☆☆警視庁戦隊!サクラダモン・NEO!!~序章~☆☆
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☆☆警視庁戦隊!サクラダモン・NEO!!~序章~☆☆
深夜、警視庁管内某所。
眠らない街の一角にある細い階段を降り、煌びやかなホストクラブの扉を潜り、魑魅魍魎の跋扈するフロアを擦り抜けると、店の奥にもうひとつ、堅く閉ざされた入口がある。
扉の両脇には身長2mを超える黒服の巨漢が二人立っており、不夜城の雑踏からこの暗闇に帰還してきた住人の姿を認めると、揃って恭しく腰を折って迎える。
さらなる奥に向けて巨漢たちが開いた第二の扉の先に、もはや外界からの光は届かない。
坑道のように入り組み、荒々しい岩肌を見せる壁に点々と松明を灯しただけの通路。
そこに、男の革靴の音が響く。
何本にも枝分かれした通路の先にある巨大な扉の前まで辿り着くと、扉の向こう側から、助けを求めて喘ぐような、掠れた声が聞こえて来た。
……は、あッ、や……
……お願い許して……
……もう、無理っ……
男はひとつ大きく息を吐くと、革靴を履いた左足をゆっくりと膝の高さまで上げ、次の瞬間、凄まじい音を立てて巨大な扉を蹴り開けた。
部屋の中央にあるソファーで戯れていた男女が、轟音に驚いて行為を止め、振り向く。
さっきまで喘いでいた女が、扉を蹴破って入って来た長身の男の姿を見定めて、短い悲鳴を上げた。
女
「ひっ、ルイデス様!」
美貌のルイデスの碧色の目でじろりと睨まれた女は震え上がり、ソファーから飛び下りる。
それから床に散らかっていた衣服や下着を急いで掻き集めると、ルイデスに向かって頭を下げるが早いか、開け放たれた扉から、逃げるようにして部屋を飛び出して行った。
女が去ったのを確認した後、ルイデスは、ちっ、と舌打ちをした。
ルイデス
「……基地の中で部下に手を出してんじゃねえよ」
ルイデスの低い声に動揺する様子もなく、ゆっくりとソファーから身体を起こした男は、微かに乱れた赤い髪を、優雅な仕草で掻き上げた。
アオイデス
「まだ出してないよ。むしろ入れてたんだけど」
ルイデス
「どっちでもいい!せめて自分の部屋でやれ!」
不機嫌に怒鳴るルイデスに対して、アオイデスは笑みを浮かべながら衣服を直し、立ち上がる。
こちらも美しい男だった。
ただひとつ異様なのは、顔の右半分を銀色の仮面で隠している事。
さらに、ルイデスは濃紺のスリーピースにトレンチコートというビジネススタイルだが、アオイデスは、床まで届く白銀のローブを纏っている。
アオイデスの白く輝くローブには、背中から右の肩にかけて見事な黒い昇り龍の刺繍が施されており、その龍が、アオイデスの喉元に向かって鋭い牙を剥いていた。
優雅な微笑みを浮かべるアオイデスの容姿に似合わぬその厳めしい黒龍は、彼の内面に潜む何か邪悪なものを暗示しているのだろうか。
ルイデスは、アオイデスと女が使っていたソファーを避け、一人掛けの椅子にどさりと腰を下ろす。
アオイデスは、そのルイデスに抱きつくように背もたれの後ろから両腕をまわして、ルイデスに頬をすり寄せた。
アオイデス
「それより、どうだった?フランスは?」
くっついてくるアオイデスを押し返してから、ルイデスは、スーツの内ポケットから、何か小さな物を取り出す。
ルイデス
「骨董市で見つけたよ。店の主人が50万だと言ったが、5万に値切ってやった」
ルイデスが広げた掌の上に載せたそれを見て、アオイデスの目が輝いた。
銀の指環で、月の文様が刻まれている。
アオイデス
「少なくとも、50億の価値はある指環だよ。さすが、ルイデス」
ルイデス
「ふん」
ルイデスの態度は素っ気ないが、彼の緩んだ口元は、先ほどよりも明らかに機嫌が良くなった事を示している。
アオイデス
「『第九の指環』、だね」
ルイデス
「おっと」
ルイデスの手から指環を持ち上げようとしたアオイデスの指先を、ルイデスは軽くあしらってかわす。
ルイデス
「まずは、スミスデス様にお見せしてからだ」
ルイデスの言葉に呼応するように、突如として、どこからかパイプオルガンの音色が響き渡った。
曲は『オペラ座の怪人』。
ルイデスとアオイデスが立ち上がり、威儀を正すと扉に向かって深々と頭を下げる。
スミスデス
「ルイデス、いつもながら素晴らしい働きだね」
黒いローブを翻し、首領らしく悠然と姿を現したのは、アオイデスとは逆に顔の左半分を銀の仮面で隠した、長い黒髪の男。
アオイデスと色違いの彼のローブの背中には、大きく翼を広げた金色の鷲の刺繍が施されている。
どうやら、アオイデスたちの派手なローブ姿の方が、この場所での正装であるらしい。
ルイデス
「身に余る御言葉」
ルイデスは顔を伏せたまま、捧げるように両手で指環を差し出した。
スミスデスは満足そうに微笑むと、ルイデスの手からそれを受け取り、壁の松明の光にかざして眺めた。
スミスデス
「紛れもなく、『第九の指環』」
うっとりと呟く。
アオイデス
「そして、九つ目の指環ですね」
ルイデス
「おめでとうございます」
スミスデスは二人を労うように頷くと、壁のスイッチを操作した。
すると、微かな音と共に床の仕掛けが開いて、重厚な宝石箱を載せた台座が、スミスデスの前にゆっくりとせり上がって来た。
スミスデス
「……『ファウストの指環』を十個揃えると、全ての望みが叶うという……ついにここまで来た」
スミスデスは歌うように呟くと丁寧に箱を開き、すでに八つの指環が並ぶその列に、手にしていた『第九の指環』を嵌める。
待っていた、とでも言うように、指環たちが輝きを増した。
ほう、と、アオイデスが溜め息を漏らす。
アオイデス
「素晴らしい」
スミスデス
「残る指環はあとひとつ……」
ルイデス
「全にして一、一にして全」
スミスデス
「『第一の指環』」
スミスデスがさらにスイッチを操作すると、たった今までただの岩壁だった場所に、突如としてスクリーンが現れた。
いや、厳密には、それまでの岩壁全てが、実は、LEDディスプレイに映し出された映像だったのだ。
スミスデス
「その指環の在処が、ついに分かったよ」
映像が一瞬で、東京を俯瞰で捉えた衛星写真に切り替わった。
さらに倍率が上がる。
それに伴って、ルイデスとアオイデスが、徐々に意外そうな表情になってゆく。
スミスデス
「ここがどこか、もう、きみたちにも分かるよね」
ルイデス
「……霞が関、警視庁……」
スミスデス
「正解」
スミスデスが手を叩く真似をする。
アオイデス
「ここに、『第一の指環』の持ち主が?」
スミスデス
「霞が関には一丁目から三丁目まであるけど、住民はたった七人だ。持ち主は住民ではなく、ここに勤務している一人の女性」
ルイデスとアオイデスは顔を見合わせ、それから、揃ってスミスデスの次の言葉を待った。
スミスデス
「彼女の名は櫻井翼」
スクリーンに、一人の女性が映し出された。
スミスデス
「『第一の指環』は、何十年も銀行の貸金庫に預けられていた。彼女の祖母の持ち物だったんだ。祖母が亡くなり、彼女が指環を受け継いだ。現在は手元に置いているらしい」
アオイデス
「我々は空き巣狙いなんかしませんよ」
アオイデスは柳眉をひそめた。
スミスデス
「もちろんだ。そんな方法は我々の美学に反する。出来ることなら、彼女が自ら、我々の元に指環を差し出すように仕向けたい」
ルイデス
「……」
アオイデス
「まずは彼女に接触し、指環の所在を明らかにする事から始めるか。……ルイデス?」
じっとスクリーンを見据えているルイデスに、アオイデスとスミスデスが首を傾げた。
スミスデス
「ルイデス?」
ルイデス
「…………か」
櫻井翼の映像を見つめていた、ルイデスの頬が赤く染まった。
ルイデス
「可愛い」
アオイデス、スミスデス
「…………えっ?!」