ポケット穂積
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穂積
「話は終わった?」
室長が、小会議室の扉を開けて入って来た。
めぐちゃんを肩車している。
意外と子守りは上手なようで、長身の室長の肩の上で、めぐちゃんは上機嫌だ。
全員が隣室に隠れ、室内には小野瀬さんと私だけ。
隣室では、小会議室に設置したカメラの映像を、モニターで見ているはずだ。
穂積
「あら?うちの連中は?」
王子様なのにオカマ。
何か変な空気だけど、やるしかない。
翼
「泪さん!助けてください!」
穂積
「……ん?」
職場での『泪さん』に、室長が訝しむように眉をひそめた。
小野瀬
「ようやく来たか。待ちくたびれて、もう食べてしまおうかと思っていたよ」
小野瀬さんが私の肩を抱き、指の先で頬をするりと撫で上げる。
くすぐったくて、私は身をすくめた。
翼
「やっ」
小野瀬
「おや、傷つくなぁ」
小野瀬さんは、ちゅ、と私の頬にキスした。
小野瀬
「今からでも遅くない。穂積なんかやめて俺にしなよ。ね?」
その時。
めぐ
「姫にあんな事して!泪ちゃん、あいつが悪い魔法使いだね?」
室長の肩の上から、めぐちゃんが甲高い声を出した。
穂積
「姫?」
めぐ
「王子様とお姫様は、いつまでも仲良く暮らさなきゃいけないの!」
めぐちゃんは、小野瀬さんに向かって声を張り上げた。
めぐ
「邪魔しちゃいけないの!」
その声を聞いて、私はハッとした。
室長の顔色も変わっている。
めぐ
「泪ちゃん、頑張れ!」
穂積
「……任せとけ」
室長が、ずい、と一歩踏み出した。
めぐ
「泪ちゃん!武器は?!」
室長は首を回してめぐちゃんを見上げ、にやりと笑った。
穂積
「武器なら、持ってる」
左の掌と合わせた右の拳が、ボキボキと音を立てた。
めぐ
「行けー!」
小野瀬
「ぎゃーーーーーー!!!」
ピーポくんのぬいぐるみを抱えためぐちゃんが、こちらに向かって元気に手を振る。
その隣ではめぐちゃんのお祖母さんが、何度も頭を下げていた。
めぐ
「ばいばーい!」
翼
「めぐちゃん、ありがとう!元気でね!」
めぐ
「しあわせになってねー!」
穂積
「お前もな!また会おうな!」
めぐ
「はーい!」
遠ざかってゆくめぐちゃんとお祖母さんを見送りながら、室長がぽつりと言った。
穂積
「……あの子、祖母さんと暮らしながら、父親を待つらしいぞ」
翼
「すみません」
穂積
「ん?」
翼
「……無神経な事をしました。めぐちゃんのご両親、奥さんの浮気で離婚したのに」
穂積
「……」
室長は拳を作って、こつん、と私の頭を小突いた。
翼
「痛!」
穂積
「あの子の拳なら、こんなもんだろ」
翼
「……はい」
穂積
「まあ、済んだ事だ。気にするな」
今、小突いた私の頭を撫でながら、室長は、ふ、と笑った。
穂積
「川原ワタルの分まで、俺が、浮気相手の小野瀬をぶん殴ってやったからな」