色が変わった。
アニ
「まだ、温かいではないか!」
藤守
「そっちかい!」
アニ
「何故、お前がこの指環を持っているのだ!しかも、むむ、胸の谷間に!」
翼
「はあ」
赤くなったり青くなったりしている藤守兄を見かねて、明智が、翼との間に割って入った。
明智
「藤守検察官、話が進みません。……つまり、櫻井の持っているこの指環が、その、山田太郎窃盗団が狙う『第一の指環』だという事なんですね?」
アニ
「うむ、信じられんが、まさしくそうだ!資料で見た通りの指環だ!」
ようやく正気に戻った藤守兄が叫んだ時、ドアにノックの音がして、大きな黄色い塊が入って来た。
ピーポ
「♪ピーポ、ピーポ、ピーポ……♪はいはーい、お手紙だよー♪」
現れたのは警視庁広報課のアイドル、ピーポ。
藤守
「あ、ピーポ。お前、今度は郵便係かい」
ピーポはいつもの笑顔で頷く。
ピーポ
「うん。櫻井さんにお手紙だよ。えーと、『ちょうせんじょう』」
全員
「『挑戦状ー?!』」
~お台場~
広大なショッピングモールの中央に位置する、吹き抜けのロビー。
白い石畳の敷かれたエントランスを通って来ると正面に噴水があり、水際を囲むように置かれたベンチでは、来客が自由に憩う事が出来る。
今日はそのベンチに、ひとりの美青年が人待ち顔で腰掛けていた。
赤みがかった長い髪をハーフアップにして纏め、切れ長の目をエントランスに向けていた青年は、翼の姿を見つけると、静かに立ち上がった。
ただそれだけで、周りの女性たちの注目が集まる。
翼は引け目を感じながらも、送りつけられた『挑戦状』の差出人、小野瀬葵の前に立った。
翼
「……あの、すみません。私、櫻井翼と申します。あなたが、小野瀬さんですか?」
小野瀬
「ええ。初めまして、櫻井さん。突然あんな不躾な手紙を差し上げてすみません。が、来て頂けて嬉しいですよ」
待ち合わせの目印に着けていた胸の赤いバラを外して翼に手渡しながら、小野瀬が微笑んだ。
小野瀬
「それで、櫻井さん。指環はどこですか?」
翼
「えっ?」
小野瀬
「もしも今お持ちなら、それを俺にくれませんか。そうすれば、お互いに無駄な戦いをする必要が無くなる」
翼はいやいやをするように首を振って、一歩下がった。
翼
「この指環は祖母の形見です。それに、戦い、って?……意味が分かりません」
小野瀬
「やれやれ」
小野瀬は肩をすくめた。
小野瀬
「素直に渡してくれたら、ルイデスを誘惑した事も大目に見てあげたのに」
翼
「ルイデス?……誘惑?」
意味不明な言動、初めて聞く名前。翼は戸惑うばかりだ。
小野瀬は笑みを浮かべて、首を振った。
小野瀬
「きみは知らなくていい事だよ。……それより、今、『この指環』って言ったね。ということは、きみは現在、『第一の指環』を所持しているということ」
翼
「あっ」
小野瀬
「渡してもらおうか」
逃げようとした翼の手は、小野瀬に掴まれてしまう。
翼
「嫌っ!離して下さい!」